ハイスクールD×D ~優しいドラゴンと最高の赤龍帝~ 作:マッハでゴーだ!
第1話 北欧へ
――硝煙の香りが充満する。
周囲は爆音と弾丸が撃ち続けられる音が鳴り響き、時折聞こえるのは女子供の悲鳴。
そんな……地獄があった。
血と涙が入り乱れる理不尽な世界――そんな地獄の世界をたった二人で駆け抜けるように逃げる少女たちがいた。
美しく、見惚れるほどの綺麗な銀髪を靡かせて、戦場を逃げ惑う二人の少女。
瓜二つの容姿をしているその少女の内、短髪の少女は長髪の少女の手を引いていた。
そこには会話はなく、ただ生き延びるためだけに行動している。
……そんな中、長髪の少女が瓦礫に足を取られ、その場に倒れた。
「――アメ!」
短髪の少女は、もう一人の少女が倒れたことに気が付き、名前を呼びながら近くに寄り添う。
そしてその手を再び掴んで、肩に手を回して何とか立ち上がらせた。
「……さ、行こう。もっと遠く、逃げよう?」
「…………」
アメと呼ばれた寡黙な少女は言葉を発さず、静かに頷いて一歩踏み出す。
短髪の少女はそんな彼女に肩を貸しながら、戦場を突っ切っていく――
――そこは戦場。
北欧のとある地域で巻き起こった悲劇の連鎖。
そんな悲劇と戦うのは、立った二人の姉妹――銀髪の少女、ハレは誓う。
「――僕が、アメを守るんだ」
――妹を、必ず守ると。
少女がそう決意したとき、遠い北欧の地を舞台にした物語が始まる――……
第10章「課外遠足のシスターズ」 ~開幕~
―・・・
「にゃ~……ここが北欧かー。結構寒いにゃん」
「黒歌さんがそんなに薄着なのが問題です! っていうか露出が過ぎますよ!」
北欧の大自然を前にして、もはや恒例となった絡み合いをする黒歌とレイヴェル。
――俺、兵藤一誠はそんな黒歌やレイヴェル、更にはティアや朱雀などといった赤龍帝眷属を連れて北欧にいた。
修学旅行の一件からまだ日は経っていない上に、普通なら学校であるにも関わらずこんな辺鄙なところにいる理由は一つ。
「あんまり騒ぐなよ? 一応隠密行動が主体になるんだからさ――とりあえずまずはオーディンの爺さんのところに面会しに行くから」
――なぜこのような状況にいるかといえば、それはほんの数日前に遡る。
「――アザゼル。俺たちをわざわざ魔王城に呼んだ理由を、まだ教えてくれないのか?」
「悪ぃな。今回の件は他言無用な超重要なことなんだ。あいつに直接説明される以外は駄目だ」
その日、俺を含めた眷属に加え、俺が保護しているメルティはアザゼルに連れられて、冥界にある魔王城に来ていた。
その理由は未だに教えてくれないが、アザゼルが言うには自分の立場ではあまり公には言えないとのことらしい。そのため、その事情っていうのはこの先で待っているサーゼクス様が教えてくれるってことになっているんだけど――赤龍帝眷属だけが呼ばれているっていうのが不思議でならない。
この場合は俺のそもそもの所属であるグレモリー眷属を呼ぶものとばかり思っていたんだけどな。
「……それにしたってちょっと妨害工作が異常にゃん。この城、最早要塞ってレベルの守護体制になってるよ、イッセー。例えるならエッチのときに音波一つも外に漏れないレベルに」
「く、黒歌さん! た、例えが卑猥です!!」
「ははは、レイ鳥は純情だなぁ~」
「レイ鳥ってなんですか!? ティアマット様、それは幾らなんでもひどすぎます!!」
このひたすらに最年少のレイヴェルが弄られるっていう光景も見慣れたもんだ。
それを俺と朱雀の男子勢が微笑ましそうに見守るってのも赤龍帝眷属の日常風景の一つ――っていうより、下手に突っ込んで標的をこっちにされるのが面倒だからっていうのは、口が裂けても言えないことだ。
……レイヴェル、俺たちの平穏のための犠牲になってくれ! 俺は心でそう思いつつ、アザゼルについていく。
アザゼルは特殊な術式でサーゼクス様がいる魔王の間への扉を開き、そして俺たちは和気藹々とその中に入っていった。
その中の大きな座椅子にはサーゼクス様がいて、その傍にはグレイフィア様が控えていた。
ティアを除く俺たち眷属はサーゼクス様に跪こうとするも、サーゼクス様はそれを止める。
「つい最近にあれほどのことがあったのに、急に呼び出して申し訳ないね。私としてもあまり何度も呼び出したくはないのだが……まぁそうも言っていられない状況になってしまったのだよ」
