ハイスクールD×D ~優しいドラゴンと最高の赤龍帝~   作:マッハでゴーだ!

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番外編2 チビドラゴンズの休日の過ごし方

 俺、兵藤一誠は癒しを求める男だ。

 俺の中の最上級の癒しの存在はアーシア、そして最近では小猫ちゃんも癒しの代名詞になりつつあるが……

 けど最近、この二人は癒しなんだけど、とにかく女難を連れてくる性質にある。

 ああ、それはもう頭を悩ますくらいの女難が次々に招来するんだ。

 よって最近の俺は俺の使い魔……チビドラゴンズに癒しを求めている。

 小さくて、慕ってくれて、しかもどこか愛くるしさがあるフィー、メル、ヒカリの小さなドラゴン達。

 俺があの三匹を呼ぶのは大抵は一緒に遊んだり、昼寝をしたりするときで使い魔と言うよりもペット化している気がした。

 それはもう可愛くて可愛くて……その可愛さを祐斗に電話で三時間ほど熱弁するくらいの入れ込みようだ。

 …………それはともかく今、現状を説明するなら俺の目の前には小さな子供の女の子がいた。

 大体は3歳くらいの小さな女の子だ。

 薄ピンクの短い髪にタンクトップとショートパンツ、淡い青の髪にワンピース、そして金髪の髪に白いゴスロリの服を着た女の子。

 ……似合っているし、三人とも可愛いだけどさ?

 突然、家のチャイムが鳴って出てみると、そこにそんな子供がいて、しかもその子たちが俺の顔をじっと見てるんだぜ?

 時間にしたら数秒経つ……でも俺はこの子達が誰なのか、知らない。

 何故か見たことがある気がするんだけど……なんか面影を感じるけど、とにかく知らないはずだ。

 そうして困っていると、居間の方から最近この家に居候することになった部長が顔をのぞかした。

 アーシアも一緒だ。

 

「イッセーさん?どうしたんですか?」

「イッセー、早く戻ってきなさい。映画を早く見るわよ?」

 

 ……二人が俺と、そして俺の顔をじっと見る小さな女の子達を交互に見て、何故か俺の顔を見つめる。

 

「…………イッセー、その子達、イッセーの娘?」

「そ、そんな……!イッセーさんが隠れて女の人と!!」

 

 なんでそうなんだよ!?

 それならまだロリコンって思われる方がマシなのに、何で最初の発想が娘なんだよ!

 ロリコンも対外だけどさ!

 するとその時だった。

 

「……にいちゃん!!」

「お、おお!?」

 

 ……突然、薄ピンクの髪の女の子が俺にめがけて飛んできて、俺はそれを抱きとめる……んンッ?

 にいちゃん?

 

「フィーずるい!にいたん、メルも抱っこ!!」

「……ヒーも!にぃに、抱っこ!」

 

 は、はい!!?

 薄ピンクの女の子を抱きとめたと思うと、続くように淡い青と金髪の髪の女の子二人が同様に俺に飛び乗ってくる!?

 ど、どうなってんの?

 

「い、イッセー……あ、貴方、妹がいたの?」

「……そんなつもりはないんですが」

 

 しかし俺に抱っこをされながら衣服に顔をスリスリと擦りつけてくる、小さな女の子を横目で見て俺はふと思いつく。

 ……フィー、メル?

 それは俺がつけた使い魔の名前だ……そして一人は自分のことをヒ―と呼んだ。

 もしこれがヒカリと発音することが出来なかっただけだとすれば……もしかして

 

「ええっと……フィー、メル、ヒカリなのか?」

「「「うん!!!」」」

 

 えっと、結果だけ言わせてもらうと…………

 ―――俺の可愛い使い魔達が、人間の姿になっていました!

