ハイスクールD×D ~優しいドラゴンと最高の赤龍帝~ 作:マッハでゴーだ!
「「バッラバラ、バッラバラ♪」」
ええ、とても跳ねるような子供らしい無邪気な子供の声が聞こえます。
ええ、それはもうホントに無邪気な可愛い女の子が俺の元に駆け寄ってきます……
―――チェーンソウを振りまわして。
「か、可愛い顔してなんてもん振りまわしてんだよ!!ギャップ狙ってんのか!?そうなんだろ!」
今はレーティングゲームの序盤戦であり、俺と小猫ちゃんはライザ―の『戦車』一人と、『兵士』3人と対峙している。
正直、俺一人でも良かったんだけど、どうしても小猫ちゃんは相手の『戦車』と戦いたかったみたいだ。
たぶん自分の修行の成果を見せたいんだろうな。
だから俺は『兵士』3人と対峙しているわけだけど……
「きゃはは!お兄さん、ぶっちゃけカッコいいからバラバラしがいがあるよ!」
「バラバラにしてあげる!! かっこよくね?」
「かっこよくばらばらってなんだよ!? チェーンソウは乙女が振りまわすもんじゃないだろ!?」
俺はイル、ネルが振りまわしてくる物騒極まりないチェーンソウをほとんど当たる寸前で避け続ける。
その太刀筋、速度……全てを鑑みて俺は一つの結論へと辿り着こうとしていた。
太刀筋は素人感があり、速度は多少ありもするが、大したことはない。
何よりチェーンソウに纏っている魔力の質が低すぎるってところが決め手か。
結論、大したことはない。
・……つまりこれは正直、当たっても大したことはないかもしれない。
ただの魔力による防御壁だけでどうにかなるほどの弱い攻撃に近い。
「ネル、そっち!」
「はいさ!」
代わりにコンビネーションは卓越されているけどな!!
双子のネルと思われる方が俺へとチェーンソウを振りまわしてきて、そして隙を見て後方よりイルが俺にチェーンソウを振りかざす!
「でも、残念!!」
だけど既に数段階、倍増された俺の身体能力で二人のチェーンソウを手と篭手で受け止める!
手には魔力を集中させ、チェーンソウの回転による斬撃を無力化する。
するとすかさず、ミラちゃんが俺に棍棒を突き刺そうとしてきた!
「決して悪い攻撃じゃないけどないけど、相手を選ぶ悪い作戦だな」
そんなことは予想の範疇だ!
『Boost!!』
籠手の力が5段階目の倍増を告げる!
とりあえず、こいつらを黙らせるには十分な倍増だ!
「解放だ!ブーステッド・ギア!!」
『Explosion!!!』
俺の叫びと共に篭手に溜まった倍増の力が解放されるッ!!
5段階の倍増による魔力を俺を中心とする円形数メートルに放射した!
「「「きゃあ!?」」」
……するとその魔力の噴射により起きた風圧で『兵士』3人が飛ばされ、そのまま体育館の壁に激突する。
「あれれ……少し強すぎたか?ま、とりあえず今はこれでいいか」
俺は拳を構え、飛ばされた3人の方を見る。
既に立ちあがってはいるものの、多少はダメージはあるようだな。
「この魔力……上級悪魔クラス!?」
「昇格していないはずなのに!?」
……なるほど、今の俺は上級悪魔クラスの魔力なのか。
それは良いことを聞いたな。
つっても、5段階だからもっといけるんだけど。
『昔の相棒とは魔力の質と量が違うからな。相棒ならば上級とは言わずにもっと上さ……さぁ、舐めくさった乳臭い餓鬼どもに説教をしようか』
『ええ、主様を馬鹿にした罪、万死に値します』
まあ待てって……まだ始まったばかりだ。
体力は温存しておきたいし、それに―――
「そこまで余裕になれるほど弱くないよ、彼女らは」
すると、『兵士』3人は武器を持って更に立ち上がっていた。
ライザーに対する忠義が本物、か。
それを見て、俺はふとこう思った。
「―――気に入った。その真っ直ぐと俺の方に向かってくるところ、嫌いじゃないぜ?だからまぁ全力で倒す!」
俺は一気に3人と距離を詰めた!
「イル、ネル!こうなったら相打ちでもこの殿方を倒します!この人は危険です!」
ミラちゃんが二人に命令するけど……関係ない!
