ハイスクールD×D ~優しいドラゴンと最高の赤龍帝~   作:マッハでゴーだ!

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第8話 決戦!イッセーVSコカビエル

 俺の魔力の弾丸が、決戦の狼煙のようにコカビエルに放つ。

 コカビエルは俺の魔力弾の力を察したのか、そのままギリギリのところで避けやがった。

 あらぬ方向に放たれる魔力弾に対し、俺は言霊を一つ言い放つ。

 

「霧散しろ」

 

 俺は結界に影響を与えないために避けられた魔力弾を霧散させる……魔力の使い方は修行してるからな。

 これくらいは出来なきゃ恥ずかしいレベルだ。

 ……するとコカビエルは俺の方を見て、何かに驚愕していた。

 

「……バランス・ブレイカーだと? しかも今の魔力、篭手の力でなくお前自身の力!」

「ああ、そうだ。俺は既に禁手に至っていて、そしてコカビエル―――俺はお前を拳で潰す」

「…………ならば受けてみろ! その体で堕天使である俺の力を!!」

 

 コカビエルは手を宙へあげて、バカでかい光の槍を創りやがる……こいつ、学校を壊す気かよ!

 でもさせねえ!

 手の平に魔力を集中し、更に俺は鎧の力を発現させた。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!』

 

 力が一気に倍増する!

 あの槍を相殺するほどの力だ……いくぜ!

 俺は全ての倍増した力を魔力弾にして、更に新たに性質を加える!

 

爆撃の龍砲(エクスプロウド・ドラゴンキャノン)

 

 魔力を出来る限り収縮させて、一瞬の爆発力を高め、破壊力を極めた魔力弾だ……俺はそれを撃ち放った。

 同時にコカビエルも極大な光の槍を撃ち放つ……だけど俺は直後、動き出す!

 今は二つのエネルギーが互いに相殺しあってるけど、あれは単なる目くらまし!

 まあ目くらましのレベルの魔力弾ではないから。

 あいつは光の槍に力を送り続けているからか、その場から動けなくなっていた。

 

「ドライグ! アクセルモードだ!」

『応! だがあれは負担が激しいから気をつけろよ、相棒!』

 

 ドライグの注意を聞いて、俺は発動する。

 ライザー戦の時、俺の加速したいという想いから生まれた赤龍帝の新しい力。

 背中にある噴射口はその大きさを更に大きくし、俺の鎧は密集した密度から風を通すような隙間が生まれ、篭手は鋭さを増す。

 

『Accel Booster Start Up!!!!』

 

 ―――アクセルモード、始動の音声が鳴り響いて俺は拳を握り、姿勢を低くした。

 ブーストの音声が聞こえなくなるほどに俺の力の倍増速度は加速する!

 転生前にはなかった神器の新しい力!

 ライザ―との一戦で発現した力、行かせてもらうぜ!!

 俺は魔力弾を相殺していて動けないコカビエルの懐につくと、高まり続ける倍増の力の一部を拳に集中させた!

 

「なにぃ!?貴様は何故ここに!」

「吹っ飛べ!」

 

 俺はコカビエルの顔面に全力の拳をめり込ませて、コカビエルをそのまま地面へと叩きつける!

 コカビエルはそのままなすすべなしに地面へと降下していき、そのままグラウンドに大穴が出来た。

 ってやり過ぎた!

 部長達は……

 

『大丈夫です』

 

 フェルがそう言う……俺はひとまず、俺は地上の皆のすぐそばに降りた。

 流石にある程度の被害が部長達を襲うかもしれないからな。

 

「い、イッセー……」

「部長に皆も、戦闘の被害が行くかもしれませんから全力で防御に徹してください。ここからは俺も余裕はないので」

 

 皆は頷くと、俺はグラウンドに出来た大穴に向かって一瞬で移動する。

 

「空中戦は終わりだぜ? 今からは地上戦だ…………覚悟しろよ、コカビエル」

「……ふはははは! お前はいい……いいぞ、赤龍帝!!」

 

 コカビエルは突然、大穴から飛び出て俺の方に低飛行の高速度で襲い来る!

 手には二つの光の剣……剣で来るなら!

 

『Transfer!!!』

 

 俺は胸にある創造の神器に一瞬で倍増の力を送る!

