真なる格闘家を目指して(嘘)   作:レッドブルモンスター

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続きました。



第1話 ゲーセンでの乱入対戦は緊張する

 気持ちの良い日差しが差す朝に自然あふれる森の川の前で一人の青年がバリアジャケットを展開し、目を瞑って佇んでいた。

 

「……フー……」

 

 ゆっくりと呼吸を整えながら目を開き、拳を前に出し構える。彼は体の中に周る『氣』を拳へと流す。

 

 すると

 

 バチッ!

 

 彼の手に稲妻が纏わり付いた。そしてその拳のまま、両腕を自分の体の方に引き掌から大量の氣を放出。それは青いボールのような物へと変わっていき、バチバチと稲妻が宿っていく。

 

「ハアァァァァァ…」

 

 さらに力を高めてゆき、やがて大きさはバスケットボールほどの大きさになる。

 

「オォォォォォ!」

 

 青年はそれを流れる川へと放つべく、腕を前に出す。

 

「電刃!波動kってアババババ!?!?!?」

 

 しかし突如として氣の塊に纏っていた稲妻が青年に流れ、ビリビリと体を痺らせながらその場に倒れこんでしまう。放った塊はそのまま川の水面へと飛んでゆき、爆発音を響かせながらあたりに雨のように水しぶきが舞う。

 

「…また失敗だ」

 

 服の一部が黒焦げになり、大の字で倒れた四郎がぼやく。彼が放った技は『ストリートファイターV』に登場するリュウのVトリガー『電刃練気』を組み合わせた超必殺技(クリティカルアーツ)『電刃波動拳』を放ったのだが氣の調整が難しく、今まで何度も挑戦しているが稲妻が漏電して自分が感電し『真空波動拳』となってしまっている。

 

「『電刃練気』は出来たんだけどな…。やっぱり『電刃波動拳』はケンの師匠、剛拳の技だからそんな簡単には出来ないか〜」

 

 そう言って土埃を落としながら立ち上がり、岸に打ち上げられた魚を数匹拾い自分の住まいであるテントへと戻って行った。

 

 

 

 

 暫く歩くと今の住まいである紺色のテントへと辿り着く。一度自分のテントで黒焦げた服装を取り替えて、自分の隣のテントの住人に声を掛ける。

 

「お〜い、朝だぞ〜。いい加減起きろ〜」

 

 テントの入口のチャックを開けると中には寝袋に身を包んだ少女がスヤスヤと気持ちよさそうに寝ていた。

 

「むぅ〜…あと5分…」

「ほほう…いいのか?俺がせっかく取ってきた魚を全部頂いちゃって」

「はーい!起きたー!」

「…まずは寝癖をどうにかしろ。色々凄いことになってるぞ、ジーク」

 

 テントの隣人、それは世界公認の次元世界最強10代女子『ジークリンデ・エレミア』だ。

 

 

 

 

 

「そう言えばこの前は帰りがやけに遅かっなー。何かあったん?」

 

 むしゃむしゃと俺が作った焼き魚を頬張りながらしゃべるジーク。彼女との出会いは最初に俺がこの森に目をつけ、先にテントを張っていたのだがいつの間にか勝手に俺のテントを占領し、今日からここが自分の住まいと言い張る始末。

 

 当時、平穏な生活とは無縁な中で唯一のオアシスとも言えるこの場所を奪い合うべく、互いに拳を交えた。あの時はまだ俺自身が未熟というのもあったがそれでも勝負は互角。長きに渡る戦いの末、結局最後は互いに相打ちとなって終わった。

 

 それ以降は、協力しあって済むという条件で両者は納得はした。

 

「あー…例の通り魔に襲われちまってね」

「あれま。それで、そいつはどうなったん?」

「通り魔は何かオッドアイの女の子で自分が王様だか何だか言ってたよ。なかなかいい筋してる奴だったけど、まあ結局は『レイジアーツ』で返り討ちにしたよ」

「ふーん…というかか弱い女の子相手に腹パンするとか最低ちゃう?」

「血みどろキャットファイトやってるおまえらが言うか」

 

