ハイスクールD×D ~優しいドラゴンと最高の赤龍帝~   作:マッハでゴーだ!

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番外編1 悪魔は使い魔が必須なようで

 アーシアが悪魔になり、悪魔家業にある程度は慣れてきたある日のことだった。

 アーシアと俺は部長に呼びだされ、夜の部室に来ている。

 それよりまず、アーシアについての説明が先だよな。

 アーシアは結局、俺の家にホームステイする形で事が収まった。

 まあその間にいろいろといざこざ(主にというよりも完全に母さん)があり、結果的に俺が母さんに土下座をして頼んだら、渋々頷いてくれた。

 でも母さんもアーシアの優しさに気がついて今ではすごい気にいっていて、家ではよくアーシアに料理の仕方なんかを教えてあげてるらしい。

 まさに娘が出来た感覚なんだろうな……俺への過剰なスキンシップは消えないけど。

 そんな淡い期待を粉々にされたわけだ。

 まあとにかく、アーシアは兵藤家でうまくやっているさ。

 ちなみに母さんに関しては、たまに夜にこうして集まることがあるんだけど、部長に悩んだ末に頼み、母さんが俺が夜に出て言っても気にならないようにしてもらった。

 そして今、俺とアーシアは部室で部長の話を聞いている。

 他の部員はと言うと、小猫ちゃんはソファーで羊羹を食べていて、朱乃さんは箒を以て部室を掃除していて、木場に至っては本を読んでいる。

 

「「使い魔、ですか?」」

 

 俺とアーシアは声を合わせてそう部長にそう聞いた。

 使い魔……という存在自体は把握している。

 悪魔と契約し、情報伝達や追跡、意思疎通が出来る便利な存在……っというのがセオリーか?

 アーシアはそんなこと知らないだろうから、一応俺は耳打ちすると、アーシアは納得したような表情をした。

 

「イッセーの助言で大体のことは分かったみたいね。……そう、悪魔は大体が自分の使い魔を持っているの。イッセーの場合はもう何件も人間と契約を結んでいるし、アーシアも仕事に慣れてきたからそろそろ使い魔を持たせようと思ったわけよ」

 

 ……ちなみにアーシアが契約を結ぶお客様は、大抵が癒しを求めている人間らしい。

 仕事でストレスが溜まり、それをどうにかしたいがために悪魔を呼んだサラリーマンの男のヒトや、家事などのストレスを抱えた主婦。

 そんなストレスを抱えた人に対してアーシアは純粋に心配し、話を聞いてあげるのが定番となっているそうだ。

 より親身に話を聞いてくれるアーシアはリピーター力が凄まじいとのこと。

 まあアーシアは存在自体が癒しで、優しく、気が利いてなおかつ可愛いからな!

 癒されたい気持ちは十分にわかる!

 

『使い魔か……フェルウェルよ、俺達はいったい何なのだろうな?』

『……わたくしは主様のマザー、母です』

『ならば俺はパパだ』

 

 ……俺の中の愉快なドラゴンは本当に復活してから恥ずかしげもなく、そんな台詞を言うようになった。

 しかも最近では俺の中で口喧嘩をよく勃発させ、落ち着いてご飯も食べられないようになっている。

 良いドラゴンなんだけど……な?

 ちょっと俺に対して過保護すぎるっていうか、親馬鹿加減がリアルの母さんと父さん並に凄まじいんだ!

 

「使い魔は分かったんですけど、どこで獲得するつもりですか?」

「それは…………」

 

 部長が俺達にそれを伝えようとしたときだった。

 オカルト研究部の部室の扉が、唐突に誰かにって開かれた。

 誰だ?ここにはオカルト研究部の面々は全員、ここにいる。

 誰だ、と思っていると部屋の中にどこかで見たことのあるような数人の女子生徒と一人の男子生徒が入ってくる。

 見覚えがあるはずだ。……この人たちは駒王学園の生徒会役員の面々だ。

 その先頭にいる女生徒。確か、彼女の名は……

 

「生徒会長の……支取蒼那先輩?」

「イッセーさん、あの方々は……」

 

 アーシアは不安そうな表情で、部室の入口に立っている生徒会役員の面々の方をみている。

 

「あれはこの学校の生徒会の人たちだ。簡単に言ったら学校を支えてくれてる人だな」

「は、はぅ! そんな人たちのことを知らないなんて、ああ、主よ! 罪深い私をお許しくだ―――ひゃう!!」

 

 アーシアは悪魔にも関わらず昔みたいに神に祈りを捧げるポーズをしてそう言うと、頭を押さえて頭痛に苦しむ。

 ……アーシア、もう俺達、悪魔だから!

