ハイスクールD×D ~優しいドラゴンと最高の赤龍帝~   作:マッハでゴーだ!

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第10話 真紅と紅蓮の答え

『我、目覚めるは―――闇夜の混沌に身を沈めし、死の覇王なり』

 《何故失くさなければならない》《モウタクサンダ……》

 

 黒い赤龍帝は、奴の掲げた呪文を紡ぐ。

 例えそれが間違っているものだとしても、例えあいつがそれを理解していようとも呪文は止まることなく紡がれ続けた。

 

『無限を喰らい、夢幻を滅する―――』

 《もう失うのは、たくさんだ……》《ケシサッテヤルッ!!》

 

 その呪文は黒い赤龍帝の本心そのものなんだろう。

 大切な仲間を殺され、尊敬していた先生すらも殺され、家族を殺され、―――愛していた人すらも殺された。

 全てを失い、その先に得たもの。

 

『我、全てを破滅に導く崩壊の象徴となりて―――』

 《なにもかも奪い去る世界なんて……ッ!》《コンナクサッタセカイナンテ、イラナイッ!!》

 

 ……それがあれなんだ。

 俺は知っているぞ、黒い赤龍帝。

 ―――お前は、誰よりも人間らしかったんだ。

 大切な存在を失って、殺されて……涙を流しながら前に進んだ。

 醜さを受け入れて、ただ一つの大切な存在を護るために世界を敵に回した。

 ……俺とお前は違う。

 俺はずっと同じところをグルグルと回って、失うという強迫観念に駆られて仲間を傷つけた。

 ―――すごいよ。

 例え手にした力が間違っていても、お前は自分の意志を以て復讐まで果たしてしまった。

 ……お前はもしかしたら、俺が進むかもしれなかった姿なのかもしれない。

 もしかしたらじゃなくて、きっと。

 もし俺に仲間がいなかったら、いつか俺はお前のような姿になってしまったのかもしれないな。

 

「……だからこそ、倒さないといけないよな」

 

 覚悟は決まった。

 答えはもうアイに伝えていたもんな。

 ……俺は拳を握る。

 マスク越しに見える黒い赤龍帝は禍々しい姿に変貌していた。

 闇色の鎧からは血のようにドス黒いオーラを撒き散らしていて、背中のドラゴンの翼は千切れているようなほどにボロボロになる。

 鎧自体はシャープなくせに、痛々しいほどに鋭角なフォルムだ。

 左腕に埋め込まれたアスカロンからは鈍い闇色のオーラがにじみ出ていて、マスクは邪龍のように恐ろしいものになっていた。

 ……全てアイから聞いた通りの姿だ。

 あれこそがあいつの世界のアザゼルが、命を賭してまで使わせたくなかった最悪の力。

 俺の守護覇龍は全てを護るために覇を行使する力だけど、あれはその逆。

 

『汝に足掻けぬ修羅の地獄と、死滅の絶望を与えよう―――』

<<<<<<<<全部消えてなくなれぇぇぇぇ!!!!!>>>>>>>>>

 

 ―――全てを破壊するために、死滅させるために覇を受け入れた力。

 

『Juggernaut Hell Drive!!!!!!!!』

 

 ―――名を、死滅の(エクスティンクション・)獄覇龍(ジャガーノート・ヘルドライブ)

 間違った覇を極めた、堕ちた赤龍帝の最凶の力。

 ……俺の隣の一誠は、その姿を見て足を竦める。

 そりゃそうだ。あそこまでの覇、闇を垣間見て臆するなって言うほうが無理って話だ。

 俺だって出来るならここから逃げ出したくなるくらいの恐怖を感じている。

 ……でもまあ、逃げられないんだよな。

 これが困ったことに、俺の足はピクリとも逃げようなんてことをしない。

 むしろ前に進もうとすらしている。

 目の前の、まさに最悪の敵に向かおうとすらしている。

 

「……一誠、俺たちは決めただろ―――尻込みする時間なんていらない」

「そ、そっすよね! ……そうだよな、こんなところでビビッてても何もできねぇもんなっ!!」

 

 一誠は両手の拳をガキッと打ち鳴らし、気合を入れるかのように闘争心をむき出しにした。

 覚悟をしたと呼ぶべき声だけど、どこか頼りにしてしまう強さを誇っている。

 

「黒い赤龍帝、もう声は聞こえないとは思うけどさ―――全部受け止めて、倒す」

『―――ぎゃぁぁぁぁぁああああああああああああっ!!!!!!』

 

 黒い赤龍帝は絶叫に似た叫び声をあげながら、ほとんど一瞬の速度で俺たちに近づいてきた。

 反応が一歩遅れ、目前に黒い赤龍帝の拳が映る!

