ハイスクールD×D ~優しいドラゴンと最高の赤龍帝~ 作:マッハでゴーだ!
第1話 幼馴染に聖なる剣です!
『そういうわけなのよ、イッセー君』
俺、兵藤一誠は幼馴染と国際電話で通話をしていた。
唐突で悪いから説明すると、俺の幼馴染は小さい頃、俺の家の隣に住んでいて良く遊んだりしてたんだけど、親の都合で幼い頃に外国に引っ越したんだ。
それから再会したのは8歳の時で、俺がちょうど2年間、ヨーロッパで住んでいる時だったな。
それからは月に一度くらいは連絡を取り合っているわけなんだけど、最近は悪魔とか堕天使とかの関係でなかなか連絡が取れなかったんだ。
それで久しぶりに連絡が来たから、今は幼馴染……
紫藤イリナと電話越しで話している。
「つまりイリナは一度、日本に戻って来るってことか?」
『そうなのよ!教会のお仕事がすごく忙しくてね?今回は仕事で日本に行かないといけないんだけど……その時にイッセー君の家に寄ろうかと思って♪』
……イリナの話は至極単純だ。
要は一度、日本に帰るから久しぶりに会おう、ということだった。
イリナは教会関係者だから、悪魔的にあんまり関わりを持っちゃいけないとは思うけど、でも小さい頃から仲が良いし何より幼馴染だからな。
「おう、いつでも来いよ。母さんもイリナなら許してくれるだろうからさ」
『流石はイッセー君!私はイッセー君を信じてたわけよ!ああ、主様、我が心優しき幼馴染に祝福あれ!』
「……ッ!」
…………何も知らないイリナだから仕方ないかもしれないけど、そういう神に祈られる行為でも悪魔にダメージって来るんだな。
とにかく、俺の幼馴染は相変わらずということで、俺は少し世間話をしてからそのまま通話を切ったのだった。
そして俺はそのまま携帯電話をベッドの上に置くと、そのままベッドの上で横になる。
『珍しいな、相棒。今日は随分と疲れているようだが……』
「……そんなに暴れてたわけじゃないんだけどさ、疲れが来たのかな?ほら、この前は悪魔になって初めて
この前っていうのは、部長とライザーとの一件のことだ。
グレモリー眷属はゲームに負け、だけど俺は婚約発表の会場に殴り込みをし、部長との婚約に関してライザ―と一騎打ちでの勝負をした。
その際に使った悪魔になってからずっとドライグが調整を続け、ようやく使えるようになった神器の奥の手……
その疲れが時間差で来たのかな?
『おそらく単なる気疲れと思いますよ?それに最近の主様は女難が激しそうですから……』
……フェルが俺にそう言って慰めてくる。
フェルの言うとおり、俺は以前にも増して女難が増えてきたような気がする。
ライザーの一件で部長の婚約は解消され、ライザーはドラゴン恐怖症に陥り、問題はめでたしめでたしとなったんだけどさ。
あの一件以来、部長は俺の家にアーシアと同じくホームステイという形式で同居を始めたんだ。
悪魔の話術で母さんを説得し、そして今は俺の家で住んでいるわけなんだけどさ……部長はライザ―との一件以来、俺のことを前以上に可愛がってくるようになったんだ。
例えば、何かにつけて身体的接触をする。
それをアーシアが家の中で発見、自分も俺と触れ合おうとする。
それによって俺の中のドライグとフェルが怒る。
そして部長とアーシアによる俺の取り合いが始まる…………そう、家の中でも俺の女難はあるんだよ。
しかも悪いことに俺の母さん、見た目は高校生でも十分に通用する兵藤まどかは俺にすごい愛情を持って接してくるしさ……
想われることは幸せだけど、それによって引き起こる二次災害の規模がすごいんだ!
学校ではアーシア、部長に加えて更にそこに小猫ちゃん、朱乃さんが入ってくる。
しかも面倒なのが……そう、あのエロメガネ女、桐生藍華!
俺が部員の皆と仲が良いことを変な方向で捉えやがって、毎晩、女を喘がせてるとかホラ吹きやがるんだ、あいつは!!
お陰で最近、男子の俺に対する視線がかなりやばくなってきたんだ!
特に松田と元浜なんか俺の顔を見ただけで泣いてきてさ、それで慰めたら慰めたでキレてくるし……
とにかく、毎日は楽しい代わりに気疲れがすごいです!
ついでに言えばライザー戦以来、ライザーの妹であるレイヴェルからよく手紙が送られてくるようになったっけ?
