ハイスクールD×D ~優しいドラゴンと最高の赤龍帝~   作:マッハでゴーだ!

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3章7話ですね。

今回のメインは木場!そして残念な事にこの話にイッセーはほとんどでません!

イッセーがあまり出ないのは初めてです!

では7話、どうぞ!


第7話 仲間を守る剣になる

『Side:木場祐斗』

 

 僕、木場祐斗はようやく皆と共に闘うために学校に着き、今は校庭にいる。

 僕はアーシアさんに襲いかかろうとしていたケルベロスを幾重にも生んだ魔剣で貫いた。

 ……僕はゼノヴィアさん、紫藤イリナさんと一緒にバルパーとフリードを追跡していて、それで最終的に堕天使コカビエルと遭遇した。

 僕とゼノヴィアさんは戦線離脱したんだけど、でもイリナさんは逃げ遅れた……でもイッセーくんが駆け付ける姿を僕は薄ら見えたから大丈夫だと思う。

 

「祐斗……あなたは……」

「……遅れました、部長」

 

 僕は部長にそう言って苦笑いをした……まさかこんなことになっているとは思ってもいなかったよ。

 すると僕に遅れて、校舎の影から現れる一人の女性がケルベロスへと向かっいた……ゼノヴィアさんだ。

 

「加勢に来たぞ―――グレモリー眷属!」

 

 彼女はエクスカリバーでケルベロスを一刀両断する……するとケルベロスは絶叫をあげながら消失した!

 

「……流石はエクスカリバー。魔物にはすごい攻撃力ですわ―――ならば私も見せますわ!!」

 

 上空で魔力戦をしている朱乃さんが、見たことあるような瓶を破壊した……あれはイッセー君が創った回復の神器の抜け殻だ。

 でもそう思っていたのも束の間、朱乃さんの魔力が跳ね上がった!

 破壊した瞬間に何とも言えない艶めかしい喘ぎ声を漏らしたのは気にしないほうが良いだろう……

 

「来たれ雷……魔を滅ぼせ」

 

 ―――ッ!

 朱乃さんの魔法陣を介した圧倒的な雷がケルベロスを襲う!

 それだけじゃない、小猫ちゃんも掌で瓶を割った。

 

「…………イッセーせんぱいの、ちからぁ……いきましゅ!」

 

 ……何故か小猫ちゃんの呂律が回っていないけど、それにしてもすごい力だ!

 僕も魔剣を駆使してケルベロスを屠る! 皆もケルベロスを屠り、いつの間にか全滅していた。

 他の三人の眷属の力が圧倒的に上がってる……間違いない、これはイッセーくんのものだね。

 でも彼はこの場にいない……

 

「……ほう、高が貴様たちでも赤龍帝の力でそこまで強くなるか」

「この町は滅ぼさせはしないわ!」

 

 部長が宙に浮くコカビエルへと上級悪魔を越しているような魔力の塊を放つ!

 あれは確実に、最上級悪魔にも通用し得る力!

 

「……面白い! 実に面白いぞ!」

 

 コカビエルはそれを片手間で反射するように返した。

 部長はそれを避けると、魔力の塊はテニスコート辺りに直撃し、次の瞬間にテニスコートにあり得ない大穴が出来る!

 ……やはり堕天使の幹部はレベルが違う!

 あの時もそうだったけど、力の質が僕達とはあまりにも……そう思っていた時だった。

 

「ふははははは! 遂に……遂に完成だ!!」

 

 ―――この声は、バルパー・ガリレイ!!

 僕は怒りの想いで声のした方を見る……そこには魔法陣から眩い光をあげながら4本のエクスカリバーが輝いている様子があった。

 

「俺の目的は戦争で、そのついでに奴の計画を手伝ってやったが……あの魔法陣は少ししたら町全土を崩壊させるものだ」

 

 コカビエルから聞かされる真実に、他の皆は驚愕と怒りに包まれていた。

 ……だけど僕の内心は、もっと凄まじい。

 ただ自分の欲望のために他者の犠牲を目にも当てず、平気で残虐な行為をし続ける男。

 バルパー・ガリレイ。

 僕の同志を全て殺した男―――そして今度は、また僕から大切なものを奪おうとする悪ッ!!

 貴様はまた…………皆を殺そうとするのかッ!!!