 

「うぉぉぉぉぉぉおお!!!!」

『Change Solid Impact!!!!!』

 

 その振りかぶられる拳に対して一誠は鎧を戦車化させ、真っ向から拳を振るうことで防御を果たす。

 だけど黒い赤龍帝の力が絶大なのか、剛腕な腕が儚く崩れ去っていった。

 ……だけど時間は稼げた。

 

『Full Boost Impact Count 8,9!!!!!!!』

 

 黒い赤龍帝と近距離の状態から俺は宝玉を二つ砕き、普段の二倍に近い流星を放つ!

 一誠は一旦その場から距離を取って、俺はその一撃が黒い赤龍帝に通じているという確信を持つまでは力を緩めない!

 

『―――Hell Booster Dead Ending……』

 

 ……しかし、俺の流星はいとも簡単に無力化される。

 黒い赤龍帝から放たれる侵食するかのような黒い弾丸が、俺の白銀の流星を蝕んでいるッ。

 そして―――流星は完全に飲み込まれ、そして俺は不意にもその圧力に負けて無防備に宙に浮いてしまった。

 シュッ……そんな風を切る音が耳に聞こえると同時にッ!?

 

「かはッ!?」

 

 ……神速で目の前に現れた黒い赤龍帝は容易く俺の鎧を貫き、俺を地面へとめり込ませるように殴り飛ばすッ!

 口元から血反吐を吐き出し、すぐに状態を戻そうとするけど……すでにやつは目の前にいた。

 

「アスカロ―――」

『ぐるるぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!!』

 

 籠手からアスカロンを引き抜こうとした途端に、やつは俺よりも一歩早い速度でアスカロンを展開した。

 それを振われ、俺は後方にアスカロンへと飛ばされてしまった。

 

「速さと力が桁違いかよッ!!」

『Full Boost Impact Count 10!!!!!!!』

 

 この速度と力に対抗するには極限倍増しかないッ!

 しかも流星を使っている暇はない上に、今のこいつにはそもそも流星は通用しない!

 ……あのロキとフェンリル対策で習得して、奴らに絶大なダメージを与えたあれでも黒い赤龍帝には届かない、か。

 俺は肉体を極限まで強化し、黒い赤龍帝と近距離で肉弾戦を開始する。

 こいつと俺にはそれまでの差はない。

 格闘技術は奴の方が分があるところもあるが、瞬間的に圧倒的大技を放てる点では俺の方が分がある。

 だけど今はそれが覇龍のせいで通用しない上に、速度と力でも負けている。

 それを埋めることができるのがこの腕の宝玉だけど、でも―――決定打にはならない。

 拮抗できても打倒には至らない。

 

「ホント出鱈目だな、黒い赤龍帝!」

『だぁぁあああぁぁぁああああ!!!!!』

 

 乱雑にアスカロンを振るう黒い赤龍帝だけど、速度が速すぎる故に対応が一瞬遅れる。

 奴の一行動で俺の鎧は悲鳴を上げ、体が少しずつ重くなっていった。

 ……ドラゴンスレイヤーか。

 

『Hell Dragon Head……』

 

 黒い赤龍帝は状態を変える。

 奴の尾には八つの巨大な魔力の塊―――八つ首のドラゴンヘッドが装着されていた。

 それを一斉に俺の方に放ってくる!

 

『主様! あのドラゴンヘッドは以前とは比べ物になりません! もう宝玉の残量を気にしている場合ではないです!』

 

 ……仕方ないか。

 あの八つ首のドラゴンヘッドに対抗するためには、八つ首に対する流星の一斉発射しか手はない。

 

『Full Boost Impact Count 11,12,13,14,15,16,17,18!!!!!!!!!』

 

 ―――ッッッ!!!!!?

 さ、流石に流星を同時に8つも展開するのは生半可なもんじゃねぇかッ!?

 だけど撃たなきゃ、俺が死ぬ!

 気合入れろよ、俺!

 

「く、らえぇぇぇ!!」

 

 俺は歯を食いしばり、宙に浮かぶ八つの巨大な白銀の球を流星として放つ!

 ただ放つだけじゃあのドラゴンヘッドに対抗できない!

 全て直撃するように照準を合わせるんだ!

 

『はははははははははは、はははぁぁぁ!!!!!』

「うるせぇよ、笑ってんじゃねぇぞ!!」

 

 俺の八つの流星と、黒い赤龍帝の八つのドラゴンヘッドが相殺しあう。

 威力としては互角か、むしろ向こうの方が上だ。

 ……っと、そのときだった。

 

「―――オルフェルさぁぁぁぁん!!!!!」

 

 ……後方より、突如一誠が俺の名を叫ぶように呼んできた。

 俺は一瞬だけそちらに目を向けると、そこには―――自らのアスカロンと、飛ばされて地面に刺さっていたはずの俺のアスカロンを持った一誠がいた。

 一誠はそれを俺へと剣投しようとしており、俺はそれで理解した。

 

「一誠! そいつを俺に!!」

「はい!!」

 