 

 ―・・・

「いやぁ、すまないな一誠。あいつらがどうしても自分たちの姿をお前に見せるとうるさくてな」

 

 それから5分後、俺はティアマットを呼び出して事情を説明してもらっている。

 ちなみに三人?は今は俺の太ももに座りながらオレンジジュースを上機嫌に飲んでいる。

 

「……つまりなんだ?ようやく三人は人の姿になれる術を手に入れた?」

「まあそう言うことだ」

 

 簡単に言えば、ティアは火炎龍のフィー、蒼雷龍のメル、光速龍のヒカリの保護者かつ姉的な存在で、この三人の面倒をよく見ているそうだ。

 そして立派なドラゴンにするべく鍛えているそうで、今は龍の術を教えているらしい。

 その過程でチビドラゴンズは人間の姿になる術を手に入れたらしく、それを俺に見せたくてティアの地図の説明を頼りに兵藤家まできたらしい。

 すごい行動力と言うか……ティアに魔法陣で連れてきてもらえばいいのに。

 

「はぁ……まあそれは全く以て問題ないから良いんだけどさ。問題は」

 

 ……そう、問題は他にある。

 例えばほら、目の前の不機嫌な表情のアーシアとか、部長とか。

 元々、俺達は久しぶりの休日を映画を見てのんびり過ごそうと思っていたからな……その予定を崩されて怒っているんだろうか?

 ライザーの一件とかで中々忙しかったもんだからさ。

 

「……イッセーさんは悪くありませんから良いですけどッ」

 

 ぷんぷんしてるアーシアは可愛い!頬を膨らましているのに俺を癒してくれるなんて、なんてすごい子だ!

 最近、俺は思うんだ―――アーシア=癒しの化身ってさ。

 

「すまなかったな、アーシア。だがこの子たちはまだ子供のドラゴンなんだ。許してやってはくれないか?」

「……大丈夫です!それにこんなことで怒っていては主がお許しになるわけが、きゃう!!」

 

 ……天に祈りをささげ、頭痛という大ダメージを負うアーシア。

 悪魔にそれは本当に毒だからね!?神に祈ったらだめだよ!

 

「…………朱乃?」

 

 すると部長は突然、誰かから魔法陣を介して通信が入る。

 そしてアーシアは携帯電話が鳴ったのか、そのまま電話に出て通話を始めた。

 二人とも数分経ったら通話を止め、突然申し訳なさそうな顔をしていた。

 

「イッセーさん、私、桐生さんとの約束をすっかり忘れてました!今から急がないと約束時間に間に合わないので、ごめんなさい!」

「イッセー……少し仕事が溜まっているらしいから今日は部室にいくわ。せっかくの休日なのに……」

 

 部長はぶつぶつと何やら呟きながら魔法陣を展開してそこから居なくなった。

 そしてアーシアはすぐさま荷物をまとめて家から飛び出て行ってしまう。

 

「……ふむ、どうやらそいつらが来て、ちょうどよかったんじゃないか?」

「ま、結果的にな。それよりさ、気になることがあるんだけど…………」

 

 ……そう、俺はどうしても気になっていた。

 この三人は俺のことを何やらそれぞれ違う呼び方をしていた。

 フィーは”にいちゃん”、メルは”にいたん”、ヒカリが”にぃに”……共通している単語が―――兄。

 もしかしてと思った。

 まさかそんなことがあるはずないだろと思ったが、やはりここは聞いておかなければならない。

 そしてティアは、至極当たり前のように言った。

 

「それと一誠。そいつらからしたらお前はお兄ちゃんらしい。よかったな、可愛い妹が三人も出来て、あははは!!!」

「なに高らかに笑ってんだよ!?パパ、マザー、姉ときて次は妹ですか!?いや、いつかは来ると思ってけども!!」

 

 ああ、思ってたさ!

 だから覚悟もしてたさ!

 だけどそれとこれとは話が別なんだ!

 普通に呼称が欲しいだけならなんの問題もない!

 だけどこういう時、大抵俺は甚大な被害を被ることになるんだ!

 心労とか、心労とか、心労とか!!

 俺が心の中でそう叫んでいる最中、突如俺の足をクイッと引っ張る存在が三つあった。

 

「……にいちゃん、フィーのこと、きらい?」

「メル……いもーと、だめ?」

「ヒー、にぃにのいもうとじゃない?」

 

 ……三人が泣きそうな顔をした瞬間、俺の口は勝手に動いた。

 

「嫌なわけないじゃないか。三人は俺の可愛い妹だよ」

 

 ……だって可愛いもん!!