 

「バルパー・ガリレイ!! 貴様は、貴様だけは許さない!!!」

 

 僕は魔剣を創りだして、バルパー・ガリレイの方へと向かう!

 聖剣計画で皆を殺して、次は町の……僕の仲間を殺すなんて許さない!

 イッセー君だったら、何があっても奴を止める!

 

「……邪魔はさせん」

 

 ――――――直後、僕を襲ったのは眩すぎる光の大槍だった。

 僕は直感的に体を動かして、槍の直撃を避けるけど……でもその風圧と衝撃波で吹き飛ばされた。

 地面を何度かバウンドするように叩きつけられ、口からは血が噴き出すッ。

 

「祐斗!? コカビエル! あなたはどこまで私の眷属を!!」

「あはははは!! 通りたかったら、俺を倒していけばいい!」

 

 ……部長の、怒りの声が聞こえる。

 僕は視界は、嫌なほどにかすれる。

 あの槍は直撃していたら間違いなく僕を殺すものだった……僕はバルパー・ガリレイを見た。

 

「ようやく私の夢がかなう!! 新しいエクスカリバーの誕生だ!」

 

 ―――そこには、一本の聖剣があった。

 まさか、4本のエクスカリバーを一つに集結させた?

 

「く、そ……バルパー、ガリレイ!!」

 

 僕は体がボロボロになりながらも立ち上がる。

 

「……そう言えば君は聖剣計画の被験者だったな。感謝しよう! 君たちの犠牲のお陰で私は手に入れた!」

「ふざけるな! 何が感謝だ……お前は僕たちを傷つけるだけ傷つけて、殺したんだッ!! 犠牲なんかじゃない―――お前は僕たちを生贄にしたんだよ!!」

 

 魔剣創造……皆のやりきれない想いが僕の体に顕現した神器。

 創る魔剣は何色にも染まらぬほどに黒く、それは僕の復讐の現れ。

 皆の無念がこの剣には詰っているんだ!

 

「君に真実を教えてやろう、生き永らえた褒美だ」

 

 ……バルパー・ガリレイは、僕の足元に一つの青い瓶を投げてきた。

 僕はその瓶を手に取り、怪訝にバルパーを睨む。

 そして―――

 

「貴様たちは聖剣の因子を持ち合わせていなかったのではない―――そう。ただ、少なかっただけだ」

「―――何を、言って」

 

 バルパーの言葉に僕は呆然となる。

 ……僕たちは聖剣の因子がなくて、エクスカリバーに適応できなかった故に殺された。

 だけどバルパーは語る―――少なかった、と。

 

「言葉通りだよ。聖剣を扱うための因子が君たちには不足していた・・・ならば不足している出来損ないはどうすればいい? ―――――答えは簡単。因子を抜けばいいんだよ」

 

 …………その言葉を聞いて、僕は頭が真っ白になる。

 因子を、抜く?

 バルパーは呆然と立ち尽くす僕を見て、愉快そうに更に続けた。

 

「因子を抜いて、それを集めれて結晶化出来れば、聖剣を第三者が扱うことが出来る! たとえ才能がなくてもな! そして私は研究の末、完成させた! だがどうしたものだ!! 教会は私を異端者と追放した挙句、私の研究成果を奪う!」

「だが! それなら殺す必要はなかったはずだ!」

 

 因子を抜いて、後は捨てれば命だけは救われたんだッ!!

 なのに、こいつは!!

 僕はやりきれない怒りで今すぐにバルパーに斬り掛かろうとした。

 ……奴はそれを見計らうように―――

 

「……ははは。何を言っている―――貴様たちは実験動物だ。使い終わったモルモットは、殺すにきまっているだろう?」

 

 ―――実験動物、モルモット。

 その言葉を聞かされた瞬間、僕の動きは止まった。

 ……何故、そんな言葉を、そんな簡単に言える……ッ!

 僕の脳裏に大切だった同士の笑顔が浮かぶ―――それすらも、こいつはモルモットというのか?

 だったら僕たちが生まれた意味は……なんだんだよ―――ッ!!

