月のバーサーカー ローラン   作:チーバ君
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短編から連載に変更しました。


この話だけは絶対にやりたかった。



本当は、大好き

BBとの決戦を明日に備え、私とローランはマイルームでの最後の休息を味わっていた。

「このマイルームとも今日でお別れか。……なんか感慨深いな」

ローランの言う通りだ。
BBに勝つにしろ負けるにしろ、私達がもう此処に戻ってくることはない。
このマイルームとも今日でお別れだと思うと、確かに感慨深い。

「ところでマスター、何かやり残したこととかないか?」

……?やり残したこと?

「いや、こうしてゆっくり話せるのも()()だからな。」
「やり残したことがあったらやっておこうということだ」
「ほら、なんかないか?俺に対する質問でも良いぞ?」


むう、そう言われても。

ああ、そういえばーーーーーー



『えぇー、アストルフォと一緒にされるのは心外なんだが』
『アストルフォもアレさえなきゃいいやつなんだが』
『いや、それはアストルフォの担当だ』
『アストルフォーーーーーー』
『アストルフォーーー』



アストルフォーーーローランがよく、いやかなりの頻度で口にする人物。
ローランと同じシャルルマーニュ十二勇士の1人。史実では男性とされているが、ローランの語る内容から察するにどうやら女性、それも相当な美少女だったようだ。

となると、気になるのは当然ーーーーーー

▶︎もしかして、恋人?
▶︎もしかして、彼女?



▶︎もしかして、恋人?

「ぶはっーーーーーーあはははははははは!アストルフォが恋人?何の冗談だ、それ!」
「確かにあいつは可愛い、見た目だけならな」
「だが、それ以前の問題だ」
「アストルフォは人として大切なものが色々欠けてるんだよな」

ほうほう。ローランをしてそこまで言わしめるとは、一体どんな人物なのか。

「あー、一言で言えば『アホの子』だ」

アホの子。

「弱いくせに、自分がそうしたいと思ったなら、誰にでも手を差し伸べようとしやがる。その過程で自分が傷つくことを厭わずに、だ。ーーーーーーったく、それで自分が傷ついたら、どうにもならないだろうに」
「アイツが傷つくことで傷つく人間もいるってことぐらい、気付けってんだ」
「やっぱり、どうしようもないアホだよ、アイツ」

…………。
な、なんか思ったより話が重い!

「それに後先考えずに自分が正しいと思った行動をする。英雄らしいといえば英雄らしいがな。命令無視上等だから、味方としては堪ったもんじゃないが」
「そこらへんはガトーに似てるかもな」
「まあ、アストルフォの場合は、大抵は幸運のおかげでうまく収まるが。それでもいつかとんでもないことをしでかさないか、皆いつもヒヤヒヤしてたよ」

ーーーああ、私達もガトーにはいつも振り回されていたっけ。

「それに空気読めないし、弱いし、アホだし、オンチだし」

……それって嫌う要素しかないんじゃ?

「ああ!ぶっちゃけ俺も嫌いだ!」
「アイツやたらモテるし。俺が失恋した時も『僕惚れられてばっかりでフラれたことないから、ローランの気持ちわかんないや!』とかぬかしやがった時は、怒りと嫉妬のあまり発狂したね」

何やら歴史の裏側を垣間見てしまった。知りたくなかった真実。憧れとは遠くに在りて思うものとは、誰が言ったのだったか。
……いや、ローランはそもそも逸話がアレだったな。

「あー、思い出したら腹立ってきた」
「俺だってイケメンなのに、何でアイツばっかり……。やっぱり『可愛いは正義』なのか!?そっちの方が需要あるのか!?」
「くそ、今度会ったら出会い頭にデュランダルぶちこんでやる!」

コイツ残念過ぎる……!
そういうとこが問題なのだと、ローランは気付いてないのだろうか。
気付いてないな、コイツバカだし。



「ーーーただ、機会があるのなら」
「シャルルマーニュやアストルフォと一緒に、また肩を並べて戦いたいもんだ」



ーーーーーー。

それを語るローランはとても懐かしそうな、なんともいえない表情をしていてーーーーーー。
少し羨ましく思うと同時に、寂しさも感じた。
聖杯戦争以前の記憶がない私にとっては、今この瞬間が全てだ。
だがローランは違う。
彼にとっては、この聖杯戦争も数ある戦場の1つに過ぎない。
彼には彼の居場所があるのだ。

この場所は、私は、彼の居場所になれているだろうか?

▶︎ローラン、私がマスターで良かった?

どうしてか、そんなことを口にしていて。

「ああ、俺は良いマスターに恵まれたぜ。魔術師としては未熟もいいとこなのに、凛やラニ、エリザベートーーーは置いといて、ジナコとカルナ、パッションリップやメルトリリスを全部倒して此処まで来るなんて、本当たいしたもんだ」
「それ以外でも、色々と一緒に馬鹿やれて本当に楽しかった。まるで昔に戻れたみたいでな」
「俺は本当に良いマスターに恵まれた。ムーンセルに感謝だな」

ーーーーーーそうか。

「でもいきなりどうしたんだ?急にそんなこと聞いてくるなんて」
「なんだ、ヤキモチ焼いてんのか?」

そう言ってローランは私の頭をぐりぐり撫でてくる。
や、やめろぉ!髪がぐちゃぐちゃになるだろう!