 こんな妹が三人もいたら愛でたいに決まってんじゃん!!

 三人は無邪気に俺に抱きついてくる!

 俺も抱きしめ返す!

 何故って?可愛いからに決まってるだろ!!

 俺は気持ち悪いくらい笑顔で我が妹たちを受け入れたのだった。

 

 ―・・・

 

 さて、俺は家で三人と1時間くらい遊んでいた。

 母さんはどうしたって?

 俺が母さんの誕生日にプレゼントした夫婦3泊4日旅行で、一時帰国した父さんと旅行に行ってます!

 母さんが夫婦じゃなくて親子で行こうとしたのは父さんには内緒だ。

 そして俺の傍にはフィー、メル、ヒカリが遊び疲れたのか、ソファーの上で眠っていた。

 居間には俺とティアがいて、ティアは俺が淹れた紅茶を啜っていた。

 

「弟の淹れた紅茶は格別だな……どうだ、ドライグ……お前には感じることが出来ない幸福さだぞ?」

『き、貴様!?なんとうらやましいことを!?』

 

 すると今まで黙っていたドライグが、俺の左腕から宝玉だけ出現してティアの挑発に安易に乗る!

 違う、ドライグだけじゃない!

 

『ずるいです、ティアマット!我々が魂だけの存在ということをいいことに!!』

 

 ……伝説のドラゴン達は随分安っいぽい喧嘩をしていた。

 っていうか俺を弟って呼ぶな……手遅れだけどさ。

 そう、こんないざこざを俺の中で勝手に起こすから、俺はこうまで呼称を付けられるのを嫌がっているんだよ。

 ―――それにしても、冷静に考えるとこの状況はすごいものだな。

 二天龍の一角、赤龍帝のドライグ。

 忘れられし伝説級のドラゴン。始まりの神創始龍、フェルウェル。

 最強の龍王である天魔の業龍・ティアマット。

 そして将来有望の上位レベルのドラゴンのフィー、メル、ヒカリ。

 ここで俺の友達のオーフィスなんかが来たら……

 

「我、イッセーの元、遊びに来た」

 

 ―――まるで狙いすましたように現れるオーフィス!!

 タイミングが噛み合いすぎて怖いよ!

 なんだよ、今のタイミング!

 しかもすごく自然に風のように現れた!?

 いつものように黒いゴスロリの服を着て、てくてく俺の方に近づいてくる!

 まさかの無限の龍神のオーフィスまで集まった!

 この空間はまさしくドラゴンのみの空間となった……パワーバランスが半端ない。

 

「ティアマット、久しい」

「……まさかこんなところでお前と会うとわな……オーフィス」

「我、遊びに来た。故に警戒、皆無」

「…………そうか。ならば私も肩の力を抜こう」

 

 ティアは突然のオーフィスの登場に警戒態勢を取っていたが、オーフィスの言葉に肩の力を抜いた。

 

「……ここ、ドラゴンの巣窟?天龍に龍王、創造龍、有望な龍、たくさんいる。イッセー、ドラゴン、集めてる?」

「……勝手に増えていくんだよな」

「我、仲間に入る」

 

 するとオーフィスは俺の膝の上に座ってくる!

 無限のドラゴンが何とも言えないほのぼのとした行為をする中、ティアが溜息を吐いた。

 

「全く……ドラゴンも落ちぶれたものだ。ドライグ、今はお前は幸せか?」

『当然だ。魂だけでも俺と相棒は繋がっている。固い絆だと自負している』

『そうですね……悔しいですが、ドライグと主様の絆は私とは比べ物にならないほど堅く、強いです』

 

 ……フェルも俺の大事な相棒だよ。

 上も下もない、大切な相棒だ。

 

『そう言ってくだされば幸いです』

 

 フェルはそう言うと、俺は今一度、部屋を見渡す。

 

「ドラゴンの巣窟ってのは良い表現だな。天龍、龍王、龍神、創龍、チビドラゴンズ……世界のトップクラスのドラゴン大集合、しかもこんな小さな家でって……」

 

 俺は嘆息する。

 これ、正直に戦争を起こせるくらいの戦力だよ?

