俺たちの冒険の書No.002〜ローレシアの王子〜   作:アドライデ

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Lv.12:砂漠を超えた。

 

「残念だったね。また挑戦してくれよ」

 準備のために薬草やらいろいろ買った後に感謝の気持ちとしてもらった福引券。惜しいところだったが、結局全部ハズレに終わった。

ムーンペタの町に戻ってきて旅の準備を進めている。

キッチリとした目的は見つかっていないが、この大陸を全て見回ったわけではないので、くるりと見て回ろうと言う話になった。

 

「あれ?」

 街角の隅で蹲る兵士を見つけた。

「あれはムーンブルク城の兵士の服だねー」

 生き残りがいたのかと最初町に入ったときは気付かないほど、奥で隠れるようにその兵士はいた。

「私はあまりの恐ろしさに城から逃げ出したのです。今頃ムーンブルクのお城は…。ああマイコ姫っ!」

 頭を抱え、自責の念に囚われる兵士。遠巻きに見て、結局声をかけることができなかった。

「今の私には何も言えない、して上げられない…」

 無事だと伝えようと思ったが、ムーンがそう拒絶したので間接的に伝わるようにした。

ムーンペタの町に知人となった女性が居たのは本当に有り難かった、色んな手続きもあっという間だ。

更に知り合いの女性は兵士の扱いにも慣れているようで、快く引き受けてくれた。そう言えば、彼女はここで何してるんだろうな。聞いても素敵な笑みを返されただけだった。

 

「そう言えばラリホーを覚えていたわ」

 魔法のことはわからないので、毎回新しい呪文を覚えたら、ちゃんと教えて貰えるようにお願いしたら、そう教えてくれた。

「ラリホー?」

「ほら、赤い蟻に掛けられてた」

「眠るやつか!」

 サマルの補足で思い出す睡眠魔法。大きな赤い蟻【ラリホーアント】のことだ。基本、ムーンは聖なるナイフを装備したものの、その攻撃力ではここの辺りのモンスターに太刀打ちできない。

「えぇ、これでこちらが攻撃されるリスクが減るわ」

 装備が強化できない今、敵の数が多いときは回復と防御で凌いでいたが、ラリホーで眠らせることができれば、その間に仕留められると言うことだ。

効きは不安定で、纏まっていないと集団に掛けられないのがネックであると教えてくれた。

 

 ムーンブルグ城から西へ行くと海を挟んだ祠が見えた。一人の神父が居たが、特に何かをするわけではないようである。

どうぞと橋に案内された。国境だったのだろうか。

 

「昔はここが向こうの大陸にあった自衛の町との関門だったの」

 今は砂漠化の影響で、オアシスが縮小してしまった。その影響で皆は町から出て行ったから、廃墟になっているという。

町がなくなったので、その先の町ルプガナとの物流も激減。今はもう途絶えているそうだ。

 

 そう教えてくれたムーンは少し寂しそうに海を見つめている。ここ百年ご先祖が築き上げた地位が崩れようとしている。先祖の故郷ラダトーム、名前だけは知っているが、実際に訪れたことはない。先祖が歩んだ道を偶然にも今逆流している。

 

 先に進むと砂漠地帯が見えてきた。

その頃になるとムーンがバギと言う風を起こす呪文が使えるようになったとのこと、鎌鼬のようなものらしい。その攻撃魔法が想像以上に強くて驚いた。

 

「ムーンそっちの集団任せたぞ!」

「サマル、こっちを手伝って!」

「ローレ、危ない!」

 怒号が飛び交う。倒せなくはないが、少しの油断で死に直結する。今生きているのが不思議なくらいだ。

見慣れない敵も多く存在する。

 

【おばけねずみ】(巨大な赤い鼠)一体一体はそれ程強くないが、仲間を呼ぶ。【ぐんたいアリ】もそうだったが、あれよりも攻撃力が高く集団で来られてはたまらない。ついムーンのバギを頼ってしまう。

さらに、【マンイーター】(移動する食人植物)の甘い息(眠りに誘う)は魔法ではないのでマホトーンが効かないのが厄介である。

 

 オアシスで休憩を挟み、砂漠を超えることはなんとかできたが、その先で見つけた塔。中にいた人曰くドラゴンの角と呼ばれ、対岸の塔と対になっているとのこと。

興味は唆られるが、ここまで来るのに全てを使い切ってしまったので登る余裕がない。

しかも、例え登れたとしても、今は連絡通路がないこの二つの塔は、対岸へ渡るすべが無い。

万事休すか…。

 

「あ! 風のマントだよ」

 サマルが思い出した。

「対岸へ渡るにはそれを装備して塔から飛び降りたらいい。ムーンペタの町の人がそう言っていたはずだよー」

「そうだったっけ?」

「でも、それがどこにあるかなんて知らないわ」

 ムーンも聞いたことはあるらしい。

どうだったかと、記憶を掘り起こしたが、結局思い出せず。代わりに毒沼探しのときに見つけたその沼地の丁度南、大きな川を挟んだ先に見えた謎の塔の存在を思い出した。

「あ、あるかわかんないけど、行って見たい場所があるんだぞ!」

 簡単に説明する。サマルも見ていてくれていたようで、直ぐに理解してくれた。

「どこかの塔って言ってたから、可能性があるね」

「ここに無いことを祈りましょう」

 一致団結して、ここまで歩いてきたことが水の泡になるが、ここに居座っても時間の無駄だと、ルーラでムーンペタの町まで戻ることにした。

 

 ロレンLv.12、目指せ大陸全制覇。


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