 俺の言葉に反応するように一誠は二振りのアスカロンを投げてきて、俺はそれを左右両手で受け取る。

 二つのアスカロンは互いに共鳴するように聖なる光を光り輝かせ、さらに俺のすぐ後ろにきた一誠が俺の方に手を置き―――次の瞬間だった。

 

『Transfer!!!』

 

 一誠による、倍増の力の譲渡。

 恐らく自らが倍増できる限りの全てを俺に譲渡したんだろう。

 ……いける。

 体に感じる異様なほどの力を確信し、さらに自らの無限倍増すらも駆使して俺は漆黒と白銀がぶつかり合う戦場を駆け抜ける。

 アスカロンをクロスさせ、ドラゴンの翼と魔力の逆噴射、さらにまだ切れていない極限倍増すらも全て取り込んだ特攻。

 俺は空を切るように飛びながら、そして黒い赤龍帝の前に飛び掛る。

 ……この状態では、チャンスはこれだけかもしれない。

 

『Hell Dragon Arms……』

 

 すると黒い赤龍帝は両腕に極太の黒い魔力を覆った腕を展開した。

 ドラゴンヘッドとの同時展開、か。

 ……なら真っ向からぶつかってやる。

 俺は両手に持つアスカロンをいつものように隙すら与えず振るい続ける。

 黒い赤龍帝の腕は耐久力があるのか、アスカロンで切りつけてもかすり傷しかできない。

 だけど速度は今、俺が上回っている!

 俺は黒い赤龍帝に隙すら与えない速度で剣を振るい、振るい、振るい続ける。

 この状態は長くは続かない。

 次第に極限倍増の制限時間が来て、一誠からの譲渡も消える。

 八つ首のドラゴンヘッドがいつ流星を消し飛ばすかもわからない。

 ……守護覇龍ならば、あるいはこいつと対等に渡り合えるかもしれないな。

 だけどあれはまだ(・ ・)使えない。

 

「いい加減、斬られろよ!!」

 

 俺はアスカロンを大きく振りかぶる。

 その刃には倍増、魔力、聖なるオーラを凝縮させており、この一撃に全力をかけるくらいじゃねぇとこいつには届かない!!

 

『らぁぁぁぁああああ!!!!』

「とどけぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 黒い赤龍帝の極太の拳と、この一撃に全てをかけた俺の二振りのアスカロンがぶつかり合う。

 上空でぶつかり合うドラゴンヘッドと流星と同じように、奴の拳と俺の剣もまた同じ光景を浮かべていた。

 

 ―――もう、俺に残っている生きがいなんてないんだ

 

 ああ、そうなんだろうさ。

 大切なものを失って、その空虚な思いを俺は知っている。

 痛いほどに知っている。

 どうすることもできなくて、頑張ったってそれが帰ってくるわけでもない。

 でも何かをしないと自分が壊れそうで、目的なんて一つしかなくて。

 だけどお前はそれから逃げなかった。

 俺は逃げた。

 ……だからお前の拳は―――強いんだ。

 黒い赤龍帝の拳は鎧をいとも簡単に砕き、抉り、その結果で俺は血反吐をはき捨てた。

 俺は純粋な力比べで黒い赤龍帝に負け、そのまま後方の丘に衝突する。

 痛い。

 一撃一撃が必殺レベルのもので、恐ろしいほどの力を感じる。

 だけど……だけどさ。

 それでも俺は不思議と拳が握れるんだ。

 本当に、自分でも不思議なくらい自分が何をすべきかが理解できる。

 

『―――救ってこその、守護覇龍だ』

 

 ……すっと、俺の耳に届くのはドライグの声だ。

 

『いや、相棒になら俺がそんなことを言う必要はないだろう。だがな相棒―――お前の高揚は、確信があるからだ』

 

 ……そうだな。

 そうだよ。俺は確信している。

 何か明確な方法が頭に浮かんでいるわけでもなく、必殺の何かがあるわけでもない。

 ただの感情論かもしれない。

 それでも―――

 

「絶対に、救える。闇のどん底から、お前を引きずり出せるんだ」

 

 膝に手のひらを乗せ、体重をその手に込めながら俺は立ち上がる。

 

「間違った覇の理に身を沈めるな。お前の想いは、お前の本当の強さはそんな軽いものじゃないだろ」

 

 あるのは力だけだ。

 こいつの拳がいくら重かろうと、必殺だろうと―――それでもこんな拳、羽のように軽い。

 本当のこいつ―――仲間を失って、悲しみにくれても前に進んでいた『兵藤一誠』の拳は、どんな神でも魔王でも敵わない力がある。

 復讐だけの拳なんて!

 アイが―――アーシアが望んでいるわけないんだ!!