 

「うぅ……忘れていました、イッセーさんッ!」

「はいはい、よしよし」

 

 俺はアーシアの頭を撫でてあげると、アーシアはもう見てるだけで癒されるような笑顔を向けてくれる。

 うぅ……アーシア! なんて君は癒しなんだ!!

 それはそうと、この人たちが今、ここにいるということはつまり……

 

「まあ予想はしてたんですけど、やっぱり生徒会は悪魔の集まりだったんですね?」

「あら、イッセー。やっぱり気が付いていたのね?」

 

 部長は俺の言葉に関心を持ったようにそう言う。

 まあ学園に悪魔がいるってことは知ってたし、それに悪魔が学園の上の方にいるということも何となくだけど予想はついていた。

 まさか生徒会がそうだとは思ってなかったけどな。

 

「リアス、そこの彼はもしかして……」

「ええ。最近、私の眷属の『兵士』になった兵藤一誠、そしてイッセーの後ろに隠れているのが『僧侶』のアーシア・アルジェントよ」

 

 部長は会長に俺達を紹介すると、俺とアーシアは一歩前に出て頭を下げる。

 

「リアス部長の下僕で『兵士』の兵藤一誠です。……それでこっちは」

「そ、『僧侶』のアーシア・アルジェントと申します!」

 

 すると会長は俺達に少しお辞儀して、にこりと笑ってくる。

 

「はじめまして。学園では支取蒼那を名乗っていますが、本当の名はソーナ・シトリー。上級悪魔でシトリ―家の次期当主です」

 

 ……まるっきり部長と立場が同じだな。

 上級悪魔―――ドライグの情報が正しければ、三勢力の戦争はほぼ全ての純粋な悪魔を失った生き残りを元72柱というんだ。

 シトリー家もまた、グレモリー家と同じく72柱の生き残りの名家だ。

 

「それでソーナ。今日は何のつもりできたのかしら?」

「ええ。お互い、下僕が増えたようですし交流を兼ねてと思いまして……匙」

「はい、会長!」

 

 すると今まで会長の隣にいたこの中の唯一の男子生徒が大きな声を上げて、前に出てくる。

 ちなみにアーシアは俺の背中に隠れた。

 

「生徒会書記として会長の下僕になった匙元士郎だ! まさかお前が悪魔になっているとはな、兵藤!!」

 

 ……なんか俺の方を指さして自慢げにそう言ってくるんだけど、一つ問題が発生した。

 それは

 

「お前……誰?」

 

 ……その場の空気が、凍った気がした。

 いや、厳密には凍っているのは目の前の匙とかいう男のみで、小猫ちゃんなんか羊羹を食べることに必死になってる!

 

「ま、まあ? ただの『兵士』のお前には俺の偉大さが分からないかもな! 俺は兵士の駒、4つ消費のエリート! ほんと、残念だよ、兵藤!」

「い、イッセーさんは残念じゃありません! 優しくて強いです!!」

 

 ……今まで俺の後に隠れていたアーシアが俺のことを悪く言ったと思ったのか、少し怒った口調で匙元士郎にそう言う!

 アーシア……別に俺は気にしてないけど、でもありがとう!

 っていうか何気にアーシアの怒り口調は珍しいな。

 

「止めなさい、匙」

 

 すると会長は匙の頭を強くはたいた。

 途端に匙は頭を押さえて、その場にうずくまると、会長が俺に頭を下げてくる。

 

「か、会長! なんでそんな奴に頭を下げるんですか!?」

「黙りなさい。……ごめんなさい、兵藤君。私の下僕がご無礼を……」

「気にしないでください! 俺も気にしてませんので」

 

 そう言うと、会長は頭を上げた。

 

「……匙の言った言葉は気にしないで。あの子、貴方に無駄に敵対心を持っているだけで、面識があるわけじゃないから」

「通りで全く、これっぽっちも、存在すら知らないわけですね!」

 

 ……俺はせめてものやり返しのつもりで、屈託の笑顔でそう言ってやる!