ミラちゃんが棍棒、イルとネルがそのまま俺にチェーンソウを使って同時に攻撃を仕掛けてくる。
……なるほど、同時に三つの攻撃を行えば、物理的に腕が足りないって魂胆か……悪くない発想だけど、でも残念!
「同時と言っても、多少のタイムラグは当然起きる!!」
……三つ子だったら、同時もあり得ただろうな。
だけど多少、ミラちゃんの棍棒は二人よりも早い!
俺は真正面から篭手で棍棒の先を殴りつけると、棍棒は……
「な!?私の棍棒が!?」
先から割れるように崩れ、そして拳の衝撃波で跡形もなく消し飛んだ。
そして少し遅れてきたイルとネルの攻撃を、俺は避ける。
勢いがつきすぎていたんだろうな……二人はそのまま体勢を保てぬまま床に転がっていった。
「いたぁ……もう、なんで攻撃が当たんないのよ!」
「わかんない!!」
俺は3人から距離を取り、少し離れた所から観察する。
「単調な動きの割に速度も微妙だからだよ。ちと修行が足りないんじゃないか?―――つってもライザーの馬鹿が修行なんてことするわけないか……さて、時間的にはもう少し稼ぐとするか」
俺はそう思うと、小猫ちゃんを見た。
……相手の『戦車』は、正直に言えば小猫ちゃんより格上の『女王』クラスの実力者だ。
魔力の質も、普通に高いし、何より戦闘センスは高い。
…………でも小猫ちゃんはそんな相手に、一切の劣勢は見受けられない。
攻撃を見切り、隙あらば拳を入れていた。
「な、なんなの!?私の攻撃が!!」
「……ずっとイッセー先輩を相手に修行していたんです。私がイッセー先輩に触れたのは修行中、二回だけです。そんな相手と戦っていたら、嫌でも対処の仕方を覚えました」
そして小猫ちゃんは相手の一撃を体を固めて防御し、そして隙をついて全力の一撃を相手の腹部に入れた!!
よし!俺との戦いで言った戦法が出来ている!
しかも極めつけに小猫ちゃんは相手の顎からそのまま拳を上に繰り出し、アッパーをした!!
「ぐぁっ……ッ!!」
その結果、相手の『戦車』はそのまま地面に頭から叩きつけられて、相当のダメージを受けた模様……小猫ちゃんは戦いの中でまた強くなったな。
やはり生きた戦いをすれば、思考が良いものになる。
俺は小猫ちゃんの隣に立った。
「…………先輩は相変わらず、悠々と相手を無力化しましたね」
「悪くはなかったよ。もう少し冷静だったらもっと苦戦したかもね」
そして四人のライザーの下僕が体勢を立て直して立ち上がる。
内、一人は満身創痍だけど、でも立ち上がる行動は俺は素直に評価する。
「……さて、小猫ちゃん。正直、俺は今すぐにこいつらを全力で応えてやりたい。どうするべきだと思う?」
「……見ておきます、先輩の戦う姿を。それの方が得られるものが多そうですし、その……」
「その?」
「……先輩の戦う姿、見せてくださいっ」
小猫ちゃんは恥ずかしそうに頬を赤くする。
そしてそう言うと、一歩、後ろに下がってくれた。
「さて、ライザーの眷属達。ここからは俺が一人で相手をする」
「な、舐めた真似を!!」
「……はは。舐めた真似、か。ならさ―――それが本当かどうか、見せてやるよ」
すると相手の『戦車』が俺の方へと、走ってくる!
なら今の俺の全力の速度だ!
さっきの解放の力もまだ残っていることだし、木場並みの速度を見せてやる!!
「…………まずは一人目!!」
俺は足を動かし、全力の速度を出すとあっという間に『戦車』の元まで近づいた。
向こうは目を見開いて驚いているようだけど、でも関係ねえ!!
そのまま俺は篭手の方の左手で彼女の腹部に拳を放ち、そしてそのまま壁へと床へと叩きつけた。
「かッ……! なんて、速さ……」
そのまま彼女は戦闘不能という風に動かなくなる。
意識を失ってはいないからまだリタイアじゃないのかな?
そして次に俺の目に映るのはようやく構え始めた三人の兵士だった。
『相棒!あと10秒しか持たんぞ!』
ああ、倍増の解放はそれぐらいだろうな!
でもそんだけあれば十分だ!
「気をつけなさ」
「―――他人より、まずは自分からだ」
俺は静かにイルの方のチェーンソウを殴りつけ、刃を粉々にした!