 

「黒い赤龍帝。俺はお前を敵のように思えなかった。それはきっと、お前が誰よりも()であったからだ」

 

 もしくは、こいつという存在は俺にとって可能性だったのかもしれないんだ。

 復讐にだけに生きる意味を見出してしまった力。

 ……俺がそうならなかったのは、やっぱり家族の存在なんだ。

 俺を支えてくれた父さんと母さん。

 俺が異質な存在であることを分かっていてなお、それでも俺にひたむきな愛情を向けてくれた。

 ……家族を殺され、仲間を殺されたお前の気持ちは痛いほど分かる。

 だから俺はお前を否定しない。

 否定せず、受け入れる。

 

「お前を全部俺に―――いや、違うか」

「―――そうっすよ! 一人だけでかっこつけないでください!!」

 

 ……俺の隣に立つ一誠は、そのような声音で肩を叩いてきた。

 そう、俺だけじゃない。

 ここにいる兵藤一誠は、三人だ。

 これは自分自身たちとの戦いだ。

 他の誰も介入させない。

 

「―――俺たちに、全部ぶつけろ。兵藤一誠(・ ・ ・ ・)!!」

『―――ガァァァァァアアアアアアッッッ!!!!』

 

『Hell Dragon Eater……』

 刹那、黒い赤龍帝の体から無数と呼ぶべき歪な容姿の黒いドラゴンが湧き出る。

 それは俺たちのところは勿論、更に遠くで戦っている他の連中の方にも向かっていた。

 

「―――やっと、条件が整った」

 

 ……それを確認し、俺は肩から力を抜く。

 

『なるほど、相棒はずっとこれを待っていたのか』

『故に黒い赤龍帝の深層心理に揺さぶりを掛け続けた―――そう、守護覇龍を使うために』

 

 ……心の中で俺は頷く。

 そう―――俺がロキとの死闘において取得した、赤龍帝最高形態である紅蓮の守護覇龍は護ることに特化した超強力な力だ。

 だけどもちろんデメリットも存在していた。

 この力は護ることに特化しすぎて、ロキとの戦いの時のように乱戦。

 つまり戦争のような場でしか使えない力になったんだ。

 つまり一騎打ちでは力を使うことすらできない。

 ……仲間が危険に瀕したとき、この力は真価を発揮する。

 それを望んだのは俺自身なわけだけど、予想外に扱い難い力になったもんだ。

 まあその辺りの改善は今後、ドライグや先輩たちと相談するとして。

 今は―――

 

「……凄いオーラっすね、オルフェルさん」

「ああ、そうだな。なあ一誠」

「なんすか?」

「―――互いの、最強の力を使わないとあいつには勝てないと思う」

 

 ……俺は拳を隣に立つ一誠に向けてそう言った。

 

「……違いますよ、オルフェル。勝てるとか、勝てないとかそんな難しいことじゃなくてさ。たぶん―――あいつにはそれくらいの覚悟で向かわないといけない。他の誰でもない、俺たち自身が!!」

 

 一誠はそう断言し、そしてコツンと拳を合わせた。

 そして―――一誠は真紅のオーラに包まれた。

 対する俺は紅蓮のオーラに身を包み、俺の中で力を綻ばせる。

 

 ……全部一誠の言う通りだ。

 そうだ、ここまで来たのならばもう前に進むだけだ。

 

「これが最後だ、黒い赤龍帝。俺も出し惜しみはなしだ―――全力全霊を以って」

「あんたをぶっ飛ばす! 目を覚ましやがれ!!」

『――――――』

 

 ……言葉は返ってこない。

 だけどそれでいい。

 そして―――

 

「我、目覚めるは―――」

 

「我、目覚めるは―――」

 

 その力を行使するために必要な呪文を紡ぐ。

 

「―――優しき愛に包まれ、全てを守りし紅蓮の赤龍帝なり」

 

「―――王の真理を天に掲げし、赤龍帝なり!」

 

 ―・・・

 

『Side:木場祐斗』

 

 一体、どれほどの攻防を繰り返しただろう。

 グレモリー眷属を相手取っている並行世界のアーシアさん……アイはどんな攻撃もことごとく防ぎ、確実に僕たちをダメージを与えている。

 神器の禁手、培ってきた魔術や魔法の数々、魔物を操る力。

 まるで魔王クラスの人物を敵に回しているような気分だった。

 それほどに―――

 

魔女の嘲笑(ウィッチ・プア)

 

 彼女は、強かった。

 彼女から放たれる深緑色の殺傷力抜群の破壊オーラが僕たちに向け放たれる。

 その威力は一切衰えていない。

 ……彼女の覚悟は、それほどに凄まじいんだ。

 自分の世界のイッセーくんのために、文字通り命を対価に僕たちと戦っている。

 

「どうして……どうしてなの!? どうしてそれほどに思っているのに、あなたはイッセーを止めないの!!」

 

 リアス部長は手に平に破滅の魔力をまとわせ、アイへと言葉を投げ掛けながら放つ。

 対するアイは深緑色のオーラを放ち、それを相殺すると共に魔方陣を幾重にも展開した。

 

「……ぬるま湯に使っているあなたたちには分からない。イッセーさんの優しさも、悲しい強さも……―――そんな綺麗事を考えるほど、私に余裕はなかったんですっ!!」

「きゃぁっ!?」

 

