ハイスクールD×D ~優しいドラゴンと最高の赤龍帝~   作:マッハでゴーだ!

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第5話 駒王学園と入学

 桜の花びらが咲き誇り、通学路を桜色に染める。

 月日というものは早いものだと思う今日この頃。

 こんにちは、兵藤一誠です。

 そして唐突だけど、今、俺の視界には春に咲き誇る桜の花びらが舞っている並木道がある。

 季節は春で、そして今は4月。

 それで俺は……今日から駒王学園の新入生として入学し、高校生になるんだ。

 兵藤一誠になってから既に15年経過し、これまでに色々なことがあって、色々な経験をして俺はまた色々な意味で成長出来た。

 それもこれも父さんや母さん、そして誰よりも近くにいたドライグやフェルのお蔭だ。

 

『ああ、早いものだ。相棒も立派になって……ッ!!くっ、そう考えると途端に目頭が熱くなる!』

『……ドライグ、あなたの最近の主に対する態度は完全に父親化していますよ?』

『むしろ何故、俺は相棒の父ではないのだ! 奴、兵藤謙一よりも俺の方が父親をしているではないか!?』

 

 ……こういったように、ドライグは相変わらずパパドラゴン化してる。

 今では俺の父さんを何故か敵対視しており、「奴は俺の永遠のライバルで、いつかは超えなければならない壁だ」とか言っているくらいだし。

 そしてあの時……俺が謎の男達から少女と女性を救った時から、フェルも俺の中にずっと存在していて、こんな風にドライグのツッコミ役をしている。

 なんだかんだでこの二人は仲が良いんだろうな。

 

『ゴホン! ……それで相棒。なぜ、相棒はこの学校を選んだのだ? 相棒の頭ならどんな高校でも合格できただろう?』

『それについてはわたくしも同意見です。それにこの学園にいる存在くらい知っているでしょう?』

 

 ドライグは一度、咳払いをしてそう言うと、フェルウェルも同意する。

 駒王学園にいる存在、か……ああ、知っているさ。

 どんな人物かは知らない、その存在自体は何度か遭遇したことはある。

 ―――悪魔、そう呼ばれる存在が駒王学園にはいるらしい。

 悪魔って言えば一概に考えれば悪行を行い、人間と欲にまみれた汚い契約ばかりをする……それが人間で考える悪魔の価値観だ。

 俺はそこまで悪魔に否定感を持ってはいない。

 そもそも俺がそんな学校に入ろうと思ったのは特に大きな意味はないけど、一応は何かを守るためだ。

 この町を根城にしている悪魔がいて、この町には俺の大切な家族がいる。

 少なからず友達だっている。

 だから俺は見定めるためにこの学園に来た。

 そしてもしも、仮に駒王学園にいる悪魔が人間を利用し、自分の利益のために傷つけているなら、俺は俺の全てを捧げて傷つく人を守る。

 それ以外の、それ以上の理由なんてない。

 

『至極簡単、だがさすがは相棒だ』

『ドライグ、あなたは過保護すぎます。……それに今の主様がただの悪魔に遅れなど取りませんよ』

 

 ……それについては俺も同意見だ。

 これは自惚れなんかじゃなく、審査の厳しい頼もしい相棒であり、最強のドラゴンであるドライグとフェルが認めてくれた事実だ。

 大体、中学生を過ぎてくらいからかな?

 そのころから俺の体は成長期に入り、ようやく俺は実践的な訓練を行えるようになった。

 つまりは、転生前に行っていた修行……冥界に入る一歩手前の化物レベルのモンスターが現れる地域での修行をし始めたんだ。

 俺はあそこで、赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)の実践的な使い方や、魔力弾を応用したテクニック技、更に奥の手である禁手(バランス・ブレイカー)を使った戦闘訓練。

 そしてもう一つの神器……神創始龍の具現武跡(クリティッド・フォースギア)の扱い方と応用、などといったことを毎日のようにしていた。

 扱いなれたブーステッド・ギアはともかく、フェルウェルの神器に関しては性能以上に使いこなすことは困難で、もう何年も訓練を積んでいるけど未だに禁手に至っていない。

 

『そう簡単に至れないことは主様が最も理解しているでしょう。……それにこの神器を手にするものは主様が最初で最後なのです』

 

 ……そうなんだ。

 フェルの言い分では、フェルは自分を持つに相応しい人間を自分で一度だけ選ぶことができるらしい。

 そしてその者が死ぬと、フェルウェルの神器ごとこの世から神創始龍の具現武跡(クリティッド・フォースギア)はこの世から消失するそうだ。

 つまり俺が死ぬとき、フェルはこの世界から存在を消すことを意味している。

 何でそんなシステムをフェルが背負わされているかは俺も分からないけど……

 そしてそのたった一人の所有者に選ばれたのが俺、ということらしい。

 

