ハイスクールD×D ~優しいドラゴンと最高の赤龍帝~   作:マッハでゴーだ!

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番外編5 剣に誓いと願いを

 夏休みも終盤を迎えた8月25日の昼頃。

 俺、兵藤一誠は列車に乗っていた。

 俺の前の席には制服ではなく、かなり気合の入った服装をしている祐斗の姿、隣にはいつも通り清楚で可愛いワンピースを着るアーシア。

 祐斗は開いている窓から来る風で髪を靡かせながらクールでいて、アーシアは俺の肩に頭をコツンと乗せながら眠っている。

 ……俺たちがなぜ列車に乗っているかと言えば、それは少し前に遡る。

 堕天使コカビエルが学園を襲撃してきた際に発覚した聖剣計画の被験者……祐斗以外の他の計画の生き残りと会うために俺たちは遠い北欧に向かっているんだ。

 アーシアが何故この場にいると言えば……俺たちが冥界から帰って来た時にディオドラ・アスタロトに求婚され、それを即答で断ったのは良かったんだけど……それからあのフラれ悪魔は諦めてないのか、アーシアに無駄にプレゼントやデートのお誘いの手紙などを送ってくるんだ。

 それに嫌気のさした部長が俺と祐斗の数日かけた旅行にアーシアを同行させることにしたっていうのが実際のところだ。

 アーシアは言葉には出してなかったけど、かなり迷惑そうな感じになってたし、ストレスも溜まってたからな……それの気分転換って意味もある。

 俺がいない間はグレイフィアさんが兵藤家に居てくれるって言ってたし、まあ大丈夫だろう。

 ちなみにこの旅行、実は他の皆も来たがってたんだけど……まあそれぞれに事情があって来れなかったんだ。

 部長はこの前のソーナ会長とのゲームにおいてのことが雑誌に載るとのことで、その手の企業から依頼を受けて朱乃さんと共にモデルの仕事が入る。

 ゼノヴィアはまず宿題が一切終わっていない。

 ギャスパーはそもそもこんなところに来れるはずもない……だってまだまだ引きこもり気味だからな。

 小猫ちゃんは……まあ黒歌と絆を深めるべく今は家で色々と話すことになっており、当の黒歌も駒王学園の転入に関して色々と手続きがあるため来れない。

 ……っとまあこんな感じだ。

 オーフィスは今回は何故か遠慮したんだよ……噂ではティアと色々することがあるってことをチビドラゴンズから聞いたけど……まあいいか。

 とにかく、俺たちはそういうわけで北欧の田舎に向かっており、今はその最寄りまで列車で向かっているわけだ。

 長旅で少し疲れたアーシアは今も少し寝息を漏らしつつ寝ている……うん、なんか久しぶりに癒されるな。

 それにしても綺麗な髪だよな……っと、アーシアに見惚れてる場合じゃない。

 

「ははは、よく寝てるね。アーシアさん」

「お前は思った以上に落ち着いているんだな、祐斗」

「……まあ、ね。僕からしたら彼らは永遠に会えないと思っていた同志だからね……現実味がないんだ」

 

 祐斗は少し苦笑いをした。

 聖剣計画……聖剣の適合者を創るために始められた非人道的な計画で、その結果は大失敗。

 が、計画の責任者であったバルパー・ガリレイが被験者の子供のわずかにあった聖剣の因子を抜き取り、その後その被験者全員を口封じのために殺そうとした最悪の計画。

 それが聖剣計画であり、祐斗もその被害者の一人で生き残りの一人だ。

 とはいえ、祐斗は一度死んでいる。

 部長に命を救われたとはいえ、一度命を失って悪魔に転生したそうだからな……つまり、聖剣計画においての本当の生き残りは俺たちが今から会いに行くあいつらだ。

 

「……教えてくれないか?僕は断片的なことを君から聞いただけで、全てを知っているわけじゃないんだ。僕は知らないといけないと思う……ううん、知りたいんだ」

「…………あんまり、気持ちの良い話じゃない。正直言えば、あのことは俺の心に結構深く残ってんだ……それでも聞きたいなら、俺は話すよ」

 

 俺は一度深呼吸をして、目を瞑る。

 あの日のことを思い出すように記憶の断片を思い出していき、そして一息をついて話し始めた…………

 

 ―・・・

 当時、俺がまだ子供だった頃の話。

 俺は父さんの転勤……今になって知ったことだけど、ガルブルト・マモンと黒歌の一件で海外で2年間過ごしていた時の話だ。

 当時、俺は外国のある地域に暮らしており、俺の家族はある日、北欧の方に旅行を2週間ほどすることになった。

 そこはすごい自然の多い場所で、当然、当時から修行に明け暮れていた俺はその旅行先でも色々と遊んでいるという嘘を付いて修行をしていた。

 そんなある日、俺は少し離れたところにあった大きな森で修行をしようと思った。

 当時はフェルの神器に慣れることを第一に考えてたんだ……丁度、フェルの―――神創始龍の具現武跡(クリティッド・フォースギア)に目覚めた付近でもあったしな。

 自分の知らない土地で、しかも人気の少ないところは神器の修行には持って来いだったから、俺は喜んで森で修行をした。

 ……修行をしたのは良かったけど、俺はそこであることに気が付いたんだ。

 ―――森の中にポツンと存在する、一つの大きな施設。

 余りにもその施設は不自然すぎた。

 それを見つけたその日、俺は嫌な予感がしたから少しだけその施設を調べようと思った。

 そこで俺が見たもの、それが…………ガスに苦しむ子供たちだった。

 中にはガスマスクをつけた大人が何人もいて……俺はそこでそのガスが毒ガスと言うことに気が付いた。

 俺は既に神器に目覚めていた上に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)に関しては既に使いこなすレベルになってたから、大人が多数いても問題はなかった。

 俺は大人を全員血祭りにあげ、すぐさま苦しむ子供のところに行った。

 

「はぁ、はぁ…………きみは、だぁ、れ?」

 

 ……息は絶え絶えだった。

 嫌な汗をかいていて、支えた体は体重が乗ってすごく重かった。

 すぐに施設を換気して毒ガスは消えた……けど、毒は個人差はあれど、それぞれに回り始めていた。

 

「ちょっと待ってろ!!絶対に俺が助けるから!!」

 

 毒消しの神器……今になれば簡単に創れるものだったけど、力を得たばかりの俺はそれを創るのもかなり力が必要だった。

 ブーステッド・ギアとの併用で最短で創れても一つで数分……間に合うはずもなかった。

 …………毒は死に至らしめるまで時間を要する。

 つまり人によれば毒が回り始めても時間によれば助かる可能性があった。

 だからこそ……俺は決断するしかなかった。

 迷う時間すらなかった。

 俺の迷いが命を摘むことになることを理解して、ただ一心不乱に神器を創れば誰かを治す、創っては誰かを治す。

 確実に助かる人を率先して助け、でも…………間に合うわけなかった。

 そこには二十人近い子供がいたんだ。

 それを助けることは俺の力では無理だった。

 …………俺の神器は使えば使うほど精神を疲弊させる。

 俺は精神をすり減らしながら、助けることが出来る子供だけを助けたんだ。

 もう助からない子供は見捨てて…………そして少ししたら俺の体に限界が走るに決まっていた。

 結果的に俺が助けれた子供はほんの3人だった。

 それ以外はもう毒が回り、既に手遅れの状態……呼吸もままならず、俺は救えなかったことにその場で謝り続けた。

 