それと同様にネルの方も刃を壊し、最後は足蹴りで二人を『戦車』と同様に床にたたきつける!
そして最後!
手のひらサイズの魔力球を出現させ、そのままミラちゃんへと出来るだけ出力を押さえた魔力弾を放った!!
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
……俺の魔力弾でミラちゃんは戦闘不能のギリギリのラインまで消し飛ぶ。
体は傷だらけだけど、まだリタイアではないみたいだ。
「……最小限の魔力で最高の戦果。さすがです、イッセー先輩」
「ありがと。それよりも今すぐここを離れるよ?」
「……え?―――せ、先輩……ッ!?」
俺は小猫ちゃんの腰を持って、そのままダッシュで体育館からでる!!
小猫ちゃんは俺の行動に驚いているようだけど、もう時間がない!
俺と部長の考えが同じなら、もうそろそろ……
『イッセー、体育館から離れたようね、さすがだわ』
―――次の瞬間、今までそこにあった体育館が激しい落雷によって消し飛んだ!!
「―――テイク」
その言葉と共に、体育館の上空にいる巫女服姿の朱乃さんの姿があった。
『ライザー様の『兵士』3名、『戦車』1名、リタイア』
……同時に今まであそこにいた4人がリタイアしたことを知らせる、グレイフィアさんのアナウンスが入った。
「…………イッセー先輩、これは」
「……俺と部長の考えた作戦。自分達は短期決戦しかない、でも敵に渡ったら面倒になるなら、先に体育館を破壊してしまえば良い。そうしたらその問題は解決するだろ?」
『Reset』
俺は小猫ちゃんを下ろし、そういうと俺の倍増が一度、リセットされた。
「今のは朱乃さんの雷撃だ。さすがは雷の巫女。威力は絶大だ」
「……イッセー先輩の作戦、戦い。見事です」
「そんなことはない……むしろ、問題はここからどう出るかだ」
俺はそう思っていると、部長から通信が入った。
『良くやったわ、イッセー、小猫。なら次は祐斗と合流なんだけど……』
「今すぐ向かいます……それとさっき言ったことですが」
『ええ……あなたに任せるわ』
……俺は少し前に部長に言ったことを確かめると、部長は俺に任せてくれる。
「小猫ちゃん、行こうか」
俺は小猫ゃんの手を握って、歩き出す。
「……せ、先輩。そんなに私の手を握りたいですか?」
「……まぁ、そんなところだな」
「……そうですか。なら仕方ないですね」
小猫ちゃんはどこか嬉しそうに手を握り返す。
……まあ実際はそれもあるけど、今危惧すべきなのは別の所にある。
―――そう思った瞬間、俺と小猫ちゃんは光に包まれた。
―・・・
『Side:木場祐斗』
……僕、木場祐斗は今、部長の作戦通りに森の中で待機している。
僕の仕事は、おそらく最初に旧校舎にくるであろう『兵士』を倒すことだ。
さっきから僕と小猫ちゃんで仕掛けたトラップが解除されているのが何となく分かる。
「全く……イッセー君には驚かさせる」
……先ほど、僕の耳にまで届いた落雷の轟音。
あれは恐らく、イッセー君と部長の作戦だろう……しかもイッセー君はそのあとのことも考えている。
本当に、万能としか言いようがない。
頭が切れて、攻防もこなし、しかもパワー込みのテクニックタイプというオールラウンダー。
その癖、仲間のために熱くなれて、誰かのために怒ることが出来る。
本当に、僕が女の子だったとしたら彼のことをアーシアさんや小猫ちゃん、朱乃さんみたいに好きになったかもしれない。
……いや、多分好きになっただろうね。
「さて……あまりイッセー君ばかりに負担をかけるのはあれだね」
僕は隠れるのを止め、歩き始める。
『兵士』と思われる3人の動きは止まった……ということは旧校舎を発見したんだろうね。
……でも、残念だったね。
「……残念だけど、それは僕達の副部長が仕掛けた幻術だよ」
僕はその場で辺りを焦るように見渡している3人の『兵士』を見つけると、森の奥からそう言う。
「君達は既に朱乃さんが仕掛けた結界の中にいる。出ることは不可能だよ」
「しまった!?」
『兵士』の一人が、焦ったような声を出すけど……それも束の間のことだった。
「……あら、グレモリーの騎士君かしら?まさか一人で出て来たのかしら?」
相手は僕一人と確認すると、途端に舐めた口調で僕を嘲笑する。
「……割と好みだから言いたくないけど、もしかして貴方は一人で私達と戦う気?」
「…………試してみるかい?」
僕はつい頭に軽く血が昇り、煽るようにそう呟いた。
そして腰に帯剣している剣……
光を喰らう剣……以前、イッセー君と小猫ちゃんと共に堕天使と戦った時の剣だ。
「……面白いわ!行くわよ」
……3人は同時に僕に向かってくる。
どうやら僕は見くびられているみたいだ。
ならば、イッセー君……君と共に鍛えた僕の力を使うよ!!
