ハイスクールD×D ~優しいドラゴンと最高の赤龍帝~   作:マッハでゴーだ!

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第3話 潜むドラゴンと未だ赤ん坊です

『……あい、ぼ……う! ―――相棒!!』

 

 ……ッ!?

 俺は意識の奥底から俺に叫びかけてくるドライグの声で目を覚ました。

 ……そうか。

 俺は昔の……いや、前の人生のことを夢で見ていて、そして一番見たくない場面を見る前に目が覚めたのか。

 それに俺の名前も、夢の中なら思い出していたはずなのに、今はもう覚えていなかった。

 

『相棒の心が嫌なほどに乱れていたからな。夢の途中だったが、俺が強引に覚ましたんだ』

 

 ドライグが起こしてくれたのか……いや、むしろ感謝したい。

 あのままあの夢を見てたら、きっと俺は抑えきれなくなっていたから。

 たぶん現実で泣いてたんじゃないか?あのままだったらさ……

 

『むしろ負の感情から神器(セイクリッド・ギア)が発動したかもしれないさ……。だが今の状態で神器が発動したら、相棒は10秒で死んでしまうからな』

 

 ……ああ、ドライグの言うとおりだ。

 生まれたばかりの赤ん坊の体で、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の倍増の力に耐えられるはずもないからな。

 それこそ最初の一段階目の倍増で体が引き裂かれる。

 

『そうだな。赤ん坊で立つこともままならないのだ―――ちょうどいい、暇つぶしといっては何だが、相棒のこの体の性能について教えておこうか』

 

 体の性能か……。そういう言い回しをするってことは、俺は前とはまた違った体の性能をしているってことだよな?

 ……ならちょうどいい。

 自分の体のことを知れば、何をすればどれだけ強くなれるのか一目瞭然だ。

 前も俺はドライグに自分の体の価値を教えて貰いながら修業したからな!

 

『……いや、まあこれは確定事項なんだが。現在の時点で分かる限り、相棒の肉体性能はかなりの高レベルの数値を叩きだしている』

 

 …………俺は思わず絶句した。

 それは本当なのか、ドライグ?

 

『ああ。歴代の赤龍帝では稀に見ないほどの将来性に期待できる肉体、骨格だ。これは俺の仮定だが、前のように相棒が体を鍛えたら、今までにない力を発揮できるだろう』

 

 ……つまりがむしゃらに突っ走れってことか!

 そういうのならいくらでもやってやる!

 努力は身に結ばれることは誰よりも知っているからな!

 

『相棒、落ち着け。……まだ朗報はある』

 

 ……まだ何かあるのか?

 

『ああ。……これに関しては俺も正直、驚いているのだがな』

 

 それでドライグ、一体何が朗報なんだ?

 お前がもったいつけるんだから、相当のことなんだろう?

 

『相棒。相棒の転生前の自分の魔力に関して、理解しているか?』

 

 もちろん、ドライグから何度も言われたことだからな。

 本来、人間にも個人差はあるけど魔力が存在しているにも関わらず、俺の中には残りかすぐらいしか残ってなかったってやつか?

 あれを聞いた時はさすがにショックで未だに覚えているけど……

 

『まあそう沈むな……それにこれを聞けば相棒はそんなショックは消えさる』

 

 消えさる?

 それってもしかして……

 

『察したか? そうだ。相棒の中には人間としては考えられないほどの魔力を保有している……ということだ』

 

 ……ッ!?

 俺のこの……兵藤一誠の体に?

 

『ああ。もちろん、悪魔や天使、堕天使からしたらちょっと目立つだけであろうが……だが相棒が魔力を持つのと持たないのでは、話が変わる』

 

 そう言うとドライグは興奮しているのか、何故か得意げな声音で話し続ける。

 

『魔力が皆無な相棒は、しかしそれでも歴代の中でも遜色のない強さの赤龍帝になれた……つまりは才能のない相棒は努力だけで強くなったんだ。当然、最強とは言えない。だが最高の赤龍帝になれたのだ』

 

 そりゃあ、努力しなけりゃ強くなれなかったしな……

 それにミリーシェと強くなるって約束したんだから、当たり前だよ。

 

『そう。……相棒の素晴らしい所はそれだ。常人ならば、相棒が自分に課していた修行は半日も持たない。死と隣り合わせの毎日だったからな』

 

 ああ……俺も何度、死を覚悟したか覚えてないよ。

 

『しかし相棒はそれを乗り越えた。相棒の持ち前の根性と向上心に加え、以前とは比べ物にならないほどの魔力……才能を踏まえた相棒は、きっとなれる』

 

 なれる?