「構いません。それに今回の件で眷属が増強されたので、それのご報告にも伺おうと思っていました」
俺は後ろに控える眷属の皆を指してそう言うと、サーゼクス様は俺たちのことをじっと見つめる。
「……報告には聞いていたよ。流石に龍王を眷属にしたと聞いたときは度肝抜かれたがね。……だがお陰で冥界の上層部もそう簡単には君を追い詰めることができなくなった」
「当たり前だ。この私がいるのだからな」
――ティアが俺の眷属になったことで大きく変わった状況がある。
それはティアが龍神と深い関わりがあること、そして俺たちの眷属は悪魔の立場に所属しながらも世界最強のドラゴンという種族で集結しているということだ。
これまでここまでドラゴンが群れを成すことはなかった。だからこそ三大勢力は個々としてドラゴンに警戒することはあっても、ドラゴンという種族全体を警戒することはなかったのだ。
だけど今は違う。
ドラゴンファミリーと称する俺たちの輪は、既に全ての勢力から危険視されている。
特に今回の件で明らかになった、世界最強のグレートレッドとの繋がりは特に冥界上層部への牽制となったんだ。
「我々三大勢力や神々の勢力とはまた違う、ドラゴンの勢力――第四勢力とも呼ばれているよ。その中心的な人物である君を上層部はそう簡単に手を出せなくなった。……その代わり、間接的に追い込もうと躍起しているけどね」
「問題ありません。――なるほど。つまり、その間接的にって部分が今回の件に関わっているのですね」
「その通り――上層部からの勅令が君たち、赤龍帝眷属に来た。任務、と言ってもいい。これが赤龍帝眷属の最初の任務……詳しいことはそうだね。グレイフィア、あれを展開してくれ」
「はい、サーゼクス様」
サーゼクス様はグレイフィアさんにそう指示を出すと、グレイフィアさんは空中にモニターのような光の枠組みを作った。
そしてそこから映写されるのはビデオ映像のようなもの。
――そこに映っているのは隻眼のために眼帯をつけている、皺がかった爺さんだった。
白い髭を触りながらニヤニヤとした表情を浮かべるその爺さんは――北欧の主神、オーディン。
最後に顔を見たのは確か、旧魔王の起こした戦争の時だったか。
『久しいのぉ、赤龍帝。ロスヴァイセは上手くあの槍を使っているかの?』
「出力が大きすぎて持て余しているみたいだよ、オーディンの爺さん――それで? この度は赤龍帝に何のお話でしょうか?」
俺はわざとらしく敬語を使ってそう言うと、オーディンの爺さんは珍しく表情を真面目なものにした。
……なるほど、つまりそういう話ってわけだ。
『公にはなってはおらんが、実はな。北欧の地で今、戦乱が起きているのじゃ』
「戦乱? それはおかしいだろ。北欧は平和な地だ。戦争なんて起きる要素があるはずが――」
俺は自分でそう言いながら、ふと可能性の一つを思い出した。
……起こるはずのない戦争を起こす存在を、俺は知っている。
それは今、俺の横でずっと俺の服の裾を握っている少女――メルティ・アバンセの存在だ。
この少女を創り出した組織を俺は知っている。糞食らえの、仕方のない連中。三大勢力どころか人間までもを巻き込んで活動する奴らの名は――
「戦争派。奴らの仕業なのか?」
『――恐らくは。だが確証が出来ぬというのが現状じゃ。なにぶん、奴らはこちらの包囲網を掻い潜り今起きている事件を巻き起こしているのじゃ。隠匿性はピカイチな集団じゃよ』
「……尻尾すら掴めていないってわけか」
オーディンの爺さんは俺のまとめに頷く。
『しかも北欧の勇者やヴァルキリーが追っているのじゃが、その何人もが命を落とすか重篤な傷を負っておる。生半可な強さでは奴らに返り討ちに遭ってしまうんじゃ。じゃが、我々神々がこの件をどうにかしようものなら、辺りの被害は甚大じゃ』
「神の力は強すぎて、人間界では足かせになっちまうのか」
『そう――だからワシは三大勢力に要請した。この事態を性急に解決する人材を派遣してくれ、と』
「そうして白羽の矢が立ったのがイッセーくん、及びにその眷属というわけだ」
……サーゼクス様はそう言うと、オーディンの映る画面のすぐ隣に北欧の風景を映した――そこに映るのは、美しくあるはずだった光景。
自然は重火器によって燃え盛り、人々が逃げ惑うパニックな映像だった。
「……戦争派」
声が低くなるのを自覚する。
――なぜこんなことが出来る。同じ人間なのに、なぜ奴らは何も関係のない人々を巻き込んで、こんなことをっ!!