「僕がこの10日間、鍛えたのは全てが速度と剣の扱い方……君たちでは僕は止められない!」
僕は『騎士』の特性である速度を全力で解放する!
この10日間の努力が無駄だとは言わせない!
最後は最高速度だけイッセー君でも僕を見失った!
そして僕の力で、僕達の力で部長を勝たせて見せる!!
「な!?早すぎる!どうして、なにも!!」
メイド服を着た『兵士』二人と、水着に甲冑姿の『兵士』が僕の速度に翻弄される。
さあ、決めよう!!
「……例え幻術がなくても、君たちは僕の敵ではない―――随分とあっさりだったよ」
僕は一人ずつ、確実に一刀両断する!
深い傷を負わせ、時間が経てば確実にリタイアにまで追い込む様な傷を……そしてその間に運動場でイッセー君と小猫ちゃんと合流する。
「・・・君達の敗因は、僕達の『兵士』を舐めすぎたことだね。それと僕を見くびったことが少し―――自身の力を過信していたことだよ」
僕はそう捨て台詞を言い放ち、そのまま歩みを進めようとした…………そのときだった!
バァァァァァァァァン!!!!
……そんな爆発音が、僕の耳に確かに届いた!
しかもその音の方向は―――体育館跡の付近!
イッセー君達がまだいるかもしれない場所だ!
「イッセー君!どうしたんだ!?小猫ちゃん!」
でも通信機からは雑音しか聞こえてこない……まさかイッセー君と小猫ちゃんが、やられた?
だけどまだリタイアの音声は流れていない!
今は信じよう……イッセー君と小猫ちゃんを!
そう思って僕は二人との合流地点まで急いだ。
『Side out:木場』
―・・・
「ふふふふふふ……まさか攻撃されるとは思っていなかった?狩りを終えて油断した獲物は一番狩りやすい……基本よ」
「―――確かに基本だけどさ…………御託はそれだけか?ライザーの『女王』」
「!!?」
……俺の声に随分とライザ―の『女王』は驚いているようだった。
それはそうか―――確実に不意を突き、事前から用意していた術を全力で放って、しかも直撃したことを確信したのにも関わらず、声が聞こえたんだからな。
俺は拳を振るい、爆炎による煙を振り払って空に浮かぶ敵を見る。
……あの時、俺は部長に言ったんだ。
『ライザーの性格を考えたら、あいつは自分の下僕を犠牲にしてでもこちらの駒を減らすかもしれません』
『……つまりサクリファイス?』
『ええ……こちらは駒を一つでも失えば致命傷です。別に可笑しい手ではないでしょう? だからこそ、俺は一つ、賭けに出たいんですが……任せてもらえませんか?』
……俺は少し気がかりだった。
あいつは初めから俺達を舐めていた……でもあいつの下僕がそうではなかったら?
もし仮に、建設的な考えをして俺達を確実に減らすことを考えるほど頭の切れるやつがいたらって。
頭の切れる存在が配下にいるのではないか、と。
「狩りをし終わった獲物が狙いやすいね、それは確かにそうだな……まあ、俺達は誰も狩らせやしないけど。それに今のお前は得物に逃げられて悔しそうにそいつを見ている、情けない狩人の顔をしているぞ?」
「くっ!?き、貴様っ!!」
敵は見るからに怒気を含んでおり、杖を今にも振るおうとしていた。
―――あの時起きたこと……それは至極簡単だ。
小猫ちゃんと俺が油断していると思ったライザーの『女王』が爆発の魔法を俺達に向かってきた。
しかも小猫ちゃんを重点的に狙ってきてたことから考えると、間違いなく小猫ちゃんを狙ったんだろうな。
小猫ちゃんと手をわざわざ繋いだのは、小猫ちゃんをもしかしての時に庇うため。
今回はそのことが頭にあってよかった……っていうより、ここまで勘が当たるのは奇跡に近いな。
……って言っても
「……私の作戦を見破ったのは褒めてあげる。でもどうやら仲間をかばって自分がダメージを受けたみたいね」
……あいつの言うとおりだ。
俺は小猫ちゃんを庇うため、自分を守る魔力壁は少ししか展開できずに、致命傷を免れただけだ。
一歩間違えれば俺がリタイアだったな。
……でもあいつは知らないだろう。
「さて……ダメージもあることだし、さっさと回復するか」
『Force!!』
致命傷は免れてんだぜ?
