ハイスクールD×D ~優しいドラゴンと最高の赤龍帝~ 作:マッハでゴーだ!
「ひぃぃぃぃ!!? く、来るな!! 兵藤一誠ぇぇぇぇぇ!!!!」
―――冥界の深い森の奥にて俺、兵藤一誠は鎧を纏い、情けない男と追いかけっこをしていた。……複数の凶悪なドラゴンを連れて。
凶悪なドラゴンの一角こと無限の龍神 オーフィス。
「放つ。蛇、超放つ」
……とても楽しそうである。凶悪なドラゴンの二角こと天魔の業龍 ティアマット。
「おい、私の弟の喧嘩売っておいて情けないぞ、おい」
……何故か激怒していた。さて、もう面倒くさいから全て紹介しようか!
「うぉぉぉらぁぁぁぁ!!!」←タンニーンのじいちゃん
『ふふふ……不死鳥ごときが私の主様に歯向かうからこうなるのです』←フェル
「あはは、にげろにげろー!!」←フィー
「にいたん、はやぁぁぁい!!」←メル
「ふふふ……」←ヒカリ
―――何故ドラゴンファミリー総出でこんな冥界の森、更には情けない不死鳥の男ことライザー・フェニィックスを追いかけているかというと、それは数日前まで話が遡る……―――
『エピソード1:らいざーくん、なみだめのおはなし。』
「―――イッセーの上級悪魔昇格を祝して!!」
『かんぱぁぁぁぁい!!!!!!』
―――俺の上級悪魔昇格から数日経ったある日のこと。昇格から数日は俺は上級悪魔の挨拶回りやらで多忙に追われていた。
それを見かねたグレイフィアさんにマネージャーを勤めてもらい、何とかハイスピードで終わらして俺のオアシスに帰ってきた今日この頃。
これはどうやら俺に対するサプライズらしく、俺が家に帰ってきた瞬間に今の状況が目の前にあった。
リビングの大きな机に並べられた異様な数の豪華な料理。
なんか魔力を使っているのか、部屋がいつにも増して大きくなっているような気がするが、いまさらそんなことは気にしねぇ!
問題は―――このヒトの集まりだ!
見渡す限りのヒト! ヒト! ヒト!
グレモリー眷属はもちろんのこと、シトリー眷属の一同にドラゴンファミリー、父さんと母さんにリアスのお父様とお母様、ミリキャスやグレイフィアさんに至るまでそこにはいたんだ。
更には俺の眷属の一人となった黒歌、そして誰が呼んだのかレイヴェルまでもがその場にいた。
どうやら俺の上級悪魔昇格を祝したパーティーなようだけど、まさか身内だけでここまで盛大なものとなるとはね。
これも良い仲間や友達を持った役得と考えるべきか。
……でもやっぱちょっと小恥ずかしいなっ!
「イッセーさん! こっちにイッセーさんの好きな唐揚げがありますよ!」
っと、アーシアが満面の笑みで俺の手を取ってくる。その機嫌はここ一番に良く、ニコニコした笑みは愛しいとまで思っちゃうんだよな。
でも良く考えてみると、こうしてアーシアと触れ合うのも久しぶりかもしれない。
俺が平行世界に飛んでいる間はこっちも色々あったようだしな。
ともかく俺はアーシアに手を引かれる形でその場から移動する。
……長い間、平行世界のアーシアとばっかり話していたからかな。今、アーシアと話すのがすごく新鮮なように感じる。
アーシアの一言一句、一仕草でドキドキしてしまうって、おいおい。
……でも心地良さが先決するから困った。
「はい、あーんです!」
「ありがと、アーシア」
俺はアーシアの頭を撫でながら、お箸の先の唐揚げを頬張る。油で揚げられた竜田揚げ風の唐揚げはカリッとした感触で舌に浸透して、若干香るニンニクは余計に食欲をそそるな。
「これ、アーシアが作ってくれたんだろ?」
「わ、分かったのですか?」
「当たり前だろ? 俺がアーシアの作った美味しいご飯を間違えるわけないだろ。ほら、アーシアも食べてみろよ!」
俺もまた先ほどのアーシアと同じようにお箸で唐揚げを掴み、手を添えてアーシアの口元に唐揚げを運ぶ。
食べる人の気持ちを考えて作られているからか、唐揚げは女の子でも食べやすいように一口サイズになっており、その辺りの配慮が流石アーシアというべきか。
そんなことを考えていると、アーシアはパクッと唐揚げを頬張った。
リスみたいにホクホクの唐揚げを頬張り、そして唐揚げを食べた後、少しだけ照れたように笑った。
「えへへ……イッセーさんに食べさせて貰ったから、普通の何倍も美味しかったですっ!」
「…………」
やばい、このアーシアがとても可愛いすぎる。
ってかいつから俺はこんなにアーシアにドキドキするようになったんだよ! あ、最初からか!!
