真なる格闘家を目指して(嘘)   作:レッドブルモンスター

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データ漁ってたら幕末武士の次にボツ案となった作品です。
一部修正したりして適当に書いた作品なんで気軽に読んでくれたら嬉しいです。


プロローグ 根性値はステータス

 突然だが、どうやら自分は転生したらしい。

 二次創作でよくあるアレだ。

 別にトラックから人や動物をかばったなんてかっこいいことはしてない。

 どちらかといえば俺自身、結構恥ずかしい死に方をしたっぽいが、自分の傷を抉るようなことをしたくないのであえてこの場では語らないでおこう。

 

 それはさておき、死んだ後は何やら真っ白な部屋にいてそこには天使や女神様なんかが…という事はなく、なんか市役所っぽいところにいた。なんか想像してたのと違うな〜と思っていると事務員みたいな人に連れられて『事故課』という部所に連れてかれた。

 どうやら死に方によって担当する課が変わるらしい。

 周りにはお年寄りや若い人、子供や親子連れなんかが席に座って待っていた。

 暫くするとアナウンスで自分の名前が呼ばれた。

 

 そこに向かうと何故か職員一同が俺に向けて頭を下げていた。少々戸惑ったが、職員の一人が事情を説明してくれた。どうやら職員の人が残業で疲れていたらしく、手違いでに『天寿リスト』という所に送られ、不可避の死をさせられたらしい…というか残業とかあるのか。

 

 一応、生き帰ることはできるのか?と聞くと「出来るは出来るけど肉体がズタボロの状態だから戻っても死ぬことには変わりない」と言われた。

 

 その時は何というか…呆然としていた。まだやりたいことだってたくさんあるというのに。

 

 彼女も出来ていないしDTを捨てておらず、何よりも鉄拳7のギース様を使うことが出来ないということに悲しみを覚えた。

 

 一人、悲壮感に浸かっていると部所の上司のような人が

 

「転生…する?」

 

 と言ってきた。

 なんか瑞鳳の「食べりゅ?」みたいな口調で言ってきたのは無視するとして、『転生』…そんな簡単にやってもいいのかと疑問に思う。早い話がこちらのミスで本来全うするべき人生を失わせた事に非を感じて、緊急措置として『転生』をさせてくれるらしい。

 

 本来ならば喜ぶべき事なのだろうが、職員の話によれば飛ばされる場所がかなりヤベー所らしい。何でもその世界には魔法があるらしく、笑顔で人を爆☆殺する魔砲少女がいるヤベー世界らしい。

 

 ーーー何それまどマギより怖い

 

 もう少しマシな世界はないのかと聞くが、現在空いている枠がそこしかないと言われた。俺もさすがに生き返って早々殺されたくないというとあちらの世界で生きていくための『能力』を提供してくれるらしい。

 

 ーーーどんな能力でも?

 

「少なくとも常識の範疇を超えない程度には」

 

 ーーーほほう…

 

 その時に俺が頼んだ能力は

 

『格ゲーの再現能力』

 

 それを職員に言うと何故か驚かれた。

 職員曰く前に来た人たちはその世界にあった魔法なんかを頼んでいてらしい。別にわざわざその世界のルールに合わせる必要はないし、自分はただ己のロマンを叶えたくてこの能力を求めたのだ。

 

 例えば真・昇竜拳とか、レイジングストームとか、風神拳とか…ゲームでしかできなかった技を現実でできるなんて素晴らしい事じゃないか!

 

 熱く語ったら軽く引かれた、解せぬ。

 

 なんやかんやあって色々手続きを済ませ別世界へと送られる門にいるのだが…職員一人がお見送りするだけだった。

 

 てっきりこういうのは神様とか天使あたりがやるのかと思っていた。

 

「神様だって人一人だけで動くわけないよ。それに今は天使も総出で天界にいないよ、バカンスに出掛けてるのさ」

 

 ーーーへぇ、バカンスなんですか。ちなみにどこなんですか?

 

「立川」

 

 ーーーわあ、ずいぶんと近場だった

 

 そんな事を話しながら俺は光照らす門へと歩いて行った。

 

 

 

 

 深夜、街頭で照らし出された薄暗い夜道を灰色のパーカーにフードを被った一人の少年がレジ袋を片手に夜道を歩いていた。

 

「すっかり暗くなっちまったな…。早いとこ帰んないとあいつに怒られちまうな」

 

 少年が一人、そう呟きながら駆け足気味で走っていると

 

「すみません」

「ん?」

 

 女性の声が聞こえた。

 少年が後ろを振り向くとそこには誰もおらず、空耳かと思い首を傾げるが

 

「こっちです」

 

 再び声が聞こえた。

 

 少年が声の方に視線を向けるとそこにはバイザーを被った、月の光に照らし出された碧銀の髪をツインテールにした『大人』の女性が街頭の上に立っていた。

 