だからさ……こんなダメージは一回の
『Creation!!』
……俺の手元に、白銀の光と共に俺が最も創りだしている神器、
それと同時に俺の体にあった爆発の炎傷は跡形もなく消えた。
「な!?お前達の回復担当は一人だったはずよ!」
「残念、それは調査不足だったな。こっちもなりふり構ってないんだよ。―――大丈夫か、小猫ちゃん」
俺は、俺の腕で静かにポツンとしている小猫ちゃんに話しかける。
俺が小猫ちゃんに庇った際、小猫ちゃんの体に魔力壁を覆わせるために俺が小猫ちゃんを抱きしめたから、小猫ちゃんを座りながらお姫様抱っこしている状態なんだけど……
「…………イッセー先輩。ホント、先輩は何者です」
「……ちょっと頭の働く先輩だよ」
「……ありがとうございます。ですがあいつをどうしますか?」
小猫ちゃんは上空に浮遊しているライザ―の『女王』を指差してそう呟く。
……まあ、倒しておくのに変わりはないけど、でも作戦はどうしても上手くいかなくなる。
予定では木場と俺と小猫ちゃんで運動場の敵を殲滅、更に俺が新校舎に入って昇格してライザーを倒す作戦なんだけど……
そう思っていると、ちょうどあの『女王』と相対するように上空から下りてくる、朱乃さんの姿があった。
「イッセー君、小猫ちゃん……先を急ぎなさい」
「朱乃さん!」
「……ですがここは三人でやった方が確実なんじゃ―――」
俺がそこまで言いかけて、そこで気付く。
それは―――朱乃さんの纏う雷が、バチバチと雷鳴を響かせていることに。
それは暗に彼女が怒っていることを意味していた。
「心配はご無用ですわ。私の大切な後輩に不意打ちで傷つけようとする不届き者。オカルト研究部副部長として―――」
すると朱乃さんの魔力が跳ね上がる!!
「倒しますので」
「……油断はしないでください。そいつは不意打ちこそしましたが、そうでなくても相当の腕です」
「分かっていますわ……さて
「うふふ……雷の巫女と呼ばれる貴方に知られているなんて光栄だわ。でも、私ね? その名はあまり好きではないのよ」
……俺は小猫ちゃんを連れて、そのまま木場との合流地まで急ぐ。
後ろでは女王同士による激しい魔力合戦が始まっていた。
『ライザー様の『兵士』3名、リタイア』
……すると更に三名がリタイアしたというアナウンスが入った。
兵士三人か。なるほど……木場のやつか!