ともかく可憐すぎるアーシアの頭を執拗以上に撫で回すと、アーシアは仔犬が震えるように気持ち良さそうに体を震えさせた。
その動作も可愛く……これはあれだ、「アーシア可愛すぎる症候群」と名付けよう!
だってアーシアの行動が一々可愛いんだもん!
「……イッセー先輩、デレデレしすぎです」
「ほんとニャン! もっと飼い猫も可愛がってよー」
そんな風に悶えていた俺に対して向こうからやってきた小猫ちゃんと黒歌がそんなことを言ってきた。
小猫ちゃんはそう言いつつ俺の上着の裾をキュッと握ってきて、黒歌は頬を膨らませてぶーたれてる。
……これはこれで可愛いと思ってしまう俺はもう病気なんじゃないか?
「これはな? デレデレじゃなくて癒されてるんだよ。アーシアの癒しパワーは心身共に俺を癒す最高の力なんだ」
「それを真顔で言えちゃうご主人様って、やっぱり天然ジゴロにゃん。ほら、アーシアちゃんが茹で蛸になっちゃった」
は? っと思いながら俺は黒歌の指の先にいるアーシアを見ると、アーシアは黒歌の言うとおり顔を真っ赤にして両手で頬を抑えていた。
「はうぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
「……羨ましいです。今すぐ私も撫でて欲しいです……」
「イッセーの!! 僧侶をまず撫でるべきにゃん!!」
すると小猫ちゃんと黒歌がここぞとばかりにすり寄ってくる!
―――分かった。今の俺には癒し成分が足りていないんだ。
良く考えたら突然平行世界に飛ばされ、何か知らない内に短期間で黒い赤龍帝やら変態な赤龍帝と戦って、化け物と戦って……目まぐるしいほどのバトル生活に慣れてしまって忘れていた!
俺は……癒しが欲しいッ!!
そう思考していると、手に禁断症状が現れるかの如く震える!?
な、なんで俺は忘れてしまっていたんだッ!!
「ち、チビドラゴンズはどこだ!!!」
「ん? にいちゃん、どしたー?」
何も知らないでトコトコと歩いてくる赤髪のフィー。フィーは現在は幼女モードで、俺は歩いてきたフィーを抱っこして可愛がる。
フィーは何が起きたか分からないのか、一瞬キョトンとするものの、すぐに状況を理解したのかキャッキャと嬉しそうに笑ってくれる!
「にいちゃんがかまってくれて、フィーはうれしいぞ!!」
「そっかそっかー……。ああ、癒しだ」
「……癒しというピンポイントではおチビなドラゴンには勝てないです」
「まあ白音? これは適材適所っていうにゃん。私たちはここぞというところで抜け駆けすれば問題ないにゃん♪」
なんか後ろで不穏な会話が聞こえるが、もうどうでもいい!
とにかく俺は久しぶりにチビドラゴンズと触れ合うんだ!
「あ、フィーずるい!! にぃたん、メルも!!」
「……ふたりともおこちゃまね。しゅくじょたるもの、がまんもだい……じ……―――にぃに、ヒーも……」
「ヒカリも年相応ってことか、あはは」
すぐさま寄り添ってきたメルとヒカリもあやすように可愛がる。それにしても三人とも段々と成長してきたな。
ティア曰く、既に術を使わなくともこの幼女モードを持続させることが可能みたいだし、しばらくしたら少女モードも可能になるんじゃないかな?
いずれはきっと、現龍王みたいにドラゴン界でも有名なドラゴンになることは間違いない妹たちをともかく可愛がろう!
―――っとその時であった。
「お、お久しぶりです、イッセー様」
「ん? ……お! 久しぶりだな、レイヴェル!」
そこには白い綺麗なドレスを身に纏ったフェニックス家の長女であるレイヴェル・フェニックスであった。
どこか表情が硬いものの、いつもと同じように礼儀正しいレイヴェルだ。
「この度は上級悪魔に昇格なさったことを、フェニックス家を代表してお祝い申し上げます!」
「はは。硬いぞ? レイヴェル。今は無礼講なんだからもっと柔らかくいなくちゃな!」
「そ、それでは……おめでとうございます、イッセー様!」
未だに丁寧な口調だけど、幾分緊張が解けたレイヴェル。
にしてもこのパーティーの主催者は間違いなくリアスだろうけど、どういう経緯でレイヴェルを呼ぶことになったんだろうな。
俺と個人的に仲が良いとはいえ、やはりレイヴェルはライザーの妹って認識が強いし……まあ考えても仕方ないか。
お祝いに来てくれたことをまず喜ぶとしよう!
「それとこれはささやかな品なのですが……」
するとレイヴェルはさっと少し大きめの木箱を差し出してきた。
お祝いの品? 俺はその木箱を開けるとそこには幾つかの瓶のようなものがあった。
これは……フェニックスの涙!? 普通に購入すると高レート過ぎて中々手に入れれないレアアイテムだ!
