戦紀絶唱《SIN》フォギア   作:星屑英雄

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少女の思いは届かない

彼は戦いの運命にある

変えられる者は……

神さえも知らない




11話 変身

 

 腹の調子が治まった、小日向遊策です。

 

 遅いかもしれないが、響の後を追い二課の廊下をさまよってます。

 

 すると、向こうから歩いてくる男の人が一人。

 確か、俺のもろもろの手続きを手助けしてくれた人で、名前は確か、緒川さん。

 丁度いい、彼に道を聞こう。

 

「すいませーん」

 

「おや、どうしましたか?」

 

 俺が近寄って行くと、親切に接してくれる。

 その後、教えてもらった通りに道をたどっていくと、第3シュミレーター室と書かれた部屋があった。

 

 俺はその部屋に入る。すると、一番初めに目に入ったのは、ノイズに囲まれ止めを刺されそうになっている響の姿だった。

 

 何でノイズが? それよりも響を助けないと!!

 

と、俺は良く考えずに飛び出し、響の元に走りよる。

 

 もう後先考えていなかった。ノイズ相手にただの人間である俺にいったい何が出来るのか、なぜここにノイズがいるのか、そもそも俺が今入った部屋がなんであったのかを。

 ただ響の元に一刻でも早く行かなければ、それだけだった。

 

「響ィィィィィィ!!!!!!」

 

 叫んだ瞬間、光が俺の胸から溢れ出た。その光に導かれるまま、駆け出し 歌う(・・)

 

「Be Strong somewhere gungnir tron」

 

 光が治まり、何かを俺は纏っていた。

 

 『ガングニールだとォ!?』と、いう声が聞こえるが知ったこっちゃない。

 これは――良き力だ……この力は心地がいい。これならば、響を助けられる。そう確信した。

 

「そいつから!! 離れやがれぇぇぇぇぇ!!」

 

 響を追い越し、ノイズに向かって拳を放つ――――ことが出来なかった。

 

 ノイズが唐突に消え、今まで見えていた景色も消え失せ、殺風景な部屋へと変わった。

 

「へ? え?」

 

 拳を空ぶったままの体制で動きが止まる俺。

 まったく状況が理解出来ていなかった。

 

「お、兄さ、ん……?」

 

 響が信じられないものを見るような目で俺を見ている。

 

 そして、黒服の職員達が何処からともなく出て来て取り押さえられる俺……

 

 ……なんなんだ、これ?

 

 

 

 

 その後、色々あった……

 精密な検査をして、あることが分かった。

 それは、俺の背中、心臓に近い部分に刺さった、天羽奏さんのガングニールの破片が俺と融合し、本来は纏うことが出来ないはずのシンフォギアを纏わせたらしい。

 そう、原作でいう響と同じ状態と言ったらわかりやすいだろう。

 

 ギアを作った櫻井了子さんも、「ギアの破片からもギアを作ることが可能だということは、響ちゃんのガングニールで証明済みだけど、まさか、人と融合して覚醒するなんて……」と、予想外の事に、ビックリしつつも研究者として調べがいがある!! と、目をキラキラさせていた。

 

 ……腹の事はまだ根に持ってるからんなァ、櫻井了子ォ?

 

 まあ、そうやって色々あり、午後9時を回った所でやっと解放された。

 それにしても、結局、響とは話が出来なかったなと、思いながら俺が帰ろうとしていると……

 

「お、おい、お前!!」

 

と、後ろから声が聞こえた。

 クルリと後ろを振り返り、見ればこちらに走ってくる少女が確認できた。

 

「あん? 確か……」

 

 俺を呼び止め、走ってくる、灰色に近い白がかった銀髪の少女。

 俺は先ほどの事を思い出す。

 銀髪をいじりながら、『ゆ、雪音クリス……よろしくな』と少しぶっきらぼうな挨拶をしてきた少女。……そして、神様からの指令によると、俺の恋人候補。

 

「雪音クリスだったよな? 俺に、何か用か九日十日?」

 

 駄目だな、実際に面と向かって会うとものすごく緊張する。

 とにかく小っちゃかわいい。それが、彼女を言い表すとしたらの印象だ。

 それでいて、消えそうな儚さはなく、しっかりとした存在感を漂わせる。そんな娘だった。

 

 そんな彼女は、俺に追いつくため走ってきたようで、肩で息をしながら息を整えてから、本題を切り出す。

 

「いきなりで悪いが、私と会ったことあるか?」

 

「いや、知らん。会った事もあるかもだが、結構いろいろな所いってるからわからないなぁ」

 

 彼女の質問に即答する。実際、俺は多くの人とかかわって来た。恥ずかしい話だが、俺はあまり物覚えがいい方ではない。そのため、どこで会ったのか、会ってないのかは覚えていないのだ。

 しかし、彼女は諦めず俺に更なる情報を与える。

 

「バルベルデだ!! バルベルデで何か思い出すことは?」

 

 なるほど、バルベルデか……うーん、いろんな人がいたから絞り込むのが大変だな。

 麻薬組織を2~3ぶっ潰したし、テロリストとも戦った記憶がある。

 まあ、それらは表立って行動してなかったから、別として、公に活動したのは、あれくらいかな……?