……そんなとき、俺の後ろに控えていたティアが俺の肩を掴んだ。
「……分かってる。今見るべきなのは現実だ。怒りに囚われるのは後でいい」
「――なら良い。その怒りは後まで取っておくべきだ」
「そうにゃん――ねぇ、オーディンのお爺ちゃん? こうなってくると、もう結論を言ってくれると助かるにゃ~? ほぉら♪」
すると黒歌はわざとらしく胸元の谷間をオーディンに対して強調する。するとオーディンは分かり易く反応し、「うひょ~」なんて声を出した。
……神様で遊ぶな、馬鹿猫。
俺は溜息を吐きながら悪戯な黒歌の頭を軽く叩いた。
『ご、ごほん! ……それでじゃ。赤龍帝眷属には性急に北欧に馳せ参じ、状況の確認及び調査に乗り出してほしい。戦争派の目的がはっきりせんことには対策も練れないんじゃ――それに北欧も激しい人材不足でな。どうか我々を救ってほしい』
「――無論、お受けしましょう。こんな理不尽を放っておくなんて出来ない」
俺は後ろの眷属たちの方を振り向く。
「――急で悪いが、そういうことだ。俺たち眷属の初仕事がちょっとばかり荷が重いが、着いてきてくれるな?」
「もちのろんにゃん♪ イッセーのいくところに黒歌ちゃんありだよ?」
「わ、私もです! 涙をたくさん用意しておかないといけませんわね!」
「ふむ、暴れることは禁止か……まぁたまには大人しく暴れよう」
「主がおうせのままに。私はイッセー殿の懐刀として馳せ参じます」
眷属の皆はそれぞれがやる気になっているように、俺に意気込みをぶつける。
それは頼もしいと思う反面、王様として頼りになりすぎる仲間の存在に不安要素を隠せないでいる――だってこいつら、一部を除いて自主性の塊なんだから。
――俺の嫌な予感は驚くほど的中することを、俺は北欧に着いてから知ることとなった。
―・・・
「とりあえず怪しい奴を叩き潰すか」
「ちょっとあそこのお兄さんにお話聞いてくるにゃん」
――北欧に到着するなり早速独断行動をしようとするティアと黒歌。
それを必死に止めるのは朱雀とレイヴェルであるんだけど、これは予想の範囲内だ。
……常識的な思考が出来る人材がまだ過半数いて助かった! 少なくとも朱雀とレイヴェルは割と常識人で、型破りのティアと黒歌を止めてくれる抑止的存在だ。
まぁそれでも止まらないんだけどさ。
「ちょっと待て。その辺の行動はオーディンの爺さんの謁見が済んでからだ――ティアと黒歌の気持ちがわからなくもないけど、今は抑えてくれ」
「……弟がそうお願いするなら、姉的に従わざるを得まい」
「飼い猫的にもご主人様には絶対服従にゃん♪」
ティアと黒歌は俺の言葉にとりあえずは納得してくれたのか、行動を止める。
――俺たちがいるのは、北欧の中でも現状は神の斡旋により安全が保障されている町だ。それでも気は抜けないのが今の北欧が置かれている現実。
一応この町を集合地点としているわけだけども――っと、そこで俺の携帯電話が震える。
「はい、もしもし――」
『イッセー? よかった、電話に出れるってことは、まだそういう状況ではないということね……』
電話相手はリアスだった。
リアスは俺が普通に電話に出れたことを喜んでいるのか、少し安堵の声を漏らした。心配しなくても良いって言いたいけど、それは向こうが逆に心配する要因になるよな。
「とりあえずは無事に北欧に着いたよ。詳しいことはこの一件が解決するまで詳しくは説明できないんだけど――そっちはどうだ?」
『現状はエリファさんとの共同戦線というところかしら。あなたのご両親が彼女の眷属になったと聞いたときは度肝を抜いたのだけれどね?』
――ベルフェゴール眷属の王、エリファ・ベルフェゴールとの共同戦線。それは俺とは別に冥界上層部からリアスたちに出された禍の団に対する急襲作戦においてのことだ。
三大勢力が掴んだ禍の団――特にクリフォトの隠れ家の一つが発覚し、冥界の有力な人材を戦力に加えた急襲作戦がグレモリー眷属及び、ベルフェゴール眷属に命令が下されたんだ。
俺はその件に関われないとのことで、安全性を更に強化するためにエリファさんとリアスは共同戦線を張ることにした――んだけど、なんとも言えないがリアスとエリファさんはあまり相性が良くないみたいだ。
エリファさんはいわば完璧主義者。隙間の許さない作戦を提示する人で、リアスは仲間を第一に考えて柔軟な対応を主とするタイプ。言わば感覚派といえば良いか?
