ハイスクールD×D ~優しいドラゴンと最高の赤龍帝~ 作:マッハでゴーだ!
俺が死んで、そして赤ん坊として転生してからおそらく3カ月くらいが経った。
恐らくという未確定な言い方なのは、未だに俺が時間の経過とかその他云々を理解していないことが原因。
……っということを語る前に、まずは俺がそこまでに苦労した様々経験を語ろう。
『何を言っている? 相棒。相棒は少し、自暴自棄になっているのではないか?』
ドライグの鋭い指摘が俺へと向けられる!
うるさい! こっちは初めてすぎることが多すぎて混乱してんだよ!!
……と、ドライグを責めるのはそろそろやめておこう。
まずは一般的な事から考えてみる。
赤ん坊の記憶なんて普通は存在していないものであり、仮に大きくなって記憶に残っている場合を考えても、それは極稀なケースだ。
だけどそれどころか今の俺には前世の意識が普通に存在している。
前述の事なら極稀だけど、今の俺の状況は間違いなく唯一と言っても良いかもしれない。
……さて、じゃあ次の問題はさっきも言った通り、今の俺の問題だ。
生後3カ月。
普通に言えば赤ん坊で、そりゃあお母さんがいなければ生きていけないような年齢だ。
だけど今の俺の精神年齢は既に18歳だよ?
流石にさ……。―――歳がほとんど変わらないような女の人の胸を見たり、母乳を飲むのにどれだけ抵抗があるのか、理解できるのか!?
なあ、ドライグさんよ!?
『母であろう? ならば問題ないのではないか?』
母は母でもこの人、めちゃくちゃ美人で正直、昔の俺より年下に見えるんだよ!
体は子供でも精神年齢18歳だぞ! 思春期舐めるな!
『俺の相棒はもっと爽やかで叫ぶような性質はしてなかったはずだが……』
……その点では悪いけどさ、ただでさえストレスが溜まるんだよな、意外と赤ん坊ってさ。
前までは赤ん坊は世話してもらえるから楽だと思っていたこともあったけどさ、実際赤ん坊になってみるとわかったことがあるんだよ。
『ほう……それはいかにも興味深いな』
まずは話せない。これ一点だよ。
それに日本語? っていうのは未だに俺には理解できていないよ。
元々は俺は違う国の、ここで言ったら外国人だったんだからな……最近、やっと自分の名前を兵藤一誠って理解できたレベルだよ。
『その辺は大して問題ない。……相棒は頭が良いからな、今でもある程度は理解しているのだろう?』
ああ、そうだな……外から話しかけられる母と思われる女の人の言葉やドライグのある程度の説明で日本語については少しは理解している。
簡単な日本語……例えばこんにちは、とか日常会話に関しては既に理解した。
ドライグが日本語がわかるのは、ドラゴンは相手の言葉を自動で自分の言語に出来る、そして自分の言う言葉を相手の最適な言語に聞こえさせることが出来るらしい。
意外なドラゴンの利点を俺は少し前に知った。
『ドラゴンは非常に優れた種だからな……だからこそ、ドラゴンは恐れられる』
ドラゴンは恐ろしいか……俺はそうは思わないけど。
もちろん、俺が兵藤一誠になる前にドラゴンという他の個体を見てきたことはある。
だけど俺はそこまでの否定的な感情を抱いたことはなかったよ。
『相棒は変わっているな……ドラゴンと言えば畏怖され、嫌煙される存在だろう?だからこそ
んん……でもさ、俺からしたらドライグなんて良いやつだぜ?
俺の力になってくれるし、こうやって話相手になってくれる。
そもそもドラゴンスレイヤーが出来たのも、悪いドラゴンが存在していたからなら、そんなのドライグには無関係だろ?
まあ多少ヤンチャし過ぎて色々な存在を怒らせたのはダメだと思うけど。
でも命あるものを殺そうとした、虐殺とか、欲望のために戦っていたわけではない。
白龍皇であるアルビオンとも戦っていた理由は単なる喧嘩だったんだ。
だったらまあ……なんとなく、悪い存在とは思えないかな?
