物語を加速させよう
生誕の瞬間はもうすぐだ
圧倒的、その一言に尽きる。
少女の放った弾丸は的確にノイズの脳天を打ち抜いていき、そのことごとくを炭へと変え、大地に返えす。さらに、少女の歌う歌は聴くものに勇気を与える、そんな歌だった。
そして、俺は思う――――
あ、そういえばこれ、戦姫絶唱シンフォギアだった、と。
そう思考できるくらいには、赤い彼女が来て安心していたのだろう。俺は死角から迫るノイズに気づかなかった。
気づいた時にはもう遅い。すでに回避できない所、つまり、抱えている少年のすぐ近くにまでノイズたちが迫っていた。赤い少女も俺たちに気づいたが、遅い。
俺はとっさに少年をノイズの射程から逃がし盾となる。
そして――――
「全く、だから先走るなと言ったんだ」
声が聞こえた
次いで、剣戟の音、槍を振るう音、そして、拳を振る音が聞こえてくる。
俺の周りのノイズが炭へと変わり、俺達を救った者の姿が見える。
「雪音。まずは、住民の安全確保が先だといっただろう!!」
ライブ会場で見たままの青……風鳴翼が俺の左側に降り立ち、そういった。
「まあ、いいじゃん。あたしらがこうして来てたんだし、大丈夫だろ」
いいつつ、これまたライブ会場で見たままの橙に近い朱……天羽奏が、今度は右側に立つ。
「お兄ちゃん!! 大丈夫だった!? 怪我してない?」
そして見慣れた奴……響が見慣れない黄色で、俺の後ろから現れ、ベタベタと俺の体を触る。
……これは一体?
俺の戸惑いを残して、響が「大丈夫、すぐに殲滅してくるからね!」といって、ノイズに向かっていった。
そこから、ワンサイドゲームだ。
俺たちにノイズが近づくことさえなかった。信じられないほどの速度で、響と奏さん、赤い少女で瞬く間に対象にいたノイズが倒されてしまった。あっ、翼さんは俺たちを守ってくれてます。
それにして、色々疑問点がありすぎて困る、というか、戸惑う。
なんで、雪音クリスがここに? 逃げたのか、まさか自力でフィーネから脱出を!?、とか。何で、ガングニールと融合していない響がガングニールで戦っているのか、とか。
しかし、いつまでもそうしてばかりもいられない。
ノイズの殲滅が終わったようだ。
俺は、ボーとしていた頭をふり、意識を現実に戻す。
とりあえず、お礼を言わなきゃな、と俺が四人に向き直った時。
カチャリッと何かが俺の腕にしまる音がした。
「カチャリ……? って、なんじゃこりゃぁ!?」
俺の腕には、よく漫画の奴隷とかがはめているようなゴツイ腕輪がはめてあった。
この腕輪をはめた張本人、風鳴翼が言う。
「あなたには、私たちに同行してもらいます。ちなみに拒否権はありません」
「えぇ……」
そうして、俺はドナドナよろしく、その場から連れ去られたのだった。
はい、9話でした。
さて、連れ去られた遊策たちが見たものとは……?
それでは次回!!