ハイスクールD×D ~優しいドラゴンと最高の赤龍帝~   作:マッハでゴーだ!

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第2話 8人の子供たち

 凄まじい勢いで俺のことを警戒している目の前の少女を見て、俺は不意に苦笑いを漏らした。

 ―――先ほどの戦争派の一件から少し経ち、今も俺はメルティを引き連れてりんご畑の樹の傍で二人の姉妹と対面していた。

 俺の知っている情報といえば、この二人が姉妹であるということ。戦争派に追われているということと……二人の名前くらいか。

 髪の毛が短く、身体の至るところに傷を負っている少女がハレ。それとは対照的に無傷で無表情、ぼうっと俺を見ている少女がアメということくらいだ。

 あとは―――ハレ。彼女が神器を宿しているということくらいか。

 

「警戒するのは当たり前だ。この戦場で、あんな連中に負われていたんだからな。……俺を信頼しろとは言わない。ただお前たちの敵ではないってことは分かってくれないか?」

「……どいつも、同じことを言っていた」

 

 ……ハレは低い声音と敵意丸出しの態度でそう俺に投げかける。

 ……そうだな。彼女の言う通りだ―――まずは態度で示さないと、信頼も何もないよな。

 

『Force!!』

『Creation!!!』

 

 ―――俺は話をする前にフォースギアを展開し、創造力を溜めて一つの神器を創り上げる。俺の創り上げる神器の一つで、対象者の傷を回復させる癒しの白銀だ。

 それを二人に振りかけ、彼女たちの傷は程なくして消える。

 ……とはいえ、フェル不在ではフォースギアもこれくらいが限界だ。

 俺は神器を完全に消して、今一度二人に声を掛けた。

 

「……お前も僕と同じような力を、持っているの?」

「ああ。この力は神器と呼ばれるものだ―――知らないのか?」

「……あいつらがそんなことを言ってた気が……っ!」

 

 ハレはつい話してしまったことに驚き、俺のことを睨む。

 

「は、謀ったな!?もしかして僕に話すように暗示みたいなものを!!」

「そんなことしてるなら最初から回復させる必要ないだろ!人聞きが悪いな、おい!」

「う、うるさい!どうせお前も僕たちを利用しようとしているだけなんだ!そんな奴に話すことなんて―――ない!」

 

 ……ハレは再度神器と思われる剣を現出させて、威嚇するようにそれをその場で振るった。

 ―――すると俺の背後にあった樹がものの見事に横薙ぎに両断され、ドスンとしう音を立てて地面に落ちる。

 ……あれは剣による斬撃波のようなものじゃない。目視が出来なかった時点でただの剣じゃないことは分かっていた。

 先ほど兵士の装備の内側から奴らを切り刻んだ―――そう考えればおのずと見えてくる答えは一つ。

 

「―――その剣はそこにあるようでそこにはない剣。君が対象を定めることで、遠距離からでも剣を振るえる。……空間そのものを越える神器か」

「……っ!!」

 

 ―――あの剣は空間を切り裂いて、刃をワープさせて振るう能力を持っている。

 つまりあの剣は空間そのものを掌握できる可能性を持つ神器。……俺も見たことがないタイプの神器だ。

 ……だけどそれくらいだ。今までの情報を掻き集めて理解できたのはそれだけ。それ以上は俺も分からない。

 ―――問題はそこじゃない。今俺がどうにかしないといけないのは、ハレだ。

 あの子の警戒心は異常だ。過剰と言ってもいい。

 確かにこの戦場で生き残ってきたのだから、警戒心を持って当然だ。それは理解できる―――問題は、彼女自身は俺のことを警戒していないのに、警戒しようと躍起になってる点だ。

 彼女の傷を治して、少なくともハレの警戒は一度薄まった。最初の時の目よりも俺への拒否感が消えていた。

 ……しかし、すぐに思い出したように警戒し、アメを庇うように立つ。

 

「……さっきも言った通り、俺を信頼しろとは言わない。だけどな?この戦場はたった二人で切り抜けるのは無謀に等しいんだ―――俺を利用してくれても構わない。二人を保護させてくれないか?」

「―――信じない……っ!そんな善意があるはずがない!!」

 

 ……それでも彼女の決意は変わらない。

 ハレは俺のことを鋭い目で睨みながら、怒号のような声を上げる。

 

「お前なんて、必要ない……っ!僕はアメさえいればいいんだ!僕がアメを守るんだ!!」

 

 ハレはアメをギュッと抱きかかえ、目の前の空間を剣で一閃した。

 するとその空間に裂け目が生まれ、ハレはその中に足を踏み込んだ。

 

「……だから、もう僕の前に現れないで。……だけど一つだけ。アメの傷を治してくれたことだけは―――ありがと」

 

 その言葉を残すと共に彼女たちはその場から姿をくらませる。

 ……二人が空間の中に消え去る最中、俺は一瞬だけアメと目が合った。

 この会話の中、一言も言葉を発さなかった彼女は俺の顔をじっと見つめていた。

 口を開いて紡いだ言葉は―――ありがとう。

 そう心なしか笑みを浮かべて呟いたんだ。

 