「あー…お姉さん、自分になにか?」

「はい。突然で申し訳有りませんが、あなたに決闘を申し込ませていただきます」

(oh…なんてこったい)

 

 少年はすぐさま理解した。この女性が巷で話題になっているストリートファイトを仕掛けてくる通り魔だという事に。

 

 知人にも気をつけろと言われたが自分なんかが食いつくはずもないとタカをくくっていたが、結果はこのザマだ。

 

「そうかい…。けど名前を名乗らねえのはちと良くねぇんじゃないか?」

「…その通りですね、では名乗らせていただきましょう」

 

 女性はバイザーを取り外す。

 

「カイザーアーツ正統、ハイディ・E・S・イングヴァルト。覇王を名乗らせていただいてます」

 

 女性の顔はとても美しく、すべての顔のパーツが完璧に整っている。しかし少年が一番に驚いたのは左右の目の色が違うオッドアイ、まるで宝石の様に美しく、僅かに見惚れてしまった。

 

 しかし彼女は覇王…古代ベルカの王の名前を語ったのに違和感を感じる。

 

「ヘイ、このご時世に昔の王様の名前を名乗るなんて変わってるぜ。まるで自分がその末裔…いや、本人みたいな口ぶりしてんな」

「その通りです。私がその王なのですから」

 

 正直、ちょっと痛い設定を抱えたかわいそうな女性かと思ったが彼女の構えを見て考えは一転した。

 

「なるほど…伊達というわけじゃないか」

 

 少年はそう呟きながらバリアジャケットを展開し、大人モードになる。少年のバリアジャケットは先ほどと変わらぬフードを被ったパーカーだが、彼の両腕には肩まで備え付けられた赤い籠手ことを身につけていた。

 

「まあいいさ。せいぜいあんたの相手になれるよう、努力はするさ」

 

「では…行きます!」

 

 少女もといアインハルトは言うと同時に地面を強く踏み込み、少年へとパンチを叩き込む。

 少年はそれを避けず、腕をクロスしてパンチを真正面からガードする。

 ぶつかり合った瞬間、周りの空気が震え轟音を響かせるが少年はビクともせずそれを受け止めた。

 少年はすぐさま両腕のクロスを解き、少女の拳を払って右拳を構え正拳突きを放つ。

 

「チェストぉ!!」

 

 少女は片腕でそれをガードするが

 

(くっ!?なんて重い拳…!)

 

 しかし少年は間髪入れずに攻めていく。

 少女のガードした僅かな硬直時間の隙をつき、上段後ろ回し蹴りを叩き込み腕を振り払い、ガードを崩す。

 

「《空斬脚》!!」

 

 そのままスラッシュキックの要領で少女の腹部へとクリーンヒットし、少女を吹き飛ばしていく。

 少女は腹を抑え、むせながらも立ち上がり先ほどの攻撃について考える。

 

(重い…ただただ重い一撃だ)

 

 だがアインハルトは挫けず、少年に向けて駆け出し再び殴りかかる。

 両者は相手の攻撃を捌き、受け流し、防御し、隙を見つけては蹴る、殴る、投げるなど互いに譲らない。

 スピードでは確実にアインハルドが上回っているが、パワーは確実に相手の方が上だと理解する。

 

 今までアインハルトはこれまでに多くの者と拳を合わせてきた。

 無論、その中にも男はいたが彼はそれとは比べものにならないほどの強さ。

 

 しかもそれだけではない

 

(この男…強化魔法を使ってない!)

 

 本来、非力である女性の身で、拳での撃ち合いでは強化魔法を使用し攻撃力や防御力を高め闘うのだが、この男はバリアジャケット以外に一切の魔法を使用していない。

 

「…なんで」

「どうして『魔法』を使ってないかって?よく言われるんだよな」

 

 少年はアインハルトの考えを見透かしたかのように呟く。

 

「別に、使えば使えるけど…俺はあんまり魔法使うの得意じゃないんだからさ、詳しくは言えないけど『秘密の力』で戦ってるんだよ」

「…そうですか。なら、私は自分の拳をもってあなたを討ち倒します!」

 

 アインハルトは再び構えを取り、先程よりも強く踏み込み少年へと駆け出す。

 

(魔力が拳に集まってる…デカイのが来る!)

 

 少年はガードするべく、先ほど同様腕をクロスしようとするが

 

「《バインド》!!」

(ゲッ!?)