俺たちの場合はロキとの一戦やらで結構使っていたりしたけど、それ以外だと手に入れることすら困難だろう。
「良いのか、レイヴェル?」
「はい! むしろ個人的にはこれくらいでは物足りない気がしますが……イッセー様の性格を考えると、あまり大きなものを渡してしまうと、逆に気を遣わせると思いまして」
レイヴェルが苦笑いでそう言ってくる。
しかし流石はレイヴェルだ。他人を気遣うところが彼女の奥ゆかしさと丁寧な性格を現している。
……それにしても本当に会うのは久しぶりだ。
確か最後に会ったのは冥界の若手が集まった会合か。
「まあ立ち話もなんだし、あっちにソファーがあるからそっちに―――」
「イッセー様。恥を忍んで、私、レイヴェル・フェニックスは貴方様にお願いがあります」
……するとレイヴェルは今一度、深々と頭を下げてくる。
幸い周りはパーティーで楽しんでいるようで、この光景は見えていないけど……一体どうしたんだ?
レイヴェルはしばらく何か言い難そうな表情をしながらも、少しして意を決したように言った。
「―――不肖の兄、ライザー・フェニックスの目を覚まさせてください!」
―・・・
…………そんなことがあって、俺は現在ドラゴンファミリー総出でライザーと地獄の鬼ごっこ(パワーアップバージョン)をしている。
まあ簡単にいえば、いつまでも俺に負けたことから立ち直れないライザーの目を覚まさせてくれっていうのがレイヴェルを含むフェニックス家の要望らしい。
それを新しく上級悪魔となった俺に正式に依頼して来たというわけだ。
しばらく上級悪魔としての活動は名家との繋がりを持つことを第一に考えていたから、こういったものは大歓迎なことに加え、そもそもあいつが引き籠りになったのは俺の責任?でもある。
「にしたって、ドラゴンファミリー総出はやり過ぎだと思うんだけどな」
「まあイッセーに舐めた口叩いたあいつなら、別にいいんじゃない? 不死身だし♪」
黒歌が背中にくっ付きながら、そう言ってくる。
黒歌は既に俺の眷属の僧侶として悪魔に転生している。その実力はそもそもが最上級悪魔にも対抗できるレベルから、最上級悪魔レベルにパワーアップしているんだよな。
この前に手合せしたとき、その実力が跳ね上がっているのにびっくりしたもんだ。
俺の持つ僧侶の
……ともかくこれは逆効果か?
ライザーを屋敷から引っ張り出して鬼ごっこをしているけど、何ともまあずっと俺たちから逃げている。
まあ夜刀さんを除くドラゴンファミリー全員がいるから仕方ないけどな。
一応フェニックスからは、好きにしていいとは言われているけど再起不能にしてしまうわけにもいかないし。
「作戦変更だな。じいちゃんにティア、オーフィス、そこまでだ!」
俺はライザーを楽しそうに追いかける三人とチビドラゴンズの前に飛び立ち、その場で静止を掛ける。
その一言で三人とも動きを止め、ライザーに至っては肩で息をしながら気の上にヘロヘロと落ちていった。
……寝間着で。
「ふむ、もう少し可愛がってやろうと思ったんだけどな」
「……イッセーがそう言うなら、我は従う」
「仕方あるまい」
中々に滅茶苦茶なことを言ってるが、まあ今は無視をして俺はライザーの元に降りて行った。
龍神と龍王を相手に良くここまで逃げられたもんだ。底力はやはりフェニックスだから、かなり強いな。
「ライザー、いつまで伸びてんだ?」
「き、貴様ぁぁぁ!! いきなり俺の部屋の扉を粉砕してここまで追いかけて、その言い草!? 舐めてるのか!?」
「……おい、目を見て言えよ」
俺は頑なに俺の目を見ずにそう言うライザーに、ジト目でそう言った。
「…………き、貴様ごときに合わせる目など」
「―――あぁ?」
「ひぃぃぃぃぃぃっ!?」
俺が無理やりあいつの視界に入ると、ライザーは途端にそんな情けない声をあげた。
……はぁ、レイヴェルの言う通りだな。
俺との一戦以来ドラゴン恐怖症……更に言えば俺恐怖症に至っているらしいライザーだけど、これは想像以上に重症だ。
「情けないにゃん、チキン野郎」
「なんだとぉ!? こ、この俺に向かってチキンだと!?」
「割と的を射てると思うぞ?」
「俺は不死鳥だ!! チキンなんかじゃない!!」
「「チキンじゃん!!」」
ライザーの言葉に同時にツッコむ俺と黒歌。
だけどまあ、寝間着で外に出すのは流石にかわいそうか。
「本題に入ろう、ライザー。俺が今、お前を追いかけまわしているのはお前をぶっ潰したいとか、そんな気持ちがあるわけじゃなく……いや、それも少しはあるが」