「……なるほど。あの剣には空間転移にも応用できるのか。それでここまで戦争派から逃げてたってわけか」

 

 ……ともかく、俺の方は情報収集できるのはここまでだ。

 俺の獲得した情報は全部で三つ。

 一つ、戦争派は確かにこの悲劇を起こしていること。

 二つ、戦争派はハレとアメという二人の少女を追いかけているということ。

 三つ―――ハレには強力な神器が宿っているということ。

 ……俺はふと自分の腕に引っ付いているメルティを見た。

 基本的に何も反応を示さないメルティが、ハレとアメのことを興味深そうにじっと見ていたんだ。

 

「メルティ。お前はあの二人のことを何か知っているか?」

「…………」

 

 メルティは少しの間、無言で二人の消えた跡を見つめながら―――

 

「―――(シックス)(セブン)

 

 そう、ほとんど聞こえないほど小さな声で呟いた。

 ―・・・

 

 俺たち赤龍帝眷属は一度、オーランド諸島から離れた北欧南部の宿に集合する。

 そこで各自得た情報などを出し合っていた。

 

「私と朱雀はそうだな。とりあえず怪しい奴らを殲滅した、くらいか?」

「まあ概ねその表現で間違いないでしょう―――しかし、私たちが倒したのはただの人間でした。恐らくは戦争派によって洗脳され、意味のない戦争に巻き込まれた兵士でしょう」

「だから情報はなし、か」

 

 二人は俺がそう呟くと、少ししゅんと肩を落とす。

 ……そもそも二人を戦場に送った時点で情報はあまり期待していなかった。あいつらが既にことを起こした場所で何かを落とすことはないと思っていたからな。

 むしろ情報収集は黒歌とレイヴェルに一任したんだ。俺は二人に労うと共に、都市部を回っていた二人に声をかけた。

 

「それでそっちはどうだ?」

「うんうん、まぁ色々仕入れてきたにゃん―――と言っても核心を突くような情報はないにゃん。私たちがとっ捕まえて情報を吐かせた戦争派は大半が何の情報も与えられていない末端ばっか。……ただその一人が面白いことを言ってたにゃん」

「……ええ。―――実験。そんなことを呟いていましたわ。ただそれ以上はプロテクトが掛かっているように何も話しませんでした」

「……実験、か」

 

 そうなると、だんだんあいつらの行動の一つが見えてきたな。

 ……俺が持っていた前情報の一つ、フリードが言っていた第3次聖剣計画。それは戦争派が主導で動いているものであり、何より実験といえる内容のことだ。

 それと―――俺の手元のメルティ。彼女は間違いなく戦争派によって何かを施された異常な存在。

 そして、戦争派に追われていたハレとアメ。そのうちアメは神器を宿していたことを考えると―――臭ってくるな、あいつらのやろうとしていることが。

 

「それじゃあ俺が入手した情報について話すよ―――」

 

 俺は自分の身の回りで起きたことを皆に話す。

 それを話し終えると、それぞれが驚いた表情を浮かべていた。

 

「戦争派に追われる双子、ね。しかも神器持ちで、実験―――偶然じゃないにゃん。確実にこれは繋がってる」

「うむ。―――しかし困ったな。どうにかしようと思っても、聞いた限りでは心を開きそうにない。少なくともイッセーで駄目だったんだ」

「……心を開かない、っていうよりあれは―――頑なに、心を開きたくないんだと思う」

「……どういうことですか?」

 

 俺の回りくどい言い方に、朱雀は首を傾げた。

 ……俺も感覚でしかない。本当にそうかはわからない。

 ―――それでもどこか誰かに似ている気がしたんだ。あの二人が。

 本当は心を開きたいのに、他の要因が邪魔をして心を開くことができない。

 俺もそうだったからわかる―――頭では心を開いて全てを話せば楽になるって、誰かを頼れば良いってわかっているのに、それが駄目なことだと決め付けて自分一人で何かをしようとしていた昔の自分に。

 ……ハレ。彼女は昔の俺にそっくりだ。タイプに違いがあるけど、その根本は俺そのものだ。

 彼女の行動理念は恐らくアメを守ること。それが強迫観念に取り付かれて、何があろうとそれを成そうとする。

 

「彼女は他人を頼りたくない。恐らくこれまで色々な奴に騙されて、傷ついてきたんだ。だけどあの子は子供だ。心はまだ弱いから、誰かにすがりたい気持ちがある―――それでも縋ろうとしないのは、きっと妹がいるから」

「……私はその気持ち、わかるな」

 

 ―――俺の言葉を聞いた黒歌はふとそう声を漏らした。

 

「……すごくわかる、そのハレって子の気持ち。だって私と同じなんだもん」

「……そっか、黒歌は」

「うん―――私もずっと、白音を守ってきた。頼る身寄りもなくて、希少な猫又って存在だけで私たちを付け狙う存在から。……何度も騙されて、何度も傷ついて、誰かを頼ろうとは思わなかったにゃん。……だけど私にはイッセーがいた。小汚く傷ついた私たちを躊躇いなく抱きしめて、事情も知らないのに優しく、私の心を甘く溶かしてくれた―――きっとその子たちは求めているはずにゃん。そんな存在を」