すごく奥ゆかしい達筆な日本語を書いて送ってくるもんだから感動して、今では文通をしたりしている。
それで小猫ちゃんがじと目で俺を見てくるようになり…………言っているとキリがないな。
ちなみにオーフィスは三日に一度、風のようにやって来て、誰かが俺の部屋に来るとまた風のように消えていくんだ。
『相棒、一度は女との関係を止めるのも手だと俺は思う。むしろ相棒はパパと一緒にいよう』
『マザーも必要ですよね?もうドラゴンファミリーで過ごしましょうか?』
……ちなみにドラゴンファミリーって言うのはティアが名付けた俺達の略称みたいなものだ。
オーフィスの立ち位置がなんだかよくわからないんだけど、一応のメンバーはドライグ、フェル、ティア、フィー、メル、ヒカリ、そして俺らしい。
「……とりあえず、今日は休むよ。明日も早いしさ……」
毎朝の習慣のランニングもあるし、俺は部屋の電気を完全に消して、瞳を閉じる。
……そしてこの時、俺は朝、あんなことになるなんて思いもしてなかったんだ。
―……
俺は朝、朝食を食べていた。
自分でも理解出来るくらい、俺は……
「い、イッセー……その、大丈夫?」
「は、はぅ……い、イッセーさん……」
「い、いやぁぁぁ!!イッセーちゃんの目が!目が死んでる!?」
……元気がないだろうな。
俺がこんな状態になっているのには理由がある。
まずは今朝まで遡ってみようか……朝一番の俺が見たもの、それは
「ごめんなさい、イッセー……私、裸で貴方の体に触れてないと眠れないのよ……」
そう、全裸の部長の姿だった!
そりゃあもう朝から少し叫んだよ!家中に響く位の大声で叫びましたよ!
そのお陰でアーシアと母さんが俺の部屋に入ってきて、母さんはいつものことながら叫びながら俺の部屋から出て行って、アーシアに至ってはせっかく着替えてたジャージを全部脱ぎ捨てて……
「仲間はずれは嫌です!私も裸になってイッセーさんと!」って言いながら俺の腕に抱きついてきた!
そして俺は頭の中がわけわからなくなって、心を無にするべく朝から悪魔の体をフルで使って、フルマラソン以上の距離を走っていたんだ……
お陰で精神的には回復したけど、体力的に今の俺は顔が死んでるだろう。
フルマラソンを一時間二〇分ほどの時間で疾走……人間の速度を完全に超えました。
だって悪魔ですもん。
「あ、そうそう……母さん、イリナがね?一度日本に帰って来るって……」
「そ、そうなの?それよりイッセーちゃんは今日は学校を休んだ方がいいわよ?顔色が優れないから、お母さんが一日看病してあげるからね?」
……母さんがすごい心配してくれる。
それだけで、俺は戦えるさ……
「大丈夫だよ、母さん……俺、ちゃんと生きて帰ってくるからさ……帰ってきたら、言いたいことがあるんだ……」
「止めて、イッセーちゃん!すごい死亡フラグにしか感じないから、その台詞!リアスさん、アーシアちゃん!イッセーちゃんをちゃんと見ていてあげて!」
「「は、はい!!」」
……母さんの阿修羅を連想させるような形相で二人に迫るから、二人は即答する。
それはそうと、最初のきっかけはどうであれ部長とアーシアと母さんは仲良くしていたりする。
元々母さんは人懐っこくて、少し人見知りなとこはあるけど誰とでも仲良くなれると父さんが言っていた。
だからすごく仲が良くて、俺も安心はしている。
っとそろそろ時間か……すると部長は母さんに何かを言っているようだった。
「お母様、実は今日、部活をこの家で行いたいのですが……」
「別に良いけど、どうしてなの?部室とかは?」
「それが今日は部室がある旧校舎が耐震検査で使えませんので……それでよろしいでしょうか?」
「良いわよ?イッセーちゃんが所属している部活のことだもんね!」
母さんが歳と比例していないVサインを部長に送っている……アーシアはそんな母さんを見て目をキラキラしていた。
「す、すごいです……私たちより年上なのに、童心が全く消えない純粋さ……憧れてしまいます!まどかさん!!」
……そう言えば、アーシアの憧れの人は母さんだったな。
どうもアーシアには母さんが料理が出来て、若々しくて、優しくて、家族を大事にする良母に見えるらしい。
確かに母さんは良いお母さんだけど、でも父さんに対しては俺が生まれてからすごい適当な接し方だぞ!?
父さんとの時間を過ごすよりも俺のことを優先するし、ご飯は何故か俺の方が豪勢だし!
流石に俺も父さんに同情せざるを得ない!