 アーシアを怒らせたこいつが悪い!

 

「な、なぁにぃぃぃい!?」

 

 すると匙は俺に掴みかかりそうになるが……

 

「匙。止めなさい」

 

 ……途端に、会長の凍りそうなぐらい低い怒り声が、部室内に響いた。

 

「匙、あなたは勘違いしているのかもしれませんが、そこにいる兵藤君はリアスの『兵士』の駒を8つ消費しています。……しかもその内、3つが変異の駒で単純計算で『兵士』23個分以上の駒を消費して転生できたほどです」

「に、23……ッ!!」

「それにあなたでは勝つことはおろか、戦いにすらならないでしょう。瞬殺です―――無礼を謝りなさい、匙」

 

 匙は会長に怒られて、俺の前に出て頭を下げた。

 

「すまなかった、兵藤……この通りだ。ちょっとお前に対して対抗意識を燃やし過ぎた」

「……いや、俺も少し大人げなかった。ほら、アーシアも」

「……イッセーさんは残念じゃありませんッ!」

 

 あらら、アーシアが珍しく頑固だ。

 ぷくっと頬を膨らませて、つーんとしていて匙はそれを見て血の涙を流したのだった。

 

 ―・・・

 

「貴方達も使い魔を?」

「も、ということはつまりリアス達も……」

 

 どうやら、会長は新人悪魔である匙に使い魔を持たせようと思っているらしく、そしてそれはリアス会長と被っている。

 どうやら使い魔を手に入れるのは月一回、満月の夜だけらしく使い魔の専門家は一月に数人しか請け負ってくれないらしい。

 

「……どうせなら三人同時ってのはどうですか? それなら早いし、別に我先にって思うわけでもないでしょうし……」

 

 俺はそう提案すると、あっさりとその提案が呑まれたのだった。

 ちなみについて行くメンバーは俺、アーシア、部長、小猫ちゃん、朱乃さん、匙、そして会長に副会長の真羅椿姫先輩だ。

 木場は来たがってたんだけど、どうやら悪魔家業の仕事が入ったらしい。

 そして今、俺達は悪魔を使役する使い魔が多く生息している地域らしい……けどここはあれだよな?

 

『相棒、お前の言いたいことは分かる。……ここは相棒が大きくなってから修行に使ってきた場所に非常に近い場所にある森だ』

 

 ここは俺が兵藤一誠になる前、修行の一環で利用していた森がある。

 そこの風景にとてつもなく似ているんだ。

 そこにいる魔物を相手に最初はただの神器一つで戦ってたっけ?

 それが修行の果てに禁手として目覚め、そして俺は強くなれた。

 

『主様、使い魔は強さ良いも優しさや従順さを主にすればよいです。主様自体が強いので、そもそも主様の強さに見合う使い魔がいませんよ』

 

 ……それは少し過大評価すぎないか?

 それに俺は転生してから強者という強者とも戦ってないし……この前の堕天使の時は目覚めた力と一緒に全力で倒したけどさ。

 まあそれは今はいい。

 問題は、部長で言うところの使い魔専門悪魔が未だにいないことだ。

 

「ゲットだぜぃ!!」

「ひゃ!」

 

 突然の声に、アーシアは可愛い悲鳴声を上げながら俺の後ろに隠れる。

 その仕草を見ていたのか、俺の横の匙は何とも言えない、にやけているのか、笑っているのかといった表情している。

 ま、俺は何となく察した……あれが使い魔専門悪魔。

 夏休みの少年が虫取りに行くようなラフな格好で帽子を逆に被っている、おっさんがそこにいた。

 

「俺はザトュージ、使い魔マスターだぜ! リアス・グレモリーさんよ、その者たちが電話で言っていた子たちか?」

「ええ……一人増えたのだけれど、良いかしら?」

「問題ないぜ! ……なるほど、そこの金髪美少女に茶髪な野性的な男前、それとさえない茶髪し男子か」

 