「これで半分近くのあいつの駒を殲滅出来た……あとは」
俺と小猫ちゃんは運動場付近に到着すると、俺はすぐそばに木場がいることに気がつく。
そして俺は腕を引かれた。
「やあ、イッセー君、小猫ちゃん。無事でよかったよ」
そして腕を引いた張本人は涼しい顔で無傷でいた木場だった。
「……さすがだな、木場」
「いやいや、君に比べたらまだまだ足りないよ……それにしてもイッセー君は服装がボロボロだね」
……言われてみれば、今の俺は制服の上着が完全に燃えて、シャツの前の部分が燃えて腹筋から胸が軽く見えると言う、何ともだらしない状態だ。
ここに朱乃さんがいたら直してもらえるんだろうけど。
「僕の上着を代わりに着るかい?」
「いや、別に戦闘に支障はない。ったく、あの爆弾野郎、服を完全に消し飛ばしやがって……」
……そんなことを言っていても仕方ないか。
そして俺達3人は運動場の近くにある用具倉庫に入った。
「……戦況的に考えて、あんまり小猫ちゃんを戦わせるのは好ましくないな」
「…………イッセー先輩は何を」
「気付かないとでも思った?俺の魔力壁は完全じゃなかったことくらい、一番俺が良く分かってる―――それに次の敵は確実に屋外戦で有利な騎士が出張ってくるんだ」
「ッ!!」
……そう、完全じゃなかったんだ。
小猫ちゃんは無表情だけど、元々は俺ではなく小猫ちゃんが標的だった。
庇ったとはいえ、明らかに小猫ちゃんもダメージはある。
俺は今は連続で神器を創造することが訳あって出来ない。
それに何より、次の敵は小猫ちゃんとは相性の悪い騎士や僧侶。
「一度、小猫ちゃんは本陣に戻るべきだ。アーシアの回復を受けて、そして戦場に戻ってきてくれ」
「……ですが!」
「可愛い後輩が傷ついているんだぜ?ここは先輩にカッコつけさせろって」
俺は小猫ちゃんの頭を撫でながらそう言うと、小猫ちゃんはそのまま黙ってしまう。
「…………分かりました。すぐに戻ってイッセー先輩と共に!」
……そうだけ言うと小猫ちゃんはそのまま用具倉庫から出て行って本陣に戻っていく。
「……僕も一応、いるんだけどね?それにしてもイッセー君の兄貴肌には困るよ」
「…………気にすんな、頼りにしてるぜ?」
俺はそのまま木場を慰めるのだった。
「……それに実を言うとな、そろそろ隠れてこそこそやるのが面倒なんだわ」
「同感だね。僕も面倒なのは嫌になってきたところだよ」
……そう言うと、俺達はどちらともなく笑った。
考えることは一緒か……なら!
「オカルト研究部の男子コンビで、あいつらに目が飛び出るくらい驚かしてやろうぜ!んで見せつけるんだ―――俺たちの底力を」
「……当然だよ! 僕たちは舐められて終われないからね」
そして俺と木場は拳を殴り合わせ、そして用具倉庫から飛び出る。
「出てこい!ライザーの眷属共!俺達は逃げも隠れもしねえ!!」
俺は運動場に出て叫ぶようにそう言い放つ。
そして篭手を出現させて、それと同時に胸に白銀の神器を出現させる。
『Boost!!』
『Force!!』
1段階目の倍増と創造力が溜まる。
そして……お出ましだ。
「堂々と真正面から現れるなど、正気の沙汰とは思えんな―――だが!」
……運動場から霧が現れたと思うと、そこから甲冑姿のライザ―の下僕が現れる。
「私はお前らのような馬鹿が大好きだ!」
「……………………」
……はぁ、こいつも相当の馬鹿なんだるな。
とにかく、あいつは恐らくは『騎士』……剣を帯剣しているくらいだしな。
「私はライザー様に使える『騎士』、カーラマインだ。さぁ、グレモリーのナイトよ、名乗れ!」
「……僕はグレモリー様に使える『騎士』、木場祐斗。ナイト同士の戦い、待ち望んでいたよ!!」
……木場が帯剣していた黒い剣を引き抜き、何度か振りまわすとその剣先を相手に向けた。
「良く言った、リアス・グレモリ―のナイトよ!!」
ッ!
すると相手の『騎士』が高速で動きははじめる。
木場と遜色のないほど速度……さすがは『騎士』!
っていうか、木場!
お前も実は剣馬鹿だったのか!?
「……全く、カーラマインは剣馬鹿なんだから」
……なるほど。
考えたな、ライザー。
「全員投入とはさすがに俺も驚いたぞ」
……そこにはライザーの持つ、全ての駒が集結していた!
ツインロールの金髪の女の子に、仮面をつけたいかにも近接戦闘を得意とするような女性、和服の女の人に、これまた双子の猫耳少女に大剣を持った奴……
おいおい、まじか?
「それにしては随分と物静かだな、リアス・グレモリーの『兵士』」
仮面の女が俺にそう言ってくる。
「悪いが、これぐらいで焦っているようじゃあいつに喧嘩を売らねえよ」
「ほう……面白い。ならばその力を!」
「イザベラ!!!」
……あのイザベラ?って呼ばれた仮面の女が俺に掛かってこようとした瞬間、俺の右側の少し離れたところにいたツインロールの金髪の女の子が彼女の名を叫ぶ。
「……わかりました、レイヴェル様」
……?
何か知らねえけど、あの女の人が腕をひっこめた。
そしてツインロールの女の子……レイヴェルと呼ばれた少女が突然、一歩前に出た。
「……お前が戦うのか?」
「い、いえ……わ、私は戦いませんのよ、兵藤様」
……はい?