 

『ああ。最強でそして……真に最高の赤龍帝に。そして赤と白の運命を変えられる。そう俺は信じているさ』

 

 …………ドライグ。

 ああ、そうだな。

 新しく生まれ変わったからには、前に出来なかったことをするさ――ドライグとアルビオンの戦いを、赤と白の運命を次こそはどうにかしてみせる!

 ……俺がそうしないと、行けないんだ。

 

『期待している……だが当分の間は相棒の成長を待つしか他はないな』

 

 それだよな……せめて6歳までには数回の倍増に耐えれる体は出来るようにしないとな。

 それと禁手(バランス・ブレイカー)

 あれはどうにかしてまた至らないと……

 

『そのことだが相棒……相棒が自分の体を捨てるというのならば今すぐにでも禁手化出来るぞ?』

 

 ……は!?

 それはどういうことだ、ドライグ!

 

『どうもこうも、相棒は昔の記憶があるだろう?つまり赤龍帝としての経験が存在しているんだ・・・それと何故かはわからないが、神器の方もリセットされていない』

 

 リセット?

 

『ああ。神器所有者が死んだら本来、リセットされて他の人間の元で転生する。これは神滅具(ロンギヌス)に限った話ではなく、全ての神器がだ』

 

 つまり本来、赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)の中の俺のデーターは一度、リセットされるはずだったのに、何故かまだ保存されていたってことか?

 

『分かりやすく言えばそうだ。……つまり相棒はやろうと思えば、禁手も使えるし、神器を介した魔力弾も放てるし――――――覇龍(ジャガーノート・ドライブ)も使用は可能だ』

 

 ……覇龍(ジャガーノート・ドライブ)か。

 ブーステッド・ギアに眠るドラゴンの力を半強制的発動させ、命を削って一時的に神を超える力を手に入れる、最凶の力。

 しかも神器の中に眠る歴代赤龍帝の”負”の魂によって、時に意識をしていなくても発動させてしまう、忌まわしき禁じ手。

 

『言っておくが相棒、覇龍はもう(・ ・)使ってはいけない……何があってもだ』

 

 分かってるよ……そんなこと、誰よりも。

 俺はあれのせい(・ ・ ・ ・ ・)で死んだのだからな(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 ―――とにかく満足に動けるようになってから倍加と禁手化に耐えれる体を作るさ。

 

『……ああ、是非そうしてくれ。覇龍は神をも超えるが、代わりに人を失ってしまう。人の成りをしたドラゴンといったところだ。あんなもの、力とは言わないさ』

 

 ……多分、ドライグがここまで覇龍を敬遠するのは認めていないからだろうな。

 ドライグ曰く、覇龍は本来の二天龍の力ではないらしい。むしろ負の感情が積み重なってできた呪いの力とドライグは昔、俺に語った。

 だから嫌悪しているんだろうな。

 

『それに相棒には覇龍なんてものは必要ない……相棒には、これまでの赤龍帝にはなかった無限の可能性があるはずだ』

 

 無限の可能性か……。どれくらい届くかはわからないけど、でもに出来る限りの高みまで登れるように頑張るとするよ。

 俺は心の中でそうドライグに意気込み、笑いかけた―――その時だった。

 

『―――ふふ……なるほど、これがわたくしの最初にして最後の主様ですか』

 

 ―――――――!!?

 なんだ、今の声は……っ!

 ドライグの威厳のある声じゃない!

 むしろ優しい、だけど神々しいような女性の声だ。

 でも何でだ……何でドライグと同じように俺の心の奥から声がしたんだ!?

 

『そう怖がらないでください。―――そしてはじめまして。我が主、兵藤一誠。……そして赤龍帝のドライグ』

『……貴様は何者だ。なぜ俺と同じように相棒の中から声をかけることが出来る』

『それはドライグ、大体のことは察しているのではありませんか?』

 

 するとドライグは図星を突かれたように黙る。

 どういうことだよ! 何で俺にドライグと同じような存在が!?