大切にしてるとは思うけど……でも父さんと母さんを歩かせたら犯罪チックなんだよな。母さんは良くも悪くも若いし、父さんは逆に歳の割に老けてるし。
―――そんなことを思っていると本当に時間が危なくなってきた!
「アーシア、部長……時間がやばいです!」
「あら、本当ね。じゃあお母様、行ってきます」
「行ってきますね!」
俺たちは鞄を持って玄関に向かい、そのまま急ぎ足で学校に向かうのだった。
―……
学校に着いて、一番最初の授業が体育ということもあり、俺はクラスの男子と共に更衣室で体操着に着替えてグラウンドに出ていた。
ちなみに女子もその日はグラウンドでの体育らしい。
男子の数はやっぱり少なく、出来る種目があまりないということで今日は50メートル走を測っているんだけど……実は今日の体育においては、一年の小猫ちゃんのクラスも運動場でバレーをしているんだ。
それですごく視線を感じる。
視線を感じる方に顔を向けると、いつも小猫ちゃんがこっちを見ていてなんか落ち着かないんだよ!
「おい、イッセー……今日は負けねえぞ?」
「……松田、それは勝ってから言う台詞だぜ?」
……ちなみにこのクラスでは松田は俺に続いて運動能力が高い。
普段はエロエロなことでうるさいくせに、こういう体育の時だけ爽やかさを感じさせる表情になるんだ。
これをクラスの女子が見れば、見直すと思うんだけど……
「さあ、兵藤!お前の速度を俺に見せてくれ!」
……妙に授業に熱いと評判の体育のゴンダ先生が、生き生きとした表情で俺にそう言ってきて、俺と松田はスタート位置に立つ。
そして先生の声を合図に、同時に走り出した!
「ッ!!」
……流石は松田だ。
足がすげぇ速い……人としては相当な速さだな。
もちろん、人間の頃の俺はこいつよりも速かった……でも俺は悪魔になってから体の根本の部分で変わっちまったからな。
今では体育の授業は流すだけでも評価は高い。
本気を出したら、皆の目が飛び出すくらいやばいからな!
……でも加減ってやつはすごい難しいんだ。
本当なら五〇メートル走くらいなら二秒程で走れるんだけど、今の俺は六秒くらいで走っている。
それ以上、速度を出すと流石に奇妙過ぎるからな。
「くそ!どうして兵藤は走っている時でさえ男前なんだ!」
「男でも憧れてしまうほど男前でカッコいいから悔しい!」
「むしろ爽やかイケメン、木場祐斗ならば陰口も叩けるのに!」
……俺は走り終えて、クラスメイトの近くに寄るとそんなことを言っていた。
……止めてあげてくれ!最近の祐斗は不憫過ぎて俺が優しくしてやるレベルなんだよ!
それ以上、言われたら祐斗が本気で泣いてしまう!
俺はそう思いながらも静かにクラスメイトから離れて芝生の坂のほうに行って横になった。
今日は計測をしたら後は自由だからな。
この学校は自由な校風だから、体育の時間は本当に緩い。
だからこんな風に芝生で横になったりも出来るんだ。
……そうしていると、俺の近くに何かが近づいてくる気配があった。
「にゃ~」
……それは小さな黒い猫だった。
その黒い猫は俺に徐々に近づいてきて、そして俺の腹部に乗り頬を擦りつけ、そして丸くなって寝ようとしていた。
俺はその姿を見て、不意に昔、俺の家にいた黒猫の黒歌を思い出した。
「……ホント、突然消えちゃうんだもんな……」
黒歌だけじゃなくて白音も消えた時は、流石に俺もかなり落ち込んだっけ?
すごく可愛がってたし、それに向こうも甘えてきてくれるから俺はあの二匹のことがすごく好きだったからな。
俺は懐かしくなって、黒い小猫の体を撫でた。
「にゃぁぁぁ~~ん♪」
猫は震えるように、しかし嬉しそうな仕草で体をブルブルとする……久しぶりに猫に触れたけど、やっぱ可愛いな。
後輩に猫っぽくて可愛い小猫ちゃんがいるけど……な。
「…………先輩は猫が好きなんですか?」
すると隣辺りから小猫ちゃんの声がしたのに気がついて、俺は猫に気を遣いながら上半身を立たせる。
すると俺の左側の芝生に体操着姿の小猫ちゃんがしゃがみながら俺を見ていた。
……アングルを狙っているのか、異様なほどに際どいのは気のせいだろう。
「まあ好きだな。っていうよりさ。昔、一年くらい一緒に暮らしてた二匹の猫が大好きだったんだ」
「…………どれくらいですか?」
「世界を敵に回しても愛してるくらい?」
「ッ!!」
……すると小猫ちゃんが顔をリンゴみたいに真っ赤にした。
俺、なんか困らせること言ったっけ?
