月のバーサーカー ローラン   作:チーバ君

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今後は週一更新ぐらいになる予定です。


不甲斐ない私を許してくれ

サクラ迷宮の探索は進み、現在は第8層を攻略中だ。

だが、肝心の迷宮の主であるパッションリップは逃げてばかりで一向にSGを取得するチャンスは訪れない。

そこで、まずはパッションリップを目の前に引きずり出すための囮役として、ジナコを説得中なのだがーーーーーー

 

「本当にジナコさんの力を借りたいなら、誠意を見せて欲しいよね、誠意を」

「人に何かをして欲しいなら、対価を用意するのはトーゼンッス。等価交換、これ世界の真理」

「え?それは錬金術師?魔術師も錬金術師も似たよなもんでしょ」

 

ジナコは上から目線の態度を崩さない。

非常にムカつくが、こちらはお願いしている身だ、甘んじて受け入れよう。

 

▶︎こいつをくらえ

 

「うっひょ〜〜!人の金で食うケーキは最高ッス!」

 

購買で大金を払って買ってきたプレミアムロールケーキだ。

2000smもしたし、これでジナコも生徒会に協力してくれることだろう。

 

「え?これはただの頭金、交渉の席に着くための通過料金みたいなもんッスよ」

「ボクが協力するかは、これからのはくのんさんの交渉次第ッスよ〜」

 

こ、こいつ物凄く厚かましいぞ!

高級菓子折りを持ってきてやったというのに、さらに何かせびろうというのか!?

 

「いやいや〜べっつに〜?いいんすよ〜、ここで交渉を打ち切っても」

 

こ、こいつ……!

 

「悔しかったら、このジナコさんを口説き落としてみせるがいい!」

 

上等だあ!

パニッシュタイムで鍛えた私の力、見せてやる!

 

 

 

 

 

 

▶︎ジナコの力が必要なんだ!

 

「嘘吐き!本当はボクのサーヴァントだけが目当てなんでしょ!」

 

交渉は決裂した。

 

 

 

▶︎自分の身くらい自分で守りなよ

 

「無理ッス、ニートなめんな」

 

交渉は決裂した。

 

 

 

「だいたい、ジナコさんにメリットがないっす。ボクの見返りとか、そこらへんどうなってるんスか?」

 

▶︎うるさいわボケ!見返りを気にしていてパシリが務まるか!

 

「逆ギレッスか!?」

 

交渉は決裂した。

 

 

 

 

 

 

 

「にゃっはっは!口ほどにもないッスね〜はくのんさん」

 

ま、負けた……完膚なきまでに敗北した……。

 

「ほら、分かったらとっととケーキ買ってくるッス」

 

まだ食うのか!?

 

 

 

 

 

 

 

その後、私は何度も交渉に失敗し、その度にジナコにケーキを貢ぎ続けた。

 

そしてとうとう所持金も尽きた。

 

「本当に全部食いやがったぞ、こいつ……」

 

働かずに無駄飯を喰らい続ける。

生きてて恥ずかしくないのだろうか。

 

「ぐうの音も出んな、ジナコ。サーヴァントである俺も恥が高い」

 

「そこは鼻ッスよ!鼻!」

「とにかく!交渉は決裂ッス!ジナコさんと交渉がしたかったら、またケーキを持ってくるッスよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、どうしたものか」

 

ケーキを買おうにも金が無い。

至急対策が必要だ。

 

「サクラ迷宮でエネミーを倒して稼ぐか?いや、時間が無いな」

 

なら、凛の時のように、生徒会のみんなの協力を仰いでみるのはどうだろう?

 

「生徒会って……マスター、お前正気か?」

「思い出してもみろよ、あの惨劇を」

 

 

 

『トーサカ・マネーイズパワーシステムよ!』

『これぞハーウェイ・トイチシステムです!』

『午前の光よ、借金を返したまえーーーーーー!』

 

 

 

うん、ダメだ。生徒会は頼れない。

お金は人を狂わせる。

 

「となると、あとは自分たちでなんとかするしかないがーーー」

「礼装とかアイテムを売れば少しは足しにはなるか?」

 

でも購買の店主はあの愉悦神父だ。

ぼったくられる未来しか見えない。

 

「それもそうだな」

「よっぽど高い物を売る、もしくはあいつの琴線に響くようなものをーーーーーあ」

 

うん?何かあるのか?

 

「ああ、これならいけるかもしれない」

 

 

 

「眼鏡を売ろう」

 

 

 

!?!?!?!?

 

め、眼鏡ってあの?

私がベッドの下に隠してるあの眼鏡たちのこと!?

 

「ああ、マスターが夜寝る前にニヤニヤしながら眺めてるあの大量の眼鏡だ」

 

ダメだ!!!絶対にダメだーーー!!!

この娯楽のない旧校舎での、私の唯一の楽しみなんだ!

だいたい、言峰店長が眼鏡を高く買ってくれるとでも!?

 

「マスターの苦しみようを見せれば、嬉々として高額で買い取ってくれると思うが。レオからふんだくった大金を持ってる筈だしな」

 

い、嫌だ!

この子達を連れて行かないで!

この子達は私が血と汗を流して蓄えたお金で買った、大切な眼鏡たちなんだ!

 

「うーん、一旦質に入れといて、金が貯まったらまた買い直せばいいんじゃないか?」

 

お前は何も分かってないな!!!

全てが霊子で構築されるムーンセルでは、 アイテムはお金に変換される際、一度霊子にまで分解されてしまう。

そう、一度手放した眼鏡はもう2度と手に入らない。

また買い直して再構築したとしても、それはもう同じ眼鏡じゃないんだ。

眼鏡をお金に換えて、また新たな眼鏡を買う、そんな行為は浮気と同じだ。

私は一度愛した眼鏡を裏切りはしない!

決してお金なんかに屈しない!

 

「うわっ、メンドくせえなこいつ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

交渉は成功した。

 

「そこまで言われたら仕方ないッス。協力してあげるッスよ〜」

「ところで、なんで泣いてるッスか?」

 

グスッ……ごめん、ごめんよぅ……

 

「そこは聞かないでやってくれ……」

 

エル、フラン、ザビー、…………こんな不甲斐ない私を許してくれ……!

 

「誰ッスか、それ」

 

「名前までつけてたのか……」




エクステラリンク、カッコイイかどうかが行動基準なシャルルマーニュに、学士殿が振り回される未来しか見えない笑。

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