 ティアとオーフィスがいればそれだけでどんな敵も倒せそうだし、まさしく……

 

「さしずめドラゴンファミリー。まさしくこれが相応しい名だ」

 

 ……ティアが感慨深そうにそう呟く。

 確かに、ドライグとかフェルは自分のことをパパ、マザーなんて名乗ってるし、姉に妹まで出来ちゃったからな。

 これは本格的に認めないとな。

 

「家族?」

 

 するとオーフィスはいつもと同じように聞き慣れない言葉に首を傾げる。

 俺の膝の上から上目遣いでそう言ってくるから、俺は教えてやった。

 

「家族はいつでも絆で繋がっているんだ。離れても離れても互いを忘れない。ずっと一緒にはいれないかもしれないけど、でも心は繋がってる。そんなもんだ」

「……我、うらやましい。我、そんな存在、いない」

「友達も大切な存在だよ。どっちもかけがえがない。だから無理に家族とかは別に気にする必要はないさ。オーフィスはまたいつでも遊びに来ればいいからさ」

「…………我、ますますやることを終わらせたい。我、終わればここにいていい?」

「……オーフィスのやらないといけないことは分かんないけどさ―――当然だ」

 

 そう言うと、オーフィスは俺の膝から立ち上がって、そのままティアの方まで歩いて行く。

 そして彼女の耳元で何かをボソボソと呟くと、ティアは一瞬驚いたような表情をして、そして椅子から立って俺の方まで来た。

 

「悪いな、一誠。そのチビどもは今日は預かってくれないか?少しやることが出来てな……」

「別に良いけど……」

「恩に着る。今度、一緒に入浴してやろう!」

 

 ……はい、全力で拒否しましたよ。

 だってそれ、あいつの完全なる欲望なんだもん。

 とりあえず回し蹴りからのチョークスリーパーを喰らわして、制裁をした俺なのであった。

 ……ティアはオーフィスを連れて龍の文様らしい魔法陣に類似した転移法で家から消える。

 そしてそれを見計らったように、フィー、メル、ヒカリは起き上った。

 

「……にいちゃん、ティアねえは?」

「用事で今日は俺が面倒を見ろってさ……嫌か?」

「ううん!メル、にいたんといれるの、好き!!」

 

 ……ああ、なごむ。

 俺はメルの頭を割れものを触るように優しく撫でて、そのあとからフィー、ヒカリの頭も同様に撫でるのだった。

 かくして、俺の妹の面倒をみる一日が始まった。

 ―・・・

 

 とりあえず、俺は三人を連れて散歩することにした。

 フィーを肩車し、左にメル、右にヒカリと手を繋いで仲良く歩く。

 道を歩いているとおばあちゃんに「お兄ちゃんとお散歩かい?微笑ましいねぇ」と言われたり、「娘さんを三人も……若いのにえらいねぇ……」と勝手な勘違いをされたりした。

 ま、あんまり気はしてないけどな!

 公園は流石は休日、子供連れの親子や若いカップルとかが結構いて、その中で三人の小さな女の子を連れる俺はかなり目立った。

 ちなみに三人は辺りをキョロキョロして物珍しさに目を光らせたりしてた。

 すると俺はちょうど、車での移動販売のアイス屋を見つけた。

 

「フィー、メル、ヒカリ。アイス食べたいか?」

「「「アイス?」」」

 

 三人は声を合わせて不思議そうにそう尋ねてくる。

 そりゃ知らなくて当然か。

 俺は三人にも分かり易いように教えてあげることにした。

 

「冷たくて甘い食べ物だよ?」

「「「食べたい!!」」」

 

 ……三人は俺の説明を聞くと即答で答えてくる。

 どうやら、ドラゴンでも甘いものは女の子は好きらしい。

 そして俺は三人を連れて店に行き、そしてそこでメニューを見る。

 店員は俺と同じくらいのバイトらしき女の子で、制服に茶髪のセミロング気味な女の子で、営業スマイルを浮かべていた。

 