作戦会議でも衝突することが度々あったらしい。
「……そっちも安全は保障されてないんだ。今回、俺はそっちにはいけない――仲間を頼むぞ、リアス」
『ええ。王として、私の眷属を必ず導くわ――って、あなたは私よりも自分の心配をしなさい。確かにあなたたちは異様な強さを誇る集団だけど、それでも相手はクロウ・クルワッハを携えているかもしれない集団なのよ?』
「……わかってるよ」
……俺はリアスに言われて気を引き締める。
リアスの言うとおり、敵の戦争派は不穏分子だらけの謎の集団なんだ。今もどこかで俺たちを捕捉している可能性だって捨てきれない。
――何より俺だって万全の状態ではないんだから。
『……フェルウェルさん、まだ起きないのかしら?』
「……そうだな。呼びかけても、一向に反応しないんだ――育児放棄だよ、全くさ」
俺は苦笑しながら、自分の胸を抑える。
……終焉の少女、エンドとそいつに宿るフェルとは対極の龍、アルアディアとの邂逅を経て、あいつは俺の中から何の反応も見せなくなってしまった。
まるで心を閉じるように顔を出さなくなり、そのせいか神器の機能もほとんどが使用不能。
使えるのは簡単な神器創造と一日制限ありの神器強化だけだ。
「いずれ必ず俺とドライグで叩き起こすよ――そっちでエンドは現れたら、すぐに連絡してくれ」
『ええ。少なくとも、彼女を止められるのはあなただけだから』
それだけ言葉を交わすと、俺は電話を切って前を向く。
……するとそこにはスーツを着ている複数の女性がいた。
彼女たちは俺たちに対して腰を下ろして屈んだ。
「――お待ちしておりました、上級悪魔、兵藤一誠様。我らが主神、オーディン様の下までご案内させていただきます」
「ああ」
――そうして俺たちはオーディン付きのヴァルキリーたちについていく。
ある地点で魔法陣を展開し、そして俺たちは神の神域に飛ばされた――
―・・・
「良くぞ来てくれたものじゃ、赤龍帝」
俺たちを待ち構えていたのは、宮殿のような建物の最上階で馬鹿でかい椅子に腰掛けるオーディンだった。
その傍にはオーディンの護衛のヴァルキリーが何人かいて、彼女たちは少し俺たちを警戒するように帯剣している剣の柄を手に取る。
「――やめい。あやつらは信頼に値する悪魔じゃ。無礼であるぞ」
それをオーディンは、少し厳格な声音で制する。
……なるほど、普段の軽快さを見せないほど今のあいつは焦っているのか。
俺は早々にそれを理解して、眷属を後ろに控えさせて一歩前に出た。
「すまぬな。こやつらは仲間や勇者を立て続けに傷つけられ、葬られて殺気立っているのじゃ。どうか許してほしい」
「構わない。俺たちはそんな内輪もめをするためにここに来たわけじゃないんだ――教えてほしいことが幾つかある。それを確認して、俺たちがするべきことを教えてくれ」
「うむ――お主の要望を聞き届けよう。聞きたいことはなんじゃ?」
「それは――」
俺はオーディンに尋ねることは数点。
一つは現在、例の戦乱が起きている地域のことだ。
俺にも北欧には大切な友人たちがいる――セファやジーク、エルーらの聖剣計画の生き残りの皆。そしてロスヴァイセさんのお婆ちゃんであるリヴァイセさん。
まずはあいつらの安全であるかを確認しないことには始まらない。
「……規模で言えば小規模な戦争がいくつも起きているという具合じゃ。しかもこの国土の戦争ではなく、他の国と国の戦争の中間地点が北欧であるのじゃが――現在、深刻な被害を負っているのはオーランド諸島じゃ」
「……オーランド諸島」
……その名を聞いて、少しだけ動揺する。
――どうしてよりにもよって、そこなんだ。
……そこは俺にとって縁のある地だ。
何故なら――俺がオルフェルであったときに生まれ育ったのは、その諸島の一つの島であったから。
「これは戦争といっても、戦争派の自作自演であると考えておる。奴らの目的は何なのかは定かではないのじゃが――お前たちにはまずオーランド諸島に向かってもらう。そこで隠密に情報収集、及び戦争派と出くわしたときはそれの殲滅。これをお願いする」
「……引き受ける。皆、行くぞ」
――俺は今すぐに自分の好きだった景色を確認したいがために、少し急ぎながら話を切って移動しようとする。
「待て待て――赤龍帝。リヴァイセはこの神域に保護しておる。あやつの保護する子供たちもじゃ」
「っ!!」
……そんなとき、唐突にオーディンに声を掛けられた。
俺はもう一度振り返ってオーディンを見た。
「実に危なかった。あやつらが住む場所も戦火に晒されたのじゃよ。その際にリヴァイセの機転が功をきしたからか、誰一人欠けていない――顔を見せていってはどうじゃ?」
「……悪い」
俺はオーディンの爺さんに一言非礼を詫びる。
「良い。お主にとっても只ならぬことであったのじゃろう。……部屋までそこのヴァルキリーに案内してもらうと良い」