『……あはははは!! これだから相棒は最高なんだ!! 優しいドラゴンのあだ名は相変わらず、健在だな!』
……
二天龍と称されるドラゴンで例外を除けばトップクラスの龍であり、そして俺の相棒だ。
何でも昔にドライグと対を成す
『ははは、懐かしいな。……あの頃は白いのも、俺も若かったし、何よりも時期が悪かったな』
ドライグは自嘲気味にそう呟くが、実際の所、俺自身が良く知っているわけではない。
俺も存在を詳しく知っているわけではないけど、その昔、悪魔と天使、そして堕天使が三つ巴の戦争をしていたらしい。
悪魔や天使、堕天使からしたら互いの命を懸けて戦っていたんだろう。
だけどその中に全く無関係の、ただただ喧嘩をしていた二天龍……つまりドライグとアルビオンは三勢力を無視して喧嘩をしたらしい。
『そして俺と白いのは激高した悪魔、天使、堕天使によって滅ぼされ、そしてその魂が神器に封じ込められた』
そうそう!
それが
『白いのが封印されているのが
そっか……やっぱり、白龍皇の神器も他の人間に転移してるのか?
『…………。ああ、恐らくは既に宿っているか、それとも眠っているかだろうな―――ミリーシェの存在は今の所は俺の口からはどうとも言えない。ただ一つ……彼女はあの時―――すまない』
……何で謝るんだよ、ドライグ。
今のどころに謝る要素があったんだ?
誰が悪いとか、そもそもドライグは何も悪くない。
そして何よりも俺が死んだのだって全部自分の責任だ。
そこには誰の介入も、苦言だって許されない。
俺が死んで、ミリーシェが死んだ―――それが理不尽なものだったとしても、それはどうしようも出来ない事実なんだ。
だから今は俺はそれを背負って、ミリーシェを忘れてはいけない。
……っていうか、あれくらい強烈な奴を忘れることなんかできないよ。
―――ずっと、永遠に。
『……そうか―――そう言ってもらえると助かる、相棒。だが全部を背負う必要はない。少なくとも相棒である俺も、一緒にその十字架を背負おう』
……こんな暗いのは無しだ!
とにかく、せっかく繋がった命なんだ。
前に出来なかったことを絶対にしてみせるよ、ドライグ。
前にはいなかった家族、大切と思えるような存在を……手の平で収まる大切を俺は守りたい。
―――二度も、失ってたまるかっ。
『……ああ、期待している。相棒』
俺は心の中でドライグと笑いあう。
『時に相棒―――そろそろ
…………ッ!?
ドライグのその言葉で、俺は今まで自分から意識を逸らしていたいた現実を突き付けられた。
ドライグ、お前はなんてことを!
せっかくお前とこの会話を通じて分かり合えたと思っていた矢先に!!
現実逃避していた事柄を持ってくるとはどういうことだ!!
『相棒よ。……今を生きるためには何が必要か、わかっているだろう? 腹減っては戦はできぬというやつだ』
くそ、ドライグの野郎!
少し鼻で笑いながら言いやがった! しかも変な言葉使うなよな!
こっちは日本語のコトワザとかカクゲンって奴が未だに理解不能なんだからさ!!
「はぁ~い、イッセーちゃん? おっぱいのお時間でちゅよ~?」
……とてつもなく甘美で優しそうな声音と赤ちゃん言葉で、俺が眠るベビーベットに近づいてくる俺の母こと兵藤まどか。
それと共に俺の中の衝動が……!
「おぎゃぁぁああああああああ!!!」
うぉぉぉぉぉおおおお!?
何で泣くのを止められないの!?
ドライグ、助けてくれぇぇぇえええ!
『相棒よ……生きていくためには母から栄養を貰わなければならん。いい加減慣れようか』
慣れたくねぇぇえええ!!
そう言っている間にも母は俺に近づいてくる。
「あらら、ベストタイミングね♪ はぁ~い、イッセーちゃんの大好きなママの大きなおっぱいでちゅよ~」
自分で言うなよ、母さん!?
でも母は俺をそっと抱きしめ、そして俺を少し斜めになるように抱きしめる。
そして服を脱ぐ、下着を外すと母さんの乳房が!!
これは、覚悟がいるのか!?
何で赤ちゃんなのにここまでの覚悟がいる? そして何で本能に負けて俺は乳を吸おうとしているんだ!?