 

「今、君の足元に落ちているのは君たちから抜き去った因子の残りだよ……そんな残り屑、君にあげよう。そんなゴミは私にはもう必要ない」

「バルパー・ガリレイ!あなたはどこまで私の祐斗を傷つければ!」

 

 ……僕は手に取っている瓶を呆然と見つめた。

 僕の、仲間の結晶。

 青い綺麗な輝きを放っているも、その輝きは淡かった。

 ……怒っているはずなのに、僕は涙を流していた。

 結晶を握り締めて、体を震えさせて。

 

「僕は、ずっと思っていた……何で僕が生き残っていたんだろうって……」

 

 ――僕よりもずっとずっと生きたい、そう思った子はもっといた。

 夢を持つ子だっていた。

 皆が皆、夢があり想いがあり―――でも、僕には何もなかった。

 夢も何も……ただ聖剣に憧れて、辛い実験にも耐えて。

 ただ皆の笑顔が、夢を語るときの顔が大好きで。

 ……それを、守りたかった。

 そんな夢も、直ぐに消え去った。

 

「僕は生き残って、それで部長の眷属になって、学校に通えて、友達が出来て―――僕だけが幸せになっていいのかと考えた……」

 

 何度も考えた。

 あの時、僕はあの施設から逃げ出し、部長に会って……いろいろなものを貰った。

 暖かさ、力……沢山のものを。

 僕は涙を流し続ける。

 

「何で僕はここにいる―――ここにいていいわけがない……それなのに……!!」

 

 今だって復讐と仲間への想いで揺れるくらいの半端者なのに!

 僕は……守れなかったんだッ!

 何も出来なかった―――生きている価値なんて、ないんだ。

 僕は一人きり。

 こうして何も出来ないくらい、一人では何にも出来ない。

 

「僕にあるのは復讐だけだ……それ以外に、何もない―――だから僕は一人でも!!」

 

 自暴自棄だ。

 僕は何も考えず、何も持たず……バルパーのところに走ろうとした。

 ……死のうとでも考えていたのかもしれない。

 辛いのはもう嫌だ……真実を知って、何も出来ない自分が嫌で、そして……

 ―――目の前の大切に目を眩んでしまう、自分が嫌だッ!!

 ……僕は走る。

 きっとあのエクスカリバーで斬られて僕は死ぬ。

 ならせめて一人で足掻いて見せる!!!

 

 

 

 

 ―――貴方は一人じゃないよ。

 

 

 

 

 …………僕の耳に、人とは思えない声が響いた。

 一つじゃない……何人も、何人もの声がする。

 

『泣かないで。どうして一人なんて寂しいことを言うの?』

『死ぬなんて、悲しいよ……』

『君は生きていいんだよ。だって僕達の希望なんだから』

「どう、して……ッ。皆……ッ!!」

 

 ―――――僕の周りには、薄ら青い透明な人影……小さい人影、大きい人影があった。

 その影は僕を囲むように、声を掛ける。

 

「僕は何も出来なかった! 何も……皆を見捨てて、今は平和に暮らすなんてそんなこと許されるはずがないッ!!」

 

 僕は結晶を両手で握り締めて震え泣く。

 そうだ、皆の屍を越えていった僕が幸せになんてなってはいけないんだッ!

 

『見捨ててなんかないよ』

『だって君はずっと、僕達のことを想ってくれていた』

『たとえそれが復讐なんだとしても、君が私たちを忘れた日はなかった』

『それに―――今も涙を流してくれている』

 

 ……涙は止まらない。

 指摘されて更に涙は溢れ、服で拭っても拭っても、止まらなかった。

 ―――忘れるわけがない……みんな、大切だったから!!

 辛い日常で、笑顔で励まし合ったんだ……大好きだったん、皆のことがッ!!

 忘れるはずがないんだッ!!

 

『なら私達もあなたを大切に想う』

『あなたはひとりじゃない』

『一人の力は弱くても、みんなと一緒なら大丈夫だ』

『だから受け入れよう……』

 

 ……皆は僕の手に、自らの手を添える。

 笑顔を浮かべて、僕の手の中の青い瓶を指した。

 

『歌おう―――みんなで歌った歌を……』

 

 ……僕の周りの光から、聖歌のようなものが響く―――それは眷属の皆にも聞こえているようだった。

 部長は驚いていて、アーシアさんは涙を流している……みんな優しい表情。

 そうか、僕は…………

 

『聖剣を受け入れよう』

『神が僕達を見放しても、君には神なんていらない』

『君には私達がいる』

『たとえ神が僕達を見ていなくても僕達はきっと……』

 