 ザトュージさんはアーシア、俺、匙の順番で見ながらそう言った。

 

「おいおい、兵藤! お前、冴えないって言われて……いだいいだい!!」

 

 匙は自分のことを言われているのに気付かず、俺をからかってくると、彼の付近にいた小猫ちゃんが匙の腕を曲がらない方向に曲げようとしていた。

 

「……イッセー先輩はあなたとは違います」

「い、いやぁぁぁああ!! 俺の腕はそっちには曲がらないぃぃぃ!!」

 

 ……小猫ちゃん、最近、君は何か俺のことで良く怒るね。

 よし、今度甘いものをご馳走しよう。

 あとうんと可愛がろう!

 

「イッセー、アーシア、この人は使い魔のプロフェッショナルよ。今日はこの人の言うことを参考にして、使い魔を手に入れなさい」

「匙も同様よ。いつまでも痛がってないで」

「「「はい!」」」

 

 匙は痛みに耐えながらそう言うのだった。

 …………で、さっきからずっとスルーしてたことがある。

 

「がぅ……がぅ?」

「ぴ~、ぴ~」

 

 ……森に入ってからもう数十分何だけど、なんか俺の周りに小さい動物みたいな魔物がすり寄ってくるんだ。

 まあ可愛い小動物みたいな魔物で無害なんだけどさ、俺の脚に頬ずりされたりすると、どうしても歩きにくいんだ!

 

「ほう……そこの男前さんは魔物に好かれる才能があるかもしれんな」

 

 ザトュージさんは俺を見ながら、興味深そうにそう呟いた。

 確かに小さい頃から動物に好かれやすいと言われれば、そうだったけど。

 っと、一つ気になることがあるからザトュージさんに聞いておくか。

 

「ちなみにザトュージさん。ここらで最も強い魔物って何ですか?」

「おう! それはこいつしかいねぇ! 龍王の一角、そして龍王最強と謳われる伝説級のドラゴン! 天魔の業龍(カオス・カルマ・ドラゴン)、ティアマット! 時たま姿を現しては暴れまわるらしいが、まあ手にいれられた悪魔などはいないぜ!」

『……ティアマットか。懐かしい名である』

 

 ドライグは俺の中でしみじみといったように呟く。

 知り合いなのか?

 

『ああ。……昔、何度か戦ったことがあってな、それでそのころの力を求めた俺は奴を何度も完膚なきまで倒したのだ。……それで奴は俺のことを嫌っていてな。そう言えば、歴代の赤龍帝で何人かが奴と遭遇したことがある』

 

 ……龍王って魔王クラスの実力保持者だろ?

 末恐ろしいな、ドラゴンは。

 

「……赤龍帝に龍王―――イッセー、ティアマットを使い魔にしなさい!!」

「ぶ、部長!? 話聞いていましたよね!? 完全、それ死ぬ方向じゃないですか!」

「だって見てみたいじゃない。赤龍帝と龍王のセット」

 

 ……そのために死ねと?

 まあ出来るものなら俺もティアマットもいいなと考えてしまう。

 だって、龍王ほどの力がいれば、修行の時も有意義なものになるからさ!

 

「……それにしても今日の森は静かすぎる」

 

 するとザトュージさんは怪訝な顔つきになった。

 

「おい、見てくれよ兵藤! この蛇、俺のことを気にいってくれたみたいなんだ!」

 

 匙は俺に自分の首に巻きつけてる蛇を見せてきた。

 しかもコイツ、既に使い魔契約をやってやがる!

 

「おお、そいつはまたレアな魔物だぜ!」

「マジッすか!?」

「まずそいつに気にいられる悪魔はなかなかいねいぜ! そいつはなんたって、人食い蛇だからな!」

 

 …………場の空気が、凍った。

 

「正式名称はバジリスク! 成体になれば大きさは50メートルを軽く越す巨大な蛇だぜ! 力もこの辺では最高クラス! 狙った獲物は最後まで逃がさない!」

「……それに気にいられた悪魔っていうのはまさか」

「おう!相当うまそうに見えているんだぜ!つまりは捕食対象だぜ!」

「―――い、いやぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」

 