『むしろ主様はこの神器を幾分に使えこなせています。……自信を持ちなさい、主様』

「……たまにフェルからも母親オーラを感じるのは気のせいか?」

『ふふ。ドライグとは一緒にしないでくださいね? わたしくしはまどかさんを尊敬していますから』

 

 俺がそう言葉を漏らすと、フェルは小さく笑っているのが何とも言えない。

 まあでも間近に母親の域を超える母さんがいるからな……

 ちなみに母さんは未だ、昔のような美貌を保ち続けている。これに関してはさすがのドライグやフェルも驚いている。

 母さんが駒王学園の制服を着て、何食わぬ顔で俺の隣で入学式に出たら違和感がないと言えばいいだろうな。

 あと、俺はフェルウェルのことをフェルって呼んでいる・・・というのはただ親近感を持つためだ。

 

「でも、考えてみると、あれから色々あったよな……」

 

 俺は腕時計で時間を確かめると、まだ時間が入学式までかなりあることを知り、並木道にぽつりと置いてあるベンチに腰掛け、桜の花びらの舞う空を見上げた。

 何があったかと言えば、例えばあの事件から少し経ってからのことだ。

 ちょうどその時、父さんの単身赴任が2年間と決まったことで母さんと俺は父さんのいる北欧のある国に2年間だけ暮らすことになった。

 まあ元々は転生前の俺はそっちの方の人間だったから言語に関しては特に困らなかったけど、父さん達が驚きそうだったから二人の前では英語は絶対に話さなかった。

 それでそこにいる時に立ち寄った教会で外国に引っ越した小さい頃の幼馴染の紫藤イリナと何かとも再会して、彼女とも更に仲良くなった。

 でもすごく信仰者になってたけど……今でも時たまに連絡を取り合う程度の繋がりはある。

 それと……白音と黒歌か。

 

『相棒。……あの時の相棒はひどく落ち込んでたな』

 

 ……ドライグの台詞だけを聞いたら勘違いするかもしれないが、別に死んだわけじゃない。

 何があったかと言えばそれは単純に、突然2匹ともどこかに行ってしまったんだ。

 すごく懐いてくれてて、本当に可愛かったから俺は自分でもわかるくらいに落ち込んで、しばらくの間はショックで皆を心配させたしまったよ。

 たったの1年くらいしか一緒にいなかったけど、今でもあいつらのことは忘れられないさ。

 

『ですが、何故、白音だけは数カ月後に帰ってきたんでしょうね?』

 

 フェルは不思議そうに俺に尋ねてくる。

 ……そうなんだ。白音と黒歌がいなくなった数ヶ月経って、突然、俺の部屋に白音が帰ってきたんだ。

 さすがに驚いたけど、でもなんか様子がおかしくてさ。……何故かものすごい悲しそうな鳴き声をだして、その日は俺から片時も離れなくて。

 だからその日はずっと白音を抱きながら一緒にいたんだ。

 

『そうしていたら翌日にはまた消えて、もうあの時のドライグの必死さは笑いましたよ』

『仕方あるまい。……相棒が悲しがっていたのだぞ! 心配しないパパがどこにいる!?』

『……そんなことばかり言っているとアルビオンが泣きますよ?』

 

 フェルは哀れんでいるような声音でドライグにそう言うが、当のドライグは全く気にしていないようだった。

 ……白い龍も大変だな、こんなライバルを持って。

 

「心配だけど、心配してももう仕方ないよな」

 

 ……俺は昔を思い出しながら、声のトーンを下げる。

 黒歌と白音はいつも俺と一緒で、一緒にお昼寝をしたりお風呂に入ったりした。

 ちょっと頭を撫でてあげると心地よさそうに体を震えさせて、抱きしめたら俺に身を委ねてくれた。

 ……家族だった。

 だから今でもあいつらのことを思い出したら悲しい。

 でも2匹はもう何年も見てないんだ……探そうにも探せない。

 

『にゃん、にゃん♪ にぁぉぉぉん~~~♪』

 

 俺は特に甘えん坊だった白音の愛くるしい姿を思い出す……!

 ああ、あれは俺にとっての最高の癒しだったなぁ。

 修行の疲れは全て白音のお蔭で吹き飛ぶくらいに可愛かった!

 ……そうだ、最近の俺には癒しというものが足りない!