 神器を少し創り過ぎたから精神的にやばいけど、まだ少しくらいなら創れる!

 創造力が足りないから、倍増の力で創造力の質を上げ、俺は同じ神器を同時に二つ作る!

 創造力を二分して、同じものを創るってのは最近成功した新しい力だ!

 

『Creation!!!』

 

 その音声と共にブローチから二つの光が俺の両手に漂い、そして形をそのまま刀の形の変えた!

 

白銀の龍刀(シルヴァニック・スレイサー)! ついでに二刀流!!」

 

 俺は白銀の長刀に倍増の力を乗せ、そしてそのままコカビエルの光の剣と打ち合う!

 

「なんだ、それは!? 貴様、まだ神器を持っているのか!?」

「ああ、そうだよ! この剣は俺が創りだした創造神器、ドラゴンの力に反応して、その能力を変化する神器だ!!」

 

 俺は二つの一本で光の剣ごと力技で押し切り、コカビエルに一瞬の隙をつくる!

 そしてそのまま刀でコカビエルの腹部を軽く一閃した。

 

「ぐっ……まだだ!」

 

 コカビエルは負けじと俺に剣を振るうが、俺はそれを紙一重、当たるか当らないかの瀬戸際で避け、大ぶりをしたせいで隙だらけになったコカビエルの腹部へと全力の回し蹴りをくらわして、後方に吹き飛ばす!

 

「がぁ……貴様、一体何者だ!」

 

 コカビエルは吹き飛ばされながらも寸前のところで状態を維持する……しぶとい奴だ。

 だけどこいつは戦えないほどじゃない……むしろ俺は戦えている。

 それだけ俺だけ今までしてきたことが、無駄じゃなかったって証明になる。

 

「俺は兵藤一誠。リアス・グレモリーの『兵士』だ! ついでに子供ドラゴンの兄貴をしているけどな」

「……笑えないな。貴様ほどの男が、自分より格下の主に従うなど」

「格下とか格上とか、正直俺はどうだっていい……自分が一緒にいたい仲間と楽しく一緒にいる、それだけだ!」

 

 俺はグランド中に響く位の声量でコカビエルにそう言った。

 その言葉による決意と共に俺の中の魔力、またはそれ以前の「力」が湧き出るような気がした。

 

「―――ッ! 貴様の重圧が更に上がった…………だが、どういうことだ―――貴様はあまりにも戦い慣れし過ぎている。それが気になって仕方ない!」

 

 ……コカビエルは本気となったようだな。

 10枚の黒い翼を展開させて、光の槍や剣を自分の周りに無数のように創りやがる。

 ……全部放ってきたら、流石に面倒だけど。

 

「さあ、思う存分、血潮を浴びる戦いをするぞ、赤龍帝!!」

 

 ……コカビエルは俺へと光の剣と槍を撃ち放ってきた!

 

 ―・・・

『Side:木場祐斗』

 

 僕達は少し離れた所からイッセー君の戦いを見ていた。

 ちなみに先に言っておくと、先ほどのイッセー君の台詞は眷族の女子メンバーの心にすごい勢いで刺さったらしく、みんな照れて顔を真っ赤にしていた。

 ……あんな台詞を惜しげもなく、本心で言えるのは君ぐらいだよ、イッセー君。

 僕だってあんな台詞を言われて内心は相当複雑だ……絶対、女だったら堕ちてるよ!

 ……それはさておいて、やっぱりイッセーくんはすごい。

 知ってはいたけど、でも圧倒的だ。

 その戦いはテクニックの極みと言っても良い。

 敵の攻撃を最低限の動作、力でいなし避け、そして必殺のような一撃を確実に喰らわしていく。

 

「……無数の光の槍と剣!? まずい、あんなのを喰らえば兵藤一誠は!!」

 

 ……何も知らないゼノヴィアは狼狽えている。

 でも彼女も知ることになる―――自分が喧嘩を売った、彼の本当の力を。

 イッセーくんは絶えなく放たれる光の槍を流れるように、全てを見切っているかのごとく避け続け、しかも着々とコカビエルの方に移動していた。

 流れ作業のようなその動き……僕には出来ないことだ。

 