 

「うーん、兄弟子とボランティアに行ったということならあるが、確か爆破テロ中で兄弟子と町中を駆け回ったことしか、記憶に残ってないな。それがなにか?」

 

「そっか……やっぱりそうだったんだ」

 

 何か納得したようなしぐさと共に、ボソッと何かつぶやいたかと思うと、いきなり頭を下げてきた。

 

「ありがとな」

 

「なぜそこで感謝!?」

 

「ああ、あたしと家族はあんたに救われたんだ」

 

 ああ、じゃねーよ!

 いや、マジで救った覚えはない……ん? いや、待てよバルベルデ? どこかで会ったな……どこだ?

 

「音楽祭の会場、爆破テロ、音楽家の夫妻、何か思い出すことはないか?」

 

「音楽家の夫妻、雪音……」

 

 脳裏にひとつの光景がよみがえる。

 爆破間際のコンサートホールで大人三人と子供一人を抱えて飛び出たことがあった。……まあ、俺も十代前半の子供だったが。

 んで、チラッと見えたコンサート案内に英語で、雪音と書いてあったような。

 

「もしかして、君はあのときの女の子!?」

 

「そうだ、ずっと感謝を言いたかったんだけどな。言う暇もなく他んとこにトンでいっちまったからな」

 

「ははあ、それでさっきのありがとうか。別に気にしなくてもいいのに、律儀な奴だな。俺たちはやるべきことをやっただけだって」

 

 兄弟子のFG崎ボス男さんは、色々な国にいってそこで助っ人をしている。俺もそれに同行しているだけに過ぎない。まあ、結構荒事になること多く。命がけなのは確かだが、やるべきことをしただけというのが正しい。

 ……あの人に同行すると、更に厄介ごとに巻き込まれることが多かったのは、俺のトラブル気質のせいだろうなぁ。俺はかなり厄介ごとに巻き込まれやすい。多分、留年したのもこの気質のせいだ。

 

 ま、でも、兄弟子には悪かったが、それで救われたっていう人がいてくれるのは正直言って無茶苦茶うれしい。俺のトラブル気質もよかったと思える。

 

「あたしからは、それだけだ。引き留めて悪かったな。帰るんだろ?」

 

「まあ、そうだが……あ、そうそう、俺はお前じゃない。小日向遊策、遊策と呼んでくれ」

 

「ああ、そうだな。なら、あたしもクリスと呼んでくれてかまわねぇよ」

 

「わかったクリス、んじゃ、ちょっと厄介なことになったから、明日からもよろしく頼むぜ!」

 

「あ、じゃ、またな」

 

 別れた瞬間、クリスの携帯が震える。後ろから,スマホを取り出して電話に応答する声が聞こえた。

 

「知らない番号からだな? もしもし……誰だ、お前……パパ、ママ!? ……一体、何が目的だ」

 

 小声だったが、確かに聞こえた。

 何かトラブルか? と、思った俺は怪訝な顔で振り返る。

 クリスは俺の視線に気づくと曖昧に笑って、そそくさとその場を立ち去った。

 

 ……なんだったんだ、今の?

 

 

 

 あたしは人目がある場所を避けて、あまり使われない女子トイレの中に入り、電話に応答する。

 

「お前は一体なんだ? パパとママを人質にして、あたしに何をさせやがる!?」

 

 突如としてかかってきた電話は、あたしのパパとママを人質にしたという電話だった。

 ご丁寧に、目隠しをされ縛られたパパとママの動画も一緒に添付されて、だ。

 

『ええ、私は駒が欲しいの。自由に動いてくれる駒が、ね?』

 

 甲高い、ボイスチェンジャーでも使っているような声は続ける。

 

『貴女には、二課を裏切って、色々してもらいたいのよ』

 

「はあ? あたしに二課を裏切れ!? ふざけてんじゃ……」

 

『あら、断ってもいいのよ? ただし、あなたの両親は灰になってもらいますけどねぇ?』

 

 そう言って、縛られたパパとママの近くにノイズが召喚される。

 

「やめろ!! 一体、何が目的だ?」

 

『貴女が知る必要はないわ。ただ私の駒になればいいの』

 

 生死の声をかけると共に、せめて相手の目的を知ろうとするが、先程と同じ情報くらいしか得られない。

 ノイズを操れるならば、駒なんぞ要らないだろうに……しかし、ここは従うしか、ない。パパとママを人質なされたら、私は従うしかない……見事にあたしの泣き所をついてきたって訳だ。

 

 思わず、舌打ちするが、何の解決にもなりゃしない。

 

「っち!! ……あたしは、何をすればいい?」

 

『ふふふ、いい娘ね、クリス』

 

 相手の声は楽しそうだった。ああ、思い通りに進んで、さぞ愉快だろうさ。

 だが、そうは問屋が卸しやしねぇぞ……

 必ず、絶対だ!! テメエの正体を看破してやる!! そんでもって、パパとママを取り戻す!!

 

 その時まで、首を閻魔様にでも差し出して待ってやがれ!!

 

 




今日もきっとシリアスはなかった(最後から目をそらしつつ)。

あ、需要あるかわかりませんが、主人公の聖詠の意味は、「強くあれる場所へ」です。

感想……感想をくれぇぇぇぇぇ……
感想が無いとつらい……毎日更新もつらい……我もつらい……(ギル並感)

それでは、また次回ぃぃぃぃぃぃ!!!


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