 

 黒歌は俺の手を握って、俺の目を真剣に見据えて話す。

 ……俺は手を握り返して黒歌を真っ直ぐ見た。

 

「―――彼女たちを救おう、イッセー。きっとそれを出来るのは、私たちだけにゃん」

「―――当然だよ、黒歌。絶対に救ってみせる」

 

 ……俺と黒歌の決心を他の眷属も頷いてくれる。

 ―――とりあえず今日は遅い。幸い部屋も二室取れたので男女で分かれて明日に備えよう。

 

「それじゃあ今日は解散で。朱雀、行くぞ」

「はい」

 

 俺は朱雀を連れて女子部屋から退出しようとした-――そのとき、黒歌にガシッと腕を捕まれた。

 

「―――いやいや、ちょっとそれは待ってもらうにゃん」

「は? いやいや。別に待つ必要なんて……」

「―――メルティ、イッセーについていってるにゃん」

 

 ……黒歌に言われて気づく。っていうかもう習慣化していて全く気づかなかった。

 メルティは言わないと俺から離れないため、基本的に就寝の際も離れることが少ない。俺も飼い犬に引っ付かれている感覚で特に気にすることなく一緒に寝ていたから感覚が麻痺していた。

 

「まぁ俺が監視するってことだし、良いだろ?」

「…………」

 

 俺はメルティの頭をガシガシと撫でると、子犬のように吐息を漏らす。

 しかし黒歌を含めた女性陣が納得のいかない表情だった。

 

「―――駄目だな。うむ、駄目だ。そういうのはお姉ちゃんの役目だ! 相場ではそう決まっている!!」

「ええ、全く以って駄目です。うらやま……はしたないです!」

「ってことでイッセー―――イッセーと同室の権利は皆平等にあるにゃん!!」

 

 皆一同に「そーだそーだ」なんて言いやがる!

 め、面倒くさいなおい!

 っていうかメルティにそういう目で見ていると思っているのか、こいつらは。

 

「あぁもう分かったよ―――平等にくじで決めよう。お前らもそれで不満はないな?」

 

 俺の言葉に頷く眷属の皆。

 俺は即席でくじを用意し、それで部屋割りを決める。

 その結果は―――

 

 ―・・・

 

「悪は滅びる、ってな」

 

 ―――あの時非常にうるさかった黒歌とティアは見事くじに外れた。

 そして俺と同室になったのはメルティ、レイヴェルの二人。

 ……朱雀についてはご愁傷様としか言いようがないが、俺の方は平和というかなんというか。

 

「黒歌さんとティアさんには申し訳ないですが……っ」

 

 なおレイヴェルは一人グッとガッツポーズをして喜びを表現していたりする。

 ……俺は先にシャワーを済まして、今はレイヴェルとメルティがシャワーを浴びているところだ。

 メルティは一人では何もしないため、レイヴェルに面倒を見るように頼んでいる―――っていうか普通に俺がしようとしたら止めてきたからな。

 ……俺はベッドに寝転びながら考える。

 ハレとアメのことを。……どうしたらあの二人を救うことが出来るのか。どうしたら心を開こうとしてくれるのか。

 ……なんで俺があの二人に対してこうも助けたいと思うのか、それは分からない。だけど、二人を見ているとどうしても思ってしまうんだ―――助けないといけないって。

 ……今まではこんなことはなかった。助けようと思った人物は既に自分とは身近な存在であったから。助けるのは当然で、実行してきた。

 ……彼女たちを見ていると、懐かしい感覚に囚われる。会ったことなんてないはずなのに。

 

「わっかんねぇよ―――あいつは一体何に怯えているんだ。なんで救われることを拒むんだろうな」

 

 その、分かるはずのない疑問が頭を過る。

 ……信用できないとか、そもそもその問題ではないと思うんだ。ハレの中には俺の手を取らない理由がある。それがわからない限り、俺はあの双子を救うことが出来ない。

 ―――結局のところ、もう一度合わないと何も始まらないわけだ。

 だったら今俺に出来ることは早く寝て、明日に備えること。

 ……そう思い先に眠りにつこうとした―――その時だった。

 

「……メルティか?」

 

 目を瞑った俺のベッドに、誰かがコソッと侵入してくる。

 恐らくはシャワーを終えたメルティがいつも通り入ってきたんだろ?