「ごめんッ!!助けることが出来なくて…………俺に、もっと……もっと力があればッ!!君たちを助けることが、出来たのにッ!!!」

 

 俺は体中から嫌な汗を掻きながら謝り続けた。

 神器の酷使で頭痛がしてたけど、それでも構わず謝り続けた。

 その中には息絶えた子供だっていた。

 なんの罪もないのに、ただ大人の欲望のために命を失ったのに……そしたら、一人の横たわる男の子が俺の手を握ってきた。

 眼も虚ろで、手は震えていて……温もりもなく。

 

「君は、僕、たちを救ってくれた……例え、僕たち、が死んでも……助けて、くれたのは……君だけだ……」

「違うッ!!助けられてなんてない!!こうして君たちが死ぬところを見るしか出来ないんだッ!!」

 

 その男の子は笑顔でただ俺に礼を言ってきた。

 これから死ぬのに、もう助からないのに。

 それは男の子だけではなかった。

 そこに倒れる、他のまだ意識のある子供たちは俺に笑顔を向けていた。

 何も出来ない俺に……救えない俺に。

 

「あり、がとう…………君が、来てくれたから……それだけ、で……救、われたよ……」

 

 ……一人ずつ力をなくして倒れていった。

 俺はそれを……その子たちの手を握って、そのかすかに残る温もりを確かめることしか出来なかった。

 一人倒れては俺に礼を言い、また一人が倒れる。

 礼なんて言われてはいけないのに、それでも子供は俺に笑顔を向けた。

 助けられない、それなのに助かった。

 わけがわからなかったよ。

 今から死ぬことを理解しているのに、それが怖くないように……ただ嬉しそうに、ただ優しそうな表情で……

 恨みもあったはずなのに、それでもそれを俺をぶつけずに……ただ”ありがとう”……そう言い続けた。

 

「君が、救った……僕、達の仲間を……守って、あげて…………それが僕たちの、たった一つ……一つの……お願い……」

「ああ、絶対に守るッ!!この命を引き換えにしても、絶対に守るからッ!!」

 

 その中で一番大きかった男の子の言葉に俺は何度も頷いた。

 この命を引き換えにしても守る……そんな軽いセリフに、その男の子は笑顔で応えてくれた。

 それがあまりにも俺の心に刻まれたよ。

 あんなに綺麗な笑顔を見たことがないから。

 今から死にゆくのに、助かった子供の心配ばかりするような優しい男の子だった。

 …………その男の子も次第に息を引き取る。

 そして…………もう、生きている子供はいなくなったんだ。

 俺の傍にいる助けることが出来た、たったの3人だけが生きている状態。

 そして倒れる子供たちは皆……安らかな表情だった。

 俺はそれを見て、自分の不甲斐なさのあまり拳が赤く染まるまで地面を殴り続けた。

 何度も、何度も……泣き叫んで、懺悔して……そしてもう生きていない子供たちを置いて……

 助けた3人を神器を使って何とか安全なところまで移動させた。

 ……俺の中では今でもあの時の事が鮮明に思い出せるよ。

 俺が救うことの出来なかった人、俺の無力さ。

 それを思い知ったからこそ、俺は今歩いて行けるんだ。

 もう二度と、あんなことにならないためにも。

 誰かを失わないためにも。

 それが俺が強くなりたい理由、強くある理由。

 それが……俺が大切な存在を守りたい理由なんだ。

 

 ―・・・

『Side:木場祐斗』

 僕、木場祐斗は列車の中でイッセー君の話した聖剣計画の話を聞いて、不意に口元を抑えてしまった。

 ……涙を堪えることが出来なかった。

 イッセー君の話は後悔の想いが重く伝わってきた。

 イッセー君は話している最中、不意に涙をこぼした。

 …………僕たちは、彼に何て重荷を背負わせてしまったんだろう。

 僕の同志を救ってくれた。

 それなのに、今なおイッセー君は涙を流すほどの悲しみ、後悔を背負っていたんだ。

 誰も恨んでいない……それが彼の心にあの時の後悔が残り続ける理由なんだろう。

 

「……っとまあ、俺の話はこれぐらいだ」

 

 イッセー君はいつも通りの表情で話を終わらせる。

 

「……イッセー君は、僕たちを救ってくれた……同志を……たとえ少ししか救えなかったとしても……君は僕たちの心を救ってくれたんだ」

「……心、か……そうだったら良いな。だけどさ……俺にもっと力があれば……救えた命もあったんだ」

「……僕は仲間に逃がされて生き延びた。そして死にかけだったところを部長に悪魔にしてもらい、命を繋いだ……僕も同じだよ。力がなかったから何も救えなかった……僕は救ってもらってばっかだよ」

 

 僕は涙を拭い、イッセー君に笑顔を向けた。

 

「だから僕は君のように強くなる。君の、眷属の剣となって皆を守りたいんだ」

「はは……守るのは俺の役目だ。剣の役目は―――眷属の敵を倒すこと。お前が剣となり、敵を倒せ。俺はその間は絶対に仲間を護るから」

「君は剣と盾を兼ね備えてるけどね?」

 

 僕は少し意地悪っぽく言うと、イッセー君は笑ってくれた。

 ……君にはそんな悲しそうな表情は似合わないよ。

 この前だって、君はその性質で、小猫ちゃんや黒歌さんを救った。

 きっとイッセー君はこれからも様々な人を救うだろう。

 その度に様々な人に好意を向けられ、そして振り回される。

 ……これはもうイッセー君の運命かもしれないね。

 イッセー君は誰かに好かれる性質だ……好かれるほどのことをしているから当然だろうし、僕だってイッセー君が好きだ。

 彼のためならば命だって賭けることも出来る。

 

「うぅぅ……イッセーさんがそんなことを思っていたなんてッ……!」

 

 ……するとイッセー君の肩に頭をコツンとあてて眠っていたアーシアさんがいつの間にか起きていて、イッセー君の方を涙目で上目づかいで見ていた。

 たぶんさっきの話を聞いていたんだね。

 アーシアさんはイッセー君の手をギュッと握って、ちょっと涙をこぼしている。

 

「あ、アーシア?お、起きていたんだな?」

「はい……イッセーさん、私はイッセーさんに救われました!!イッセーさんの事が大好きですからッ!!」

 

 ……アーシアさんは一度、死にかけた。

 そのことを思い出して、そして救ってくれたイッセー君に対して自分の想いを素直にぶつけている。

 

「はは……アーシアは大げさだな。よしよし、涙は止めような?」

 

 するとイッセー君は慈愛に満ちた表情でアーシアさんの頭を撫でる……それでアーシアさんはとろけたような表情になるけど……そういえば、イッセー君ってアーシアさんには特別に優しくしているような気がする。

 小猫ちゃんは飼い猫として可愛がられていたから、まあ可愛がられる理由としては分かるんだけど……アーシアさんは出会ってまだ数か月しか経ってない。

 それなのに、イッセー君の周りの他の魅力的な人達より丁寧に接している……なにか思うところがあるのかな?