 蛇は、嬉しそうな声を上げながら匙の首に巻きつく。

 子供のころの見た目は可愛いのにな……

 

「ちなみに言っておくが、どうやら今の時期はドラゴンの時期らしい」

「ドラゴンの時期?」

 

 俺は聞きなれない単語に首を傾げていると、ザトュージさんは間髪入れずに説明をする。

 

「そうだぜ! どうやら、森があまりにも静かなのはドラゴンがここに生息しているらしいからだぜ!」

 

 するとザトゥージさんは俺とアーシアに数枚の資料を見せてきた。

 

「ここにいるのはまだ子供なんだが……蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)火炎龍(サラマンダ―・ドラゴン)光速龍(ライトスペイド・ドラゴン)。大人になると相当の強さのドラゴンとなる」

「……いいな、こいつら」

 

 俺は何故か、ここに載ってあるドラゴンが気に入った。

 この三種の内、少なくとも一種くらいは俺の使い魔にしたい。ティアマットはともかく置いておいて!

 ……その時だった!

 

「あれは……スプライトドラゴン! しかも二匹だぜ!!」

 

 ザトュージさんはそう言ってくる。

 そしてその指の先には二匹のブルーダイアモンドのように美しい鱗を持つドラゴンが二匹いた。

 

「あれが……」

「それだけじゃないぜ!良く見ろ!あの二匹の他にもいるぜ!」

 

 ……ホントだ!!

 何か友達みたいにドラゴンが遊んでる!?

 良く見るとそれは―――火炎龍に光速龍だ!!

 何故か蒼雷龍の一匹だけが他の三匹から少し距離を取られている!?

 

「どうやらあの距離を取られている蒼雷龍はオスで、それ以外はメスみたいだぜ」

 

 ……あれか?

 ドラゴンの中にも、オスはメスの中に入れないという暗黙があるのか?

 まあどっちにしてもチャンスだ!

 

『相棒の使い魔にドラゴンか……いいだろう、相棒……―――ッ!?』

 

 するとドライグは突然、なにかに気付いたように驚いた!

 そして辺りに凄まじい強風が吹き渡り、そして突然、轟音のような音が響いた!

 ―――肌で感じることが用意なほどの威圧感。

 この感覚、俺は覚えがある。

 

『主様。この圧力の正体。恐らくは……』

「―――龍王、なのか?」

 

 俺は空を見上げる……そこには巨大なドラゴンの姿があった。

 白と黒の混ざり合った、どこか神秘にも感じる美しいドラゴン。

 そう―――龍王ティアマット!

 その姿は先ほどの図鑑で見た通りの姿だった!

 

『相棒! 奴を使い魔にする気か!?』

 

 さあな!!

 っていうか龍王を使い魔とか、正直不可能だろうけども―――挑戦はやってみなくちゃ分からないだろ?

 俺は悪魔特有の翼を展開させ、そして更に腕に籠手、そして胸に白銀の宝玉を出現させる。

 俺の中の二つの神器。

 それの力を解き放ち、俺は目前のティアマットの元まで駆け寄った!

 

「―――初めましてだな、最強の龍王ティアマット」

「……何だ、貴様は?」

 

 ……ッ!

 こいつ、言葉を話せるのか! しかも普通の女性の声だし!

 するとティアマットは俺の何かに気付いたように、その目つきが鋭くなる!!

 

「……その神器、まさか赤龍帝―――その赤龍帝がなんの用だ?」

「うぅ~ん……用って言うか、なんというか―――簡単に言えば、俺はここに使い魔を探しに来ているんだよ」

 

 俺は自分の事情をティアマットに話した。

 

「使い魔だと?」

「そ、使い魔! それであんたがここに偶に現れるっていうのを聞いて、ちょっと会えるか期待していたんだよ―――ってことで、俺はあんたを使い魔にしたいってわけだ!」

 

 俺は嘘偽りのない言葉で真っ直ぐティアマットを見て、拳を巨大なドラゴンに向ける。

 ―――するとその時だった。

 

「あはははは!! 私を使い魔か! そんなことを言う悪魔がこの世に存在するとはな!! 赤龍帝の小僧というから、どれだけの戦闘狂と思えば!!」

 

 ティアマットは、可笑しそうにそう笑いをこみ上げた。

 ……龍王の王者の余裕ってわけだ。

 

「それで、答えは?」

「……いいだろう、お前の名を言え」

 

 ティアマットはしばらく笑っていたが、途端に声音が真面目となる。

 ―――王者の風格、ここにありってか。

 なら俺も名乗ってやる。

 

「……赤龍帝、兵藤一誠」

「そうか―――ならば一誠、私を認めさせるほどの力を見せろ!」

 

 するとティアマットは遥か彼方の上空へと飛行した!