「かしこまりました、オーディン様」
すると俺たちの後ろに控えていたヴァルキリーが大きな扉を開けて、手招きをする。
「こちらへどうぞ、赤龍帝さま。眷属の方は……」
「私たちはここで待機しているにゃん♪」
「……では」
――そうして俺は一人、ヴァルキリーに連れられて宮殿を歩く。
豪華絢爛の宮殿内は人間界では中々見る機会が雄大さで、それに少し感心しながらもついていく。
その間に会話などはなく……俺はふとそのヴァルキリーの体を見た。
「……すみません。その、こういうことを聞くのは失礼だと思うんですが――」
「……いいえ。構いません」
……そのヴァルキリーは立ち止まり、俺の方を振り返る。
――ヴァルキリーの体には至る所に包帯が巻かれていた。ヴァルキリーはその全てを見せるためか、自分の服を脱ぎ去ってその傷を見せてくる。
……凄まじい傷跡だ。今も血が滲み出るように包帯の色が赤く滲んでいる。
「……全て戦争派との戦いの末の傷です。これでも私はマシなほうなんです」
ヴァルキリーは服を着なおして、一歩俺に近づいた。
「……私の勇者は、戦争派との戦いの末、私を逃がすためにその命を棒に捨てました」
――その瞳には、涙が溜まっていた。
……そこまで溜め込んでいた感情を吐き出すように、拳を強く握って。
「どうして……っ。奴らはこんなことをするんでしょうか……っ! 何の罪もない人々を巻き込んで、私の仲間を何人も殺して――っ!!」
……ヴァルキリーは俺に投げかけるようにしがみ付き、しゃがれた涙声で懇願し続ける。
なぜこんなことを平気でするのか、なぜ意味もないことをして人を不幸にするのかと。
――俺にもわからない。わかりたくもない。だけど奴らのそのわけのわからないことで、目の前の彼女はひどく傷ついて、涙を流している。
それだけは、痛いほどにわかった。
「――お願い、します。あいつらを、絶対に断罪してください……っ。私の仲間たちの無念を――北欧の人々を、救ってください……っ!」
――それでも彼女は敵を討ってとは言わなかった。
……人々を救ってくれと。仲間たちが成せなかった無念を晴らしてくれと。そうお願いした。
――だから俺は彼女の手を強く握り、真っ直ぐに彼女の目を見据えた。
「――あいつらは俺たちが必ず滅ぼす。そう約束します。北欧の人たちをこれ以上危険には晒させない」
「……お願い、しますっ」
――既に消えはしない悲しみを抱く人がいる。それがどうしても心を蝕む。
もしもっと早くこのことを知れていれば……後悔が心に残る。
――必ず、俺たちは救う。北欧を……悲しみにくれる、彼女たちを。
そう誓い、俺はリヴァイセさんのいる部屋に向かった。
―・・・
「イッセーぇぇぇぇ兄ぃぃぃ!!!」
「イッセーお兄ちゃぁぁぁん!!!」
――俺が部屋に入るなり、俺の腹部に突進してくる小さい影。
……ジークとエルーを俺は抱きとめ、二人を抱きしめてやるために床に膝をついて屈んだ。
「ごめんな、遅くなっちまって」
「っ、おっせぇよ! おかげで俺たち、死に掛けたんだからな!!」
「でも、またあえてよかったよぉ~」
……まだまだ13歳の子供だもんな。ジークもエルーも仕方のない奴らだよ。
俺は二人の頭を撫でながら、俺たちに近づいてくる二人に顔を向けた。
「イッセー。直接会うのは久しぶりかな?」
「ああ――お前も、無事で本当に安心した」
――俺はセファを引き寄せて、ジークとエルーと一緒に思い切り彼女を抱きしめた。
「……うん。こうされて、先に安心が来たよ――ありがとっ。来てくれて……っ!!」
……この反応をするってことは、オーディンの爺さんの言っていたことは本当なんだとここに来てようやく理解できる。
俺は三人を抱きしめながら、杖を付くリヴァイセさんを見た。
「ごめん、リヴァイセさん。来るのが遅くなって」
「知らなかったんじゃ、しょうがないよ――それよりもリヴァイセともあろうものが、こうも不甲斐ないときた。一歩間違えれば宝物を失くすところじゃったんだからな」
「――悪いのはあいつらだ。自分を責めないでください、リヴァイセさん」
「――ありがとう、イッセーちゃん」
――こうして俺は4人と再会を果たす。
再会を喜びたいけど、そんな時間はあまりないのが現実だ。
それよりも今、知りたいのは情報――だって4人が住んでいたのはオーランド諸島からは遠い田舎なんだから。そんなところに戦争派が現れるなんて、普通のことじゃない。
「教えてください、リヴァイセさん――何があったんですか?」
「……そうじゃねぇ。奴らの動きを細く出来たのは本当に寸でのところじゃった。迎撃体制を用意できた地点で襲われたんじゃよ――戦争派。しかも聖剣を持つ少年に」
「――聖、剣?」
――戦争派と聖剣。その組み合わせで、俺は最後にフリードと交わした会話を思い出した。