 意外とイッセー君に最も近いのはアーシアさんなのかもしれないね。

 この前だってディオドラ・アスタロトの求婚を即答で断ったし……あの時は哀れと言うべきか、ちょっと無謀さに残念さを感じたけど。

 性格が悪い言い方をすれば、少し笑うのを我慢していた。

 ……確かにディオドラ・アスタロトは容姿は整っているとは思う。

 優しそうな雰囲気はしている……けど、相手が悪すぎるね。

 イッセー君は男の僕から見ても相当なほどに魅力的な人だ。

 彼の凄いところは、僕とは違い男子からも人気があるところ。

 ……僕は何故か目の敵にされているんだけど、イッセー君には女の子だけでなく男の子さえも惹かれてしまうんだ。

 何故か仲良くしたいと思ってしまう……彼の美徳だね。

 誰にも分け隔てなく接して、自分からは勘違いされるような態度はとらない。

 ……いや、実質には勘違いされるような態度は取っているんだけど、アフターフォローがうまいんだ。

 ―――とにかく、そんなイッセー君がアーシアさんには特別な接し方をしている。

 ……眷属の中で、イッセー君に普段から撫でられたり、あそこまで接触されているのはアーシアさんくらいだ。

 他の皆は大体自分からイッセー君の方に行って、そこから甘えてイッセー君もそれに応える。

 そんな感じだけど、比較的にイッセー君はアーシアさんに自分から近づいている。

 ……ちょっとだけ、アーシアさんが羨ましいね。

 

「そう言えばイッセー君。お母様はよく三人だけの旅行なんて許してくれたね?」

「…………それ、聞いちゃう?」

 

 するとイッセー君は引き攣った表情になってそう言ってくる……不味いね、地雷を踏んだのかもしれない。

 

「大変だったんだ……前に長期的に家を空けたせいで母さん、帰ってきたらめちゃくちゃ構ってちゃんになってて……父さんからも気を付けろって連絡が来て……」

 

 ……イッセー君がぶつぶつと何かを言い始める。

 ちなみにアーシアさんは聖母のような微笑みで沈むイッセー君の頭を撫でてる。

 

「……結論から言えば、昨日は母さんと満足するまでショッピングさせられて荷物持ちさせられたよ。それ以外にも……くそ、あの店員何がカップルだよ、目が悪いのか?確かに母さんは見た目は学生レベルだけど、もう…………」

「……アーシアさん、もうイッセー君を止めてあげて。このままじゃあ彼は壊れるよ」

「は、はいッ!!イッセーさん!膝枕してあげます!!」

 

 するとアーシアさんは膝を少し払うと、手の平で膝元をパンパンとたたく。

 

「とほほ……悪いな、アーシア…………ちょっとだけ、膝を借りるよ……あ、頭は撫でてて……」

 

 するとイッセー君は素直にアーシアさんの膝を枕にして横になる……何故だろう、このイッセー君を見ていると保護欲が湧く。

 ……赤龍帝ドライグや創造の龍、フェルウェルさんがイッセー君を子供のように接する理由が分かった気がするよ。

 

「ふふ……イッセーさんは甘えん坊さんです♪」

「嬉しそうだね、アーシアさん」

 

 甘えられて嬉しそうにイッセー君の頭を撫でるアーシアさん……イッセー君って中々誰かに甘えることがないから、これもアーシアさんに限定されることだね。

 最近ではイッセー君の周りの女の子たちが暴走して色々と振り回されていたからかな?

 この旅行中くらいはアーシアさんに癒されてもらいたいね。

 ……するとアーシアさんは僕の方をじっと見ていた。

 

「……木場さんは、イッセーさんのこと、好きですか?」

「好きだよ?」

 

 ……あ、つい即答してしまった。

 するとアーシアさんはちょっと心配そうな表情で……

 

「……えっと、もしもの話ですよ?その……イッセーさんに告白をされたら……どうします?」

「……………………あはは、それは男の僕にする質問じゃないね」

 

 僕は笑ってごまかすものの、アーシアさんはまだ僕の方を見ている。

 ……なぜだろう、顔が熱い。

 

「……木場さん、お顔が赤いです……うぅぅ……やっぱり、木場さんもライバルなんですかぁ?」

「ごめんね?男の好きと女の好きを同じにしたらダメだよ?…………でも、もし僕が女の子だったら…………たぶんアーシアさんに負けないくらいアタックしていたと思うよ」

 

 ……まあ嘘は言っていないよ。

 僕が女の子だったら、絶対にイッセー君に惚れているだろう……それは間違いない。

 少しだけ、ギャスパー君が羨ましいよね。

 ギャスパー君は両性だから、男としても女としても生きられる。

 性質的には限りなく女の子に近いけど……最近はイッセー君に影響されて男らしい行動も増えてきたしね。

 この前のゲームではゼノヴィアを庇って僕たちの勝利に貢献した……あのゲームでの眷属の中での評価の順番は一番はほぼ同じで部長とイッセー君、その後にギャスパー君が来るくらいだ。

 彼の評価もこの前のゲームでかなり上がったと思う。

 僕は天界の方々から絶賛されていたらしい……たぶん、エクスカリバー・フェイクを創りだしたことが一番の評価点だろう。

 ……っと言ってはいるものの、前回のゲームでの僕たちの評価は全体的に良い。

 低評価はないとアザゼル先生は言っていたからね。

 ただ一つだけ心配することがあるとすれば…………この前の放送は、冥界全土に放送されたものだった。

 そんな舞台で最高の戦いを魅せたイッセー君……これによりイッセー君はまた有名になっただろうね……彼は知らないと思うけど、実はゲームの特番でイッセー君のことを取り上げていたくらいだし。

 ちなみにこれをイッセー君が知らないのは……アザゼル先生が教えたら余計にイッセー君に負担が掛かる(精神的に)と言われたからなんだ。

 ……っとそうしている時、列車にアナウンスが入った。

 

「うぅん…………アーシアの膝は柔らかなぁ……」

「ふふふ……イッセーさんならいつでも大歓迎ですよ?いつでも膝枕します!!」

 

 ……そんなこといざ知らず、二人の世界に入っている。

 これ、もう夫婦の域だよね?本当に部長たちがいなくて良かったよ。

 僕は出発する前に朱乃さんと部長や、他の皆から……

 

『祐斗、アーシアとイッセーをあまり近づけてはダメよ?』

『アーシアちゃんは危険ですわ……祐斗くん?見張りは任せましたよ?』

『……もしイッセー先輩に変なにおいがしたら……許しません』

『あ、あうぅぅ……祐斗先輩、頑張ってください!!』

『木場、ホントは私も行きたい!しかし私は(以後省略)』

 

 ……って具合に釘を刺されたからね。

 ちなみにゼノヴィアの言ったことは途中からかなりヤバい内容だった。

 ホント、ゼノヴィアは日に日にイッセー君に対する気持ちがねじ曲がってきている気がするよ。

 ―――ともかく、イッセー君をまともな状態にしないとこのまま延々にアーシアさんとラブラブして居続けそうだから、僕はイッセー君を通常の状態に戻すことにした。

 

『Side out:祐斗』

 ―・・・

 ……列車を降りて1時間。

 俺はフェルとドライグの案内の元、目的地の小さな村に向かっていた。

 何で俺が案内しないかって?