 その魔法陣から放たれる攻撃により、部長は後方に吹き飛ばされる。

 

「部長っ! 貴様ぁッ!!」

「私も加勢するわ、ゼノヴィア!!」

 

 するとゼノヴィアとイリナさんが部長へと追撃するアイへと剣を向けて特攻する。

 ゼノヴィアのデュランダルの剣先がアイに到達しようとする時、さらに魔方陣が一つ展開された。

 

「そんな小細工、真っ向から破壊してやるッ!!」

「―――ゼノヴィアさん、あなたはやっぱり、変わらないんですね」

 

 ……そのとき、アイは少し寂しそうな表情を浮かばせながら瞳を閉じ、そして―――ゼノヴィアはその場から、姿を消した。

 

「ぜ、ゼノヴィアをどこにやったのよ!!」

「……遥か上空に転移しました。防御に徹底すれば死ぬことはないでしょう」

 

 アイは残酷な宣告をし、そして深緑のオーラを鞭のようにしならせてイリナさんを叩きつける。

 更に魔方陣によって後方に吹き飛ばされ、ふっと息をつく。

 ……刹那、僕たちの上空からゼノヴィアが落ちてきて、地面に叩き落ちた。

 

「かはッ……」

「ゼノヴィアさん、イリナさん!! すぐに治療を!」

 

 するとアーシアさんが二人の治療に取り掛かるも、さっきからその繰り返しだ。

 故に明らかにアーシアさんにも疲労が見えていて、もうこれ以上アーシアさん頼りになるわけにはいかない。

 僕は聖魔剣を幾重にも生成し、それを空中に浮かばせてアイへと同時に放つ。

 

「……魔女の嘲笑(ウィッチ・プア)

 

 しかしそれも深緑色のオーラと魔法陣による圧倒的破滅力で消え去る。

 ……あれはリアス部長の力を体現しているのか?

 

「決して、あなたたちには負けない。譲れないんですよ、私は。壊れてしまった私たちは、もう寄り添うことしかできない。他の誰にも理解されないし、理解されなくても良いんです―――例えここで死んでも、それでイッセーさんが元に戻ってくれるなら……ッ!」

 

 ……するとアイは、口から血を吐き出す。

 目は充血し、それでも彼女は倒れなかった。

 あんな力を限界も考えずに使っていたら、体に負担がかかるに決まっている。

 それでも彼女が倒れないのは、それは彼女の意地なんだろう。

 ……だけど

 

「―――僕たちにだって意地がある。譲れないものがある。僕の親友は、今全力を以って死戦ともいえる戦いに望んでいるんだ」

「……だから、早く駆けつけなくちゃならないんです」

 

 僕の隣の小猫ちゃんがキュッと拳を握って、アイにそう言った。

 

「ええ、そうでしたね。あなたたちは―――私の愛したグレモリー眷属は、そうでしたね」

 

 ……天使のような微笑み。

 思わず見惚れるほどの、戦場において不似合いなほど綺麗な笑みを彼女は見せる。

 ―――それは僕たちの知っている、アーシア・アルジェントの素顔だった。

 ……そうだ。彼女の本質は何一つ変わっていない。

 僕たちと戦うことも、心苦しくないなんてことはありえないんだ。

 それでも彼女は戦うことを選んでいる。

 譲れない想い、自分の愛する人を救うために、ほんの小さな糸口を希望にして戦っているんだ。

 

「……アイさん」

「……なんですか?」

 

 するとアーシアさんが、自身であるアイに向けて声を掛けた。

 二人のアーシアさん。

 僕たちはその奇妙な光景を固唾を呑んで見守ることしかできない。

 

「……私はイッセーさんのことが大好きです。いつも私を可愛がってくれて、頭を撫でてくれて、優しいイッセーさんのことが大好きです」

「ええ、私もそうです。愛してます、彼を」

「―――だったら、どうしてそんなに悲しそうな顔をしているんですか?」

 

 ……僕たちもハッとなった。

 アーシアさんの言葉を聞き、不意にアイの顔を見た。

 しかしそこには涙なんてなく、無表情のアイの顔があるだけ。

 だけどアーシアさんは続ける。

 

「アイさんは、イッセーさんを大好きといったとき、どこか悲しそうな顔をしました」

「そ、そんなことはありません! 何を根拠に―――」

「私は! ―――アーシア・アルジェントですッ!」

 

 ……それは何よりも分かりやすい答えだった。

 

「分かるんです。アイさんはずっと悲しんでいる。ずっと、ずっと……。私の歩んできた道と、アイさんが歩んできた道は長さも、辛さも違います―――それでも悲しそうにしているのは、本当は」

「―――本当は、私は……私が、イッセーさんを、救いたい……ッ」

 

 ……そこでアイは表情を歪ませた。

 瞳には涙が溜まり、下を向き涙の雫を落とす。

 