 

『……相棒が荒れている―――フェルウェル、大至急、相棒に癒しを用意するぞ!!』

『……はぁ。まあそれがドライグですから、今更どうにもならないですけど』

 

 フェルはドライグの発言に対して溜息をつきながら呆れる。

 ……寂しくはあるけど、仕方のないものは仕方ないよな。

 

「さてと……そろそろ時間か?」

 

 俺は勢いよく立ち上がり、そして服に着いた桜の花びらを払って歩く。

 駒王学園の新入生らしい生徒もちらほらと見えるから、もうそろそろ学校に向かってもいいだろう。

 ……それにしてもなんか視線が気になるな。

 チラホラ見える学生はほとんどが女子生徒なんだけど、どっちにしろ余り心地の良いものではない好奇な視線を向けられるのはいい気分じゃない。

 

『まあ仕方ないだろうな……入学試験で相棒はかなり目立っていたからな』

 

 ……入学試験か。

 駒王学園の試験は筆記試験と身体能力試験、そして面接の3種類だ。

 ドライグの言うところの目立っていたっていうのは、多分二つ目の試験のせいだろうな。

 ……なんていうか、軽く流しただけなのに結果が1位ってどういうことなんだよ?

 

『主様は人の身で怪物を相手に手玉に取っているのですよ? 言っておきますが、あの冥界辺境地域の魔物の力は上級悪魔でも苦戦するレベルです』

『相棒は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)に耐えるための肉体を小さいころから、こつこつと作っていたからな。普通の人間とは比べ物ならないほどに素晴らしい肉体だと断言しよう。悪魔ですらも敵わないレベルかもしれないほどだ』

 

 でも軽く流しただけで1位っていうのはな。……しかも過去の記録を全て塗り替えるって何の冗談だよ。

 ……とにかく、そういうわけで今は視線を集めている。

 

「ねえ、あれってやっぱり……」

「噂の兵藤くんよね……。どうしよ、わたし、声をかけようかな?」

「まだよ! まだ焦る時じゃないわ!! 焦るのと焦らすのは違うのよ!?」

 

 ……いや、何の会話してんだよ!?

 誰も(あせ)らしてないし、()らしてねえよ!

 っていうかそもそも初対面の人間を見ながらする会話ですらないだろ!!

 俺は心の中でそうツッコむのだった。

 

「くそ、一誠のくせに……ッ!」

「うらやましい、うらやましぃぃぃぃぃいい!!」

 

 すると俺の後方より、何やら怨念めいた声が聞こえる。……振り返るまでもないな。

 

「何のことだよ、松田、元浜」

 

 松田に元浜。……俺の小学校時代からの友人ってところだな。

 俺が外国から母さんと共に帰って来て、転校した学校にいて、色々あって友達……いや、親友になった奴らだ。

 今となってはホント不肖の、が付くほどだけど。

 

「貴様ぁ! 試験であそこまでのことをやらかしておいて、まだ言い逃れをするつもりか!」

 

 松田が喚き、俺が殴る。

 

「お前なら女なんか食い放題なんだろ! うらやましい、うらましいぃぃぃ!!!」

 

 元浜が泣き、俺が蹴飛ばす……といったように二人は音もなく殴られ、蹴られた部分を押さえて膝を地面につけた。

 さすがに大げさだろう?

 そんな二人に俺は背を向け、背中越しで一言。

 

「お前らと一緒のクラスにならないことを願ってるよ。……少しは煩悩を抑えれば、お前らならすぐに彼女の一人は出来るだろうよ―――まあ無理だろうが、変態共」

 

 俺の一言に二人は倒れたようだった。

 

「そん、な……殺生な……ッ!!」

「我が人生、胸の一つは触りたかったな……」

 

 ……どんな格言だよ。

 俺はあきれ果ててそう心の中でツッコむのだった。

 

―・・・

 俺は松田と元浜を放置し、駒王学園に到着するとそのままクラス発表をみて、自分の名前を確認した。

 

「1-Aか。知り合いは……げっ、松田と元浜かよ」

 

 俺はガクリと肩を落とす……けどなんとなく、そうなるかなっと思っていたから特に気にすることなく教室に向かうことにした。

 ―――のはずなんだけど……

 

「あれ、ここはさっき見たような。……ああ、迷った」

 

 ……見事に、迷子になった。

 あれ? この学校にこんな森あったっけ?

 周りに生い茂る草花を見て、俺はそのように思う。

 

『……相棒の数少ない短所の一つだな』

『むしろわたくしはこれくらいの方が可愛いと思いますが……』

『ああ……父性を感じ取れる!』

 

 なに愉快なこといってんだよ、パパドラゴン!

 それどころじゃねえ!