 そんなの簡単…………中々町から出る機会がなかったから良かったが、俺は極度の方向音痴に成り下がっているのだ。

 冥界でもタンニーンのじいちゃんがいなかったら普通に帰ることすらできなかっただろう……そのレベルだ。

 というわけで、俺は二人に案内を任せ、今は歩いている。

 列車で付近まで行ってもそこから距離がかなりあるからな……歩いていくのはかなりかかる。

 まず駅周辺で人はほとんどいない無人駅だし、ここから歩いて何時間もかかるはずだ。

 ……俺が赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)になって移動すればすぐに到着するんだけど……仮に人に見られたら面倒だからな。

 まあのんびり歩くことにした。

 歩くことは別に嫌いじゃない。

 昔は3年も歩きながら世界中を修行の旅をしていたくらいだからな……まああと数時間か歩けば目的地だ。

 アーシアも体力はついてきたし……いざとなれば俺がおんぶすればいい。

 祐斗は限界が来ても歩かせるけど……まあ悪魔は身体能力面でかなり高い数値を出すからな。

 特に問題はないはずだ。

 

「日本には始業式に間に合えばいいか?……そう言えばアーシアと祐斗は宿題は終わってるのか?」

「私はもう終わらせました……その、早めにやってイッセーさんと遊ぼうかなって……」

「僕はこういう事態を考えてすぐに終わらせたんだけど……そう言えばイッセー君は?」

 

 すると祐斗は俺にそんなことを聞いてきた。

 

「貰った日に全部終わらした。あれ、結局計算やら漢字やら覚えて書けばいいだけだからなぁ……そんなに多くなかったし」

 

 ……英語に関しては英文読むだけで理解できるからな。

 とにかく、宿題はさっさと終わらせた。

 どうせ合宿になってしまえば絶対に出来ないって分かってたしな。

 そんな風に会話をしながら歩くこと更に数時間。

 突如、俺の籠手と胸から宝玉が現れた。

 

『相棒、そろそろ到着だ』

『徒歩での移動、お疲れ様です、主様』

 

 もうそろそろ目的地に到着するそうだ。

 そうしていると俺たち三人の目の前に小さな村が現れる。

 北欧の田舎……そう言えばこの前は北欧の主神、オーディンとあったな……凄まじいほどのエロ爺だったが。

 あの時、少し気になることを言っていたけど……あとでおばあちゃんに聞いてみるか。

 

「さて、じゃあそろそろ―――」

『イッセェェェェェェェェェェ!!!!!!』

 

 ―――っと、その時、俺の名を力いっぱい呼ぶ元気な男女の声が響いた。

 俺たちの眼前の村より数人の俺よりも少し小さい年下の男女が3人ほど、俺たちの方に向かって全速力で走ってきている。

 それを見た祐斗は少し震えた。

 

「お久しぶり、イッセーお兄ちゃん!!元気だった!?」

「そうだぜ、イッセーの兄貴!!偶には顔を見せろよな!!」

「もう……この子たちはイッセーの顔を見ると騒がしいんだから……イッセー、お久しぶりです」

 

 その子たち……俺があの時、助けた3人の子供たちだ。

 エルー、ジーク、セファ……エルーとジークは背が低く、年は二人とも同じで13歳、セファは俺より一つ年下の15歳だ。

 この中ではセファがお姉さん……ふわっとした綿のような色素の抜けた白色の髪で、ニコニコしている女の子。

 セファの妹と弟的存在であり、髪を短く切りそろえた活発そうな見た目の女の子のエルー、頬に絆創膏を付けているヤンチャな少年がジークだ。

 それぞれ俺に引っ付いて久しぶりの再会に喜んでくれている……のは良いけど、少しはしゃぎ過ぎだな。

 本当に話させたい奴は俺の隣の……すると祐斗は手に持っていた荷物を地面に落として、膝をついた。

 

「本当に……生きて、いたんだね…………皆ッ!!」

「―――え?」

 

 ……すると、祐斗の姿を初めて視界に入れたセファが、その崩れる姿を見て目を見開く。

 俺の傍にいるエルーのジークも同様だった。

 そこで少し静寂が生まれ、そして…………

 

「貴方は、あの時の……あの時、逃げてくれた――――――レイル?」

 

 ……恐らく、それは祐斗が『木場祐斗』になる前の名前。

 その名前をセファが言った瞬間、祐斗は顔をすっと上げて、そして……

 

「そうだよ。でも今の僕の名前はあの計画で与えられた名前じゃない―――木場祐斗だよ、皆ッ!!」

「…………生きて、いたんだね……本当に、生きてッ!!」

 

 するとセファ、ジーク、エルーは祐斗の傍に駆け寄った。

 …………数年もの間、互いに死んだと思っていたはずだ。

 それが今になって出会えた―――祐斗が仲間が生きていることを知ったとき、心から泣いたように、俺が救った三人も、涙をあふれさせる。

 その光景を見ていたアーシアは涙を流し、俺も少し視線を外した。

 ―――俺は、今もなおあの時の事が胸に深く残っている。

 救えなかった数十人もの子供たち、そしてその最後の笑顔。

 …………俺も、救われた気がした。

 笑顔で抱き合い、涙を流し合う4人を見ていると、俺も救われた気がした。

 俺とアーシアはそっと4人から離れ、そして遠目でその姿を見る。

 

「…………イッセーさんの顔から憂いがなくなりました」

「……アーシアはよく見てるな。うん…………あの4人を見ていたらさ……少しだけ救われた気がした。俺の持ってた後悔、救うことの出来なかった他の子供たちへの想い……それが少しだけだけど……」

 

 そう思うと目頭が少し熱くなり、アーシアから顔を背けようとすると、アーシアは何も言わず俺の手を握った。

 俺はアーシアの方を見ると、アーシアは何も言わず笑顔を向けてくれる。

 

「泣きたいときは泣けばいいんです―――って、イッセーさんの受け売りですけど……神の不在を知ったとき、イッセーさんが自分で私やイリナさん、ゼノヴィアさんに言ったことですよ?」

「はは……アーシアには……敵わないな―――ちょっとだけ、このまま手を握ってもらえるか?」

「……はいッ!」

 

 …………俺はしばらくの間、再会を果たした4人を見ながら、泣き続けたのだった。

 

 ―・・・

 ……俺とアーシアは再会を果たした4人を水入らずにするため、先に村に入って目的のある家に向かっている。

 それは4人を引き取って貰った人の家で、元々は母さんの知り合いだ。

 とても優しく、色々なことを知っているおばあちゃん……俺とアーシアはそのおばあちゃんことリヴァイセさんを目の前にしてソファーに腰かけていた。

 

「久しぶりねぇ、イッセー君と…………恋人かね?」

「あ、アーシア・アルジェントと申しますッ!!この度はイッセーさんと一緒にこのような場にお招きいただき……は!!イッセーさん、どうしましょう!!別にお招きいただいていません!!」

