あと少し短めです。
四郎は目が覚めると見知らぬ場所に立っていた。あの後、意識が何度も消えかけボロボロの体を引きずってマイホームまで戻ってこれたという記憶はある。
それだというのに自分が今いる場所はウユニ塩湖の様な場所に立っている。周りを見回しても綺麗な空と、湖の水面しかなく、人が一人もおらず自分だけがそこにいた。
「…まさか死んじまったか?」
ここはこの世界のあの世なのだろうか、そんなことを考えていると後ろでパシャッ…と何が近づいてくる音がする。後ろを振り返るとそこには
体長2メートルの熊が四郎の目の前に立っていた
「ッ!?うおおおおお!?」
思わず尻餅をついて後ずさりする四郎。パシャン!とズボンが水に浸かったがなぜか濡れはしなかった。
(何故こんなとこに熊が!?)
突然の事で困惑する四郎、もしかして喰われるのかと思ったが熊は動かずじっと四郎の事を見つめていた。てっきり襲いかかってくるのかと思ったがそれ以上に彼はその熊に見覚えがあった。
「まさか…平八のペットの熊か?」
『熊』
初代鉄拳から登場するキャラで平八のペット兼友達。格ゲー史上最も異色なキャラとして有名なのだが、というかそもそも何でこいつがこんなとこに…。
すると熊が俺に手を差し出してくる。警戒しながら近づくとその手には何か封筒に入った手紙のような物があった。
「まさか…俺にか?」
「 (・ω・)」
熊は喋らないが雰囲気で何となく取れと言っているのがわかった。熊にお礼を言って紙を手に取る。どうやら俺宛の手紙らしい。
「差出人は…あの部署の人から?」
かつて俺がこの世界に送る際に担当していた人で、門を通るまでお世話になった人だ。
「一体なんだろうか…」
紙を開くとそこにはこう書かれていた。
「ええっとなになに?…『異世界での生活はいかがお過ごしですか?やはり前の世界とは違って刺激に溢れていらっしゃるでしょう』…その刺激のせいで俺は殺されかけたんだけどね…」
そんな愚痴をこぼしながら続きを読んでいく。
『貴方がいる場所はいわば夢の中、我々は貴方の夢に干渉する事は出来ないので代わりにうちの部署のマスコットである熊に伝言を頼みました。本題に入りますが、実は前に貴方の能力で重要な物があったのを忘れていました。全部とまではいきませんがそちらに一部『武器』を送らせていただきました』
「『武器』…?」
色々とツッコミどころが満載なのは無視して、封筒を調べると中には赤い十字架のペンダントの様な物が入っており、よく調べるとデバイスのようだ。試しに使用してみるとホログラム型の画面が開かれ、内容を見ると
「おお、これはすごい!マスターレイヴンの小刀にビリー・カーンの六角棍、それにバルログの鉤爪まである!」
一部とはいえそれでもかなりの数の武器が収納されていた。さすがにマキシマの武装やアリサのデストロイモード(チェンソー)までは入ってなかったが…。
「というかレオの鉄球まで入ってる…これは武器カテゴリに入るのか?」
実際、前にもそれっぽい感じの武器が欲しいなも思っていたが、デバイスのカタログなんかを見るととても子供の小遣いで買えるような金額ではないという事で諦めたりした事があった。というか子供だけで買えるはずがない。
『…以上が今回同封した物です。時間をあけてまた新たに武器を支給させていただきます』
手紙の内容を見る限り、また近いうちに新たに武器が支給されるらしい。今度はどんな武器が来るのだろうと心のどこかでワクワクしているていると、ある事を思い出す。
「あれ…ちょっと待てよ?俺、ここからどうやって戻ればいいんだ?」
手紙には俺の夢の中と書いてあったがどうやって目覚めればいいのか。試しに湖の水で顔を洗ったりしたがこれといって変化はない。水も飲んだりしたが味はなく口に入った瞬間に消えて無くなってしまう。
どうすればいいかと悩んでいると手紙の最後にこんな事が書かれていた。
『最後に、夢から覚める方法なんですがそちらにいる熊さんが現実世界に戻す方法を知っているのでご安心ください』
「ああ、ちゃんと帰れるのね」
このまま永遠に熊と夢の世界にいるなんて事態はどうやらないみたいだ。四郎はさっそく熊に夢から覚める方法を教えてもらおうと後ろを振り返ると
「(「・ω・)「がおー」
「ぶふぉッ!?」
突如として自分の腹に強い衝撃が走る。よく見ると熊の右拳(?)がボディにめり込んでいた。突然の奇襲に対処できず四郎はそのまま空中へと打ち上げられてしまう。そして熊は湖に手を突っ込むとどこから取り出したのか、新鮮な『鮭』を取り出し、鮭の尻尾を掴みバッドのように構える。
そして
カッキィーーン!!
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!」
落ちてくる四郎を鮭の芯(?)で捉え、さながらまるでプロ野球選手のようなな美しいフォームでフルスイング。四郎はそのまま空へと飛ばされ、意識が白く塗りつぶされていった。
「……ハッ!?」
目が醒めるとそこは見慣れたテントの中だった。よく見ると自分の着ていたパーカーはいつの間にか脱がされ、ところどころに包帯や塗り薬を塗ったあとが見受けられた。
「ど、どないしたんや!?」
テントの入口から隣人のジークが慌てて駆け込んできた。
「あ、ジーク…」
「四郎、目を覚ましたんかいな!?よかった〜…」
あの後、どうやら俺は3日近くは寝ていたらしくその間にジークが俺の傷の治療をしてくれてたらしい。ジークに誰にやられたとか色々と問い詰められたりした。
「…というわけさ」
「あー…そりゃまた災難やったな。いきなりあんな格好で来られたからうちがビックリしたわ。というか相手は仮にも管理局最強の魔導士やで?よくそんなのと対面して生き残れたな」
「そりゃまあ…死に物狂いだったからな」
あの時の戦いを思い出すと今もゾッとする。そんな事を考えているとジークが四郎のパソコンをとあるサイトの画面を見せる。
「ほれ。これ見てみい」
「ん?…ゲッ!?」
そこには『激戦!魔王VS鉄拳王』というタイトルが付いた動画で写し出されている。記事には『あの管理局のエースと互角!勝負は引き分け』と書かれ、これのせいで今やネット中お祭り騒ぎが起きてる始末。
「おいおい勘弁してくれよ…。これじゃ出歩けないじゃないか」
「しばらくほとぼりが冷めまで待つしかないっちゅうことや。…それよりも、四郎」
「なに?」
「もう次からはあんまり無茶したらあかんよ?あんたが傷ついたら…その…うちは…(ゴニョゴニョ」
「え?今なんて?」
なぜか顔を真っ赤にし、モジモジするジーク。後半は何を言っていたかはわからなかった。
「と、とにかく!今後無茶はせんとってな!?」
「お、おう」
なぜ自分が怒鳴られたのか理解していない四郎だった。
「やっとだ…見つけだぞ『鉄拳王』…!」
そんなやり取りを、森の向こうからひとりの人物が見ていた。
「今度こそ貴様を…お前を倒して、私の強さを証明する!」
はい、今回は新たに主人公が渡されたのは『武器』です。
まあ武器と言ってもまだ全部は渡されていません。数でいうと大体10個位の武器が支給されました。
とはいえ、まだ武器を使って闘うのは少し先になるでしょう。
そして最後のはネタバレでオリキャラという事になっています。
どんなキャラなのかはお楽しみに。