「……なんだ、あれは。まるであのコカビエルの力が効いていない? 兵藤一誠はいったい……」

「彼はグレモリー眷属で最も破壊力があり、そして最も戦闘センス、テクニックを有している最強の『兵士』だよ。僕は彼をオールラウンダ―と思っている。攻撃を見切ってカウンターを得意としていると思えば、まさかの攻撃力を持っていたり、ね」

「……君があの時、戦力を均等に分けるなら兵藤一誠は一人でといった意味がようやく分かったよ。だがあれはあまりにも……」

 

 ……ゼノヴィアさんはイッセー君の戦いを見て目をキラキラさせていた。

 ああ、あれは確かに見ていたらすごいワクワクする。

 僕だってイッセー君の戦いを見ている時はいつも気持ちが舞い上がるよ。

 イッセーくんは永遠に続くような光の剣と槍の攻撃をかいくぐって再びコカビエルの懐に飛び込んでそのままアッパーをいれ、更に追いうちのようにゼロ距離からの魔力弾、そしてそこから再び地面に抉りこむほどの打突で殴り捨てる。

 …………あれはあまりにも地獄のコンビネーションだ。

 

「……祐斗、あれは私にはあのコカビエルを圧倒しているように見えるのだけれど」

 

 部長は一筋の汗を垂らして、目を見開いて興奮しているように言う……ああ、僕もあの戦いを見て興奮している。

 他人を震え立たせるほどの戦い……あのフリードが戦いで人間的にマシになったのも分かる。

 ―――強い。

 徒手格闘だけでもコカビエルを圧倒できそうなほどに、彼は強い。

 現にこの戦闘で、イッセー君はまだ一撃も傷ついていない……僕は彼のあのスタイルに憧れるよ。

 そして僕だって、今すぐ彼の隣で戦いたい衝動に襲われる。

 でも行ったら邪魔になるだけ……それほどに僕達はイッセー君とはかけ離れて弱いから。

 

「……だけどコカビエルも戦争を生き残ってきた堕天使。あれを一撃で沈めるほどの力は流石にイッセーにも難しいようね」

「僕もそう思います」

 

 ……イッセー君は悠然と戦っている。

 でもきっと、ライザ―・フェニックスと戦った時のように倍増を加速する力を使っているのだろう。

 先ほどから、彼の篭手から音声が発生しないのはそのためだ。

 イッセー君はあの力は体に負担を掛け過ぎると言っていた。

 だから長期戦になれば、イッセー君は不利になる。

 

「……私にもっと力があればッ!」

 

 ……その通りだ。

 それは僕たち全員に言えること……僕達がもっと力を持っていれば、彼への加勢が出来る。

 いつも彼は一人で背負って、戦って傷ついている。

 

「……歯がゆいですわ。堕天使がいるのに、何も出来ないなんてッ!」

 

 ……朱乃さんの目は、酷く鋭い。

 

「……見守るか。そんなこと、私には到底できないな」

 

 ―――ッ!

 ゼノヴィアさんは聖剣デュランダルを握り締めると、そのまま歩みはじめていた!

 

「止めるんだ!イッセー君の戦いに君では実力が不足している!」

「分かっているさ……だがあんなものを見せられて、動かずにはいられない!!」

 

 気持ちは痛いほどに分かる!

 でも止めなければイッセー君は戦いに集中できなくなる。

 僕はゼノヴィアさんの手を引き止めようとした……その時、僕達の後ろから声が聞こえた。

 

「―――イッセー君……」

「紫藤さん!?」

 

 ……そこには体を引きずりながら、それでも何とか立っている紫藤イリナさんの姿があった。

 彼女は確か、逃げ遅れてそのまま聖剣を奪われ、傷ついていたはずだ!

 

「どうしてあなたがここにいるの? あなたはイッセーの家で安静にしていたはずなのに……」

「私だけが、そんな安全な所で居られないってことなのよ……それにイッセー君が戦ってる…………一人だけ、寝てられないわ!」

 

 ……って僕が呆けている間にゼノヴィアさんが歩みを進めている!?

 

「あれ? ゼノヴィア、何でイッセー君のところに……」

 

 君が現れたせいで彼女から君に僕の視線が行っていたからだよ!

 イッセー君の言う通り、この子は抜けているね!

 でも行ってしまったからには仕方がない、連れ戻すしか方法はない!