「私は無力なんですッ!! 皆が死んだときも、私はただ奇跡的に生き残っただけッ!! いつも何もできなくて、今だって愛している人さえも自分ではどうにかできないッ!!」

 

 感情を吐露し、吐き出すアイ。

 

「でも、それでも前に進まないといけないんですッ! もう、私にはイッセーさんしかいないんです……。だから小さな光に手を伸ばすしかないんですッ! 皆が死ぬ間際に私たちに望んだ願いを、私は叶えないといけないんですっ!!」

 

 ……アイの深緑色と碧色のオーラが螺旋状に入り乱れる。

 目が赤く染まり、それが彼女の全力だということを瞬時に理解した。

 

「だから何があろうとここは通さない! それが今私がイッセーさんにできる、たった一つの―――」

 

 ―――途端に、アイへと向かって魔物が一斉に飛び掛った。

 しかしアイを中心とする深緑色と碧色のオーラのフィールドにあてられ、魔物は灰になった。

 

「―――恩返しなんです」

 

 ……彼女の心情は、なぜか僕たちの心に浸透した。

 いつも自分を助けてくれるのはイッセーくん。

 いつも僕たちを笑顔にしてくれるのはイッセーくん。

 いつも身を挺して、いつも誰よりも涙を流して傷ついて、誰よりも悲しむ。

 それでも前に進む。

 そうだ、彼はそんな人だ。

 だからアイは何があろうと、あの場を退かない。

 

「さあ、もう終わりにしましょう。この戦いに終止符を……―――」

 

 アイが、そう言おうとした瞬間だった。

 ―――戦場に、鮮血が飛び散る。

 それは僕たちでもなく、魔物でもなく―――アイだった。

 彼女のお腹からは腕のようなもので貫かれていて、すぐに引き抜かれる。

 アイは呆然とした表情になり、そしてその場に倒れた。

 

「……そう、ですか。……イッセーさん、あなたはもう……」

 

 ……アイが倒れ、その後ろには化け物がいた。

 黒い翼を背に形成し、下半身は東洋の龍の形態をしたどす黒いドラゴン。

 恐れおののくほどの歪なオーラを発する存在に、アイは抵抗することもなく倒れた。

 ―――アーシアさんと同じ顔の女性が、死ぬ。

 僕の頭にそんなものが過った。

 

聖覇の龍騎士団(グローリィ・ドラグ・トルーパー)!!!」

 

 僕は聖魔剣を一旦解除し、神器を聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)へと変更する。

 そして即座に神器を禁手させ、僕の神器の禁手である僕と同じ背丈の龍の容姿を模した甲冑を身にまとう龍騎士団が幾重にも生まれる。

 そのうちの一人をアイの方に向かわせて敵を屠るように聖剣を振りかざす。

 ―――しかし、剣は敵を切り裂くことができなかった。

 

「ッ!? 騎士団よ、アイを救出しろ!!」

 

 僕の言霊で甲冑の騎士は僕と同等の速度で動き、敵に襲い掛かる部隊とアイを救出する部隊で分かれる。

 救出部隊は的確にアイを救出し、そして強襲部隊の騎士は―――全滅していた。

 

「……なんだ、あの化け物染みた強さは」

「それだけじゃないわ―――」

 

 リアス部長は一筋の汗を垂らしながら、その化け物の後方を見た。

 ……そこには、アイの展開した結界を破り、こちらに来ている幾重もの歪なドラゴンだった。

 それはアイの放ったミドガルズオルムを貪るように捕食し、そして僕たちに襲い掛かりそうなほどに獰猛な目をこちらに向けていた。

 ……いったい、何が起きているんだ。

 っと、僕の傍に救出部隊の残りの甲冑が辿り着き、アイを僕に渡す。

 

「な、ぜ……敵である、わたしを……?」

「……さあ、なぜでしょうね。ただ一つわかることがあるとすれば―――僕の親友なら、同じことをしていました」

 

 僕はアイに視線を向けず、ただそう言う。

 アイの傷はとても深く、放っておいたら簡単に死にいたってしまうほどだ。

 

「木場さん! アイさんをこちらに!!」

 

 すると僕から少し離れたところにいるアーシアさんが少しばかり大きい声量でそう叫んだ。

 僕は騎士団を化け物の足止めをするために放ち、アイを抱えてアーシアさんの方に向かう。

 アーシアさんは神器を展開し、アイに碧色のオーラを照らして治療を開始した。

 

「……状況は最悪よ。何者かもわからない謎の生物が、大量にこっちに進軍している。しかも一匹の強さが異常な強さ。祐斗の騎士団を紙のように軽く壊しているのだから相当なものよ」

 

 僕の騎士団はお世辞にもまだ強いとはいえない。

 僕の実力までは再現できていないけど、でもそれでも速度は僕のものを再現できているんだ。

 それでなお圧倒される僕の騎士団。

 ……まずいかもしれない。

 

「部長! 私とイリナはとにかく奴らを一匹でも多く屠る!」

「いくわよ、ゼノヴィア!!」

 