「ん、ちゅ~……」
「あぁん……」
―――……そして何でそんな甘い喘ぎ声を出してんだよ、かあさぁぁぁぁぁぁぁあああんん!!!?
「もう、相変わらずこの子はぁ~……いやぁん♪ そこだめぇ……」
いや、だからさ!?
何感じちゃってんの!? 俺、赤ん坊だよ!?
『ははは、相棒、楽しそうだなぁ』
笑うなよ、ドライグ! この野郎!!
お前のあだ名を赤龍帝から乳龍帝に変えるぞ、おら!!
『…………それだけは止めてくれ。なぜだか分からないが、あり得ないほどの拒否反応がするんだ、その言葉には……まるで別世界からの交信のような……。ははは、何を言っているんだ、俺は』
そこで拒否するな!
「もう、この子ったら……。将来絶対、すごい色男になるんだから。あの人と違って」
いや、ホント何言ってんの、母さん!?
お願いだからホント止めて!?
そんなことを言っていたらお父さんが泣いちゃうぞ!?
最近だって母さんが俺に付きっきりだからっていつも泣いているんだからさ!?
男泣きであの超筋肉質な体系で哀愁漂わせているんだよ!?
「もぅ……イッセーちゃんはホントに。こうなったら私好みに育てて将来的には……ふふ」
はいぃぃぃぃいい!!?
それ軽く、犯罪的な言葉だから! 何、淫靡な表情で真剣に計画してるの!?
まず子供に手を出す前提が終わりだからさ!!
『なんだ、相棒……日本語を理解しているじゃないか』
理解してなくてもわかるわ、雰囲気で!!
それよりどうするの!? 俺、将来的に母さんに!母さんに!!
『落ち着け、相棒。いくらなんでもそれは……』
「そうね……中学生くらいが食べごろかな?」
………………………………俺たちの無言は数十秒続いた。
『すまん、相棒。責任は持てない』
おい、このドラゴン!
どうするんだよ! そこは断言して「違う!!」って言うところじゃないのか!?
それでも相棒を名乗るのか、この野郎!!
―――こうなったら今すぐにこの状況を打開する事の出来る、子供ならではの、あの手を使うしかない!
「ぎゃぁぁぁぁぁあああ! おぎゃぁぁぁぁあああ!!」
「あらあら、もうおっぱいは良いのかな? ……残念♪」
そう、泣く……それこそが赤ん坊である俺にしかない特権であり技である。
そして今の母の声は俺には当然、届いていない。届きたくもない。
むしろ届くな!!
『今日の相棒は荒れてるなぁ』
……そりゃ荒れるだろ。
搾乳の時間の度に女としての喜びを母さんは抱くんだよ?
ねぇ、ドライグ……精神年齢は俺と全く変わらない女の子の乳を吸って感じられる苦しみ、分かる? 分かったら乳龍帝だからね?
そもそもミリーシェともそういうことは出来なかったんだからさ!!
『…………。すまなかったな、だから許してくれ―――そして乳龍帝は止めてくれ』
ドライグは沈んだ声でそう言った。
……っと、ここでなんか眠くなってきたよ。
「あらあら……イッセーちゃんは眠たいのかな?」
母さんはそう言うと、俺を抱っこしてそのまま子守唄を歌う。
少しあれなところもあるけど、でもこの人の優しさと温かさは本当に”お母さん”だ。
そして母の温かみは俺は知らない……だって知る前に俺の母さんは死んでいたから。
父さんも俺にはいなくて、家族の温かさは何一つとして知らなかった。
だからこの暖かさは心地いいし、それに……好きだ。
……ミリーシェを失ったあの苦しみの中で転生して、今なお俺がこんな風に話せるのはきっと―――家族の温かさの断片を教えてくれた母さんと父さんのおかげだから。
「本当にイッセーちゃんは可愛い。子供って、本当に宝なのね……」
『……相棒の母は良き母だな』
ああ……ホント、そうだな。
俺は母さんの腕に抱かれ、顔を胸に当ててそのまま目を瞑る。
そして静かに母さんの胸で眠ったのだった。
「すぅ……すぅ……」
「うふふ……おやすみなさい、イッセーちゃん―――良い夢を、見てね?」
―――この時、俺は母の暖かさを知ったのだった。
―追記―
2014 5/4 誤字修正&描写を追加しました。
2015 9/12 完全修正完了