 そうだね……僕たちずっと……どこまでも―――繋がっていける。

 僕が君たちの分まで笑顔になってみせる。

 だから、だから―――

 

「―――一つだ……ッ!」

 

 僕はそう言うと、僕の周りにいた霊魂のような魂は僕の周りに光と成って纏う。

 暖かい……暖かい。

 みんなの気持ちが僕に入ってくる…………僕は、一人じゃない。

 ……共に行こう、皆。

 僕は一人なんかじゃなかったんだ。

 僕は涙を拭い、天に顔を仰いで―――バルパーを睨んだ。

 

「…………バルパー・ガリレイ。僕の仲間は僕に復讐なんか、望んでいなかった。優しい僕の仲間が、そんなことを考えるわけがない。だけど貴方はこれからも人を傷つけ、殺すだろう」

 

 僕は光に包まれながら魔剣を創る。

 

「―――僕は第二、第三の僕達を創らないために、貴方を、滅ぼす」

「黙れ! おい、フリード! ちょうどいい、エクスカリバーを使って私を守れ! それくらいは出来るだろう!」

「ふはぁ~……え? なんか言った? バルパーのおっさん?」

 

 ……フリード・セルゼンはおかしな態度だった。

 聖剣が刺さっている傍で聖剣を見ながら、バルパーの顔を虫けらを見ているような顔で見ている。

 

「いやぁ……正直、あんた守るメリットってやつを感じられないわけでして~」

「貴様、何を!」

「だから……こういうことっすわ!」

 

 ……フリードは、バルパーの脚部に以前、見たことのある封魔銃で撃ち込んで貫いた。

 しかも一発ではなく、何発も連続で撃ち続け、バルパーを血だらけにする。

 バルパーはその場に倒れ込み、フリードを睨みながら怒声を上げた。

 

「がぁぁぁ!? き、貴様!!」

「いやぁ、俺が言えたことじゃないんスけどぉ……下種すぎるっすわ! あんた。こりゃあ悪魔の方があんたよりもマシなんじゃないのぉ? お~い、そこのイケメン君! このおやじなら好きにしても良いぜ?」

「……どういうつもりだい?」

 

 ……僕は不可解な態度のフリード・セルゼンにそう言うと、フリード・セルゼンは刺さっているエクスカリバーを引き抜いた。

 

「俺は最初からこいつ、どうでもよかったってわけだ! うひゃうひゃ! 俺っちが求めるのはそう!―――力、力、力!! あのイッセー君と戦うための力が欲しいんすよ!!」

「……何を言って」

「君も知ってんだろぉ? イッセー君のあの白銀の力!あんなもの見せられたらさぁ……悪魔殺すだけの人生とか面白くねえじゃん? そう思ったら俺の人生は馬鹿らしくなってさぁ……」

 

 フリード・セルゼンはバルパーの首根っこを掴んでそのまま適当な方に投げ捨てる。

 

「お前さんもみたっしょ? あのクソビッチの堕天使、レイナーレのねえちゃんを潰したあの力!! もうあれで一目ぼれ!! うっひゃ~、恥ずかしぃぃぃ!!」

 

 ……こいつの違和感はこれだったんだね。

 つまり彼の変革はイッセー君が原因だったってわけだ。

 

「……でもイケメン君、君もなかなか面白いぜ? あんな聖歌、聞いたことがない!―――闘おうぜぇ! イケメン君!! このエクスカリバーちゃんでよぉ!!!」

 

 ―――フリード・セルゼン。

 君が以前とは違うのは理解したよ……でも

 

「良いだろう―――僕はリアス・グレモリ―様の『騎士』……木場祐斗」

「俺様は単なるはぐれのエクソシストぉぉぉ!! フリード・セルゼン!」

 

 僕は君を……エクスカリバーを壊す。

 そして証明してやる。

 

「僕は剣になる。皆を守るための……眷属の剣となる!!」

 

 僕は剣を空に掲げる。

 今、この場にイッセー君がいるとするならば、多分僕に渇をいれて奮い立たせてくれるだろう。

 

「祐斗、やりなさい。私のナイトは、エクスカリバーになんか負けないわ」

 

 ……はい、部長!

 他の皆も僕の応援をしてくれる……戦える!