「お、おい!?」
「―――レイヴェルからのお願いだからだ」
ライザーが文句ありげにそう言いそうになった時、俺は追撃とばかりにそう言った。
それによりライザーは口を閉じて苦虫を噛んだような顔になる。
「ライザー、お前いつまでそんな情けない恰好をしているつもりだ。妹に心配をかけて、今まで罵っていた俺に恐怖して」
「黙れ!!」
ライザーは俺の顔に目掛けて火種を放つも、俺はそれを軽く払うように手を薙ぐ。
「弱いな、お前の炎はいつも」
「貴様! 俺を愚弄するつもりか!?」
「―――その通りだ、俺はお前を愚弄している」
俺はライザーに一歩歩んで、籠手を展開する。
「同じ男としてイライラしてんだ。愚弄するに決まってんだろ、ライザー。たった一度の敗北で己を精進させるわけでもなく、ただ殻に篭っているお前を、愚弄しないで何をすれば良い? 励ませば良いか?」
「だ、まれ! 俺だって、何もしていないわけでは」
「同じだ。引き籠って何をしていようが、その心は甘えしかない。そんな甘えた心で、上級悪魔の看板は背負えない。前に進めない奴が、言い訳をしたところで信憑性も何もないんだよ」
……拳を強く握って、そう言い切る。
ずっとこいつの現状はレイヴェルから直接手紙で聞いていた。
その手紙はいつも丁寧で、ライザーに対しての文句や悪口が記されていた……けど最後は必ず、ライザーを心配しているような文面だった。
本当に兄想いの良い子だ。
だからこそ俺はそんな妹に支えられてるのにも関わらず、いつまでも復活しないライザーにずっとイラついていた。
「文句があるなら俺に向かってこい。真正面から、ぶつかってやる」
『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!!!!』
俺は赤龍帝の鎧を身に纏い、殺気をライザーに向けて放つ。
それだけで辺りに風のようなものが舞い、木々が揺れ動く。
「なッ!? あの時の、何倍も……一体何をすればそこまでッ!!」
「……色々あったからな。辛いことも楽しいことも色々あって、俺は強くなれた。後ろを振り向くことがあっても、支えがあって俺は何歩も前に進むことが出来た―――ライザー、お前はどうなんだ?」
俺は瞬時に背中のブースターを噴射させ、ライザーの目の前に現れて拳をライザーに放つ。
ライザーはそれに反応をすることが出来ず、ただ茫然と見ているだけ。
俺はそんなライザーに拳を当てることはなく、鼻先で拳を止めた。
「っ!!」
「……ライザー。その辺りを良く考えろ―――帰るぞ、黒歌」
「ん~? 良いの、イッセー」
俺は鎧を解除してそのままライザーに背を向ける。
黒歌はそんな俺の腕に抱き着きて共に歩いた。
「ああ。少しは考える時間は必要だろ? ……ライザー。また明日、俺は同じ時間にお前の元に行く。もしお前が変わるつもりがないのなら、それならそれで構わない。それがお前の答えなんだろうからな―――でもお前がちょっとでも変わりたいなら、それだけの答えを俺に示せ」
「……勝手に、決めるなっ!!」
……俺は振り向かずに予め用意していた魔法陣で転移をする。
ドラゴンファミリーには悪いが今日のところは帰ってもらい、俺たちはひとまずフェニックス家へと戻るのであった。
―・・・
「すみません、イッセー様。このような面倒事に巻き込んでしまい……」
フェニックス家の大広間にて紅茶と茶菓子を前にして、俺はレイヴェルと対面していた。
とりあえず黒歌は庭で散歩をしている(ライザーの眷属のネコっぽい子を弄る)らしく、俺は一人でこの場にいるんだ。
ここにはレイヴェルはもちろん、フェニックス家の現当主であるフェニックス卿と夫人の奥様がいらっしゃる。
「気にするな、レイヴェル。俺も良かれと思って来ているんだ」
「本当に上級悪魔になった兵藤君には申し訳ない。今だ忙しいと耳に聞くが……」
「いえ、大丈夫です。名家への挨拶も大方終わって、フェニックス家を最後としていましたから」
その分、この数週間は多忙すぎる日々だったけどな。
学校が終われば魔法陣を使って冥界に行き、魔王様や名家へのあいさつのコネづくり……まあその努力と、俺の行動に興味を持っていた上級悪魔が俺の思考に賛同してくれてある程度は下積みも積まれてきた。
流石にレーティング・ゲーム第一位のディハウザー・べリアル様のところに行ったときは緊張したが……。
ちなみにベルフェゴール家とサタン家に行ったときは何故か大歓迎でご飯までごちそうになった。