兵藤様?しかも戦わないって……
「……そのイザベラさん?少しこいつが何を言っているのか分からないんだけど」
「……なんかすまない。そしてその方は戦わないのだ。なぜならその方の名は……レイヴェル・フェニックス」
……ッ!?
フェニックス!?
「つまりライザー様の実の妹君だ」
「……………………………………………………」
その時間、10秒。
俺はその間、本気で何か理解できなかった。
つまりなんだ?
今、俺の前でモジモジと顔を赤くしてこっちを見ている女の子はライザーの実の妹でそしてあいつの駒?
………………まじか、あいつは変態だったのか。
「えっとさ……とりあえず、あいつに言ってもらえるか?さすがに妹に手を出すのは人として、悪魔としてでも頭おかしいんじゃねえの!?……って」
『Boost!!』
『Force!!』
……俺の神器がむなしく音声を響かせる。
なんかさ……気が抜けたけど、でもあいつは何となく倒さないといけない気がしてきた。
「ええっと……レイヴェルちゃんだっけ?とりあえずさ、可愛いからって妹に手を出すような変態はぶっ潰すけど、いいかな?」
「か、可愛い!?は、はい!!」
……さて、何か知らないけど許可は貰えたしとりあえずは―――
「気合いを入れますか!!いくぞ、ブースト!!」
『Boost!!』
よし!これでなんやかんやしている内に8段階の強化が終わった!
「……遅れたが、私はライザー様に使える『戦車』イザベラ。正直レイヴェル様の件は私もどうかと思うが、それとこれとは全く以て関係ない!―――さあ、行くぞ!!リアス・グレモリーの『兵士』!!」
「望むところだ!」
そして俺と『戦車』の近接戦闘が始まる。
―――ッ!!
こいつはさっきの小猫ちゃんが戦っていた戦車よりも明らかに強い!
俺はこいつの全ての攻撃を避けていくけど、拳の風圧だけで火傷しそうだぜ!
「ほう!良く避ける!さすがはライザー様に啖呵を切る男だ!」
「そりゃどうも!つってもあんな気障な奴に啖呵キレない男の方がダサいけどな!―――これでも喰らえ!!」
俺はイザベラの攻撃をした瞬間、篭手に包まれた拳を強く握り、素直にストレートを放ち狙う!
紙一重で交わすも、そして体勢が崩れ攻撃してきたところを……回し蹴りでカウンター!!
「ぐぅッ!!」
勢いに勝てず、イザベラは地面に叩きつけられる。
……ああ、戦えるさ。
「…………これほどとは。ならば全員で掛かるまで!!」
……すると俺を囲むようにレイヴェルを除く全ての駒が臨戦態勢になる。
いいね……なら久しぶりのあれだ!
「そんな手を俺が予想していないとでも思ったか?人数がそちらの方が上なんて、初めから考慮している!だからそれなりの手も考えて来てるんだよ―――木場!!今すぐその場で飛べ!!」
「ッ!!」
俺は木場に思い切り叫ぶと、木場は反射的に俺の指示に従う!
『Explosion!!!』
そして溜まった倍増のエネルギーを俺は爆発的に開放する!
魔力も、身体能力も全てが上がる感覚が俺に包まれる!
俺は幾つもの魔力の球を作り、そして俺は適当にその場に投げ捨て、そして……
「
俺の魔力が龍の形の弾丸となり、更に拡散していく形で彼女たちを襲う!
木場の相手にしていた『騎士』は楽々と避けているが、俺の本当の目的はそこじゃねぇ!
倒すことじゃない、そこから脱出するためだ!
だけど嬉し誤算は、俺の周りには少なからずダメージを与えれたということか……全ての力を使い果たすわけにはいかないから、力を弱めたからな。
さすがにリタイアまではいかないか。
「……貴様の『兵士』はどうなっている?」
「さあ……僕にも彼の強さは恐ろしいよ」
……すると木場の手元を見た。
そこには折れた木場の黒い剣!
まさかあいつにやられたのか!?
「大丈夫だよ、イッセー君―――壊れたならば、創ればいい」
……木場は俺の視線に気付いて静かにそう言うと、何も折れた剣を持ったまま、相手の『騎士』に向かって行く!
「血迷ったか!?」
「そんなはずがないだろう?…………凍えよ!!」
―――ッ!?