 僕はそう思って、聖魔剣を創りだしてゼノヴィアさんの方へと向かった。

 

『Side out:木場』

 ―・・・

「はぁ、はぁ……」

 

 息が荒れる。

 流石に疲れてきたな……そう思い始めていた。

 未だに俺はコカビエルの攻撃は受けていないけど、俺はここに来る前に神滅具を一つ、大量の回復神器に更に日本の刀の神器を創ってるからな。

 しかももう10分ほどずっとアクセルモードを継続している……流石に少しは消耗してきたところだ。

 

『アクセルモードは常に倍増を加速させる力だ。本来は禁手ではなく通常の篭手で使ったほうが効果的だが……今回は相手が相手か』

『ですが主様、長期戦は今の主様では不利です。万全ならまだしも、主様は前のケルベロスとの戦いでツイン・ブースターシステムを使ったのですから』

 

 ……分かってるさ。

 でも気を緩めることなんかできない。

 消耗してきてるっつっても、まだまだ戦える。

 死戦はほんの少しの慢心、油断が命取りだからな。

 

「……ここまで俺が完膚なきまで封殺されるとはな―――プライドも糞もあるか」

 

 コカビエルは俺に何度か殴られたり、魔力弾を直撃しているせいか、体にはいくつかの傷がある。

 でも流石は堕天使のトップクラス……決定打が全く通らない。

 普通ならここまでの強化している打撃だけで致命傷のはずなんだけど……

 

『いや、相手の消耗は確実だ。現に奴は息が上がっている……それでもなお倒れないのは、歴戦の覇者と評価した方が良いだろうな』

 

 ……強いのは間違いないからな。

 俺だって、神経をすり減らすほどの戦いをしている……楽じゃない。

 だけどあいつは圧倒的な光力に頼り過ぎるため、戦闘においてのテクニックが不足している。

 

「でも俺も余裕は全くないぜ? これでもお前の攻撃には冷や冷やしている……まあ当たらなければ問題ないけどな」

 

 俺はそう言いながら三つの魔力の塊を宙に浮かせる。

 俺は篭手を介してんなら魔力操作に関してはかなり自信がある。

 流石に三つ同時は初めてだけど……まあ何とかなるか!

 

「先にいっておく……こいつを避けるのは不可能だ!!」

 

 そして俺は拳でその魔力球を殴り、そのままそれはコカビエルへと放った。

 

「こんなもの!」

 

 コカビエルは光の槍で三つの魔力弾を相殺しようとした……だけど、悪いけど俺はただの魔力弾は放たない!

 全部が全部、俺が考えたシステムで動く弾丸だ!

 

「拡散、反射、爆発……さあ受けて貰うぜ!」

 

 ……光の槍が魔力弾と接触しようとした瞬間、一つ目の魔力弾……爆撃の龍砲(エクスプロウド・ドラゴンキャノン)が光の槍を全てを相殺する!

 そして次は拡散の龍砲(スプレッド・ドラゴンキャノン)は魔力弾が拡散し、あらゆる方向から襲いかかる奇襲の弾丸だ!

 

「くっ、小癪な! ならば避ければいい!!」

 

 コカビエルは次の魔力弾を避けるけど、だけどそれは早計だったな!!

 そいつの能力は反射!

 反射の龍砲(リフレクション・ドラゴンキャノン)は俺の任意で一度だけ魔力弾を好きな方向に反射できる技!

 それはコカビエルの背中へとまともにぶち当る!

 ……その結果、コカビエルの翼の内の数枚が焼け落ちた。

 

「こ、この俺の翼が……貴様ァァァァ!!!」

 

 そのことに激高するコカビエル……関係ない。

 

「お前みたいなやつが怒るのはいつも自分だけのためだ!」

 

 俺は激高し、光の槍と剣で襲いかかるコカビエルとまともに近接戦闘にもつれこませる。

 手にはほとんど限界を迎えている刀二本……使わない時は腰に帯刀させていたけど、これで攻撃を割としてたから限界だ。

 でもこの刀はドラゴンの力に反応して力を上昇させる。

 言わば、ドラゴンの性質によってこの刀は能力が変化するんだ!