 

「皆、越えよう―――あの時、出来なかった、叶えることの出来なかった聖剣に対する想いを……」

 

 僕の声に呼応するかのように、僕の魔剣に黒いオーラと白いオーラが交互にまとわりつく。

 僕の魔剣が……形状を変えた。

 

「さぁ、行こう……ソード・バース!」

「おぉ!? なんすか、それは!! ここで俺を喜ばせてくれる強化ですか!?」

 

 青いオーラが剣を包み込み、黒と白の旋律が剣を包む。

 激しいオーラをちらつかせ、そしていつしか形を成す。

 ……僕の魔剣は、白と黒の一本の剣となった。

 分かる……これが何か、何をするためのものなのか!

 

「―――双覇の聖魔剣(ソードオブ・ビトレイヤー)……聖と魔を司るこの剣、受けてみるといい!!」

「最高!! イッセー君との戦い前の前哨戦では勿体ないくらいだぜぇぇぇ!!!」

 

 フリードは僕と同様の速度で動く!

 天閃の力だろう……なら僕も速度だ!

 僕はフリード・セルゼンの速度と同等に移動し、そして剣を交え合わせる!

 

「おぉ! 速度は互角! なら剣の性能ってことですわぁ!!」

 

 フリードはエクスカリバーを僕に振りかざす……だけど僕は既にそこにはいない!

 僕の速度は今のが限界じゃない!

 

「前の僕ではない! 今の僕は仲間に支えられ、みんながついている! だからもう迷わない!」

「うっしゃぁ! じゃあ俺も迷わずにお前さんを潰してあげるぜ!」

 

 フリード・セルゼンは剣を振り回し、すると剣が徐々に変化を始める!

 次は擬態の力か!

 聖剣の形状が変化して、鞭のような聖剣が僕を襲う……けど全てを避ける!

 それくらいの攻撃、イッセー君との鍛錬でいつもそれ以上を受けていた!

 

「目視できないならどうかなぁ!?」

「ッ! 厄介だね、エクスカリバーは!」

 

 ……鞭の形状から、次はそれが消える!

 おそらく、他のエクスカリバーの能力だろうね。

 全く以てエクスカリバーは厄介にも程があるよ。

 ……でも見極める。

 僕はイッセー君に言われた―――慢心は捨て、臨機応変に戦えと。

 例え変幻自在のエクスカリバーだとしても、絶対に穴が存在している。

 フリードは見えない軌道による斬撃を僕に飛ばしてくるが、僕は聖なるオーラの気配を感じ取るように目を瞑る。

 ……僕の中には皆の聖剣の因子がある。

 それが教えてくれる―――僕は目を開けた。

 

「聖なるオーラを感知したら、即席のそんなものは僕には通用しない!」

 

 僕は全ての攻撃をいなし、そして聖魔剣で切り落とした。

 それと共にフリードの懐に入り込み、聖魔剣を両手で握ってフリードに切り掛かる……しかしフリードはその剣をエクスカリバーで受け止めた。

 そしてフリードと鍔迫り合いとなった。

 

「……前と全然違うねぇ。聖魔剣、ここまでこのエクスカリバーと打ち合って、折れないとかふざけたスペックだぜ!!」

「僕たちの聖魔剣だ―――何があろうと折れないよ!」

 

 僕は両手で握る聖魔剣から左手を離し、即座にもう一振りの聖魔剣を創る。

 それをフリードに対して振るおうとするも、フリードは察知したかのように懐から以前使っていた光の剣を取り出し、僕の剣を薙ぎ払った。

 ……単純な筋力は僕よりも強いようだね。

 ―――僕はそこで自分の後方に目をやった。

 

「……悪いけど、君の相手は僕だけではないようだ」

 

 そこにはゼノヴィアさんがいた。

 僕たちの鍔迫り合いの最中、何かを呟いているゼノヴィア。

 

「ペトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ」

 

 ―――ゼノヴィアさんはそう呪文のようなものを唱えると、彼女の手元の空間にひびが入った。

 そしてそこから……鎖で包まれている大剣が出現した。

 ―――あれは聖剣。しかもエクスカリバーよりも大きなオーラを有している!