 俺の全力、可能性をあいつに見せつけるッ!!

 ドライグ、フェル!

 

『応ッ!!』

『はい!!』

 

 俺は神創始龍の具現武跡(クリティッド・フォースギア)の新しい力を使うことを決める。

 神創始龍の具現武跡の『強化』

 神器の性能を一時的に創造力を用いて強化し、自身の戦闘能力を著しく上昇させるフェルの新しい力だ!

 

『Force!!』『Force!!』『Force!!』『Force!!』『Force!!』『Force!!』

 

 音声と共に創造力は確実に溜まっていき、そして『強化』に必要な7回の創造力が溜まった。

 

『Reinforce!!!』

 

 そして俺の胸の神器より、白銀の光が俺の赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)に纏い、そして神器の状態が少し変化する。

 フィルムは多少鋭角になり、そして籠手の色が紅蓮というように強くなる。

 

赤龍神帝の籠手(ブーステッド・レッドギア)!!」

 

 一秒ごとに力を倍増させるという能力に一時的に強化された俺の新しい力、籠手の神帝化!

 ティアマットは上空から下降してくる最中、俺の状態を見て面白そうに笑った。

 

「―――なんだ、それは!! 赤龍帝が白銀を覆うだと!? 面白い!! 面白いぞ、一誠!!」

 

 するとティアマットは飛翔を終え、俺の方に全速力で降下してくる!!

 

『Over Boost Count!!』

 

 この音声は1秒倍増の音声!

 そして次の瞬間、一秒ごとに籠手から音声が鳴り響く!

 

「面白いぞ! 兵藤一誠!!」

「いくぞ! ティアマット!!」

 

 ティアマットは様子見というように特大のブレスを放ってきた。

 

『Over Explosion!!!』

 

 瞬間で何段階も倍増した俺の力が解放される!

 負担はすごいけど、どこか心地いい!!

 俺は籠手越しの拳に倍増した全ての力を終結させる!!

 その拳でブレスを薙ぎ払い、そして俺はティアマットの懐に入る!

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!」

「私は龍王だ!それほどの攻撃、見切って当然だぁぁぁ!!!」

 

 ティアマットは翼を織りなし空中で一回転するも、俺はそれを爆発的な加速力で追いつき、拳を放つ!

 しかしティアマットはその拳を片手で受け止めた。

 

「良いパンチだが、まだまだ若いな! ならば今度は私が」

 

 ティアマットは更に腕を振りかぶり、俺へとお手本というように殴り掛かるポーズを取る。

 だけど体格(サイズ)が大きいため、その動作は手に取るように分かる!

 俺はティアマットの拳を紙一重、当たるか当たらないかの寸前で避けた。

 

「―――な、にぃ!?」

 

 俺は再度、ティアマットの懐に入り、拳を握る!

 恐らく解放の力は数分と持たない!

 この一撃に俺の全てを注ぎ込む!

 俺はそう考え、倍増のエネルギーと魔力を全て拳に集中させ―――そして放った。

 俺はそのまま、ティアマットの体を、真下の部長達の方とは別の方向にある山に向かって殴り飛ばした!!

 ティアマットの体は山に直撃する。

 

『Over Reset』

 

 ……ッ!

 さすがにこの脱力感は何とかしないと二度目の攻撃が出来ないからな……力を改善しないと。

 俺はそう思いながら部長達の元に降りて行った。

 

「ただいまです、部長。…………ってなに驚いているんですか?」

 

 俺が下りると、そこにはすごい目を見開いた全員の姿があった。

 

「そ、それは驚くわよ! 龍王が現れたと思ったら、あのティアマットの攻撃を薙ぎ払って思い切り殴り飛ばすんだもの!!」

「いやぁ……あいつが力を証明しろって言ってきましたから」

 

 俺は苦笑いしながらそういうと、不意にアーシアの手元を見た……そこにはアーシアの手の中で恐ろしそうなものを見た、という顔をしている雄の蒼雷龍がいた。

 

「それ、もしかして……」

「はい! どうやらティアマットさんが怖くて私のところに来たそうです! それでどうしてか気にいられて、使い魔にしました!」

 

 おぉ!