 するとゼノヴィアとイリナさんが互いに翼を展開し、空中から化け物たちに攻撃を開始する。

 それを見計らうように後方より朱乃さんが雷光を、ロスヴァイセさんが北欧魔術による遠距離攻撃でサポートをする。

 ギャスパーくんは小猫ちゃんと連携して化け物の動きを一瞬止め、小猫ちゃんが止まった隙を突いて打撃を放っていた。

 だけど戦況は好転せず、ただ一撃でも敵の攻撃を受けるわけにはいかないと思わせるほどの違和感を奴等から感じるのみだ。

 

「アザゼル、これはどういうことだ。一体何が起きている?」

「さぁな。だけどこうなっちまったらお前との喧嘩は後回しだ―――おい、お前なら何か知っているんじゃねぇか?」

 

 すると僕たちの後方より、はるか上空で激闘を繰り広げていたアザゼル先生とヴァーリが現れた。

 二人とも損傷が激しく、肩で息をしている。

 ……そしてアザゼル先生は、アイをじっと見てそう言った。

 

「……あれは、私の世界のイッセーさんが暴走した証拠。……全てを地獄に落とす、獄覇龍の力の一つです」

 

 アーシアさんに治療されるアイは、肩で息をしながら話を続ける。

 

「……獄覇龍だと? つまりなんだ。お前の世界のイッセーは、覇の理を完全なる負のものへと最悪の進化をさせちまったってことか?」

「…………」

 

 アイはアザゼル先生の言葉に対して、無言という形で頷く。

 でも覇龍ならこれも納得できる。

 これほどの攻防をしても、僕たちの攻撃が今一つ効いていないのも理解できるものだ。

 だけど理解できても、今の現状をどうにかなんて―――

 

「―――それも、一つの答えなのかもね。ね、アルアディア」

 

 ―――戦場に、新しい声が聞こえた。

 その声が聞こえたと思ったとき、僕たちの横から不意をつくように化け物が襲いかかってきて、すぐさま僕は聖魔剣を創り出してそれを迎え撃とうとした。

 でも、それは意味のない行為だとすぐに理解した。

 

「無理やり介入した甲斐があったよ♪ これでまた、彼のあれを見ることができる♪」

『Demising!!』

 

 聞いたこともない電子的な音声が響いたと思うと、僕たちに襲い掛かろうとしていた化け物は正体不明の()に覆われる。

 その黒とも闇ともいえる不気味なオーラは化け物を飲み込み、包み込み―――そしてまるで存在そのものを消し飛ばしたとでも言ったように、跡形も残らず化け物を消失させた。

 ……なんだ、今のは。

 僕たちは先ほど声が聞こえた方を見る。

 ―――そこには、白い布のようなものを頭から被って、口もとしか見えない存在がいた。

 声音と口元を見る限りでは女性だろうけど、今はそんなことは関係ない。

 

「―――何者だ、あなたは」

「ん? ああ、そっか。私の知ってる君じゃないんだ~。う~ん、そうだねぇー。私は言わば―――傍観者かな?」

 

 ―――すると、白いローブの女の後ろに化け物が何十匹も一斉に襲いかかろうとしていた。

 僕はそれに驚愕し、今すぐに動こうとした。

 

「ただし―――」

『Force!!』

 

 女は後ろに意識など何も向けず、ただ手のひらに先ほどの黒い何かを集める。

 そして―――

 

『Demising!!!』

 

 いつの間にか手の内に展開された常闇の巨大な鎌を一振り、後ろの化け物たちに振りかざす。

 たった一動作。……たったそれだけの行動で、後ろの化け物たちは闇に飲まれるように苦しみ、程なくして消滅する。

 

「私の邪魔をする子は、こんな感じに終わらせるけどね♪」

 

 ―――言わば、圧倒的。

 戦いなどその者には存在しなく、ただ圧倒的なまでの力でただ敵を蹂躙する。

 途端に僕たちはこう思った―――こいつは、敵であると。

 奴は僕たちには興味はなく、何かを目的にここにいる。

 だけど僕の手は恐怖で震え、目の前の敵を討とうとなど考えることができなかった。

 

「それが正解だよ、平行世界のグレモリー眷属。もしちょっとでも私の邪魔をするならね? ……たとえ彼の大切でも、壊すんだよ。私はね♪」

「…………っ」

 

 僕たちは動けない。

 しかし目の前の敵はこの謎の女だけではない。

 僕たちをいつの間にか覆い囲んでいた謎の黒いドラゴン。

 一匹一匹から歪なほどの威圧感を感じさせる化け物。

 僕たちは、こんな化け物たちを相手にして生き残れるのか?

 

「んー、ねぇ、アルアディア。この世界のこいつらはつまんないね?」

『そういってやるな、我が主様よ。彼らは彼らの世界で回っている―――そもそもお前は兵藤一誠という存在がいなければ、全てがつまらないだろう?』

 

 ―――待て、こいつらは今なんて言った?