「ほほほ……楽しい子だねぇ……」

 

 するとリヴァイセさんは笑みを浮かべつつアーシアの傍に来て、そのまま頭を撫でた。

 

「おや、この雰囲気…………なるほど、君は聖女のアーシアちゃんか」

「……し、知っているんですか?」

 

 アーシアは真実を言われて、少し表情が固まる……アーシアはディオドラ・アスタロトの命を救って「魔女」なんて言われたからな。

 そのことを気にしているんだろうけど……

 

「ああ、知っているとも……君は優しい子だ。教会も馬鹿だねぇ……悪魔をも救ってしまう優しい力を捨てるなんてねぇ……アーシアちゃん、この婆さんは色々と物知りだから、気構えることはないよ……ほら、頭を撫でてあげよう」

「あ…………ふふ、ありがとうございます」

 

 するとアーシアは安心しきった表情でリヴァイセさんに頭を撫でられる。

 うんうん、このおばあちゃんは世論のことは気にせず、その人の本質を見抜くからな……俺も頭の上がらない人だ。

 しかもリヴァイセさんは三大勢力のこと、聖剣計画のこと、悪魔やらそれらと言った人間では踏み込まない部分まで知っている人だからな。

 だからこそ、俺はこの人にあの3人をあずけることが出来たんだ。

 ちなみに俺の誰かの頭を撫でる癖はこのおばあちゃんからうつった……リヴァイセさんに頭を撫でられたらすごい安心して、心が温かくなるからな。

 

「な、撫で方がイッセーさんとそっくりです……」

「ほぅ……君は目が良い。イッセー君を好きになるのは正解だよ?」

 

 するとリヴァイセさんは俺の目を見てきた。

 

「ほうほう……ようやく聖剣計画のことから救われたのぉ……ばあちゃんは安心だよ」

「……相変わらず、ナチュラルに人の心を読みますね…………」

「イッセー君は私の孫のようなものだよ……時にアーシアちゃん、実際のところ、イッセー君の恋人なのかね?」

 

 するとリヴァイセさんは少し悪戯な表情でアーシアにそう尋ねた。

 リヴァイセさんは色恋沙汰が意外と好きなお茶目なおばあちゃんだからな……

 

「あ、あうぅぅ……そ、その……イッセーさんが望むなら、すぐにでも……いえ、でも……あうぅぅぅ!!!」

「可愛いのぉ、可愛いのぉ……娘に欲しいくらいだのぉ……」

 

 ……あぁ、アーシアの純真な心がリヴァイセさんの弄り対象になったか。

 おばあちゃんは意外と弄ることが好きだからな。

 

「……イッセー君も色々あったようだねぇ……久しぶりに見たら、色々と強いオーラを含ませているのぉ……」

「そういうことを聞くってことは、俺が悪魔だってことは知っているんですか?」

「知っているとも、知っているとも……冥界でも有名になっているそうだねぇ……神々も君を噂しているだろうねぇ……」

 

 ……やはりこのおばあちゃんは伊達じゃないな。

 聞いた話では昔は戦乙女(ヴァルキリー)なんてしていたらしいし……当時、最強のヴァルキリーだったとか違うとか……

 

「……イッセー君は昔よりも更に黒い部分が払拭されてきたみたいで良かったよ……ただ、やはりまだ完全ではないみたいだねぇ……」

「……黒い、部分?」

 

 するとアーシアはその言葉に反応する。

 

「……イッセー君はのぉ、様々なものを救う子じゃ……この年でそこまでのものを背負う者などおらん……それを平気で背負ってしまうのでな、そりゃあ心にも黒い影が出てくるのぉ……それをしっかりと見なければ、この子を理解することなど出来んよ」

「イッセーさんを理解する…………」

 

 するとアーシアは俺を見てきた。

 ……これはアーシアが頑固な時の表情だな。

 全く―――リヴァイセさんには本当に敵わないな。

 

「こらこら、アーシアちゃん……そういうのは聞くことで解決することじゃない。イッセー君を見て、支える。そうした信頼感を得て、そして知るべきじゃよ……ただ、既に信頼関係は出来ているようだけどのぉ……」

「は、はい……イッセーさん!」

「は、はい!!」

 

 俺はアーシアに名前を呼ばれてつい大声で応える。

 

「私は、イッセーさんのことをあまりよく知りません……だから、もっとイッセーさんを知りたいです!!」

「………………はぁ、このアーシアは頑固だから、言っても引き下がらないか」

 

 俺は半分諦めたように溜息を吐いた。

 

「いつか……俺がもっと強くなったらさ……アーシアには本当のことを言うよ。俺の抱く問題も、リヴァイセさんの言う闇ってものも……だからそれまで待ってくれるか?」

「…………はい。イッセーさんがそういう時は決まって頑固って知ってますからッ!」

 

 するとアーシアはやり返すようにそう言った……ったく、アーシアは。

 そうすると、その時、家の扉が開く音がした。

 

「祐斗たちが帰ってくるのはまだ早いと思うけど……」

「あぁ……確か今日はロスヴァイセちゃんが来るって言ってたねぇ……」

 

 ……その名を聞いて、俺は不意に数日前のオーディンとの出会いを思い出す。

 あ、そうだ―――ロスヴァイセって言うヴァルキリーのことを聞くんだった。

 そう思った時、不意に部屋の扉が開かれた。

 

「おばあちゃん!もうこの前は大変だったよぉぉ!!オーディン様にはまた嫌味言われるし、ようやく会えると思ったあの子とも結局会えずじまい――――――……………………え?」

 

 ……何やらスーツのようなものを着飾った女の人が、俺の顔を見て持っていた小さなカバンを床に落とす。

 

「ロスヴァイセちゃん、よう来たのぉ……この子がイッセーちゃんじゃ。直接会うのは初めてかのぉ?」

 

 するとリヴァイセさんは俺の方に手招きし、俺を紹介してくれた。

 ……ってやっぱりロスヴァイセってリヴァイセさんの孫だったのか!!

 道理で名前やら髪の色まで似ている訳だよ!

 

「初めまして、兵藤一誠です。この前、オーディン……様とお会いした時はいなかったけど……あの、鼻血は大丈夫でしたか?」

「は、は」

 

 ……するとロスヴァイセさんは口元をワナワナとしながら俺の方に指を向けてくる。

 その指先ですら震えてるな……ってかなんでこの人、鼻血で倒れたんだろう。

 

「は、初めまして、ロスヴァイセって言います!!特技は北欧式魔術で節約、料理も得意でいつでもお嫁さんに行ける所存です!!仕事も安定したヴァルキリーをしていて腕も中々と自負しています!!身長は173cmで上から96-61-86です!!子供はしっかりと生計を立ててからいっぱい作るつもりです!!!末永くどうかよろしくお願いします!!我が勇者、兵藤一誠君!!!!!」

 

 ――――――はい?

 なんか一気に自己紹介……って言うか、言ってはいけない情報まで言って極め付けに何やら勇者とか言っているし……ってか子供って何だよ!