ディザレイドさんが何か異常に親しげに良くしてくれたのと、ミリーシェと同じ顔をしたエリファさんのお願いを断れなかっただけなんだけどな。
「すまないな。私の不肖の息子が……。しかしあんなでも、私の大事な息子なんだ。本当なら自分の力で立ち上がってもらいたかったが……」
「自分の力だけではどうにもならないことはあります。……それにどっちにしても、あいつは自分の力だけで前に進まないといけない。そういう選択肢を与えてきました」
「……そうか。心より礼を申し上げる」
フェニックス卿は深々と頭を下げ、一度咳払いをする。
「―――ところで赤龍帝殿。この度、上級悪魔と昇格成された貴殿は、眷属というものはどのように考えてるのだ?」
「眷属、ですか?」
するとフェニックス卿は突然、真面目な表情でそう言ってきた。
その言葉を聞いてレイヴェルが何故か顔を赤面させているが……
「俺にとっての眷属は……そうですね、大切な家族なんだと思います」
「ほう、家族か……」
「はい。俺にとって大切で、何にも替えれない大切な存在。従えるだけではなく、絶対にこの手で守っていく存在
それが俺にとって、赤龍帝眷属の在り方です」
もしかしたら甘い考えかもしれないけど、俺はこの考えを曲げるつもりはない。
「―――素晴らしい。やはり君は私が期待していた通りの青年ですね」
するとこの場にいる存在とは違う、柔らかい物腰の声音が聞こえた。
俺はその声の持ち主の方を見ると、そこには見たことのある金髪のライザーに似た男性がいた。
しかしライザーほど目は鋭くなく、優しそうな印象が強い。
……そりゃあ見たことがあるはずだ。
「レーティング・ゲームでつい最近トップ10入りを果たした、ルヴァル・フェニックス様ですね」
「そこまで畏まらなくてもよろしいですよ、兵藤一誠君。君のことはレイヴェルから良く聞いていますので」
ルヴァル・フェニックス……。上級悪魔でありながらレーティング・ゲームで勝ち星を幾つも上げて、現在最上級悪魔になるのも近いとされているトップランカーだ。
会えないと思っていたけど、まさか今日会えるとは……。
「禍の団を打倒し、更には神すらも打倒したということを聞いたときは度胆を抜かれましたが、なるほど……それ相応の実力と、確固たる努力の跡が見えます」
「……分かるん、ですか?」
「ええ。長年この世界で戦っていると、若き者の努力の跡が手に取れて分かる―――まあ最も、私の弟はそうでもないのですが」
ルヴァルさんは頭を抱えて、苦笑いをする。
「あなたがここにいるのはライザーのためなのでしょう。あいつは才能は我々兄妹の中でもトップクラスに高いのですが、何分昔から努力を怠っていました。それでも同じ世代に敵はいなく、天狗になっていたのでしょう―――初めての完全な敗北が当時下級悪魔であったあなただったからいい薬になったと思っていましたが……」
「逆にそれで引き籠ってしまったのですわ、ルヴァルお兄様」
「ふむ、困ったものです―――っと、話が脱線してしまいました。この度はよくぞ忙し中、フェニックス家においでなさりました。時間があれば上級悪魔としてお話をしたいのですが……」
「はい! もちろんそちらの方が自分も嬉しいです!」
俺はルヴァル様の申し出に即答でそう応える。
するとルヴァル様はまた微笑んで、一礼した。
「それでは私は着替えてまいります。お父様、お母様。あまり
「「っっ!!」」
ルヴァルさんはフェニックス夫妻に少し目を細めてそう言うと、二人は少し目を逸らして苦笑いをした。
それを見てレイヴェルは俺の隣にタタッと小走りで走って来て、チョコンと俺の隣に座って耳元で呟いてきた。
「ルヴァルお兄様は聡明な方なのですが、実は私たちの兄妹で一番怖いんです。だから昔からお兄様はルヴァルお兄様に弱くて……」
「なるほどな―――それはそうとレイヴェル。このお菓子と紅茶ありがとな? レイヴェルが用意してくれたんだろ?」
レイヴェルはお菓子作りと紅茶を淹れることが得意っていうのは前に教えて貰ったから覚えていた。
リアスもそうなんだけど、意外と悪魔のお嬢様ってのは昔から料理などといったものは嗜んでいるそうだ。なんでもいつ嫁に嫁いでも良いようにと母から教えて頂いたらしいけど、お金持ちなら使用人を雇うものと思っていた手前、素直に驚いている。
そう関心していると、レイヴェルは少しはにかんだ様に笑みを浮かべていた。
「はいっ。お、お口に合わなかったでしょうか?」
「そんな心配そうな顔をしなくても、すごく上手かったよ。特にこのタルトが絶品だったよ。もしかして人間界の甘栗を使ったのか?」