 ドライグとフェルの力を二つの刀にそれぞれ顕現し、そして俺はコカビエルの剣や槍と剣戟を開始する。

 

「ちぃ! 翼よ!」

 

 ……ッ!

 コカビエルの翼は刃のように俺に襲いかかる……これは避けれない!

 俺は防御にしようとした―――その時、俺の前に人影が現れた!

 

「邪魔かもしれないが、加勢させて貰う!」

「ごめんね、イッセー君」

 

 ……祐斗とゼノヴィアが、俺が直撃すると覚悟した翼の斬撃を受け止めていた!

 祐斗は何本も聖魔剣を創りだして片手で二本ずつ持ち、ゼノヴィアはデュランダルとエクスカリバーで全ての翼を押さえている……

 

「ったく……だけど今は感謝するぜ!」

 

 俺はアクセルモードで高まり続ける力を解放し、祐斗とゼノヴィアの登場で動きを止めているコカビエルへと5連斬を浴びせた!

 創造の力であいつの体に傷に新たな傷を創造し、そして倍増の力でその傷を倍増させる……最悪のコンボだな。

 そこで刀は限界を迎え、俺は刀をその場に捨てて全力の力を以て更に何発もコカビエルの体を殴りつける!

 そして俺の両脇に剣を持つ祐斗、ゼノヴィアが立つ。

 

「僕の専売特許の剣も扱えるんだったね……」

「……それよりお前ら、何で前に出てきた。助かりはしたけど、下手すりゃ死んでいたのかもしれねぇんだぞ!」

「……それは君も同じことだ、兵藤一誠。君が戦っているのに黙って指をくわえて見ているなんて不可能でね―――共に戦わせてもらう」

 

 ゼノヴィアは二本の聖剣を構える。

 

「私は神の名において宣言する……堕天使を共に滅ぼそう、兵藤一誠」

「……ったく、怪我しても知らねえぞ!」

 

 仕方ねえ……それにこいつだって強い。

 俺があいつを押さえている間に攻撃してくれたら、効率的に戦えるはずだ。

 

「―――神? 笑わせるな……よく主がいないのに信仰心を持ち続けられる」

 

 ……俺が殴り飛ばして生まれた砂埃の中から立ち上がるコカビエルの影。だけどそれよりも―――今、あいつはなんて言った?

 

「どういうことだ!? コカビエル!」

「おおっと、口が滑った……だが良く考えてみれば戦争を起こすのだ……黙っている必要もない」

 

 ……コカビエルは残っている翼で埃を消し飛ばすと、少し空中に浮く。

 

「―――神は既に死んでいるんだよ、当の昔に……戦争の時に魔王どもと共にな!!!」

 

 ―――その言葉を聞いて、そこにいる全員が目を見開いた。

 いや、三人だけ反応が違う……アーシア、ゼノヴィア、そしていつの間にかそこにいたイリナ。

 

「う、嘘だ! 神が死んでいるなど、そんなわけが!」

「いいや、死んでいる……そこの聖魔剣使いが良い証拠だ。本来、聖と魔がまじりあうことはない―――そう、神がいればそんなことは起きないはずなのにな」

 

 ……間違いない。

 こいつの言っていることは理屈もあっている。

 聖と魔、二つの相反する力が一緒になるってことは、つまり神様が創った聖と魔のシステムに欠落があるからだ。

 そのバグみたいなものから生まれた……それが聖魔剣。

 そして神がいればそんな欠落は存在すらしない……でも存在するから神はいない。

 

「うそ、よ……ならわたしはいったい、何を信じていたっていうの?」

「そんな……なら、神の愛はいったいどこに……っ」

 

 ……イリナとアーシアは呆然とその場をふらつきながら、足元がおぼつかない状態だった。

 特にあの二人は神の存在への信仰が深かった。

 その存在が死んでいたということに動揺が隠し切れていない。

 ゼノヴィアも、剣から手を離して地面に膝を付けて力なく下をうつむいていた。

 

「神の愛なんて存在していない。神がいないのだから当たり前だ。それでもそれでもミカエルは良くやっている。神の代わりをして人、天使をまとめ上げているのだからな」

 

 …………止めろ、それ以上真実を言うな。

 

「誰かが起こそうとしなければ戦争は起きないだろう……だがそんな世界に何の楽しみがある! 戦争のない世界など、愚の骨頂! だから言ってやろう! 神などいない、お前たちが信じていたものなんてただ偶像だ!!」