 おれはため息を吐きつつ目を開けてそこを見ると―――

 

「……何してんだ、レイヴェル!?」

 

 ―――そこにはレイヴェルがいた。

 彼女は顔を真っ赤にしながら俺のベッドに侵入しており、俺が起きていることに驚いている様子だ。

 

 

「こ、これはイッセー様! ち、ちがうのです!」

「なにが違うんだ? まるで黒歌みたいな―――あいつの差し金か?」

 

 黒歌のような行動から勝手にあいつの入れ知恵であると確信していると、レイヴェルは急いでそれを否定した。

 

「ち、違います! これはその……私は皆様に比べてイッセー様とはあまり親睦を深めていませんので……その、私とほぼ同時期に来たメルティさんと同じように同衾すれば、自然と仲良くなるかなと……」

「……そういうことか。まあレイヴェルならあんまり気にしないでもいっか」

 

 レイヴェルが黒歌みたいに貞操を狙ってくることもないだろうしな。俺はポンとレイヴェルの頭を撫でると、そのままもう一度ベッドに寝転んだ。

 気づくとレイヴェルの逆側にはメルティが身体を縮こませて寝転んでいた。

 

「……なにボサッとしてるんだ、レイヴェル? 一緒に寝るんじゃないのか?」

「い、良いのですか!?」

「良いもなにもレイヴェルが望んだことじゃないのか? ……まあ黒歌じゃないしな。変なこともしないだろ?」

「……イッセー様の黒歌様に対する信頼度のなさを今再確認しました―――そ、それでは失礼します……っ」

 

 レイヴェルは少し遠慮気味に俺の腕を抱きしめるように掴んだ。

 ……無意識なんだろうが、胸が当たっていることにはきっと純粋な彼女は気づいていないんだろう。

 俺は少しだけ動揺しつつも、それを隠すように眠りに落ちるのであった。

 

 ―・・・

 夢幻の因子。それはグレートレッドが俺に与えてくれた守護覇龍発現のきっかけとなった存在だ。

 それは守護覇龍が生まれたことにより消えていたと思っていたけど、実際には俺の中で根付いて浸透していた。

 ……それだからか、俺はあれからよく夢を見るようになった。

 その夢は妙に現実的で、自分は神の視点にでも立っているような立ち位置でその光景を達観しているだけ。

 ―――夢ってのは様々だ。

 悪夢もあれば幸福な夢があり、意味のわからない夢さえある。

 夢の世界は自由そのもので―――たた稀に、夢ではない夢を見ることがある。

 ……助けを求めるような、そんな夢。その夢の世界では住人は一人だけで、ただ助けを求める心の声だけが響いているんだ。

 ―――今もまた、俺はそんな夢を見ている。

 

『…………けて』

 

 その声は今すぐにでも消えそうなほど力のない声で叫んでいる。

 

『……は、本当は弱いから。……誰でも良い―――を、助けて……っ!』

 

 ―――その夢はそれで終わる。

 唐突に、画面が途切れるようにプッツリと。

 ……だけど。その声だけは俺の頭の中に残り続けた。

 

 

 ……ふと目を覚ます。

 まだ外は暗く、メルティもレイヴェルも眠っているようだ。

 ……まだ日も上がっていないのに、妙に目が冴えてしまったな。

 

「……ちょっと外に出るか」

 

 俺は部屋に二人を置いて出て行こうとした時だ―――まるで最初から起きていたように、メルティが俺の服の裾を掴んで離さなかった。

 

「……なんだ? メルティ」

「…………」

 

 メルティは俺の行く手についていくと言わんばかりに俺に引っ付いてくる。

 ……仕方ないな。こいつには何かを聞くことを考える方が野暮だ。

 俺はメルティに上着を着させて外の空気を吸うために宿から出る。

 ……久しぶりに見る、故郷の夜景色だ。

 昔ドライグと二人で旅をしていた時のことを思い出して、感傷に浸る。

 ―――強くなるための旅。赤と白の宿命をどうにかするために強くなろうと旅をして、その先々であったたくさんのことを思い出した。

 

『懐かしいな。この風景も空気も、お前が強くなっていった過程も今思い出したよ。まあ今とさして変わらないがな』

「心構えが違うよ。少なくとも今の俺と、あのときの俺とは」

『―――そうだな。お前は殻を破って一つ大人になった。身も心もな。……それが嬉しくもあり寂しくもある。がむしゃらな頃の相棒も、俺にとっては魅力的な相棒であるからな』

 

 ……ドライグはそれ以上は語らない。

 ……確かに落ち着きすぎと言われればそれまでだ。感情を露わにすることだって少なくなった。

 それは責任という重みを背負っているから―――守るものが増えたから。

 ……思えば俺にはあるだろうか。本当にやりたいこと―――我儘を通してでも成し遂げたいことが。

 

『それを探すのも相棒の役目さ。俺はそう思う。その先に何があってもおれは―――俺たちは、いつまでもお前の味方であり続ける。

 

 ……ドライグの最後の言葉は、きっとフェルにも向けられたものだ。

 俺の中で眠り続けるフェル。やっぱりあいつがいないと、締まらないんだよ。

 ドライグが馬鹿言って、フェルがツッコンで、結局二人が馬鹿言って俺が疲れることになる―――やっぱそれがないと、俺たちは締まらないんだ。

 

「……そろそろ向き合わないとな、色々と」

 

 ……っし!