折れた剣の柄から氷の剣が出てきて、相手の剣の刃を凍えさして儚くも刃は消える……いや、そういうことか。
まさかとは思ったけど、あれは……
「な!?貴様、神器を二つも持っているのか!?ならば!」
相手の『騎士』は腰の短剣を抜くと、そこよりフェニックスの炎が眩く光る!
そしてその炎の剣で木場の氷の剣を解け壊すが……俺の考えが正しければ無駄だ。
「―――無駄だよ」
木場は解けた氷の剣の柄から、次は先端が大きく、更に円状で中心に不可解な球体がある。
そしてその球は炎を風のように吸い込んでいった!
「……僕は複数の神器を持っているわけじゃない―――創ったのさ」
……やっぱりそうか。
そうして木場を見るのと同時に、先ほどからずっと攻撃してくるライザ―の下僕の攻撃を避ける。
「
そして木場は地面に剣を突き刺すと、そこから次々と魔剣が生まれて次々に地面からの剣が生えてくる!
……創造系の神器、俺の
あらゆる属性を瞬間的に生み出せるから、使い勝手はタイムラグのある俺のより高い!
木場にぴったりの神器で……俺も負けてられないな!!
「そろそろいくぞ!」
倍増の爆発力はまだ時間はあるはずだ!
今のうちに決めて…………魔剣創造か。
なら悪魔に転生してから、何故か出来なかったあれをしてやる!
「木場!!俺に向かって神器の力を使え!!」
「!?……分かったよ。信じているよ、イッセー君!!」
木場は一瞬、驚いた顔をしたけど次の瞬間、俺に幾重にも連なる魔剣が地面から生えるように放たれる!
俺は倍増の力を全て篭手に集中し、そしてあれをする!
「
『Transfer!!』
俺の中の倍増の力が……木場の神器、
「ば、馬鹿な!?」
「これも……ドラゴンの力?」
……大地から鋭く生えたさっきとは比べ物にならないくらいの魔剣が、ライザ―の下僕の腹部に全員刺さっていた。
それと同時に、彼女達は光輝く。
『ライザ―様の『兵士』2名、『騎士』2名、『僧侶』1名、リタイア』
……つまりはリタイア。
なるほど、こんな風に消えていくのか。
ちなみにリタイアした下僕は然るべき場所で然るべき治療を受けるらしい。
「……イッセー君。この力は……」
「……ギフトの力だな。元々、俺は使うことはなかったから忘れてたけど、これは第三者に倍増した力を譲渡する力。つまりお前の力を大幅に高めた技だな。完全なサポート技で、ずっと一人で戦っていた俺には縁のない技だけど―――集団戦なら、これほどに便利な技は中々ない」
……神器の性能をあり得ないほど上げる
最も、兵藤一誠に転生する前の俺は一度も使ったことがない力だけどな。
ついでに言うと、悪魔の駒で何故かこれだけ、まだ封印されてたし。
「……君の”強化”の力と組み合わさったら恐ろしい能力になりそうだね」
「ああ、その考えがあったか」
木場の何気ない言葉に俺は新しい発想に思いつく。
……まあそれは今後、検討していくか。
とにかく今はライザ―だ!
何かは分からないけど、あのレイヴェルと言われる変態の妹にはさすがに効かないようだったからな……
さすがは不死身ってとこか。
『イッセーさん!聞こえますか!?』
……すると、その時、アーシアの通信が突然に響いた。
焦ってる?どういうことだ?
「どうした、アーシア!何があった!?」
『大変なんです!部長さんが……部長さんが!!」
……なんだ、この嫌な予感は。
アーシアの焦り声と、どこからともなく感じる嫌な予感に俺は冷や汗を掻きながらアーシアの言葉を待つ。
そして、その嫌な予感は的中したのだった。
『―――部長さんが単騎で相手の本陣に向かいました!!』
……それは衝撃的なことで、俺は目を見開いて驚いた。
そして―――
『リアス様の『女王』1名、リタイア』
新たに響く音声と共に、ゲームは終盤戦へと迎えていた。
今回はここまでです!
一日に二話を更新したのは、明日は更新できるか分からないからです。
今回は序盤戦と中盤戦の二つの話でした。
次回は終盤戦!
突然のリアスの行動、イッセーの行動に注目です!
では今回はここまで、また次回です!
PS
イッセーのゲームでの功績はやばいですね(笑)