「……黙れ」

 

 ―――俺はコカビエル元へ一瞬で飛び上がり、そのまま急所へと向かって殺すつもりで拳を鋭くいれた。

 

「がぁぁッ! …………なん、だと!?」

 

 そして俺はコカビエルの頭を掴み、そのまま地面へと降下しながら地に顔を叩きつけた。

 だけど俺の怒りは収まらない。

 コカビエルは危険を察知したのか、俺から離れ距離を取った。

 

「はぁ、はぁ……なんだ、今のは―――貴様、本気を出していなかったのか!?」

 

 ……本気、か。

 確かに俺は無意識の内に”戦い”をしていたんだろうな。

 そんなんじゃああいつに致命傷を負わせることなんかできるわけがねえ。

 

「……アーシア、イリナ、ゼノヴィア。神がいない―――多分、それは真実だ」

 

 俺は皆に届くように声を出す。

 その言葉に、三人は少し俺に目線を送った。

 

「俺は神なんか信じていない。だって神様はアーシアを救ってくれなかった。そりゃそうだ、いないんだからな。神様は愛をくれない、いないならそうだろうな……だけどそれって誰かが与えれるものじゃねえか」

「……イッセー、さん?」

 

 アーシアは俺の顔をじっと見つめてくる。

 そしてそれはイリナも、ゼノヴィアも一緒だった。

 俺は自分の心の中の気持ちを、嘘偽りなく三人に言った。

 

「―――神が救ってくれないなら、俺が救ってやる。愛がないなら俺が愛することだって出来る。信仰出来ないなら、俺を信じろ。俺は神になるつもりはない……だけど、支えくらいにはなってやる」

 

 俺はそう言って、一歩、コカビエルの方へと歩む。

 

「創造力は……十分溜まっているな」

 

 俺は胸に光る白銀の神器を少し触り、そう言う。

 少し前から溜めていて、今は大体12回くらいの創造力が溜まっている。

 

「……泣きたいなら後で胸くらいは貸してやる。だから今は、俺の戦いを見ていてくれ」

 

 俺は振り返らずにそう言うと、後ろから嗚咽のような声のない鳴き声が聞こえた。

 …………泣かせたのは俺か。

 だったら後で笑わしてやろう―――だから今はこいつをぶっ潰す。

 

『……主様、やるのですね?』

 

 ああ……こいつを一撃で潰す。

 覚悟は決めた。

 

『……今の相棒は止まらないな。だが止める気もない。さあ、相棒。解き放とうか』

 

 俺はコカビエルと目の鼻の先の距離まで近づいて、対峙する。

 

「……コカビエル、お前はちょっとやり過ぎだ」

「なんだ、貴様は……赤龍帝にしてはお前は異質すぎる…………ッ! そこまでの力があって貴様は何故に力におぼれん! 何故力をもっと違うことに使わない!」

「守りたいものがあるから……俺は自分のために力は使わない―――そう昔、決めた。だから俺は皆を守る!」

 

 俺の胸の神器が白銀の光を眩ゆく輝かせる。

 その光は俺の鎧の全体を覆い、俺はフェルの暖かい光に包まれた。

 

『Reinforce!!!』

 

 ―――禁手の強化。

 試したことはない、どうなるか分からない……でも俺はこいつを倒すために覚悟を決める!

 

「なんだ、それは! 赤龍帝ではない……もっと別の、異質を感じる!」

「ああ、そうだろうな……だけどこいつはどこまで言っても赤龍帝―――いくぜ、ドライグ、フェル」

 

 そして俺の鎧が紅蓮と白銀の光によって包まれ、俺の鎧が変化していく。

 背中からは機械的なドラゴンの翼が生え、鎧の各所が鋭く鋭角にフィルムとなる。

 篭手の純度は異様なまでに明るくなって、そして俺自身の力は……跳ね上がる。

 

赤龍神帝の鎧(ブーステッド・レッドギア・スケイルメイル)。いくぜ、ドライグ、フェル!!」

「くっ!!」

 

 コカビエルは空中へと逃げていき、そしてその場で無数の光の槍をそこら一帯に、皆を巻き込むように放った。

 …………やらせはしない。

 

『―――Infinite Booster Set Up』

 

 静かな音声……その音声は静かに、そして内面で激しく俺の中に響く。

 ……いわば、無限の感覚。

 今俺を支配している力は正に無限だ。

 それは俺が今、欲する力であり―――こいつを殺すための力。

 それをフェルの力でドライグの力に紡ぎ、形を成すッ!!