 とりあえず今は目の前の問題を向き合おう。

 戦争派。人間を巻き込み、何かを企んでいる謎の集団。

 ……その時だった。

 

『―――相棒。神器を展開しよう』

「……そうだな―――あっちから接触しに来てくれたみたいだな」

 

 ―――俺は即座に籠手を展開し、空から降り立つ三人のローブを羽織った人影を見る。

 ……背丈は小さい。それこそメルティと同じくらいの背丈だ―――目的はなんだろうな。

 俺を屠りに来たのか、メルティを回収しに来たのか―――まずは聞いてみるのが一番か。

 

「一応聞くぞ。お前たちは戦争派の連中か?」

「―――そ、そうだよ。わ、わたしたちは……戦争派の、え、エージェントだよ?」

 

 ……帰ってきたのは気弱な声だった。

 声音は思っていた通り子供の女の子の子で、少し意外だった。

 ……だけど少しずつ見えてきた。俺がこれまで出会ってきた戦争派の関連の存在は子供が多い。

 メルティにハレとアメ、そしてこの三人。……あいつらは子供を使って何をしているんだ?

 

「何をしに来たんだ? 俺を殺しに来たのか? それともメルティを連れ戻しに来たのか?」

「―――違う。あなたを、迎えに来た」

 

 ……三人のうち、真ん中の男の子がしっかりとした声でそう呟く。

 その男の子が前に出た瞬間、先ほどのおどおどとした少女は少年の陰に隠れた。

 

「……どういうことだ?」

「俺たちのリーダーがあなたに興味を持っているんだ。より詳しくは、あなたの中の創造の神器に。おとなしくついてきてくれないか? できれば俺は、戦いたくない」

「……それはできない相談だな。俺はお前たちの起こした悲劇を終わらせに来たんだ。お前たちに協力するつもりなんてサラサラない」

「―――お願いだ、大人しくついてきてくれっ!」

 

 ―――少年の声が大きくなる。

 ……何かに焦っているのか? 彼の心中がまるでわからない。

 

「ひひひ、もういいじゃんね? 別にディヨン様言ってたジャーン―――ほとんどコロシテも構わねぇって」

 

 そこまで一切口を開かなかった少年が、引き笑いをしながら真ん中の少年にそう進言した。

 

「まぁおらぁ勝手にやらせて、もらう……がぁぁぁっ!!」

 

 ―――口調の荒い少年の状態が変質する。

 ローブは弾け、少年の体から煙のようなものが噴出して視界が悪くなる。

 ……俺は籠手からアスカロンを引き抜き、煙を剣を振りかざして煙を消し去った。

 ―――そこにいるのは、もはや人間ではなかった。

 

「……っ。お前、その姿は」

『―――ひひ、いひひひっ!! あぁぁ、やっぱりいいよなぁこの姿はぁぁ!!!』

 

 ―――鋭い牙に、全身を覆う鱗。巨大な翼に刃が無数についた尻尾、その姿は……ドラゴン。

 ―――龍人の姿だ。だけどそれは夜刀さんのような人間の面影さえない、純粋な禍々しいドラゴン。

 

「戦争派は、そういうことばかりに手を出してるってわけか―――納得したよ。だからメルティも、人間外れの力を宿してるってことか」

『ひゃははは!! そこの出来損ないと一緒にすんなよぉぉ!! おらぁなぁ、(エイト)。そこの(ワン)と違った完全成功体なんだよぉ!!!』

 

 龍人の少年は激高した声音で俺、そして仲間であるはずのメルティに襲い掛かる。

 翼を織りなし、肥大化した体をくねらせて素早い勢いで近づいてきた。

 

「ドラゴン、か―――アスカロン、轟け」

 

 龍殺しの性質を持つアスカロンから聖なるオーラを噴出させ、龍人の少年へとそれを攻撃として放つ。

 しかし―――そのオーラを、奴は喰らっていた……っ!

 待て……、龍殺しの聖剣だぞ!? いったいあいつは何の実験を受けてやがるんだ!?

 

『う、めぇなぁ……。そいつ、ほしぃなぁ……―――あぁ、忘れてたなぁ。おらぁ戦争派のドルザーク。たのしませてくれよぉ、赤龍帝ぇぇぇ!!!』

 

 ―――ドルザーク、そう名乗った奴は口元に純白のオーラを溜める。

 それは先ほど俺が放ったアスカロンのオーラであり、あいつはそれを……ブレスして放った。

 俺はそれを同じくアスカロンで薙ぎ払うも、気づけばドルザークは俺の傍にいた。

 

『―――これでぇ!』

「……驚いたけど、甘いぞ」

『Explosion!!!』

 

 ―――近づいてきたドルザークに向けて、俺は至近距離で籠手の倍増のエネルギーを解放、それを魔力弾を浴びせた。

 ドルザークはそれを喰らうことはせず飲み込まれるも、ダメージを最小限に抑えるようにすぐさま後方に消える。

 

「ドルザーク、相手はあの赤龍帝だぞ。一人では無理だ―――少なくとも今の君では」

『るっせぇぇ!! だったらてめぇもさっさと戦えよ!!!』

「……わかっているさっ」

 

 ……向こうも一枚岩ではないのか?