「あっはっはっは。かわいいかわいい」

はあ……はあ……。
やっぱりお前は女性に対するデリカシーが足りなさ過ぎる!
アストルフォのことだって、友達とはいえ女性に対してその言い方はないだろう!



「え、アストルフォは男だぞ?」

は?

「男だぞ?」

え?
いや、可愛いってさっきーーーーーー

「うん、可愛いぞ、美少女と見紛う程には。ああ、言ってなかったっけ?アストルフォは女装趣味があるって」

何だそれ!?聞いてないぞ!
女装って何だ!

もうわけわかんなくなってきた……。
今までの良い話とか良い雰囲気も全部吹っ飛んだぞ!

「初めて女装姿を見た時にアイツと気付かずに口説いたのは、俺の人生最大の黒歴史だ」

はあ!?
お前男に言い寄ったのか!?
このホモ野郎!半径1メートル以内に近づくな!

「ホモ!?いやいやいや、アストルフォが女装した姿だと気付いた後はちゃんと俺も冷静になって、罪悪感とか葛藤とかが頭の中でごちゃ混ぜになって嘔吐したんだぞ!」

おい、葛藤ってなんだ。誰に対してどんなことで葛藤したんだ?

「つーか発狂した友人を慰めるために自分が女装するとかなに考えてるんだ!?」
「結果的にそれで発狂も収まったがな!」
「自分より頭おかしい奴を見ると却って冷静になるって本当だな!」

うん、私も冷静になった。
ローラン、お前ちょっと落ち着け。
なんか変なスイッチ入ってないか?

「はあ…はあ…」
「くそ…頭痛くなってきた」

まあ、百歩譲ってお前がホモじゃないとしてもだ。
ローランの時代はメイク道具もウィッグなんて物も無かったんだろ?
女装してるとはいえ男を美少女と間違えるとか、アストルフォって実際どのくらい可愛かったんだ?

「ああ、めちゃくちゃ可愛いぞー、見た目は完全に美少女だしな。外見だけなら、ぶっちゃけマスターとどっこいどっこいだな」

な、なにおう!
お前は私の女としての魅力が男と同等だと言うのか!?自分で言うのもなんだが、それなりに美少女だぞ、私!

「外見が可愛いけりゃ良いってもんでもないだろ。大事なのは中身だ。ありきたりな言葉だが、わりと真理だと思うぜ?」
「それに、アストルフォは中身が天然アホの子だが、マスターに至っては中身がオッサンだろ」

誰がオッサンだ!?バカにするのも大概にしろ!私はピチピチのJKだ!

「いやー、仮に中身が女だとしても数億歳でJKを名乗るのはなぁ……」

犬空間をカウントするな!それにあれはお前を取り戻すためにやったことでもあるんだぞ!労いの言葉も無いのか!?

「ーーーーーーいや、そういやそうだったな。まだお礼も言ってなかったっけ」
「何も無い空間を数億年這い続けるなんて、俺には出来そうも無い」
「ありがとう、マスター、俺のために戦ってくれて」

……面と向かって言われると、その、照れる。
まあ、別にお前のためだけにやったわけじゃないし?
分かってくれればいいんだよ、分かってくれれば。

「うんうん、マスターは見た目は美少女、中身も美少女の完璧JK」

いいぞ、もっと敬え。崇めろ。

「マスターもそういうところが無ければー」
「アストルフォは性格も良いってのに」
「いや、それだけじゃないな。アストルフォは天真爛漫、可憐で、なおかつ美しさを兼ね備える。
その容姿とチグハグにならない程度に筋肉質な身体、その時折垣間見える男らしさは却って倒錯的な魅力を感じさせる。
仕草もあざとい、とにかくあざとい。どんなポーズを取らせても確実にあざとくなる。凄いのはそれが全然鼻につくことが無いことなんだよな。
声だって確実に変声期を迎えてないというくらいに甘い声だ。砂糖にシロップをかけた如くに。
だが、ただのあざとい男の娘だと思ったら大間違いだ。弱きを助け、悪を挫き、正きを貫く。例え敵がどれだけ強くとも果敢に立ち向かう。正に勇士の理想たらんとする在り方は何よりも美しかった。
戦いの場においても、雄々しく、凛々しく、美しく。弱くとも常に騎士たらんとする気高きその姿には敵味方関係なく魅了されてしまうほどだったと言う。
そう、それはまるで戦場に咲く一輪の花の如くーーーーーー」



お前本当はアストルフォ大好きだろ!



ああーー満足した。



次回は一旦幕間の物語を挟みます。
今度はfgo編です。

そしてその次はCCC編最終回、遂にアノ人の登場です。