 そして次の瞬間、爆音のような音声が響いた!

 

『Starting Infinite Boost!!!!!!!』

 

 音声と共に俺の体から激しい紅蓮と白銀のオーラが辺りへと撒き散らされた!

 これはただの余波……だけどその余波はコカビエルの光の攻撃を全て相殺する。

 そして音声から俺の力は……無限に倍増し続けられている。

 正直、今にも倒れそうなくらいきつい―――だけど俺はそんな苦しみは全て無視して、ほとんど瞬間移動に近い速度でコカビエルの目の前にたどり着く。

 

「―――俺の光が……消された? それに何でもう俺の前にいる?」

 

 コカビエルはただ、目の前の状況に呆然としている。

 

「無限の倍増……いくぞ、コカビエル!!!」

 

 無限に倍増されていく力に耐えながら、俺はオーラを全て両拳に込めた。

 

「これから俺が行うのは戦いじゃない―――殺しだ」

 

 俺は……鋭い一撃をコカビエルの腹部にねじ込ませる!!

 もうそれでコカビエルは動けない……でもまだ意識はある―――そして俺は

 

「―――終わりだ……コカビエル」

 

 コカビエルの腹部にもう一撃、打撃を加えたまま俺はコカビエルを地面に叩きつける!!

 地面には俺が力を加えるごとに穴が深まっていく!

 そして拳を放ち、その場で翼を織りなし―――そして手の平に丸い紅蓮の魔力を溜めた。

 その魔力の球を宙に浮かせ、それを叩きつけ……魔力砲をコカビエルへと遠慮なしに放つ!

 砲撃はコカビエルを遅い、地面に大穴を空けながら、そして―――コカビエルを完膚なきまでボロボロにした。

 

「…………どうせお前は再起不能だ。ドラゴンを敵に回した、そのことがお前の失敗だ、コカビエル」

 

 俺はそのまま地面に空いた大穴からコカビエルに背を向ける。

 

 ―――コカビエルは指一本動かせないまま、白目をむいてそこに倒れていた。

 

 体全身の骨が砕けた感覚があったし、相手の中心性を完全に撃ち抜いた。

 もう立ち上がることは、二度とない。

 そして俺の篭手の強化の力はフェルによって強制解除され、俺は鎧の姿のまま部長達の元へと歩いて行った。

 

 

 

「へぇ、随分と面白いことになっているじゃないか」

 

 ―――透き通るような、男の声がした。

 俺はその声を聞いた瞬間……いや、その気配や力を察した瞬間、体に電流が走る。

 俺は声が聞こえた方を静かに振り向くと、それは上空。

 だけど何も見えない……学校の周りは結界が張られているからだ。

 だけど次の瞬間、結界はガラスが割れるように崩壊した。

 

「…………まさか」

 

 俺は想像がついて、その存在にひどく驚く。

 頭が真っ白になる……知っていたはずなのに、いつかは出会うと分かっていたのに。

 

「アザゼルに言われてついてみれば驚きだね。まさかあのコカビエルがこうも完膚なきまで倒されているなんてね…………なるほど、君が俺の宿敵ってわけだ―――赤龍帝」

 

 俺はその姿に声が出せなくなる。

 そこには懐かしい姿があった。

 ―――白い鎧を身に纏った、全身鎧の姿。

 俺と対極をなす存在。

 

「はじめまして…………俺が今代の白龍皇だよ、赤龍帝」

 

 白龍皇の姿があった。




今回はここまでです!

コカビエル戦、よくよく考えたらイッセーは無傷で狩っていることに今気付きました!!

でも本来当たるはずだった攻撃はゼノヴィアと木場が止めたので、実質は傷を負っているはずです!

それはともかく、とうとうヴァ―リ登場です!

アニメでもちょうど登場しましたね・・・さて、イッセーはその白龍皇と出会い、そして何を思うか。

次回、3章の最終話です!

それではまた!

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