 

「この刃に宿りしセイントの御名において、我は解放する―――デュランダル!!」

 

 ゼノヴィアは宙に出現する剣の柄を掴み、そのまま振り抜く。

 その剣を拘束していた鎖は、まるで糸が切れるように粉々になり、ゼノヴィアはその聖剣―――伝説の聖剣・デュランダルの剣先を僕たちの方に向けていた。

 

「デュランダル!? 貴様、エクスカリバーの使い手ではなかったのか!? それに私の研究ではデュランダルを扱うまでの所までは到達していない!」

 

 彼女の発言にバルパーはひどく驚いている……僕も驚いているよ。

 デュランダル……エクスカリバーに並ぶほどの聖剣の一つだ。

 

「私はイリナやそこの男とは違って天然ものの聖剣使いでね」

 

 なるほど、彼女は僕達と違って神から祝福されて生まれたということか。

 だけど関係ない……神など、僕にとっては何の意味もなさない!

 

「……デュランダル、ねぇ―――でもそれ、使い手によって変わるんじゃないんでしょうかぁぁ!!」

 

 フリードは僕の鍔迫り合いを避けてゼノヴィアに鞭型の聖剣を伸ばす!

 そしてそれは透過する。

 

「なるほど、透過の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシ―)か。擬態と合わせるのは上手い……君は私よりも聖剣の扱いが上手いようだな―――だが」

 

 ゼノヴィアはデュランダルと破壊のエクスカリバーを両手で二刀流にする……伝説の二つの聖剣の二刀流。

 

「私の方が性質的に適合している!」

 

 ……すごい。全ての聖剣を文字通り破壊している!

 特にデュランダルは僕の聖魔剣よりも凄まじいオーラを発している!

 

「ったくよぉ!!」

 

 フリードはゼノヴィアへと距離を詰める……でも!

 

「君の相手は僕だ!」

「ちぃ! 流石に二人相手はきついものですけどぉぉぉ!!」

 

 僕はフリードの道を遮るように聖魔剣を片手に身を乗り出す。

 対するフリードはエクスカリバーを巧みに操り、剣戟に剣戟を重ねていく!

 余波だけで僕の体には少し傷が出来てしまい、直撃をすれば致命傷は避けられないだろう。

 ……フリードはエクスカリバーの性質を使う。

 天閃と擬態と透過の合わせ技。

 速い速度で僕へと透過している鞭型の聖剣が襲いかかる……これはイッセー君に言われたことを実行するしかない!

 

『常に臨機応変に思考して戦えよ? だったらお前は普通に強いからさ』

 

 ああ、そうするよ!

 僕は聖魔剣を無数に創り、そしてそれを盾のように形で地面から生やした!

 僕の姿を彼の方向から完全に剣の影で見えなくする!

 僕は見えない状態を利用して高速で移動し、そしてもう一本の聖魔剣を創った!

 ゼノヴィアを見習って二刀流で行こう……もう終わりにするよ!

 

「二刀流! んじゃ俺もそうさせて貰いますんでぇぇぇ!!」

 

 エクスカリバーを二つに分裂……というよりかはむしろもう一本創ったのか?

 ―――いや、あれは幻術!

 

「……まさか夢幻の力までも使いこなすとはッ!!」

 

 ゼノヴィアさんがフリードに向かい、剣を構えたまま感嘆の声を漏らす。

 夢幻…………幻術の類か!

 本当に君には驚かされるよ……ここまでエクスカリバーを使いこなすなんてね!

 でもだからこそ戦いがいがある。

 ―――僕たちがエクスカリバーを越える、その価値がある!

 

「聖魔剣! すんばらしぃぃぃ!!」

「……僕達は、エクスカリバーには負けない!!」

 

 僕は全魔力を聖魔剣に込める……これで終わりだ!!

 

「おぉ!? まさかこれは……」

 

 そうだ―――僕が二本目に創りだした聖魔剣は光喰剣!

 光を食う……つまり君の聖剣という光の剣によってもたらされたそれは僕の剣の餌食だ!

 彼の幻覚の剣は消える…………これで終わりだ!

 

「うぉぉぉぉぉぉぉ!! 僕達の、勝ちだ!!!」

 

 僕はそのまま聖魔剣をエクスカリバーにぶつける!