「…………先輩は、その猫に帰ってきてほしいですか?」
「……そうだな、帰ってきてほしい。でもあいつらだって意味があって出て行ったと思うからさ―――うん、もし帰ってきてくれるなら喜んで迎え入れるな」
「…………そうですか」
……小猫ちゃんが少し寂しそうな表情でそう呟いた。
だけど、この時の俺にはそれが何を意味してるなんか分からなかったんだ。
―……
……放課後になった。
本来なら、俺たちは部室でいつものように悪魔関係の仕事?をするはずなんだけど、でも今日は旧校舎の耐久確認のせいで部室が使えず、グレモリー眷属の面々は俺の家……しかも俺の部屋に集合していた!
ちなみに木場は俺の机の椅子に座り、部長、アーシア、小猫ちゃん、朱乃さんは床に敷いてある座布団に下敷きにして座っていて、俺はベッドの上で胡坐をかいている。
俺たちは今、その月の悪魔稼業の契約者数についての結果を部長から発表されていた。
「じゃあ今月の定例会議をするわ。まずは契約者数から……朱乃が11件、小猫が10件、祐斗が8件……そしてアーシアは3件よ」
「すごいじゃないか、アーシアさん」
すると祐斗はアーシアの契約件数を聞いて素直に驚いていた。
「……新人さんにしたらいい成績です」
「はわわ……ありがとうございます!」
アーシアは嬉しそうに俺達にペコペコ頭を下げる……アーシアは流石だな。
「そしてイッセー……29件」
「「「「……………………………………………………………………」」」」
……その数字を聞いて、今までにこやかな雰囲気を醸し出していた全員の表情が固まった。
そうなんだよ……俺の場合、何故か同じ人に何度も呼ばれるんだ。
例えば俺のお得意さんの一人の天才美術家、桐谷さんなんか一か月に十回ぐらい俺の絵を描くためだけで呼んできて、そして毎回対価としてすごい価値の自身の新作の絵をくれるんだよ。
ミルたんも俺を呼んで修練の結果を見せてきたり、最近では博士さんって人が俺のお得意になった。
何でも発明家らしく、俺の神器の知識をほんの少しだけ教えてあげると何かが閃くらしく、それで何度もリコールを貰う……
そう言うわけで俺は毎回必ず契約を常連さんから契約を取って、そんな数字になってるってわけだ。
言ってしまえばリコールが多いのが俺の特徴だな。
「………………新人さんに惨敗」
「イッセー君だもんね……うん。何となくそんな気がしてたよ」
「あらあら、うふふ……私もイッセー君を呼んでみましょうか?」
「は、はぅぅ!イッセーさん、流石です!」
……明らかに落ち込んでいる小猫ちゃん、苦笑いをしている祐斗、いつも通りのニコニコ顔の朱乃さんに目をキラキラと光らせているアーシア。
ちなみに部長はやれやれって風な感じで笑っていた。
「でもイッセーは正直、契約している人間と仲良くし過ぎなのよ。普通の人はここまで悪魔を呼ばないわ……大抵は怖がるもの」
「それもこれもイッセー君の優しさから怖さが無くなるということではないでしょうか?」
朱乃さんはそう言うけど、俺はあまり気にせずそのままベットに寝転ぼうとした……その時だった。
「お邪魔します!イッセーちゃんの良いもの、持ってきました!」
…………突然、扉が開けられたと思うと、そこにはダンボールを持った母さんの姿があった。
―――ま さ か 、 あ れ は ! !
「か、母さん!それは前に燃やせって言ったものじゃねえか!いったいどこに隠してやがった!」
そう、あれは………………母さんが昔から逐一に記録していた、俺の成長記録アルバムだ!
俺の全てを観測され、その全てを書かれてしまった忌まわしきアルバム!
しかもそれがダンボール単位で存在しているんだ……あれを部員に見られるわけには……
「祐斗、イッセーを抑えなさい」
「…………ごめんね?イッセー君。女の子は怒らせたら怖いから」
こ、この野郎!
祐斗の奴が俺を関節を極めて動かさないようにしやがった!
いくら部長命令でも、ここまでやるか!?
「イッセー……悪いとは思うけれど、前からその存在が噂となっていたイッセーの昔の写真集を前にすれば、私は我慢することなんか出来ないの」
饒舌で何を言っているのでしょうか!?
ホント待って、それはマジでやばいんだって!