……戦争派が企てている第三次聖剣計画。今回の件はあまりにも偶然が過ぎる。
しかも奴らが狙ったのは第一次聖剣計画の生存者の三人と仮定するなら――辻褄が合う。
奴らが4人を襲撃した理由としては十分だ。
「そう。見たことも聞いたこともない聖剣を携えた少年じゃった。年はジークやエルーと変わらないほどなのに、このわしの迎撃をいとも簡単に切り伏せたのじゃ――恐ろしく黒く滲んだ目と、驚くほど黒い髪の少年じゃ……。イッセーちゃん、気をつけて。奴らは想像以上に危険なんじゃよ」
「……ああ。肝に銘じておくよ」
俺はリヴァイセさんにそう言うと、ジークとエルーの頭をくしゃくしゃと撫でて、さっと立ち上がる。
「あ、兄貴! 行っちゃだめだ!! あ、あいつらめちゃくちゃやばいんだ! 絶対行かさないぞ!!」
「駄目っ! 絶対に行かせないんだから!!」
……ジークとエルーは俺の腕を思い切り掴んで、それ以上俺を行かせないと言わんばかりに引っ張ってくる。
セファも口では言わないけど、目は口ほど物を言うってか? その顔は、まさに行かないでといわんばかりのものだった。
……許されるのであれば、ここで全てが解決するまで皆と一緒にいたい。守ってやりたい。
――だけど、俺は力がある。誰かを守るための大きな力がある。
力を持つものは、持たない人のために守らないといけない。それは強大な力を持つ者の役目だ。
――それに約束した。オーディンや、ヴァルキリーのあの子と。
「――なんだ、お前ら。俺があんな奴らに負けるとか思ってるのか?」
だから、傍若無人にそう言ってやる。
「影でこそこそしないと生きていけない情けない奴らに、神様もぶっ倒した俺が負けると思ってるのか? おい、ジーク。言ってみろよ」
「そ、そりゃあイッセーの兄貴はむちゃくちゃ強いけどさ! でも、行ってほしくないんだよ! 兄貴が傷つくところを俺は見たくない!!」
……ったく、この弟分は。可愛いことを言ってくれるじゃねぇか。
俺は今一度、ジークの頭をガシガシと撫で回し、ニッと笑う。
「――俺は守護の赤龍帝だ。皆を守って、自分も笑顔でいる。そんな俺はな。お前が大好きな俺は絶対に負けてやらねぇ。この拳は全ての理不尽をぶっ潰すって約束してやる」
「……約束、だかんな!」
「あぁ、男と男の約束だ――だからお前は、ここで三人を守れ」
「――っ! お、おう!!」
俺はジークと拳を合わせ、そう約束する。
「エルー、セファ。今回の一件が終わったら何でも言うこと聞いてやる。だからお前らは俺に何かお願い事をずっと考えてろ? ……その間に全部終わらせてくるからさ」
「……わかった。エルー、お兄ちゃんを信じる!」
「――年少二人がそう言って、私が納得しないわけにはいかないからね。……イッセー、必ず、帰ってきて。それと約束のこと、忘れないでよ?」
「――ああ。絶対に忘れはしないよ」
――俺はそう約束して、部屋を出る。扉を閉めると、その影には……眷属の皆がいた。
「ちょっと羨ましいにゃー。イッセーの何でも言うこと聞いてあげる件は値がつけられないからね」
「ま、全くです――あ、でもイッセー様なら頑張ったらご褒美を……い、いえ! なんでもありませんわ!」
「いや、聞こえてるから。ってか盗み聞きとか趣味悪いぞ、お前ら」
俺は目の前の眷属を前にして、ため息混じりにそう言った。
「ははは! 弟のかっこいいところを姉が見ないわけにはいくまい? いやぁ、眼福だ――それに俄然、やる気が湧いてきた」
「全くです――必ず救って見せましょう。ディンもそう申しております」
『そうだよー。善の限りを尽くそうじゃないか』
……眷属の皆は俺にそう言い返してくる。
――そこで俺はじっと俺を見続けるメルティの傍により、視線を合わせる。
「……メルティ。お前をここに連れてくるのは正直迷った。だけどここに連れてきたのは、お前を見定めるためだ――お前という存在。俺はこの戦いでそれを見定めたい」
「……メルティ、存在?」
「そうだ。お前は何のために生まれて、何のために生きるのか。何がしたいのか――お前の答えを考えるんだ」
「……メルティ、考え……皆、無――戦いが、存在意義」
……メルティはそれだけ言うと、再び俺の服の裾を掴んで離さなくなる。
――今はこれでいい。どちらにしろ、今回ではっきりする。
メルティの存在、戦争派の目的――その全てを解決して、俺たちは北欧を平和にする。
……俺は魔法陣を展開し、眷属の皆の前にあるものを渡した。
「――いいね、イッセー。こういうの、私好きにゃん♪」
「なるほど。今後、公式戦などで活躍するなら必ず必要なものですね!」
「ふむ、やはり赤か――弟とペアルックはいいものだな!」
「……朱雀の色は赤なので、ぴったりです」
それぞれの反応は良好――俺はそれに袖を通す。