「いらっしゃいませ!おすすめはバニラとミントです!どっちもおいしいと思うよ!あ、季節限定のベリーアイスとか、ショコラバニラとかもおすすめ!」

「そうなんですか?なら俺はバニラにして……三人はどうする?」

 

 俺はメニューと睨みあいになっている三人に苦笑しながらそう言った。

 

「あはは……妹さんとかかな?」

「まあそんなもんだな。今日妹になったっていうか……」

「今日? あはは!あなた、面白冗談言うね!でもあなたから感じるお兄ちゃんオーラは、そこらへんのお兄ちゃんを凌駕していると私のスカウターが申しております!」

「何だよ、お兄ちゃんオーラって」

 

 ……実に人懐っこい子だ。

 俺とあんまり年が離れていないってことを思ってか、普通にため語で話してくるから俺も敬語は止めた。

 

「でも不思議だな~。私、結構人見知りなんだけど、君とは初めて会った感じがしないんだよね~!」

「そうか?」

 

 俺は何となくわからない。

 ただ普通に気兼ねなく話せるのは確かだった。

 

「君の名前はなんていうの?あ、私はね!袴田観莉(はかまだみり)!中学三年生ってことは内緒だよ?」

 

 ……年下だったのか。

 同じ年と思ってたけど、実は違っていたことに素直に驚く。

 

「俺は兵藤一誠。駒王学園の二年生なんだ」

「ホント!?わたし、第一志望校が駒王学園なんだ……あ、なら年上だからタメ語はダメだよね?」

「俺はあんまりそんなのは気にしないからいいよ」

「なら私のことは下の名前で呼んでね!私もイッセーくんって呼ぶから!!あ、それと注文、決まったかな?」

 

 観莉は俺の足元の三人に向かって優しそうな声音でそう言った。

 

「フィー、チョコ!」

「メル、オレンジ!!」

「カプチーノ!!」

 

 カプチーノ!?

 そんなもんがアイスクリームであるんですか!?っていうかそんなものを何で子供が食べるんだよ、ヒカリ!

 

「はい、バニラ、チョコ、オレンジ、カプチーノはいりました~!!」

 

 ……もしヒカリが食べれなかったら俺が代わりに食べてあげよう。

 そう思う俺だった。

 

 ―・・・

「……にぃに、にがい……」

「ほら……俺のバニラと交換してあげるから」

 

 案の定、ヒカリは涙目で俺にそう懇願してきたから、俺はヒカリにまだ食べてないバニラアイスを上げた。

 カップにアイスの塊が入っていて、結構これが美味い。

 三人も嬉しそうにそれを食べる中、俺は考え事をする。

 ……あの子、なんか変わった子だった。

 あれのどこが人見知りなんだと思う。

 まさに社交性の塊と言いますか……ってか人見知りがバイトなんて出来ないだろ。

 俺は心の中でそうツッコみを入れつつ、アイスをスプーンで掬う。

 

「おお、兵藤!こんな休日にお前と会えるなんてな!」

 

 ……俺と三人がベンチに腰掛けてアイスを食べていると、俺は後ろから声をかけられる。

 

「……匙か」

 

 そこには生徒会の書記で、更にシトリ―眷属の『兵士』、匙の姿があった。

 たぶん、こいつの位置からは三人は見えないだろうな。

 

「聞いたぜ?お前、あのライザ―・フェニックスを完膚なきまで倒したんだってな!同じポーンとして俺はお前を尊敬するぜ!」

 

 ……ちなみにこいつは最初こそ、邪険な態度だったけど話してみるといい奴で、今ではこんな風に話せる友達だ。

 ティアの一件で俺の力を認識したらしく、たまに俺と手合わせをして鍛えてくれ、って頼んでくる。

 実は影の努力家で、才能を努力でなんとかするという考え方には俺も感嘆を覚えたもんだ。

 

「お前はどうしたんだ?」

「おう!今日は会長の命令であるアイスを買いに来たんだ!あ、隣座らせてもら……!?」

 

 匙は俺の前に回り込み、俺の隣が開いていると思ったんだろうな。

 そして三人の幼女を見て、固まった。

 

「…………兵藤、お前」

 

 ……やばい。

 こいつは割と普通の感性を持ってるから、この状況をどう言うか分かんねえ!