 なんか横でアーシアの笑顔が少し怖くなっているし……っと思っていると、アーシアは隣で俺の腕と自分の腕を絡めた。

 

「こらこら、ロスヴァイセちゃん。あんまり暴走するでないよ」

「―――はッ!!私はいったい何を……っていうかおばあちゃん!!年々言葉の訛りがなくなってるんだけど!?」

「若い者に囲まれているからのぉ……ほほほ」

 

 ……うん、このおばあちゃんの孫だ、このロスヴァイセさんは。

 この祖母あっての孫って感じだな。

 おばあちゃんの話で聞いていた通り、色々と騒がしいヒトだなぁ……あ、ヴァルキリーか。

 そう言えばリヴァイセさんと出会ったころは訛りが凄くて会話にすらならなかったな……うん、そう考えればすごい訛りが治ってる。

 

「この子は可愛い孫のロスヴァイセちゃんじゃ……以前話したことがあるじゃろう?」

「まあ話には聞いてたけど……」

 

 俺は顔を真っ赤にしてあたふたしているロスヴァイセさんを見る……なんか、そこはかとなく残念さを醸し出しているけど……まあ綺麗な人だな。

 リヴァイセさんと同じで銀髪で、可愛いと言うよりかは美人寄りの人だ。

 

「……にしてもあいつらも遅いな……祐斗と色々話し込んでるのかな?」

 

 俺はそう思いつつ、外を窓から見た。

 久しぶりに再会した生き別れた仲間。

 話すこともたくさんあるだろう……あいつらにはゆっくりと話してもらいたい。

 …………仲間、だからな。

 

 ―・・・

『Side:木場祐斗』

 僕は久しぶりに会えた同志たち……セファ、ジーク、エル―とたくさんのことを話した。

 あれから僕がどうなったかを、そして三人がイッセー君に助けられてからのことを聞いた。

 三人はイッセー君の知り合いのリヴァイセというおばあさんに預けられ、今はそこで生活しているようだった。

 そして今、ジークとエル―は泣き疲れたのかセファの膝元で眠っている……あれから1時間くらい話し続けていたからね。

 

「……セファは髪の毛が白くなったんだね。いや、銀髪?」

「ううん。白髪だよ……毒の後遺症で色素が抜けちゃって……それでも命はあるから良い方だよ」

 

 セファは少し微笑んで応えてくれる。

 ……彼女は僕を一番最初に逃がしてくれた女の子だ。

 彼女の行動で他の皆が僕を逃がすためにガスマスクの男たちを止めてくれた……僕に「あなただけでも生きて!」と言ってくれた女の子だった。

 あの時は髪の毛は茶色だったけどね。

 

「…………僕を、責めないのかい?僕は君たちの命を踏んでいって生き延びた……ううん、悪魔に成り果ててまで生きて伸びたんだ」

「知ってるよ……悪魔、か」

 

 するとセファは膝元で眠るジークとエルーの頭を撫でながら、座り込んでいる木々を背もたれにしながら空を見上げた。

 

「……イッセーも、悪魔なんでしょ?」

「……ああ。彼は誰かを守るために体を張って、そして死んで悪魔になったよ」

「そっか……イッセーは相変わらず、誰かを守るために戦っているんだね」

 

 ……セファは少し寂しそうな表情だった。

 

「…………イッセーはいつでも誰かを守るために戦う。そして誰かのために泣ける人……たとえ悪魔でも、そんなの私たちには関係ないよ」

「………………そうだね。イッセー君は、そういう男だよ。誰かのために戦える、涙する。そんな男だからこそ、僕は憧れるし、それに…………超えたいと思う」

 

 ……兵藤一誠という男は大きい。

 余りにも大きく、遠く離れた存在だ。

 そんな男に体一つで向かい合った匙君はすごいよね……真正面から何度も殴られて、倒されてはまた起き上る。

 そんなこと、たぶん僕は無理だ。

 

「……僕は、エクスカリバーを壊した」

「エクスカリバー……あの計画の発端となったあれを壊せたんだ…………すごいね……祐斗」

「すごくないさ……あれはイッセー君がいてくれたから、僕は立ち上がれた。あの剣に応えるために、僕は皆の想いをこの身に宿した」

 

 僕はそう呟き、手元に意識を集中し、そして―――一本の聖魔剣を創った。

 あの時、僕が初めて創った聖魔剣。

 無念の思いで死んでいった、でも僕に復讐を願わなかった優しい同志たちと僕が創りだした一本の剣で、エクスカリバーを超えた剣。

 

「……聖魔剣。聖と魔が融合した、僕たちの力だ」

「聖魔剣……触っても、良いかな?」

「―――それは君たちにあげるよ」

 

 僕はその剣をセファに渡した。

 今の僕に持てる全ての力を具現化させて創った最高の聖魔剣。

 僕の魔力と聖剣の因子をつぎ込んだ剣だ。

 

「……あの計画の全容は知っているのかい?」

「うん。おばあちゃんに教えてもらったから…………私たちの因子を抜くこと、それがあいつらの目的だったんでしょう?」

「ああ。そして僕の中には……僕たちから抜いた皆の因子が流れている」

 

 僕は胸に手を当てて、セファにそう言った。

 

「少し前、エクスカリバーを超えた時に僕はこの剣に誓った。僕は仲間を守る剣になる、ってね……だからこそ、僕は君たちの剣になりたい」

「…………守る対象は狭くしないと守り切れないかもしれないよ?」

「僕の目指す男は……そんなこと絶対にしないからね。だから君たちだって守りたい。僕の大切な同志……友達を守りたいんだ」

 

 僕はセファにそう言うと、彼女は少し微笑みを漏らしていた。

 

「そっか。祐斗は強くなったね…………私、ね。イッセーのことが好きなんだ」

 

 するとセファは少し昔を思い出すように話し始める。

 

「でも私が好きなのは彼の強さじゃない…………弱さ、なんだよ」

「……イッセー君の弱さ?」

「そう……私たちを救ってくれたイッセーは本当に、すぐにでも倒れそうなほどに感情が黒く染まってたんだ……救いたかったのに、私たち以外救えなかった……それがイッセーの重荷になって…………私たちに毎日お見舞いに来てくれたけど、毎回のように泣きそうな顔で、たまに泣いてた……」

 

 ……イッセー君は今でもあのことを後悔していたくらいだ。

 例えイッセー君が凄くても、当時はまだ彼は子供……子供に背負えるものではない。

 

「そんなイッセーを見るとさ……どうにかしてイッセーに笑ってほしかった……だから色々と話したよ……もう、私には何も残ってなかった……だからイッセーに縋ったんだ。彼の弱さをどうにかしたい、彼を守りたい…………そうしているうちに、いつの日かイッセーのことしか考えれなくなってた」

「……僕も、立場が同じだったらそうなったかもしれないさ……」

「…………歪んでるよ、私は。だって、イッセーに向けている想いは恋とかそんな可愛いものじゃないもの……イッセーの弱さが見たい、そんな彼を支えたい……私はイッセーを独占したいんだ。もう、誰も触れないくらいに……そして、そんな風な自分が嫌いだから、私は彼の傍で過ごさずにここにいるの」

 

 ……確かに、セファの想いは歪んでいるかもしれない。

 でも、好きという気持ちには嘘はないはずだ。

 