 ドルザークに言われてようやく少年がローブを脱ぎ払い、その顔を俺と見合わせる。

 ……白髪と銀髪が混ざったような髪の少年だ。目は鋭く、一見したら子供らしさからほど遠い少年。

 そんな彼の傍に寄り添うのはおどおどとした少女―――少年は少女の肩を抱き寄せ、俺の方を睨む。

 

「俺は戦争派のディエルデ。―――行くぞ、ティファニア。すぐに終わらせるから」

「……うん。お兄ちゃん―――」

 

 ―――ディエルデに抱き寄せられるティファニアと呼ばれる少女は、光に包まれる。

 ティファニアは光の粒子となって消え、そして―――ディエルデの手の中で、剣となった。

 ……ティファニアからは可笑しい気配は感じなかった。それこそ完全に人間だった。

 なのに、人間が剣に変わる? それにあれは―――聖、剣?

 

「―――第三次、聖剣……計画」

「そう……第三次聖剣計画の成果―――ティファニアと俺は、二つで一つの戦士だ……っ!!」

 

 そう言って、ディエルデは聖剣……ティファニアを振りかざして俺へと向かって走ってくる。

 それとほぼ同時にドルザークも加速を始めた。

 俺はディエルデと剣戟をする。

 俺は彼の剣をアスカロンで受け止めようとするも、ディエルデは剣を何があっても傷つけないような立ち回りをする。

 全ての剣の軌道を読み、聖剣を俺を切り裂くことだけに使っていた。

 ……そういうことか。俺はドラゴンの翼を展開し、それを織りなして空に浮かぶ。

 そして空中からディエルデに魔力弾を放とうとするも、俺の傍にはすぐさまドルザークが現れた。

 ……良いコンビネーションだなっ!

 

「だけど市街地で禁手を使うわけにはいかないよな……っ」

『それを理解したうえで襲い掛かっているんだろう―――相棒のことを相当研究しているぞ、奴らは』

 

 この市街地で禁手クラスの出力を出して戦えば、周りへの被害は甚大。俺にそれができないことを理解している上で奴らは戦っているんだ。

 ……とはいえ、彼らもまだ本気は出していない。たぶん俺を拘束するということはあいつらにとっての最優先事項なんだろう。

 ―――ただ一つだけ気に食わないことがあるとすれば、奴ら―――ドルザークがメルティごと俺を殺そうとしていることだ。

 むしろ俺よりも徹底してメルティを狙っている。俺はメルティを庇いながら戦っているから本調子は出せない。

 ……しかも厄介なことに、周りに気付かれないような気配遮断の結界を張っていて眷属の皆にこの異変が伝わらない。

 ティアと黒歌さえも気付かない結界を張る存在は誰だ?

 

「仕方ないか―――神器強化!!」

『Reinforce!!!』

 

 俺は籠手状態の神器に創造力である白銀のオーラを照射した。

 それによって俺の籠手は紅蓮と白銀の光に包まれ、とぐろを巻き、そして籠手は変化する。

 赤龍神帝の籠手(ブーステッド・レッドギア)。倍増の感覚を10秒ではなく1秒に変え、その出力を大幅に強化した形態だ。

 一撃だけでなら禁手並の出力を繰り出せるようになると、俺は全ての倍増を身体強化に回す。

 

「メルティ、俺の傍から絶対に離れるなよ」

「…………命令?」

「……そうだ、命令だ」

「…………了承」

 

 俺の一言にメルティは頷くと、俺の命令通りメルティは俺の動きについてくる。

 ドルザークとディエルデは突如強化された身体能力に対応はできておらず、俺はここぞとばかりに奴らを速度で翻弄する。

 

『なっ、はぇぇぇ!?』

「……落ち着け、ドルザーク。身体強化をしたとしても、必ず動きには緩急がある―――その一瞬を見極めるんだ」

 

 ……冷静だな、あいつ。

 ディエルデの冷静な戦略眼に賞賛を覚えつつ、だけどこのまま膠着状態を維持するつもりはない。

 ―――例え理論的にはそうだとしても、理論ではどうにもできない領域がある。来ると分かっていても反応できないほどの速度。

 ……今だ!

 

『Over Explosion!!!』

 

 籠手の倍増を全て解放し、瞬間速度をディエルデが想定していたものよりも遥かに凌ぐ速度にする。

 その勢いのまま俺はドルザークの背後を取り、そのままその拳をドルザークへと振るった。

 

『っっっ!!』

 

 それによってドルザークはそのまま近くにある木々の方に飛んでいき、そのまま衝突する。

 

「ドルザーク。……馬鹿が。あれほど油断するなと」

 

 ―――その瞬間を俺は見逃さなかった。

 ディエルデの視線が一瞬、ドルザークの方へと向く。そのタイミングで俺は魔力弾を生成し、それを高速でディエルデに放った。

 ……しかし、俺の魔力弾は阻まれる。

 

「……ッ!? ティファニア!」

 

 ディエルデは少女の名前を叫ぶ。

 ……俺の一撃を止めたのは、彼が操る剣ではなく、剣そのものだった。

 剣が勝手に動いて俺の一撃を切り裂くように消したんだ。

 

「……意志を持っているのか、彼女もまた」

 

 ……俺がそう分析していると、ディエルデは俺を鋭い目で睨みつける。

 ―――憎悪が篭った目だった。まるで俺を仇のように睨みつける彼は、もはや子供の域を超えている。

 

「―――ティファニアを傷つけたな、お前ぇぇぇぇ!!!」

 

 ……口調が一転、ディエルデは冷静さを失ったように俺へと向かって近づいた。

 その速度はこれまでとは比にならないっ!