「は、はい! イッセー様が人間界の日本から来るということで、人間界の栗を取り寄せてマロンタルトを作りました!」
……良い子だなぁ~、レイヴェルは。
気遣い上手っていうか、前に俺の好物が栗っていうことを手紙に書いたのを覚えていたのか。
「マロンを使ったものは俺の大好物なんだ! ありがとな、レイヴェル」
「い、いえ……前に手紙を頂いたときに覚えていたものですから……」
少し照れたレイヴェルの仕草が可愛いと思いながらも、俺たちはそんな世間話をしている最中であった。
俺たちの方を見ていたルヴァルさんとフェニックス夫妻が微笑ましそうな表情でこちらを見て来た。
「え、えっと……なんでしょうか?」
「いや。レイヴェルが同世代の子と楽しそうにお話ししているところを見たことがなくて、とても新鮮でね。親心で見てしまっていたのだよ」
「ええ、ホントに微笑ましいですわ。確か二人は文通で前々から繋がっていたのですわね?」
「はい。ライザーとの一戦以降は定期的に手紙でレイヴェルの近況とかを聞いていたんですが……。あ、そういえばレイヴェルは人間界に留学しに来るんですよね?」
「ええ。レイヴェルもリアスさんと同じで他の世界をしっかりと見るべきですから。その際にはどうか、私の娘を支えてあげてくださいね?」
レイヴェルのお母様の言葉に俺は力強く頷く。
それから俺たちは軽く世間話をして、そして黒歌を連れて一旦フェニックス家から離れるのであった。
―・・・
……次の日。俺は昨日ライザーを追い詰めた森の前にいた。
フェニックス邸から特に離れていないフェニックス家の敷地内の森で、今回はここを貸してもらう予定だ。
とはいえ、そもそもあいつがこの場に来なければ意味がないんだけどな。
「来ると思ってるの、イッセー」
俺の隣で項垂れている黒歌はそう尋ねて来た。
来る、か……そんなものは俺には分からない。あいつが変なプライドを発動すればまず来ないだろうし、わざわざ恐怖の対象である俺の元に来るとは、黒歌には思えないのかもな。
「分からない。でも来なければあいつはいつまでも変われない。慢心と無駄なプライドがあいつの成長と最初の一歩を妨げているんだ」
あいつに選択肢は与えた。
それで来ないのならば、あいつはそこまでだったということ。
残念だけど、それまで。
でも、それでも俺は信じたい。あいつの中にまだ男が残っているのなら、喧嘩腰でも良いから来てほしい。
「以前のレーティング・ゲームはさ。俺たちが負けた。それはあいつが『王』としての判断で、俺に勝てないと悟って既に消耗をし尽していたリアスを狙って勝利した。俺はそのことに激怒して、それはもう頭に血が昇っていた……けどそこまでして勝利を望んだのは、それがあいつのプロとしてのプライドのはずなんだ」
そのプライドには嘘偽りはない。
例え傍から見たら卑怯でも、あいつはあいつの眷属たちの頑張りを無にしないために勝利を望んだ。
結果的に言えばあいつは特に間違ってはいなかった。感情論は抜きにして。
「あいつは今の殻を破れば、きっと凄まじい成長が出来ると思うんだ。勝利に渇望するのは汚そうで、実は綺麗なものだ。勝利のための努力を覚えれば、あいつはきっと変われる」
「あいつにそんなこと出来るとは思えないけどにゃー」
「いや、本質的に言えばルヴァルさんやレイヴェルの兄妹なんだ。―――いや、もしかしらあいつが歪んじまったのはそれが原因かもしれないけど」
……優秀で優しい兄と、優秀で優しい妹。他を圧倒できる圧倒的な才能と能力を身につけた故に、他を見下すサディスト性と兄妹に向ける劣等感が芽生えた。
まあ実際のところは分からないけどな。
「まあここまで遅ければ、諦めた方が良いのかもな」
「うんうん、だから私とデートしようよ♪」
すると黒歌は少し嬉しそうに、途端に機嫌が良くなる。
腕を絡ませて、今すぐにそこから移動しようとする―――その時であった。
俺は目線の先に男の影を見つけ、黒歌を止める。
「残念だったな、黒歌―――やっと来たか、ライザー」
俺はこちらに歩いてくる怖い形相のライザーに声を掛ける。
「黙れ。お前の言葉に惑わされたわけじゃない」
「じゃあ、何で来たんだよ?」
「―――お前が、むかつくからだ!!」
……そうかい。
理由としては十分だ。
何せ、俺の今回の目的はこいつのクサッタ甘ったれ根性と、ニート状態を打開するためだからな。
「ああ、分かってんだよ! お前の言っていることは大抵正しくて、拗ねてカッコ悪いのは俺だってことは!!