「……確かに、イッセー君は僕の目から見ても魅力的な子たちに囲まれてるよ。だけどイッセー君の弱さをその人たちは知らない。だからイッセー君の弱さを知る君の方が……彼に近いかもしれないよ」

「断定はしてくれないんだ……」

「出来ないよ……だって、今日、一緒に来たアーシアさんがイッセー君の強さも弱さも知っているからね……強敵だよ、アーシアさんは」

 

 僕がそう言うと、セファは再び微笑んだ。

 何かに吹っ切れたような表情で、僕の方をじっと見た。

 

「ありがと、祐斗…………昔はレイルって呼んでたけど、でも祐斗の方が何故かしっくりくるよね」

「主様に頂いた名前だからね……うん。僕は木場祐斗だよ。レイルじゃない……あの名は捨てた」

 

 そして僕はそのまま立ち上がる。

 ……僕が今日、ここに来たのは一つの決断をするためでもある。

 僕の過去を断ち切るため、もっと前に進むために僕は一度、しなければならない。

 ―――そう

 

「僕は本当の意味でレイルという僕を捨てるために、新しい一歩を進むために―――イッセー君に勝負を挑むよ」

 

 僕は、初めてイッセー君に本気の勝負を挑むんだ。

 

 ―・・・

 僕は3人に案内されて、リヴァイセさんというおばあさんの住む家に行き、そしてそこにいるイッセー君に事の全てを話し、リヴァイセさんに挨拶や雑談などをし、そして今は夕方……

 僕とイッセー君は果し合いのため、今はリヴァイセさんの家の大きな庭で対峙していた。

 

「祐斗、お前が俺と本気の勝負をしたいって言ってきた時は驚いた…………だけどその目を見れば納得だ―――何かを振り切り、新しい一歩を踏み出す男の顔をしてるな」

「……そうだね。匙君が君に挑み、そして前に進み始めた…………僕も、そろそろ前に進まないといけないんだ」

 

 僕はそう言うと、手を前に出し、言霊を言う。

 

「聖と魔、二つの聖魔によって形を成す」

 

 思い浮かべろ。

 僕の願いを、誓いを……僕の同志が望んだ聖剣を……そして僕だけが出来る形として。

 そして形を成すんだ―――僕たちの、僕たちだけのエクスカリバーを!!

 

「ソード・バース―――エクスカリバー・フェイク!!!」

 

 僕の手元にはその瞬間、黒と白の混ざり合う波動を放つ聖魔剣エクスカリバー・フェイクを創り出し、それをイッセー君に向けた。

 

「武器は剣。ルールは簡単に相手に一撃入れるか、それを寸止めする。一撃喰らえば終わりってことで良いかな?」

「ああ」

「……剣だけなのは僕に対するハンデって思って欲しい―――剣と剣を交えよう」

「分かってるよ、祐斗…………それでも俺は、勝つ」

 

 するとイッセー君は籠手を展開し、そこから聖剣アスカロンを解き放つッ!!

 即座に籠手を消してイッセー君はアスカロンを握って一振りすると、その瞬間、僕の方に衝撃が来た……

 持ち主が違えば、アスカロンはゼノヴィアの聖剣デュランダル以上の波動を放つんだね。

 全く……凄いよ、イッセー君は。

 

「……オーバーヒートモード、起動」

 

 ……イッセー君は大量の魔力を自らの内部に放つ。

 あれは以前のゲームで使った、神器なしで最上級悪魔と戦うための技。

 自らの体内に消化不良になるほどの魔力を流し込み、一時的に脳のリミッターを外し、身体能力をオーバーブーストするように限界を超える力。

 ……本気だね、イッセー君は。

 ―――この試合、ほんのわずかな時間で終わるだろう。

 それでも、僕は挑まなければならない。

 

「行くよ、イッセー君―――偽・天閃(フェイク・ラピッドリィ)!!!」

 

 僕は言霊を言ってエクスカリバー・フェイクの天閃の力を解き放ち、『騎士』の速度を増大させて一瞬でイッセー君に近づく。

 その瞬間、もう片手にもう一本の聖魔剣を創り出し、双剣による光速剣戟を開始する。

 僕は出来るだけ速く動くことを理念に置き、彼に僕の速度を見極められないように動くッ!!

 

「―――唸れ、アスカロン。龍を活かせ」

 

 ―――その時、アスカロンは突如光に包まれ、その光はまるで龍のような形となる。

 それは蛇のごとく僕の方に向かって来て、僕はエクスカリバー・フェイクでそれを切り裂くが……

 

「背中が留守になってんぞ、祐斗ッ!!!」

「くッ!!」

 

 イッセー君は僕をも超える速度で僕の背後に近づき、そのままアスカロンを振りかざすッ!!

 僕は先ほど創った聖魔剣で防御しようとするも……

 ガシャンッ!!!!

 ……その金属音と共に聖魔剣は一瞬で破壊された。

 僕は一端距離を取ろうとするも、イッセー君はそれをさせない。

 

「ソード・バース!!」

 

 僕は短剣型の聖魔剣を幾つか創り出し、それをイッセー君に投剣する……だけどイッセー君はそれを全てアスカロンの斬撃で無力化し、不規則な動きで僕を攪乱するッ!!

 凄いね、イッセー君は……もうアスカロンを使いこなし始めている。

 しかも神器なしで僕の速度を超えている―――ああ、分かっていたことだよ。

 だからこそ僕は彼に挑んだ。

 どれだけ遠くにいる存在か理解し……前に進むために。

 だからこそ、僕はイッセー君に僕の魂の剣を届かせなければならない!!

 

「聖と魔、二つの聖魔によって形を成す!ソード・バース!!」

 

 僕は再び言霊を発した。

 ……二本目のエクスカリバー・フェイク。

 本当なら出来るかどうかも分からない―――だけど、彼はいつもこれくらいのことを平気でやってのける。

 なら僕にも出来るはずだ―――この戦いを見てくれている僕の友達のためにも!!

 

「イッセー君の真似にしか過ぎないかもしれない―――だけど、それでも君に届くなら、喜んでするよ」

 

 ……僕の手元に光る二本のエクスカリバー・フェイク。

 それをギュッと握り、そして僕は動き出す!

 どの力を使うべきだろうか。

 ―――イッセー君には幻術は効かない。

 破壊の力は通用しない。

 透明なんて目くらましで、擬態なんて何の意味もなさない。

 ならば―――僕の本質を上げればいい!!

 

偽・双天閃(フェイク・ツイン・ラピッドリィ)!!!」

 

 僕は二本のエクスカリバー・フェイクで速度を二重に上昇させるッ!!

 肉体に対する影響はあり得ないレベルだ……たぶん。イッセー君が普段から自分に課している負担はこのレベルなんだろう。

 僕は神速でイッセー君の背後に近づき、そのままイッセー君に剣を振り下げるッ!!

 

「―――よくやったな、祐斗…………だけど、全部見切った」

 

 ……イッセー君はまるで見切っていたようにこちらを見ずに振り返る動作でアスカロンを振り切り、同時に僕の二本のエクスカリバー・フェイクを薙ぎ払うッ!!