 不味い―――見失った。

 

「償えぇぇ!!!」

「っ!」

 

 背後に気配を感じ、俺は籠手でそれを防御しようとする―――しかし横薙ぎに振るわれる剣をディエルデは恐ろしい敏捷力で軌道を変え、俺の防御をすり抜けて剣を振るう。

 確実に防御が間に合わないと思った―――その瞬間だった。

 

「っ!! おまえ―――メルティ!!」

「……(セカンド)(スリー)

 

 ―――その一撃を、メルティが鋭い爪を出現させて防いだ。

 その行動を見てディエルデは目で見て明らかな程に激昂する。

 

「どうしてだっ! 命令されていないのに、何故お前はそこにいるんだ!」

「…………忘却」

「っ、この裏切り者がぁぁぁ!!!」

 

 ディエルデは素早い剣戟でメルティを切り刻もうとするも、俺はすぐにメルティを抱えて空に飛びあがる。

 

「メルティ、お前何で……」

「…………疑問。メルティ、行動……意味、不明」

 

 ……メルティ自身が今の行動に疑問を持っているようであった。

 ―――だけど偶然としても、あの剣の一撃を受けなかったことは幸運だった。恐らく、あの剣は一撃でも受ければ致命傷になり得る何かがあるんだろう。

 

『Over Reset』

 

 その瞬間、俺の倍増が一度リセットされる―――俺は即座に赤龍帝の鎧を身に纏う。

 この状況、周りに結界が張ってあるのなら多少無茶をしても問題ないと判断した。それにあいつらは禁手なしでは分が悪すぎる。

 

「……っ、バランスブレイカーか」

「ご明察―――だけど終わりだ」

 

 ―――ディエルデがそう呟いた瞬間、俺は既にあいつの後ろにいた。

 ディエルデはその速度は流石に予想していなかったんだろう―――俺はすぐに更に背後にドルザークが向かってきている事に気付いた。

 その対策として俺は一匹だけ守護龍を鎧と宝玉を剥いで創り出し、自分の背後に配置する。

 そしてディエルデへと向けて拳をそのまま振るった。

 

「―――必中を穿て、ゲイ・ボルグ」

 

 ―――そう、気付いた時だ。

 気付いた時には、俺の腕には―――鎧を砕き、槍が俺の腕に貫通していた。

 

「……っっっ!!」

 

 ……槍は俺の腕を貫通した後にすぐに消失し、俺の腕には穴が空く。

 ―――全く、予想だにもしなかったっ……! 気配も何もなしに、攻撃を受けるなんてなっ!

 

「―――お前ら、こんなところにまでご登場か。……英雄派っ!」

「―――お兄ちゃんドラゴンの腕を穿つ♪ やぁ、僕のご登場さ」

「しかし咄嗟の反応とはいえ心臓への一撃を腕へと移すとは驚きだね」

 

 ―――俺たちの上空にいる存在は、英雄派だった。

 そこにいるのは英雄派の晴明派のクー・フーリンとジークフリートの二人。

 ……俺はメルティを抱えながら地上に降り立つ禍の団の一団から距離を取る。

 

「お、まえたちは……」

「我らは英雄派だよ。君たち子供たち(・ ・ ・ ・)の護衛という任務を受けていてね―――些か君たちだけでは荷が重いだろう? 彼は」

「そーそー、ディエルデくんとドルザークは僕たちが守ろー♪」

 

 ……状況は最悪か。

 目の前には英雄派のクー・フーリンとジークフリートに、ディエルデとドルザークがいる。

 対する俺は深手を負っていて、メルティは基本的には俺についてくるだけだ。

 

『……けっ。興ざめだぁ』

 

 ドルザークは龍人化を解き、つまんなさそうな表情で悪態を突く。

 ……さて、そろそろ潮時か。

 ―――もう少し情報を収集したかったんだけどな。

 

「―――黒歌、もう良いぞ」

 

 ―――俺がそう呟いた瞬間、辺りを囲んでいた全ての結界が消失する。

 それと同時に俺と禍の団の間に凄まじい速度で割り込むのが二人だ。

 ……ティアと朱雀は戦闘態勢を完全に整えて、英雄派の連中を睨んでいた。

 

「……うっわ、してやられた―――君、意外と狡猾だよね。赤龍帝くん」

 

 クー・フーリンは俺が何を狙っていたのか理解したのか、心底面倒くさそうな声を出す。

 ……あんまり褒めらえても困るなぁ。

 

「戦いが長引き、そいつらが不利になれば誰かが助太刀に入るって確信していたさ。まぁお前らが来るなんて思っていなかったけどな―――そういう意味でも思い通りに動いてくれて助かったぜ」