だからこそ本当のことを言われてムカつく!!」
「はは。それくらい理不尽なくらいがお前らしいよ、ライザー」
「―――何よりそのしたり顔がむかつくんだよぉぉぉぉぉ!!!」
ライザーは背中に炎の翼を展開し、炎を纏った拳を俺へと放ってくる。
……気合十分だな、ライザーの奴。
格好は戦闘しやすいバトルスーツで、勢いも十分。
……こっちも既に前の戦いの疲労もとれて、コンディションは最高だ。
「よぉぉぉし、ライザー……あれから変化を迎えた俺の全力を久しぶりに味あわせてやる」
俺はここ一番の悪そうな笑みを浮かべ、そして―――
―・・・
「はぁ、はぁ……マジかよ、お前」
「ああ、マジだ。だから言ったろ? 俺も色々あったんだって」
あれから数時間後。
俺とライザーは一対一のスパーリングによって辺りの風景を一変させていた。
木々はライザーの炎により燃え盛り、地面は俺の斬撃やら打撃やらで地割れを起こしていた。
ライザーは肩で息をして、俺は特に息を乱さずまだ生き残っている木の枝の上に中腰で座っていた。
……実に数時間の戦闘で、ライザーはずっと驚愕の表情を浮かべていたんだ。
そりゃあ、守護覇龍を除く全ての力を出し惜しみなく使ったんだからな。
二つの籠手によるツインブースター・システム、籠手に創造力を付加して強化する神帝の鎧、アクセルモードに創造神器のコンボ、白銀龍帝の双龍腕に今開発している新技などなど。
途中何度も吐血して瀕死になったからレイヴェルからもらったフェニックスの涙を使って強制的に復活させて、更にスパーリング。
―――ぶっちゃけ、タンニーンの爺ちゃんたちの夏の地獄と同じ目を遭わせていた。
「つ、強すぎだろ……!? 俺の炎を蝋燭の火を消すみたいに吹き飛ばして、魔王クラスの一撃で不死の俺にダメージを与えるとかチートだ!!」
「あ? 不死のお前がチートとか抜かすな。こっちも精神力で何とかしてんだからな」
俺は木の上からアスカロンを投剣し、ライザーの腹部に貫通させる。
「あがぁ!? お、お前ッ! 会話の途中で聖剣投げるなよ!?」
「お、避けたか。なら―――ほい、ソードバース」
俺は
ライザーは地上で凄まじい立ち往生をしながらも、何とか避けている。
……ふむ、なら創造神器の『強化』で行くか。
フェル、まだ大丈夫か?
『ええ。最近はずっと体を休めていたので、多少の無茶は大丈夫でしょう』
「了解。んじゃ―――逝きますか」
『Reinforce!!!!!』
俺は劣化魔剣創造に強化の力で神器性能を著しく強化する。
魔剣創造は一定の魔剣量しか創造出来ないという上限を失い、無限に際限なく剣を生み出していく。
そして地面を一面魔剣が生えているという凄まじい光景を作る。
「おいおいおい!!!? やり過ぎだろ、兵藤一誠!!!」
するとライザーは魔剣の森で腹部を突き刺しながら、鬼気迫る表情でそう叫ぶ。
……確かにはやり過ぎか?
『間違いないな。まさか相棒がここまで鬼教官とは……』
「相手がライザーだからだよ。ほい、
「鬼かぁぁぁぁぁ!!! お前、本当は俺のこと大嫌いだろ!?」
……うん。
俺は心でそう呟きつつ、依然と手を緩めず言葉通り、死ぬ寸前までライザーを追い込めたのだった。
―――……更に数時間後。
「も、う……無理……。うごけ、ねぇ……」
「まあそうだろうな。むしろここまでよく頑張ったな?」
俺は更地と化した地面の真ん中で大の字で倒れるライザーに屈みこんで、木の枝でツンツンしながらそう言った。
レイヴェルから貰った涙は全て使い去ったし、ライザーも既に限界を越えているみたいだ。
それでも何とか回復は出来ているところを見る限り、既にドラゴン恐怖症は大分なくなっているんじゃないか?