ヤンデレ性質を持つ彼女が、彼氏の全てを知るために作った彼の情報記録でも敵わないくらいの俺の細部までの情報が詰まっているから!
「ゆ、祐斗!離せ!俺はあれを見られるわけにはいかないんだ!」
「…………諦めも肝心です。それと私も見たいです」
―――どうやらここには俺の味方はいないようだ。
―……
「これが三歳の時のイッセーちゃんよ!」
……母さんは俺が三歳の頃、無理矢理着せられた女の子の服を着る俺を指差して嬉しそうに話していた。
俺?
俺は部屋の隅っこで体育座りをしてます、はい。
味方だって?
味方と思ってた奴に裏切られました、はい。
……ちなみに俺を裏切った祐斗の野郎は呑気に俺の普通のアルバムを見ていた。
「小さいイッセー、小さいイッセー!」
「うぅ……可愛いです、イッセーさん!!」
「…………やっぱり、先輩は……」
「……うふふ、イッセー君、こんなにも……」
すごい興奮気味のアーシアに部長、何故か優しい表情で写真を見ている小猫ちゃんと朱乃さんがそこにはいた。
「あはは……イッセー君は人気だね?」
「……祐斗、今度、俺と本気の模擬戦しようか……
「……ぜひとも遠慮しておくよ。殺されてしまうから」
祐斗は顔を真っ青にしながらそう言う。
そして俺のアルバムを見ながら途端に呟いた。
「……良いお母さんじゃないか。こんなものまでしっかりと残して……」
……その点に関しては、俺も同感だ。
俺は転生前は親の暖かさとかは全く知らなくて、でも兵藤まどかという母さんの母親としての暖かさは知った。
俺への愛情が若干……かなり強いだけで、それ以外はいたって文句のつけようのない母親だ。
『……正に兵藤まどかは素晴らしい母親だ。これは認めざるを得ない』
『そうですね。私からしてみれば彼女ほど子を愛し、家族を大切にしている母はいないでしょうから』
流石は母さん、二体のドラゴンからも好評価だ。
……俺が転生して、それでも普通でいれたのは母さんのお陰だ。
本当なら俺は、もっと
それでも俺が俺でいられた最も大きな理由は母さんがいてくれたからだ。
『相棒。それ以上を思い出すのは今は止めておいた方が良い。振り返っても仕方のないことだ』
……そう、だな。
とにかく、俺は今は普通に過ごすとしよう。
「……家族っていいよね。繋がってるって感じで……うらやましいよ」
「……祐斗?」
祐斗の儚げな表情を見て、俺は少し怪訝な表情をした。
そしてどういうことだ、と思った時、祐斗はアルバムの一ページを捲った。
……と同時に、目を見開いた。
「……ねぇ、イッセーくん。この写真は何かな?」
祐斗の表情は前髪が顔に掛かって良く見えないが、祐斗はアルバムの中の一枚の写真を指さした。
そこには八歳くらいの俺とイリナが二人で腕を組んで写真に映っている……確かこれは久しぶりにイリナと再会したからあいつの家で遊んで、その時に記念として撮ってもらったやつだ。
暖炉のようなところに白い鞘に入れられた剣みたいなのが映ってる。
「それは俺の幼馴染のイリナって奴と一緒に撮った写真なんだ。こいつ、この時は男みたいだけどさ、今ではすごい女らしくなってるらしいぜ?」
俺は母さん経由の情報を祐斗に言うが、しかし祐斗の視線は未だにその写真に行っていた。
……どうしたんだ?
祐斗の表情が、いつもと少し違う。
まるで怒っているような、憎しみが篭っているような……そんな瞳。
そして祐斗は小さく何かを呟いた。
「……こんなことも、あるんだね」
「どうしたんだ?」
祐斗の目は疑問を持つほどの感情によって彩られていた。
少しばかり手も震えているようだ。
「ねぇ、イッセー君はこの剣に見覚えはあるかい?」
……祐斗は写真の中の白い剣を指差して言う。
こいつ、まさか……この
「……まさかこんなところで、出会えるなんてね」
……まさか今回の一件は、この何の変哲もない一枚の写真から始まるとは、俺はこの時は思ってもいなかった。
―……
「それでイリナ、君の幼馴染はこの町にいるのか?」
「うん!すごく優しくて、すごくカッコいいんだよ?写真で見せて貰ったけど、昔に比べてもっとカッコ良くなってた!」
「…………今回の私たちの目的を履き違えるなよ?」
「……………………分かってるわ、今回私たちは―――聖剣を奪取、もしくは破壊に来たんだから」
「分かっているならいい。…………いくぞ」
「ええ」