 

「小さい子にまでアイスを奢ってあげるなんて優し過ぎる!!さすがだよ!まじ尊敬します!!」

 

 ……どうやらこいつは俺が思っている以上にいい奴だった!

 俺、こいつとなら親友になれそうだ!

 

「匙!お前いい奴だ!普通ならロリコンとか言うところをお前は!!」

「兵藤!俺がお前にそんなこと言うわけないだろ!お前がロリコンな訳がねえ!お前は真の男だ!」

「匙!」

「兵藤!!」

 

 俺と匙は力強く手を握る!

 ……この日、俺と匙の間に確かな友情が芽生えた。

 

「……ところでホントにその子達は何なんだ?」

 

 匙はいったん落ち着いて、そう尋ねてきた。

 

「俺の三匹のチビドラゴンがいただろ?」

「……龍王もお前の使い魔だったと思うけど、そうだな」

「それが人の姿になったんだ。で、俺はティアにこいつらの面倒を見ろって言われてるって話だ」

「なるほど。つまりは子守か……おっと!俺はそろそろ会長のためにアイスを買いに行かなければ!じゃあな、兵藤!それとそこのちっちゃいドラゴン!」

 

 ……良く見ればあいつは制服姿だった。

 生徒会の仕事で、会長にアイスを頼まれたんだろうな。

 ったく、あいつは良い意味で下僕してるよ。

 

「にぃに、あのひと、いいひと?」

「ああ、俺の友達だ」

 

 ヒカリの口元はバニラでべたべたになっていた。

 ほんと、小さな妹を持つとこんな感じなのかな?

 俺はポケットティッシュを出して、ヒカリの口元を拭く。

 が、結局三人とも同じくらいに汚れていたもので、ポケットティッシュが全て消えることになった。

 

 ―・・・

 

「「「みーんなをまもる、どらごんは~♪きずついても、たおれない~♪やさしい、やさしいどらごんは~♪みんなのつよい、おにいちゃん~~~♪」」」

 

 ……三人が口をそろえて歌を歌っていた。

 この歌はティアの奴が三人に教えたらしく、恥ずかしいことにこれは俺の歌だったりするらしい。

 ドライグとかフェルの話を聞いたティアが勝手に作った歌なんだけど、三人がお気に召した様子だ。

 恥ずかしい事この上ないけどな!

 

「「「つよくて、やさしいどらごんは~~、みんなのひーろー、いつまでも~~~♪」」」

「……さすがに恥ずかしい」

 

 俺達は今、公園を出て普通の住宅街を歩いていた。

 三人がこの町を見てみたいと言ってきたからだ。

 

『それにしても相棒も立派な兄になって……俺としては頼もしい相棒もいいが、どこか抜けてる相棒も恋しい……』

『そうですね……この町にいる限り、主様は迷子スキルを発動しませんから…………無念です!』

 

 ……俺の中のドラゴンがなんか好き勝手に言ってるよ!

 全く、俺をなんだと思ってんだよ!

 俺だって昔は方向音痴じゃなかったんだからな!

 ただ最近の都市は異様なほどに複雑な道過ぎて、迷いやすくなっているだけなんだからな!

 

「おや、これはイッセー君じゃないか」

「……今日は随分と男と出会うな」

 

 俺達は住宅街を歩いていると、俺は祐斗とばったり出くわした。

 ちなみに俺はライザーの一件以来、祐斗のことを下の名前で呼び始めた。

 認めた、っていうのが本音だな。

 

「えっと……こんにちは。イッセー君の親戚か何かかな?」

「……普通にそう言う発想をしてくれるお前は流石だよ、祐斗」

「…………なんのことかは分からないけど、どういたしまして?」

 

 祐斗は苦笑いを浮かべながらそう言うと、すると三人はじっと祐斗の方を見ていた。

 …………なんか、視線が冷たい。

 

「にいちゃん、このひと、なんかいや」

「にいたん、このひとあぶない」

「にぃににちかづくな!ほも!!」

 

 ――――――俺は絶句するしかなかった。

 祐斗なんかすごい泣きそうになってる!最近、祐斗への皆の辺りが少しひどい気がする!