「もう、反論する力も、残ってねぇよ……。ああ、くっそ……強いな、お前……」
「お前が弱いだけだと思うけど」
「るっせぇ……こちとら同世代に敵なしでここまで来たんだ。―――お前は、初めての壁みたいなもんなんだよ」
するとライザーは少し状態を起こし、その場に胡坐を掻いて座る。
俺はそれに合わせてその場で胡坐を掻いた。
「兄貴はレーティング・ゲームのトップランカーで、妹は俺たち兄弟の中で一番潜在的な才能があった。……俺は何をとっても中途半端だったんだ。でも一族の性質である不死属性があったから同世代では敵なしで、これまで全てのゲームに勝ってきた―――親の七光りだとか、才能だけとか、真に優秀なのは兄妹ばっかとか言われてきたもんだ」
「……」
「……だから俺はどんな勝負でも負けないようにして来た。少なくとも、悪魔の面倒なしきたりがある試合以外は。負けないことが前まで俺を支えて来たもので、まあそれもどっかの赤龍帝のせいで崩れ去ったけどな」
……ライザーの独白は続く。
「何もしてなかったわけじゃねぇ。あの時、お前と戦ったときのことは何度も思い出している。それでも俺にはお前に追いつけるビジョンが見えなかった。レイヴェルからドラゴン恐怖症とか言われたのか知らねぇが、俺はお前に負けたことが受け入れれず引き籠ってただけだ―――情けねぇ」
「―――全くだ。そこまで考えれてるのに、どうして前に進めないんだよ」
「わっかんねぇよ。俺にはリアスみたいに明確に目指す目標があるわけじゃねぇ。根っからの快楽主義者だけどな、本当の目的なんてもん一度も持ったことがねぇんだ」
ライザーは空を見上げる。
「今まで、負けないように不敵な態度ばっかり取っただけ。そもそもレーティング・ゲームがプロっていっても、兄貴がトップランカーだったから始めたものだしな」
「……目標が、目的がないか―――そんなもん、割と簡単に見つかるだろ」
俺はそんな独白をするライザーにそう言った。
「お前は難しく考え過ぎなんだよ。目標ってもんはでっかく持てば良いんだ。例えばリアスみたいにレーティング・ゲームの王者になる! ……ってもんでも良いんだよ。大きな目標は、それに至る小さな目標を次々に生んでいく。その小さな目標を達成し続けて、いつか大きな目標を達成するんだよ」
「……小さな目標」
「ああ。それでもお前の目標が見つからないなら―――まずは俺をぶっ潰すことを目標にしてみろよ」
俺はライザーに不敵な笑みを見せて、そう言った。
「……上等だ、この野郎」
「良いね、その表情―――でも俺だって大きな目標があるからな。だから絶対に負けてやらないけど」
「……聞いていいか、兵藤一誠。お前の目標って奴を」
するとライザーは珍しくも少し興味がありそうな表情で俺を見る。
……そういえば、俺は上級悪魔になってからの目標を誰にも言ってなかったな。
特に具体的なものを。
「―――俺は最高で最強の眷属で、冥界を変える。あの腐った悪魔の老害に有無を言わせないほどに成長する。俺の目標はそれだよ」
「…………本気か?」
「本気だ。言っただろ? 目標は大きなほど良いって。今回の件で上級悪魔に昇格できたから、次は最上級悪魔だな。んでもって―――ま、これはいっか」
「……まさかお前」
俺はライザーに拳を向け、それ以上を言わせないようにする。
それはまだ公言したくないからな。
―――さて、もう良いだろ。
「……ライザー。今一度、お前に聞きたい―――お前はいつ立ち上がるんだ?」
「…………俺の自室な、しばらく誰もいれてねぇせいで埃が溜まってんだ」
するとライザーは立ち上がる。
「―――だからまあ、そろそろ息苦しいから、外に出ても良い頃なんだろうな」
「分かりにくいんだよ、挽肉」
「誰が挽肉だぁぁぁ!!!!」
俺の懇親のあだ名にライザーは俺に掴みかかるように襲い掛かってくるが、俺はそれを避けて足を掛け、転がせて完全に極める。
プロレス技でいうところの……コブラツイスト?
まあどうでも良いか。……あ、今関節が抜けた。
「ぎゃぁぁぁぁああ!!! いてぇ!?」
「あ、わりわり。……俺、お前のこと嫌いっていうより、こうやって虐めるのが好きなだけだよ。ほら、復活するし!」
「お―――俺はМじゃねぇぇぇぇええええ!!!!!」
―――森の中に、ライザーの悲鳴が響き渡ったのであった。
しかしライザーは前に進むことが出来るだろう。
……俺はそう確信していた。
―・・・
ライザーを矯正してから数日後の自室にて、俺はレイヴェル―――からではなく、ライザーからの手紙を読んでいた。
なんの心境の変化か知らないが、何故かライザーも俺へと手紙を送るようになった。
中にはリアスへの謝罪とか俺への感謝が記されているんだけど、フェニックス家は手紙を送ることが習慣になっているのか?
……ともかく手紙の内容は大したことは書いていない。
―――だけど最後の一節だけ、俺は目を見開いて読んでいた。
『それとな。これは上級悪魔としてのアドバイスだが、眷属には参謀的な存在が必要だ。例えば俺の眷属ではユーベルーナが良い例だ。だけどな、実は俺の眷属に今はいないが、前まで俺の女王を越える参謀役がいた―――レイヴェルだ。あいつは頭が良い。機転も利く。なおかつ、今は開花していないが、俺たち兄弟の中で一番の才能を持っている。今、レイヴェルは母上の下僕であるが、もしお前が自分の眷属を決め兼ねているなら、レイヴェルを検討してくれないか? あいつは従順で気立てが良い。必ずお前の役に立ってくれるはずだ。もちろん無理強いはしない。……これは恐らくフェニックス家の総意と受け取って貰っても良い。ではな、我が
ライザー・フェニックスより』
―――お前、誰だよ。
俺は心の中でそう思いつつ、ライザーからの申し出を本気で考え込むのであった。