 激しい金属音、それと共に―――勝負はついた。

 

「……皆、僕達の剣は……―――エクスカリバーを越えたよ」

 

 ―――エクスカリバーは、真っ二つに折れた。

 

「おいおいまじで!? …ああ、せっかくイッセー君と戦える力が手に入ったと思ったのになぁ……」

 

 ……でもフリードは嫌に冷静だ。

 本当に彼は偽物じゃないかという錯覚に陥る。

 

「……でもまあ楽しかったらいいぜぃ!! ええっと、何だっけ? 木場祐斗くん? 君、俺の中の倒したいランキング上位にのりましたぁ! おめでとう!! ―――いつか、絶対に潰すからね?」

「ああ、その時はまた勝たせてもらう」

 

 僕は涼しい顔したフリード・セルゼンに聖魔剣の一閃を浴びせると、フリードはそのまま倒れた。

 ……少しはマシな人間になったようだね、君は。

 

「ば、馬鹿な!?そんなことがあり得るわけがない!聖と魔、二つの相反する力が混ざり合おうなどと!!」

「―――黙れ」

 

 僕はバルパーの両肩に目掛けて聖魔剣を投剣した。

 剣はバルパーの両肩を貫き、そこから更に生々しい血が流れゆく。

 バルパーの戯言なんて、疑問何て僕にとって何の意味をなさない。

 僕は更にもう一本聖魔剣を創り出し、バルパーに一歩近づいた。

 

「そんなこと、どうだっていい。ただ僕は貴様を斬る。それだけだ!」

「そうか、わかったぞ!聖と魔、二つが混ざり合うということは、つまり神が創ったシステムは消失しているということ!つまり魔王だけでなく神も―――」

 

 ……だけど、バルパー・ガリレイが全ての台詞を言い終わることはなかった。

 何故なら、彼の腹部に巨大な光の槍が刺さっているからだ。

 そしてバルパー・ガリレイは…………光の藻屑と成って消えていった。

 

「バルパー、貴様は非常に優秀だった。貴様がその真理にたどり着いたのは、優秀だからであろう……だがお前がいなくとも、俺は別に一人で何とかできた」

 

 ……コカビエルの、攻撃だ。

 奴は僕達の目線の先の空中で浮遊しながら、未だなお僕達を見下ろしている。

 こいつは、自分の仲間すらも殺すのか!!

 

「聖魔剣にデュランダル、魔王の妹……だが足りないな。お前たちでは決して俺には届かない。所詮は雑魚だ。殺すに限る」

 

 ―――コカビエルは震えだすほどの光の槍を創っていた!

 まずい、あれが放たれたら、結界は関係なくここら一体が消滅してしまう!

 僕は聖魔剣を、他の皆は魔力で魔力壁を作って防御しようとする。

 

「――――――誰が誰を殺すって?コカビエル」

 

 ―――戦場に響く、新しい声。

 酷く低く、明らかな怒気を含んでいる声。

 ……僕は、その声を聞いて体が震えた。

 

「貴様……」

 

 僕だけじゃない……アーシアさんはその姿を見て涙を流し、部長や朱乃さん、小猫ちゃんは頬を真っ赤に染めてその姿を見ていた―――全く、君は本当に最高のタイミングで登場するね!

 でも、だからこそ憧れる!

 

「俺の仲間に手を出してんじゃねえよ、コカビエル!」

 

 ……そこには紅蓮と白銀の篭手を装着したイッセーくんの姿があり、その手には大きな9つの首を持つ魔物を掴んでいた。

 ―――ここからは彼の独断場。

 僕はそう確信していた。

 

『Side out:木場祐斗』

 

 ―・・・

 

 俺は部長達より後方の宙からコカビエルに向かってそう言い放つ。

 

「い、イッセー…………あなたは、本当にッ!」

 

 部長や皆が俺の姿を見て驚いているが、俺は真っ先に祐斗の方に向かった。

 俺がここに着いたのは少し前で、俺は祐斗とフリードの戦いを見ていた。

 だからこそ、あいつに言いたいことがある。

 俺は先ほど、ティアと共に倒したケルベロスをその場に放置すると、そのまま祐斗の元に行った。

 

「良くやった、祐斗! ったく……カッコいいな、お前!」

「イッセーくん……僕は……」

「話は後だ……これ、皆に渡しておいてくれ」

 