 確か蒼雷龍は心の清いものにしか心を開かないはずだ!

 アーシアならぴったりだな!

 ―――がしっ。

 ……何かが俺の背中に何かが張り付く感覚に見まわれた。

 

「……これは更に驚きだぜい。あの龍王、ティアマットと互角に戦ったことでもおどろきだが、まさか」

 

 ザトュージさんは感心したような声音で俺の背中を見てくる・・・・・・そこにはあの時の三匹の小さな龍がいた!

 

「蒼雷龍、火炎龍、光速龍の雌の子供だぜ? その三匹に認められる男の悪魔はとにかく、類ない強さと善の心、そして―――見ための良さが決め手だぜ?」

 

 ザトュージさんはそう言うと、俺の手元に三匹の龍が抱きつくように引っ付いてくる。

 

「あははは! こいつら可愛いな!」

「ちなみにドラゴンのメスは姿を変化できるぜ?恐らく、その三匹はかなりお前さんのことを気に行ったみたいだぜ」

「―――そのようだな、兵藤一誠」

 

 ッ!

 これはティアマットの声……でも何で空中からじゃなく、森の中から?

 

「この姿で会うのははじめてか……」

 

 ……俺は声の聞こえた方を見ると、そこには背の高い、なんかすっきりとした顔立ちの美人な女性がいた。

 

「そいつで言うところの変化だ」

「あ、まさか……ティアマット?」

 

 ……彼女はティアマットが人間の姿となった存在ってことか。

 もちろん、彼女から圧倒的な威圧感は出ている。

 でもどこか彼女は優しげな雰囲気を今は出していた。

 

「あの一撃、私はお前を見誤っていたのかもしれない。まさか私が裏をかいたその裏をかいて全力の一撃を瞬時に放てるその機転―――評価に値する」

「……堅苦しいからイッセーでいいよ、ティアマット」

「貴様も堅い! 良いだろう、特別にティアと呼ぶことを許可する!」

 

 するとティアマットは高らかに笑う。

 そして俺の方に近づいてくる。

 

「本来、ドラゴンのメスはな、気に行った男にしか体を触れることすら許さない。その三匹の龍はお前のことを相当、気に行ったみたいだ・・・私同様、使い魔にしてやれ」

 

 ―――ッ!?。

 俺はティアの言葉に心底驚いた。

 あの伝説の龍王の一角が、俺の使い魔になるなんて夢みたいだ!

 ―――俺は部長に言われたとおり、使い魔にするための魔法陣を展開させ、そしてその中にティアマットを含めた4匹のドラゴンが入る。

 

「兵藤一誠の名において命ず。……汝、我が使い魔として契約に応じよ!」

 

 赤い魔法陣が光り出すと、そのまま魔法陣は消失した。

 

「そこのアーシアちゃんの蒼雷龍の使い魔化でも前代未聞だが、お前さんはもっと前代未聞だぜ。一度に四体の強いドラゴンを使い魔にしちまうくらいだからな」

 

 ザトュージさんは腕を組んで、うんうんと頷きながらそう言う。

 そして俺は使い魔となったティアマットや他のドラゴンの元に行き、手を出して握手を求めた。

 

「これから、よろしくな!」

「ふふ……そうさせてもらおう」

 

 ティアマットは俺の握手に快く応え、そして他のドラゴンは俺の胸に飛び込んだのだった。

 

「……イッセーくん、ずるいですわ」

「……イッセー先輩、私も」

「イッセーさん!!」

 

 すると三人が俺の傍まで来て、ティアマットと口論が起きたりなんかもした。

 …………伝説のドラゴン相手に口論出来る時点で、この三人も相当な勇気だよ。

 ―――こうして俺達には使い魔が出来たのだった。


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