 俺も詳しくは知らないがジークは昔、『エレノアの神髄』という技で相手の手の骨を砕くという事を試合中に起こしてしまったらしく、以来それがトラウマで最近は大会には参加していないらしい。

 

「それで?その子とやりあってどうだった?」

「どうだったって…何が?」

「実力や、四郎から見てどないやったんか?」

「……」

 

 少なくとも、俺が思うに二種類の人間がいる。

 

 一つは自分の力を誇示するために戦う者。自分こそ最強やら、俺が気に食わないから勝負を挑んでくる…そんなとこだ。

 

 もう一つはただ純粋に戦いたい者。自分の力がどこまで及ぶかを試したいと、伸びしろがある者か俺と戦いたいというだけの人間がいる。

 

 彼女はどちらかと言えば前者の方だろうが。

 

「……悪くなかった。踏み込みも、動きも、戦い方もな。ただ…」

「ただ?」

「戦っている時に何度も違和感を感じたんだ。まるで強迫観念に駆られてるように『そうでなくてはいけない』…そんな風に感じたんだ」

 

 彼女がなぜ多くの人間にストリートファイトを仕掛けたのか、最初は自分の強さを誇示するためと思ったがそれとはまた違う『なにか』。けど今の俺にはそれを知る術はない。

 

「あーもうこの話はやめだ。飯食ったら続きをやるか〜」

「ま〜たあのビリビリするのやるん?」

「違えよ。とりあえず次は八極拳の稽古さ」

 

『八極拳』とは中国拳法の一種で打撃技が主体の武術だ。太極拳や蟷螂拳とは違い、美観を追求せずにただ実戦に特化した武術でもある。この武術を使う者は鉄拳では『レオ』、ストリートファイターでは『ユン』『ヤン』、そしてkofでは『シュンエイ』『テリー』なんかがいい例だろう。

 

 四郎は以前、作成した等身大の人形を近くに生えていた木の後ろに紐で括りつけ、自分は木の前へと立ち

 

「フン!」

 

 地面を強く踏みしめ、右拳で木を打ち抜く。すると木の後ろの方でパァン!という破裂音が響く。それを確認するべく背後に回ると先程備え付けていた人形が見るも無残に粉々となっていた。

 

「うへぇ…やっぱりやばいな、この『寸勁』って技」

 

『寸勁』とは中国拳法の技の一種でわかりやすく言えば『鎧通し』。拳から放たれるエネルギーを鎧という壁を通し抜けて内臓へと伝える技だ。たとえバリアジャケットを着ていても衝撃はモロに内臓へと伝わっていくだろう。更に恐ろしい考えとして『真・昇龍拳』の要領で相手に打撃を与えた後、体内に氣を流し込み爆発。あら不思議!外面は綺麗で内臓がグチャグチャとなった死体の出来上がり!

 

 …笑えねぇ

 

「昔の人は凄いこと考えるもんだよな…」

 

 そんなことを考えながらも夕方まで黙々と修行をする四郎であった。

 

 

 

 

 

「おい、いたか?」

「ダメだ、どこにもいねぇ」

「確かこの公園なんだよな」

(ちっくしょう!一体全体どういうことだ!?)

 

 夜、夕飯をスーパーで購入し帰り道である例の通り魔に襲われた道を通ると、何故か武装した少年少女達がうろうろしていた。

 

(まずったな…まさかあの時の戦いが動画サイトに上げられていたとは)

 

 彼らの話を盗み聞きすると以前の通り魔との戦いが何者かによって撮られていたらしく、今までやっと沈静化していた伝説が再び熱を持ち、我先にと俺を討たんと多くの者が集まっていた。

 

 まるで犯罪者のような扱いだ。

 

  (見つかったらまた面倒だ…。こっそり帰んないとな…)

 

 そう考えながら四郎は身を潜めながら歩を進めた。

 

 

 

 

「えっと、その…手合わせお願いします!」

 (なぜこうなった…)

 

 天を仰ぐ彼の目の前には、緑と赤の瞳を持つ少女がこちらに頭を下げていた。




次回はどのスタイルで戦っていくかはまだ迷っています。
拳で戦うかそれとも能力を行使して戦うか。
意見をくれたらありがたいです。

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