 

『ふふ……。それはまだ話すには早いでしょう。ですがこれだけは覚えておいてください、我が主様』

 

 すると突然、まばゆい光が俺の意識を覆う。

 そして俺はまるで精神世界に飛ばされたような感覚に陥って、そして目を開けると、俺は転生前の体のまま、何もない無の空間にいた。

 

『ここは何なんだ!?いったい……』

『―――それは貴方に姿を一度、見せようと思ったからです』

 

 俺は後ろからかけられる声に耳を傾け、そしてそのままそちらに目を向けた。

 ……その時、俺は思わず声を失う。

 こんなにも……ここまで美しい存在を俺は知らない。

 そこには一匹のドラゴンがいた。

 しかし俺の知っているドラゴンとは別の、まるで一つ一つの羽に宝石が詰っているのではないか錯覚してしまうほどの綺麗な翼、クリスタルのように光る鱗、そして何より、圧倒的に感じる威圧感。

 俺はあの女の声の主がこのドラゴンということを何となく理解した。

 

『そう言えば、まだお名乗りしていませんでしたね。……わたくしの名はフェルウェル―――神創の始龍(ゴッドネス・クリエイティブ・ドラゴン)フェルウェルと申します』

 

 ドラゴンから発せられるその声は、目の前の威圧感を送るドラゴンからは考えられないほどの優しい声だ。

 

『ほう……大よその想像はついていたが、本当に相棒の中に俺以外の存在がいるとはな』

 

 すると俺の後方から聞きなれた声……紅蓮の鱗に幾重もの傷がある威厳としながらも誇り高き最強の二天龍の片翼、ドライグの姿があった。

 俺も初めてその姿を見るが、どちらも凄まじい威圧感を送るドラゴンだ。

 

『赤い龍の帝王、ドライグ。……わたくしの知っている貴方は、もっと乱暴なドラゴンだったのですが』

『悪いが、今代の相棒が素晴らしいのでな。……乱暴でいられるほど暇ではない』

『素晴らしいという点では同意しましょう。そのような性質がなければ、そもそもわたくしはこの場にはいませんし、姿を現すこともなかったでしょう』

 

 そう呟くと、眩く輝くドラゴン、フェルウェルは翼を羽ばたかせて飛翔した。

 

『兵藤一誠。聞きたいことは山ほどあるでしょう。ですが、これだけは信じてください―――わたくしはあなたの敵ではなく、相棒だと』

『どういうことだよ!?』

『……貴方がわたくしを使えるようになれば、わたくしを真に望むときが来れば―――わたくしは貴方とドライグの前に再び姿を見せます。……それまでに強くなってください。身も、そして何より心を』

 

 その声と共にフェルウェルは飛び去っていき、そして空間が消えて俺は視界が真っ白になった。

 

―・・・

 ……気がつくと、俺は意識が飛ばされる前と同じベビーベットの上で眠っていた。

 

『相棒、俺にもあのドラゴン……。神創の始龍(ゴッドネス・クリエイティブ・ドラゴン)、フェルウェルが何者かは分からない。だがとりあえずは敵ではない。それは確かだろう』

 

 ……そんなことは俺も分かっているさ。

 だから多分、あいつが言ったことは本当なんだろう。……俺が強くなって、フェルウェルを望む時まであいつは俺たちの前には姿を現さない。

 あとは自分の体を使えるようになったら、か……。

 

『相棒、おそらくだがあのドラゴンは俺と同じく、神器に魂を封印されたドラゴンだろう』

 

 つまり、俺の中には赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)の他にまだ神器があるってことか……。

 ったく、転生だけでも驚いてるのに、昔とは比べ物にならないほどの才能に、正体不明の神器ときたか。

 っていうかそもそも神器は一人一つまでっていう習わしがあるんじゃないのか?

 色々、あり過ぎて頭が追いつかないけどとりあえずは……

 ―――早く、乳離れしたいなぁ……。

 

『…………。それはそれでどうかと思うぞ、相棒』

 

 ドライグにそうツッコまれるのだった。

 だけどこれだけは言わせてもらいたいよ―――これは割と切実なことだってことを。

 ……そうして俺は真新しい日常を謳歌していく。




ここではオリジナルドラゴンについてですね。


神創の始龍(ゴッドネス・クリエイティブ・ドラゴン)フェルウェル

これはオリジナルドラゴンにして無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)オーフィスや真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)グレートレッドと並ぶドラゴンという設定です。


一応、女性ドラゴンで非常に温厚な性格をしているドラゴンです。


ちなみにドライグですら、その存在を知らないのは彼女が歴史から抹消されたドラゴンということです。


それでは最後に覇龍について。


多少、覇龍の解釈を変えている、というか原作を改変しているので、そのあたりはご容赦ください。


第4話は一誠、幼少期編です!


・・・なかなか原作の本編にまで行かないぁ

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