 いったい、何を考えている?

 謎の声との会話から察するけど、おそらくこいつらはオルフェルさんの世界の存在だ。

 なぜここにいるとか、そんなことはどうでもいい。

 ……目的が、分からない。

 こいつは何のためにここにいて、何のためにこんな暴挙に出るのか。

 戦場を混乱させるんだ、こいつは!

 

「私はこの世界で何かすることはないよー? それよりも、君たちも見ておいたほうが良いよ? ―――ここからが彼の本当の本質。あー、綺麗だな~」

「な、なにを言って―――」

 

 ……女の返事を待つまでもなく、僕は肌に暖かいものを感じた。

 見れば僕たちへと化け物が襲い掛かっている光景が目に映った。

 だけど僕はなぜか、何もしなくても良い(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)ような気がした。

 なんだろう、この感じは。

 

「―――あれ、が……違う世界の、イッセーさんの……、オルフェルさんの答え……」

 

 ……アーシアさんの傍で治療を受けるアイが、遠くの地平線を見つめていた。

 僕もそこに目を向ける。

 ―――そこには、紅蓮と真紅の織り成す美しい光景があった。

 その光景が僕の目に映った瞬間、僕たちの周りにいくつもの魔法陣が展開される。

 それは紅蓮の色で、文様はドラゴンのようなものだった。

 そしてそこから現れるのは―――紅蓮の色彩を放つ、大きなドラゴン。

 そのドラゴンは僕たちを化け物から護るように体を張り、傷つきながらも僕たちを確実に護っていた。

 

「兵藤、一誠……たちの、答えが……戦場に揃ってしまう……」

 

 アイはその場から立ち上がろうとする。

 きっと彼女は彼の……、自身の愛する『兵藤一誠』の元に行こうとしているんだ。

 傷も癒えぬまま、彼女は虚ろな目であの戦場に向かおうとしていた。

 

「―――あなたは面白いね」

 

 すると僕たちの視線にいたはずの謎の女は、いつの間にかアイの近くにいた。

 黒い霧のようなものを辺りに漂わせていて、女はアイの頬をそっとなぞって彼女を見る。

 

「良いよ、あなたの望みを私が叶えてあげる。連れて行ってあげるよ、彼の元に」

 

 女はアイを謎の霧で包み込み、その場に浮遊する。

 アイはいまだ呆然とした表情をしながらも、女とともにその場から消え去った。

 その光景に僕たちもまた呆然としてしまう。

 

 ―――我、目覚めるは王の真理を天に掲げし赤龍帝なり!

 

 その最中―――僕たちの耳に、透き通るように二つの呪文が聞こえた。

 一つは僕たちの大切な仲間のもの。

 そしてもう一つは……

 

 ―――我、目覚めるは……優しき愛に包まれ、全てを守りし紅蓮の赤龍帝なり

 

 優しいドラゴンのものだった。

 

『Side out:木場』

 

 ―・・・

 

「我、目覚めるは―――優しき愛に包まれ、全てを守りし紅蓮の赤龍帝なり!」

「我、目覚めるは―――王の真理を天に掲げし赤龍帝なり!」

 

 俺たちは同時に呪文を発する。

 それは俺たちが決めた答えであり、決意の証明。

 

「無限を愛し、夢幻を慕う―――ッ!!」

「無限の希望と不滅の夢を抱いて王道を行く―――!!」

 

 俺たち互いの籠手より先輩たちの声が響き渡る。

 それは共に互いに呪いめいたものではない、純粋な声。

 

「我、森羅万象、いついかなる時も笑顔を護る紅蓮の守護龍となりて―――!!」

「我、紅き龍の帝王と成りて―――!!」

 

 宣言をするように、前に進むために。

 

「汝を優柔なる優しき鮮明な世界へ導こう―――ッ!!!」

「汝を真紅に光り輝く天道へ導こう―――ッ!!!」

 

 ―――あいつを救うために、この力を使う!

 

『Juggernaut Guardian Drive!!!!!!!!』

『Cardinal Crimson Full Drive!!!!!!!!』

 

 ……俺と一誠の鎧が完全に形を変える。

 俺の鎧からは必要最低限の鎧が全てパージされ、顔も外気にさらされた、さながら騎士のような姿。

 一誠からは鎧の色が真紅というほど―――リアスの髪と同じ色になっており、トリアイナのときに感じたオーラよりも何倍もの力を感じる。

 そうか、これが一誠の出した答え。

 覇龍に変わる、一誠の絶大な力なんだ。

 

「これが最終決戦だ―――行くぜ、一誠!! あいつを救うために!!」

「はい!! うぉっしゃぁぁ、行くぜドライグ!!」

『ガァァァァァァァアアアア!!!』

 

 

 今、この場に漆黒と紅蓮と真紅が出揃う。

 救うための戦い。

 ―――今、兵藤一誠の最終決戦が始まる。


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