 

 アインハルドが拘束魔法を発動し、鎖のようなものが少年の体全体に巻きつきその場に固定する。

 そしてアインハルトは少年のお留守となったボディに自分の持つ絶対の必殺技を放つ。

 

「《覇王断空拳》!!!」

「ガァッ…」

 

 アインハルトの放った必殺技《覇王断空拳》を食らって苦悶の声を漏らす少年。

 あまりの威力に少年の体を衝撃が突き抜け、背後の街道が砕けるように割れる。

 そして少年は意識を失ったのか脱力したかのように頭を垂らす。

 

(あっけない…)

 

 手応えを感じながらも、アインハルトはそのように思った。

 あれだけ威勢の良い言葉を吐いておきながらこの程度で終わると、少年に対し軽く失望していた。

 少年は気絶したのかピクリとも動いておらず、アインハルトはバインドの拘束を外した。

 

 

 

 

「いいパンチだったぜ」

「ッ!何!?」

 

 しかし、先程まで沈黙していた少年はバインドの拘束が解けたと同時にアインハルトの眼前にまで迫り、油断しきっていた彼女の腹に右回し突きを叩き込む。

 

「セイッ!」

「ぐっ…」

 

 その衝撃に腹を抑えるアインハルト。

 少年は右拳を後ろに回し、正拳突きの体制へと入る。

 

「ハアァァァァァ……チィィェストォ!!」

「……ッ!」

 

 少年の放った拳は胸部へとヒットし、アインハルトは今までに味わったことのない衝撃と痛みが襲い、思わず倒れそうになるが少年はそれで終わらずさらに追い討ちをかける。

 

「セイセイセイセイセイ!!!」

 

 胴体を始め、腹部、肩部、腕部に次々と拳を叩き込む。

 

「うおぉぉぉ…チェストォ!!!」

 

 そしてトドメと言わんばかりの紫電を纏った正拳突きを放つ。

 その威力はアインハルトの《覇王断空拳》をも超える勢いで放たれ、アインハルトは数メートル先まで吹き飛ばされ、地面へと倒れこんだ。

 

「だが…まだ詰めが甘い」

 

 少年はそのように呟きながら、バリアジャケットと大人モードを解除する。

 

「これに懲りたらもう通り魔なんかするんじゃねぇぞ」

 

 そのように告げ、その場を去ろうとするが

 

「待って…ください…」

 

 後ろを振り向くと、フラフラになりながら立ち上がっていたアインハルトがいた。

 少年はまだやるのかと思ったが彼女は立つのもやっとという状態なためすぐに警戒を解く。

 

「まさか…あなたがあの…『鉄拳王』…だったんですか」

 

 その言葉を言い終えると同時にアインハルトは今度こそ地面へと倒れ伏したのだった。

 そして一人、破壊し尽くされた公園で少年が一人叫ぶ。

 

「人違いだ!」

「オラァ!こんな夜中になにやって…って何だこりゃ!?」

 

 背後から声が聞こえ振り向くとショートヘアーに赤い髪の少女が立っていた。

 

「あ!おい、これはお前が…「し、失礼します!」って、え!?ちょ、ちょっと!!」

 

 少年は大人化が解けたアインハルトを彼女に半ば押し付ける様に、その場から凄まじいスピードで逃げるように走って闇の向こうへと姿を眩ませて行った。

 

 「な、なんなんだよ…」

 

 

 

 このミッドチルダには一つの伝説が存在する。否、『生きる伝説』が存在した。その者は武器を使わず、ただ己の拳のみでありとあらゆる強者を叩きのめす、それはまさしく『真なる格闘家』。

 

 彼らは男をこう呼んだ。

 

『鉄拳王』と

 

 

 

「なんだこれは…」

 

 パソコンのとある画面で、ワナワナと手を震わせて『勝手』に作られた自分の特設サイトを見てそう呟いた。

 

「なんだよ《鉄拳王》って…別に俺は世界平和(戦争)するようなアトムみたいな髪型をしたおじいちゃんじゃないんだってのに…」

 

 俺こと《風間四郎》はこの世界に転生したのだ。最初は大いに喜んだのだが多くのトラブルや天界のアフターケアがない状態での生活はかなり厳しかった。最初は子供達でも参加できるような少しばかしでかい大会なんかに参加したりして、食い扶持を稼いでいたのだが何度も闘っている内に、知らない間に自分が勝手に伝説化させられてしまった。

 

 一時期は根も葉もない噂が立てられ強化人間や殺し屋、古代ベルカの隠されたもう一人の王など、どんどん設定が捏造されやがてこんな二つ名がついた。

 

 酷い時には何十人もの武器を持ったやつに囲まれて、果たし合いという名のリンチをされかけたりした事もあった。最近では自分が住んでいた安アパートが特定されてしまい、入り口前は大量の野次馬。今は人目につかない場所でテント暮らしと親愛なる隣人とともに協力しながら生活し、顔バレしないよう普段からフードを被りながら昼夜逆転の生活をしている。

 

「まったく…少しは普通の生き方をしたいよ…」

 

 四郎はぼやきながら照らし出される月を眺めていた。

 




主人公がアインハルトに対して放った技は『鉄拳7』の主人公キャラ、風間仁のレイジアーツで、見た目もまんま風間仁のコスチュームです。

また気がむいたら更新していこうと思います。

それではまた次回、お会いいたしましょう。

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