 学校で迷子って、いくら方向音痴の傾向がある俺でも限度があるだろ!

 

「うぅ……泣きそうだ」

『……だが、どうにも奇妙だな。いくら相棒が方向音痴気味になってしまったとはいえ、まさか学校で迷子になるわけもあるまい―――となると、もしくはこの辺りに結界でも張ってあるのか?』

『その可能性は大いにあり得ますね。それに先ほどから周辺で多少の魔力の反応がいくつか―――その考えが妥当でしょう』

 

 ……いくらなんでも考え過ぎじゃないか?

 まあでも疑うの仕方ないか。……何せ、ここには悪魔がいるんだからな。

 俺は赤龍帝だから、この三年間は出来る限り正体がバレないように生活しないといけないな。

 なんでも三大勢力ってのは人間にもっとも干渉しているらしいからな。

 ―――そんなことを考えている時だった。

 

「あれ? こんなところで何をしているんだい?」

 

 ……妙に優しい口調の声で、誰かが俺に話しかけてきた。

 俺は声をかけられた方を見ると、そこには金髪で優しげな表情を浮かべた、駒王学園の制服を着ている男子生徒の姿があった。

 

「ああ、気にしないでくれ……自分の方向音痴具合に涙しているところなんだ」

「はは……察するに、道に迷ったんだね?」

「察しなくてもそうだよ……まさか学校で迷子になるなんてな」

「まあ気を落とすことはないよ。この学校、広いからね」

 

 爽やか風の男子生徒が苦笑しながら俺を宥めている。

 ……ああ、なるほど―――俺はなんとなく、経験的なものでこいつの正体が分かった気がした。

 上手く隠しているし、ほとんど感じないが……微かに異物の香りがこいつからする。

 確信はないが……このタイミングでそんな奴に出会ったってことは、あながちドライグの考察も間違いではないかもな。

 

「じゃあこうしよう。僕が君の教室まで案内しよう。……名前を聞いてもいいかな?」

「……兵藤一誠、今日からこの学校に入る新入生だ」

「兵藤……なるほど、君が部長の言っていた面白そうな子かな?」

 

 すると男子生徒は、ニコリと笑ってくる。

 

「お前、もう部活に入っているのか? っていうか何で俺の名前を知っているんだ?」

「君は有名だよ? ああ、僕はオカルト研究部に所属しているんだ。部長っていうのはその部の部長……リアス・グレモリー先輩のことだよ」

「へ~……それで?」

 

 俺は有名っていうところを聞きなおした。

 

「ああ、そうだね。……君は身体能力試験でほぼ満点の出したそうじゃないか。しかも記録を全て塗り替える勢いで。しかも部長から聞いた話では、筆記試験は満点、面接も文句がつけようもなかったらしいからね」

 

 ……当然、前の記憶と知識があるから勉強については全く問題ない。

 しかも幼稚園の時とか小学校のときも高校のほうの勉強してたからな。

 たぶん、大学受験も勉強しなくても大丈夫だ。

 

「さて、じゃあ僕は君を教室まで案内することにするよ」

「……そう言えばまだお前の名前を聞いていなかったな?」

 

 すると男子生徒はハッとしたように俺を見てきた。

 さては忘れていたのか、こいつは。

 

「そう言えば僕はまだ名乗っていなかったね。……僕は木場祐斗。君と同じで新入生だよ?」

 

 ……これが木場祐斗との出会いだった。

 俺はこれから一年、こいつを観察することになるとは木場祐斗自身、思いもよらないだろうな。

 

「……………………」

 

 当然、この時の俺は、俺のことをじっと見つめる少女など知る由もなく、そしてそれから1年の平和な月日が経ったのだった。




これが5話ですが・・・原作にはなかった自分のオリジナルな解釈で一誠の駒王学園入学を書かしてもらいました。


この間の空白の数年間を埋める回想なんかをしたかったんです!


あとすんごい眠気の状態で書いてましたから、誤字脱字とかがあるかもしれませんから、恐らく改善するはずです(苦笑)


そして木場君登場。


一誠とは既に1年のころに知り合っていたということにしています。


さて、では次の話から本格的に本編開始!


ようやくヒロインズと一誠を絡ませることが!?




そしてミリーシェの存在が希薄となってきましたが、彼女とオルフェルくんの過去なんかはもう出来てるんですよね~


個人としてはそこを書きたいんですけど、まだ早いから当分あとになりそう(涙)


おそらく、忘れたころに彼女は出てくると思います(^ 。^)


では今回はこの辺で、ではまたです!

―追記―
7/5 誤字修正&描写を大幅に加筆しました!

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