「――行くぞ」
――俺の言葉にそれぞれが声を揃えて、了承する。
……それは赤い服だ。赤龍帝眷属の専用として作ってもらった、赤を基調にしたユニフォーム。
――俺たちが眷属として活動する場合の、正装。それを纏って俺たちは全ての解決へと足を進めた。
―・・・
俺たちはオーランド諸島の比較的に被害のない土地についてから、まずチームを分けた。
俺たちがするべきことはまずは情報収集。そのための隠密行動をするには集団は効率が悪い。
そのため黒歌とレイヴェル、ティアと朱雀といったように三手に分かれてオーランド諸島を歩いている。
……俺はといえば、メルティを監視しながら辺りに不穏な影がないかを調べている。眷属の中では黒歌と同様に辺りの気配を察知することに長けているのは俺だ。
「とは言っても、流石に人気はほとんどないんだな」
俺が歩いているのはオーランド諸島の農村部だ。
被害の酷い地帯には朱雀とティア、都市部には黒歌とレイヴェルを向かわせている。ここら辺は適材適所だな。
……先ほどから歩いているが、ここらで歩いている人物はほとんどいない。世に公にはなっていないとはいえ、危険であるという認識は出来ているだけマシか。
――そう思った瞬間、上空からプロペラの回転する音が聞こえた。
「――なるほど。上空で戦闘機で戦っている流れ弾が諸島に落ちているのか」
……国境も糞もない話だ。本来なら起こらないことを、戦争派が起こしていると考えて間違いない。
そもそも国際問題に発展することを公にさせないようにしているだけオーディンたちも頑張っているわけだ。
「――だけど、黙って綺麗なここを穢させるわけにはいかないな」
『その通りだ。相棒との思い出の地を、穢させるわけにはいかんな』
――俺がオルフェルであったころの記憶。俺とドライグは北欧や様々な地域を歩き、修行に明け暮れていた。
特に地元である北欧……この諸島のことは鮮明に覚えている。
「戦闘機を全て海に落とす。狙うのは翼だ――っ!!」
俺は高速で魔力弾を複数発打ち放ち、視界に見える全ての戦闘機の翼を消し飛ばす。
それによって戦闘機は地上に落ちそうになるも、魔力を強力な風のように薙ぎ、遠い先の海へと戦闘機を薙ぎ払った。
『あれは下手をすれば死ぬぞ?』
「あの戦闘機は確か搭乗者の命を守ることを最優先にした設計をしているんだ。爆発しない限りは五体満足だろうさ――さて。お出ましだ」
――俺は目を瞑り、少し離れたところから走ってくる幾つかの気配に気づく。
……感覚的には、魔力が混じっているか? 魔力だけじゃない。人間の気配もある。
「ドライグ、どう思う?」
『断定は出来ん。だがこれは相棒の存在に気づいたというより――誰かを追っているのか?』
……とりあえずは様子見か。
俺は農村部のりんご樹の陰に身を隠し、近づいてくる影を注視する。
――あれが戦争派であった場合、メルティがどんな反応をするか。それがネックだ。
「……おとなしくしてろよ、メルティ」
「……」
メルティは言葉を発さずに頷く。
……こいつ、割と素直っていうのが皮肉だよな。
「……来たか」
――そうしている間に見えたのは、二つの銀色であった。
より詳しく言うのであれば、二人の銀髪の少女たちだ。その少女の片方がもう片方の手を引っ張って、何かから必死に逃げている。
……そして、こちらのりんご樹の元まで走ってきた。
俺はすぐにメルティを抱き寄せて樹の麓に体を隠す。
「――アメ! ここに隠れていて!」
「……だめ。……ハレも、一緒に」
「……僕が何とかするから、お願い――」
――少女たちは、俺とメルティが隠れる樹の反対側でそう話す。
……僕がどうにかする? それは一体――そうしている間に、おそらくは彼女たちの追っ手であろうものが現れる。
……明らかに戦闘武装を施した連中だ。銃や防弾チョッキなど、おおよそ人間の戦闘に必要な武装をしている。
――ハレと呼ばれた少女は、アメと呼ばれた少女を樹の陰に隠して、一人何人もいる武装を整えた連中の前に立つ。
……細い体だ。背も低く、年もかなり若い。
ボロボロの白い布のような服に身を包んでいた――
「――ようやく諦めたか? 売り飛ばすのに最適なのに、よくもまぁ逃げてくれたもんだよなぁ……」
「――黙れ」
――少女は、恐ろしいほど低い声で男と思われる兵士にそう言い放った。
……なるほど。あれは人間の兵士か。売り飛ばすっていう辺りはおそらく、どう考えても悪い意味だな。
――さて、あいつらは戦争派か否か。まずはその前に彼女を助けて……
「もういいよ。僕は僕の大切なものを守るためだけでいい。そのためなら――殺す」
――少女の体から、青白いオーラのようなものを溢れ出す。
その瞬間、俺の左腕と胸にある籠手とブローチがドクンと音を鳴らした。
「――もう誰にも、触れさせやしない!!!」