 そしてヒカリ、そんな汚い単語を吐かないでくれ!

 

「ご、ごめんな?今度、一緒にぱあっと遊ぼうぜ?」

「うぅ……もう僕の味方は君だけだよ、イッセー君」

 

 ……祐斗は肩を落としながらそう言うと、少し落ち込んだままそこで俺達は別れた。

 

「……一応、俺の友達だからさ。ああいうのはあんまり言ったらダメだぞ?」

 

 三人は俺の言葉に渋々頷くのだった。

 ……それにしても祐斗は何であそこまでコイツらに嫌われたんだろうな。

 少し同情をする俺であった。

 ―・・・

 時間は夕方頃になって、辺りは夕日に照らされる。

 ちなみに今日は遊び疲れたのか、フィーたち三人は俺の元で眠っていた。

 三人を持つのは少し疲れるけど、三人ともすごく軽いからそこまで苦にはならない。

 三人はドラゴンの腕力で俺の体にひっつきながら眠っているからな。

 背中に三人を背負ってるけど、手を離しても三人とも落ちないという力。

 はたから見たら結構面白い光景だろうな。

 

「……まあ、たまにはこんな休日もいいか」

 

 ……最近は少し騒動が多すぎた。

 アーシアの一件から始まって、悪魔になって、ライザーとのゲーム、そしてライザーとの一騎打ち。

 最近、俺の肩には力が入り過ぎてたのかもな。

 今日はいい息抜きになった。

 …………それもこいつらのお陰だな。

 

「……一誠、今日はすまなかったな」

 

 ……すると俺の視線の先には黒髪に透き通るくらいの真っ白い肌のティアの姿があった。

 手には紙袋のようなものを持っていて、それが三つある。

 

「そいつらに似合う服を探しに行ってたんだ。そのついでにオーフィスの相談に乗っててな。それでチビどもと一日過ごした気分はどうだ?」

「……久しぶりに和やかな一日になったよ。こいつらのお陰だ」

 

 俺は三人を横目で見てそう言った。

 

「そうか……主である一誠がそう言ってくれるなら助かる……―――それに一誠、私は今日確信したよ」

 

 するとティアは一歩、俺に近づく。

 

「お前はドラゴンに好かれる才能がある。力の塊のドラゴンに何の恐怖もなく接し、普通に会話する。不思議だったよ、私は何でお前の契約に乗ったんだろうって……でも分かった。本能的に、私はお前の優しさに気がついたんだ―――ドラゴンとは知性ある生物。どんな生物よりも優れていて、感受性がどの種族よりもある……故に異端とされることが多いがな?」

「……そっか」

「ああ。そのチビどもも同じだろう。じゃなきゃ、あそこまでお前には懐かない……どうか、そいつらの力になってほしい」

「……ティアもお姉ちゃんだな。任せろ! 言ったからには俺はこいつらの兄貴だからな」

 

 俺は苦笑いしながらそう言うと、ティアは俺の頭をわしわしと撫でまわしてくる!

 

「そうか、流石は私の弟だ!…………チビどもは私が連れて帰ろう。どうせ、またすぐにお前の元に行くだろうから覚悟しておいた方が良い」

「……覚悟なんて必要ないよ。ティアも含めて、もう俺の大切な存在なんだからさ!」

 

 俺はティアに三人を渡すと、ティアは龍の模様の魔法陣らしきものを展開する。

 

「これは龍法陣。ドラゴンの力で移動する、転移魔法のようなものだ。では一誠、またな」

 

 ……ティアは龍法陣の中に消えていく。

 今日は終わりか……そう思いながら俺は帰路につき、そして家へと帰った。

 

「イッセーさん!今日、見れなかった映画を見ましょう」

「そうよ!今日は仕事のせいでイッセーと触れあえなかったんだから!」

 

 ……帰るなりそう言う俺の同居人達。

 まあ、これも俺の平和な日常か。

 そう思って、俺は家の中へと入って行った。






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