「……しかも僕のゲイ・ボルグの能力を晒してしまうなんて―――やってくれたね、本当に!」

 

 クー・フーリンは俺を貫いた槍を消して、光の剣である光輝剣・クルージーンを武装を持ち替えた。

 その輝きを斬撃波として俺の方に振るう―――も、それは朱雀によって止められる。

 

「封を解く。硬骨の鋼龍よ、護り振り切れ」

 

 朱雀は宝剣の中に封印されている防御力が桁外れなドラゴンを顕現し、その一撃を無力化する。

 それを見てクー・フーリンは盛大に舌打ちをした。

 

「イッセー様! 今すぐ治癒をします!!」

 

 近くに寄ってきたレイヴェルは懐からフェニックスの涙が入った瓶を取り出し、それを俺に振りかけた。

 それによってクー・フーリンによって開けられた風穴は一瞬で塞がれ、身体機能も元に戻る。

 ……流石の即効性だな。

 ―――さてと。

 

「お前ら晴明派の連中がここいるってことは、この戦場にはお前らの他に二人いるんじゃないか? ヘラクレス、そして―――安倍晴明が」

「……赤龍帝眷属が勢ぞろいでは戦力差は歴然か。……引こうか、ここは」

 

 ジークフリートはそう呟くと、途端に奴らの足元に魔法陣が展開される。

 

「意外だな。お前がこの状況で嬉々として戦わないなんて」

「……僕としてもこんなところで君たちと戦うのは勿体ないって考えているだけだよ。君たちとの決着は英雄派全てでつけないと意味がない―――まぁせいぜい頑張りなよ、赤龍帝眷属」

 

 ―――そんな言葉を残して、一団は消えた。

 ……クー・フーリンに比べて、ジークフリートはどこか戦意が薄いように感じた。

 ともかく、一応の危機は去ったことを確認して、俺は仲間の元に駆け寄る。

 

「悪い、皆。心配かけちまったな」

「もぅ……全くにゃん。でもある意味盲点だったよね。あの結界は完璧だったけど、まさかあいつら、こんなんで外に情報伝えられるとは思っていなかったよね」

 

 黒歌は携帯電話をプラプラと手首で振りながら、苦笑いする。

 ―――あの子供たちが来たタイミングで、俺は黒歌に「襲われてる、でもまだ来るな」ってメッセージを送ったんだ。

 気配は遮断しても、人間の技術までは遮断できなかったみたいだ。

 

「……ですが、これは対策を練らないとなりません。何より兄さん……晴明がこの戦場に来ている可能性があるのであれば」

「……可能性で言えばクロウ・クルワッハも警戒するぞ」

 

 朱雀とティアは互いに因縁のある名前を出して、少し闘志に火がついているようだ。

 ……そうだ。クリフォト。あいつらの警戒も怠ることは出来ない。あいつらの得意分野は暗躍だからな。

 ―――それにして、さっきの奴らは皆番号を語っていた。

 しかもメルティは昨日のハレとアメのことも番号で呼んだ。

 ……メルティは1、ディエルデは2でティファニアが3、ハレとアメが6と7で、ドルザークが8か。

 

「……今の戦いではっきりした。戦争派の連中は子供たちを使って何かしようとしているんだ。恐らくは実験―――人が人外の姿になるメルティとドルザーク、人が聖剣になり更にそれを操っているディエルデとティファニア。そして戦争派に追われていて、更に神器を宿しているハレ、そして妹のアメ」

「普通じゃないよね。……少なくとも、今すぐにあの姉妹を保護しないと取り返しがつかなくなるにゃん」

 

 黒歌の言う通りだ。

 間違いなくあの二人は厄介ごとに巻き込まれている。

 ―――昨日保護していれば、なんて考えるのは後だ。

 

「―――その通りっすよ。赤龍帝眷属のみっなさ~ん」

 

 ……俺たちがその会話をしている最中、軽快で軽薄な声が響き渡る。

 俺はそこに向かって振り向いた。

 

「……やっぱり来たのか」

「そりゃあ当然? まぁ聖剣あるところに俺っちってね?」

「フリード君。あんまりふざけるのは止めたまえ。今は非常事態だ」

 

 ―――そこには二人の男がいた。

 ……一人は元より俺に戦争派の情報を教えてきたフリード・セルゼン。そしてもう一人は―――

 

「話は多方面から聞いているよ、兵藤一誠君―――私はガルド・ガリレイ。バルパー・ガリレイの弟の錬金術師だ」

 

 ―――フリードの剣を創った、稀代最高の錬金術師にしてフリードと共に第2次聖剣計画を頓挫させた張本人。

 バルパーの糞爺よりも優しげで穏やかなその容姿で、ガルドさんは俺に懇願してきた。

 

「―――どうか、我らと共に共同戦線してくれまいか?」





ってことで10章2話でした。
おい、オリキャラ多すぎだろ!?って言われても言い訳できないほどのオリキャラが……
最近絵を練習していまして、少なくともオリキャラのデザインくらいは挿絵でのせればなって思っています。でも画力がまだまだ足りないんで、気長に待ってください!
それではまた次回の更新をお待ちください!

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