 俺はどこにでもあるビニールの袋を祐斗に渡す。

 そうそう……こいつのために俺は来るのが遅れたんだよ。

 祐斗はその中身をみて驚いている……そこには俺が大量に創った癒しの白銀(ヒーリング・スノウ)があるんだから当然か。

 

「こ、これは……」

「皆怪我してると思ったから、アーシアの回復じゃあ間に合わないと思ってさ……少し無理して創ってきたんだよ」

 

 お蔭で若干精神的にダメージが少なからずあるが……まあ大丈夫だ。

 

「……君はすごいね。イッセー君、僕は」

 

 ……祐斗は若干申し訳なさそうな顔をしているが、俺は祐斗の手元の白黒の聖魔剣を見た。

 

「……聖魔剣か。お前もついに至ったわけだ―――良くやった、お前は強い。認めてやる…………だから後は俺に任せろ」

 

 俺は空中に浮かぶコカビエルを睨みつける。

 

「責任を以て……」

 

 拳を握り、その拳をコカビエルに向け、そして言い放った。

 

「―――あの野郎をぶっ倒してやるからよ」

 

 俺はそう言うと、祐斗の肩をぱんと叩いて皆より、一歩前に立つ。

 

「イッセー!」

「……部長、俺が帰ってきたら、それで全部解決ですから」

 

 俺は振り返って、笑顔を見せると部長は綻んだ表情となった。

 

「…………イッセー先輩、勝ってください!」

「イッセーさん! 怪我をしたら私が癒します!!」

「帰ってこないとお仕置きですわ!」

「……イッセー、戻ってきたらお礼をさせてちょうだい」

「……イッセー君、僕は君を、君を信じてるよ!」

 

 ……皆の激励が俺の背中にぶつかる。

 心地いい……皆に背中を押されて、俺は翼を織りなしてコカビエルと同じ目線に立った。

 

「……貴様、あまりにも無傷すぎる。あれは上級悪魔でも倒せぬ魔物だぞ?」

 

 ……まああの時はティアもいたし、それにあの犬は何かある程度潰しまくったらなんかおとなしくなって従属してきたし。

 ティア曰く、あのケルベロスに懐かれたらしいけど、あんなのに好かれても嬉しくねえよ!

 ―――とにかく俺は

 

「じゃあ理由は簡単だ……俺が上級悪魔よりも強い、それだけだろ?」

「ははは! その通りだ! お前は素晴らしい……素晴らしいぞ!」

 

 コカビエルの堕天使としての力が発揮され、巨大な光の槍が様子見として放たれる。

 俺はそれを―――一動作、拳で振り払うように消し去った。

 俺が悪魔に転生して以来、たぶん一番の強敵だ。

 でも負ける気は全くしない。

 この馬鹿は、ただの戦争狂で、俺達を殺そうとしている……それだけで十分だ。

 

「ははは! 俺の槍を拳をぶつけるだけで消し飛ばすとは驚きだぞ!」

 

 コカビエルは嬉しそうにそう言う……そうだ、こいつに教えてやる。

 

「俺が何で部長の下僕かを教えてやるよ。仲間以上の理由を見つけたよ」

「……ほう、冥土土産に聞いてやる」

 

 コカビエルは腕を組み、興味深そうにそう言ってくる。

 そして―――

 

「―――守りたいから。云々を全部おいて、単純に守りたいからだ」

『堕天使コカビエル。この者は守るための赤龍帝だ。貴様のような屑では釣り合わない』

『故に我々の力を持って、貴方を潰しましょう……優しいドラゴン、最高の赤龍帝、兵藤一誠と共に!』

 

 ……流石のコカビエルもドライグとフェルの声に驚いているようだ。

 

「……ほう、優しいドラゴンに最高か―――ならば見せてみろ! 貴様を力を!!」

「言われなくても見せてやる……いくぞ――――バランスブレイク」

 

 ……俺は小さくそう呟くと、俺の体から赤い紅蓮のオーラが辺りを覆う。

 さぁ、これでお前を倒してやるよ……コカビエル!

 

『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!!!』

 

 俺の体に次々に赤龍帝の鎧が装着され、そして俺は変形する……神器の奥の手、禁手(バランス・ブレイカー)に。

 

赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)……さあ、潰すぞ、コカビエル!」

 

 俺は開戦の狼煙のごとく、最初から命を奪う勢いで魔力弾を放った!


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