 余りにも強い力で僕は剣を手放し、反動でその場に尻餅をつく。

 ……二本の剣は別々の方向にある地面に突き刺さり、そして僕は首元にアスカロンを突きつけられた。

 そうか―――――――僕の、負けだ。

 

「僕の負けだ―――ありがとう、イッセー君。いつか、絶対に倒すよ」

「その時は返り討ちだ―――最後の速度、俺も見失った……ただの予想だよ、馬鹿」

 

 ―――これで僕は前に進める。

 イッセー君は僕に手を差し伸べた。

 ……僕はそれに頼らず、自分の足で立ってからイッセー君の手を握る。

 

「君と僕は対等だ。喧嘩したんだからね……これからもよろしく頼むよ―――イッセー」

「そうか……分かったよ。祐斗」

 

 …………僕は改めて誓う。

 僕は剣になる。

 仲間を守ることを誓い、みんなが笑顔でいられることを願う。

 それを心に刻み、これから僕は聖と魔、二つの混ざったところに新たに加えよう。

 それが僕の創る剣。

 ――――――誓いと願いの剣だ。

『Side out:祐斗』

 

 ―・・・

 ……俺と祐斗が一騎打ちをしてからのこと。

 俺は本当の意味で祐斗と親友となり、そしてリヴァイセさんの家で数日だけお世話になった。

 今ではアーシアも祐斗もセファ、ジーク、エルーと仲良しだ。

 俺はジークとエルーと一緒のベッドで寝たり、セファとアーシアとで出かけたり、祐斗と色々話したり……皆で遊んだりして数日間を全力で楽しんだ。

 セファもジークもエルーもアーシアも祐斗も……皆ずっと笑顔だった。

 初日以外はロスヴァイセさんは仕事で帰っちゃったけど、色々と世間話をして少し仲良くなれた。

 楽しい時間はあっという間に過ぎて、そして―――

 

「リヴァイセさん、本当にありがとうございました」

「いいよ、いいよ……私も楽しかったからねぇ……」

 

 するとリヴァイセさんは俺達に手招きをするから、俺達はリヴァイセさんに近づくと…………リヴァイセさんは俺達の頭を撫でてきた。

 

「またいつでもおいで……イッセー君もアーシアちゃんも祐斗君も、私の可愛い孫だからのぉ……」

「……はい!僕も……また来ます!!」

「リヴァイセさん!!色々と教えてくれてありがとうございました!!私もリヴァイセさんのことが大好きです!!」

 

 ……アーシアはリヴァイセさんに涙ながらにそう言うと、リヴァイセさんはアーシアを抱きしめる……リヴァイセさん、アーシアのことをかなり気に入ったんだな。

 するとジークとエルーがトコトコと歩いてきて……

 

「うわぁぁぁぁん!!!兄貴、ホントに帰っちゃうのか!?俺、もっと兄貴と遊びたいよ!!もうこっちに住もうぜ!!?」

「うぅ、ぐすっ……お兄ちゃんが帰るの、やだよぉ……」

 

 ……ああ、この二人は可愛いな。

 凄い号泣しているジークとエルーの頭を撫でて、俺は抱きしめた。

 

「同じ地球に生きてんだぜ?またすぐに会えるよ―――だからまた会おう」

「……分かったよ……絶対だかんな!!!じゃあまたな!!ユートもアーシアもまた来いよな!!」

「手紙書くからね!!イッセーお兄ちゃん!!祐斗さんもアーシアさんもまたね!!」

 

 そう言うと、二人は涙を見せたくないからかそのまま家の中に入って行った。

 ……前にも増して懐くようになったな。

 

『相棒、恐らく相棒の兄貴的オーラが以前とは比べ物にならんからだろう……』

『下手をすれば革命を起こせる兄貴肌です―――凄まじい』

 

 …………その真剣なトーンで言うのを止めてもらえるでしょうか!?

 っと、次はセファが俺の前に立った。

 

「あの子たちは大げさだけど、私も結構寂しいな……三人が帰っちゃうの」

「……いつでも会えるよ。あいつらにも言ったけどさ」

「うん…………祐斗、色々とありがとう―――あなたのおかげで、私も前に進めるよ」

 

 するとセファは祐斗に笑顔を見せ、そのままアーシアの前に立った。

 

「アーシア。私とあなたはライバルよ?私だってずっと前から彼のことが好きなんだからね?」

「わ、私だって負けません!!背もおっぱいも小さいですけど……でも一緒に居れる時間はもっと長いです!!」

「ふふ……じゃあ、またね?アーシア」

 

 するとセファはアーシアに手を差出し、アーシアもそれに応えるように握り返した。

 

「はい!また会いましょう!セファさん!」

 

 ……そしてセファはアーシアから離れ、そして俺の前に再び立つ。

 

「……ってことだから、イッセー。私、本気になっちゃったから覚悟してよ?魔法電話を毎日するからそのつもりで」

「はいはい……ってセファ、魔法出来るのか!?」

「まあ、おばあちゃんに教わってね?」

 

 新事実に驚きつつも、俺とアーシア、祐斗は荷物を持って家を離れ始める。

 

「じゃあな!!また会おうな!!」

「いつかまた会おうね!!セファ、ジーク、エルー!!」

「みなさん!!お元気でいてくださいね!!」

 

 俺たちはずっと手を振り続けてくれる皆に背を向け、歩き始める。

 少し経って後ろを見るとまだ手を振っていた…………また、絶対に来るからな!

 俺はそう思っていると、突然、祐斗は俺の方を見てきた。

 

「……ありがとう、イッセー君。僕は君のおかげで先に進めるよ」

「別にイッセーで良いのに……」

「いや、僕はこの方がしっくりくるし…………アーシアさん、少し良いかな?」

 

 すると祐斗は歩きながら、アーシアに声をかけ、当のアーシアは少し不思議そうな顔をしていた。

 

「あの時は否定したけど、僕も本気になってしまったよ―――想いに、男も女も存在しないよ。だから僕もライバルだね?」

「「―――――――――え?」」

 

 ……その言葉を聞いてアーシアは表情が固まる。

 俺も固まる。

 俺の背筋にあり得ないほど冷たいものが感じた。

 なんだ……何なんだ、祐斗のその熱烈な視線は!!!!

 

「さぁ、帰ろうか!あ、イッセー君。新学期が始まったら僕がお弁当を作るよ!僕はこう見えても料理が得意でね?」

「ちょ、待て!祐斗ォォォォ!!さっきの発言は何だ!?ってかナチュラルに腕を組もうとするなぁぁぁぁ!!!!」

「ま、待ってください!イッセーさぁぁぁぁん!!!!」

 

 俺とアーシアは共に朝日に向かい走り出す…………俺はこの旅行でとんでもないものを目覚めさせたのかもしれない。

 俺は涙ながらに、逃げるように走りアーシアはそれに続く。

 それに『騎士』の力で追いつく祐斗…………

 

「なんで最後はこうなるんだぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」

「い、イッセーさんは男となんかダメですぅぅぅぅぅぅ!!!!」

「あはははは!!風が気持ちいいね、イッセー君、アーシアさん!!」

 

 ……北欧の田舎で、俺とアーシアの絶叫と、祐斗の爽やかな声が響くのだった。


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