――少女は天に手を伸ばす。
その瞬間、手の平からは眩いほどの光が生まれ――そこより、武装が生まれた。
「……ドライグ。あれは……」
『ああ、まず間違いない――あれは、神器』
――少女の手には一つの剣のようなものがあった。
少女はその剣を両手で掴んで、その切っ先を兵士たちに向ける。
「僕の大切な
――少女が剣を薙いだ瞬間、その周りの空気が振動するような感覚に囚われた。
感情に呼応するように剣は輝き、そして……薙いだ先の兵士の周りの木々が、言葉通り真っ二つに切り裂かれた。
それだけじゃない。兵士の腹部は切られていないにも関わらず、男たちは腹部から血を流して倒れる。
防弾チョッキは無傷なのに、切り裂かれた? まさかあの神器は――
「はぁ、はぁ……あ、め。終わったよ? ほら、早く――ッ!!」
「ふ、ざけるなぁぁぁ!!!」
――少女は油断して後ろを振り返った瞬間、倒れていたはずの兵士の一人が拳銃を少女に向ける。
更に樹の近くで隠れていた少女の近くに別の兵士が現れ、彼女を捕らえようとしていることを俺は察知した。
……ハレと呼ばれた少女はその二つのことが同時に起こり、判断を見誤る。
自分を守れば妹を見捨てることになり、妹を守ろうとすれば自分の命を落とす。
――その究極の選択をする前に、引き金は引かれる。
……その瞬間、俺は選択する。
――二人ともを救う選択を。
「――お、お前がなぜ……」
「――喋るな、
兵士はまさか俺が木陰に隠れているとは予想外だったのか、俺が飛び出したことに驚いて動きを止める。
――それと同時にパァンと発砲音が鳴り響く。俺は視神経を強化し、更に動体視力を魔力を以って極限まで高める。
発砲された銃弾をかき消すように、銃弾よりも早い魔力弾を打ち放ち、ハレと呼ばれた少女の後ろの兵士の弾丸をかき消す。
更に既に出現させていた籠手の倍増のエネルギーを解放した。
『Explosion!!!』
爆発的な倍増の力は俺の体に巡る!
その左拳で近くの兵士の腹部を勢いよく殴り抉り、その男をハレという少女の後方へと殴り飛ばした。
……俺の近くでは、俺が突然現れたことに驚くアメと呼ばれる少女がいる。彼女は俺を見上げて目を見開いており、俺の目の前のハレという少女も同様な表情を浮かべていた。
――その二人の顔は瓜二つ。妖精のように美しい容姿であった。
「――随分と人の故郷を荒らしてくれてるみたいだな、戦争派」
俺は一歩、前に出る。
既に少女によって傷つけられている兵士は俺の姿を見て恐れ戦く――それが戦争派であることの証明だ。
「な、なぜお前が――赤龍帝がここにいる!? こ、こんなことは聞いてはいない!!」
……不愉快な声を出す。
――全く以って腹立たしい。俺は怒りを隠すこともなく、手元に強大な魔力を溜めた。
「――てめぇらのトップ、ディヨン・アバンセに言え。赤龍帝がお前らを潰すと。好きにはさせねぇってな」
――言いたいことを言い放ち、俺は溜め込んだ魔力を全て放射し、兵士を全て薙ぎ払う。
兵士は風に飛ばされるように宙に浮き、遠く海の向こうに吹き飛んでいった。
それを確認し、俺は二人の少女を見る。
両人とも俺の姿を見て驚いているみたいだ。
……戦争派に追われ、更にその片割れが神器を宿している双子の姉妹。
その二人を見て俺がまず最初に思ったのは――どうしてか、懐かしいという感覚であった。
なんでこの状況で、初対面の二人にそんなことを思うかは分からない。
とりあえず今は――
「――俺は兵藤一誠。さっきの奴らを滅ぼすためにここに来た。出来れば君たちのことを教えてくれないか?」
――そう言うと、ハレという少女はすぐに妹であるアメという少女の下に駆け寄り、彼女を抱きしめて俺を睨み付ける。
……その目は、隔絶された拒否の色で覆われていた。
お久しぶりでございます!!
11月から再開といいつつ11月後半の更新になってしまい申しわけございません!
最近執筆していた君の名は。の二次創作にうつつを抜かしていたわけですが、こちらの作品のこともちゃんと考えていましたよ?
ってことでオリジナル章、課外遠足のシスターズの始まりです!
今回は導入編で、この後の展開をご想像なさってもらう話になりました。
この話はどういうものかといえば、お察しの通り第9章にてその存在が明らかになった戦争派とイッセー眷属との衝突のお話になります。
この話では割と色々なキャラクター(懐かしい人も加え)出てくるので、どこで誰が出てくるのかをお楽しみにいただけたらうれしいです!(原作で出てきて、本作では何気に生きている人も出てきたりします)
それでは次回の話は今回の続きから。それではまた次回の更新をお待ちください!
PS また文章のレイアウトを変えました。個人的にこれが一番だと思うので、今後はこれでやっていきます!