緋弾のアリア~スキャッグスの名をもつ原作ブレイカー~   作:シャラシャラン

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旅する、カゲヨシくん


第七話 旅の始まり

 

 

何もできなかった

 

ただ皆に行けといわれただけだった

 

何もできなかった

 

力はあったのに

 

でも、何もできなかった

 

突然の事で驚いたのかもしれない

 

それでも、何かできたはずだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数日

 

俺は重い棺を引きずりながら歩いている

もちろん人目を気にしながらだ

 

こんな物持ってるのに話しかけられないっておかしいか

 

腕時計を見る

 

もうすぐ指定された時間だ

あの時レミに渡されたメモを見る

 

そこには地名と時間が書いてあった

 

ここは何も無い島なのだ

ようするに無人島だ

 

 「ここに来るまで苦労したんだから何か来てくれよ」

 

そしてメモをコートのポケットに突っ込む

 

その時だった

 

 「黎那・S・影儀君かな?」

 

俺は振り向き腰にあるピストルを抜き構える

もう慣れた動きだ

 

 「いい動きだ。さすがスキャッグス家の者だ」

 「…………追っ手か、誰だ?」

 

あたりは真っ暗で顔はまったく見えない

だがこちらに近づいて来て顔が鮮明に見える

 

 「僕はシャーロック・ホームズだよ」

 

…………うっわ

ヤバイじゃん

天然チート人間じゃないか

 

 「それでそんなスゴイ人が何の用ですか?」

 「ふむ、冷静だな。普通は僕自身が生きていること自体に驚くのだがね」

 

そりゃあ、原作で知りましたから

もう驚かないよ

 

 「実は君をイ・ウーに招待しようかとね」

 

招待か

確かにいいだろう、居場所も保障される、安全だしな

 

 

 

だが、俺は何をされる?

 

 

 

 「見返りに何を求むつもりだ?」

 「何も。いや正確的にはもうもらっているからね」

 

前払いしたのか?

 

 「君のお父さんがね」

 「父さんが…………」

 「そうだ」

 

どこまで顔が広いんだよ

 

 「答えを聞かせてもらおう」

 「答えはノーだ」

 

シャーロックが驚いた顔をする

 

 「理由を聞かせてもらっても?」

 「ただ、今は駄目なだけだ」

 

そう

今はまだ駄目だ

 

 「俺はやっと外に出れたんだし、しばらく世界を回ってみたい」

 「旅か、だが期限が欲しい。こちらとしてもいつでも君を野放しにしておくのは怖い」

 

なるほど

俺が消えたり失踪したりすると損するのはそっちだからな

 

 「なら一年だ」

 「ふむ一年か。それぐらいだったらいいか」

 

納得してくれたか

 

 「だがこれを常に持っていてくれ」

 

そしてシャーロックは革の鞄から小さな携帯を差し出してきた

 

 「これで連絡を取り合おう。最低一ヶ月に一回どこにいるか、どこに行くかを教えてくれ。先に言っておくがこれにはGPSが入っているからね」

 

なるほど

これっで現在地を確認か

 

 「わかった」

 

それを受け取り内ポケットに入れる

 

 「では今から一年後だよ」

 

そしてどこかに歩いて行き暗闇の中に消えた

俺は軽く息を吐き出し、警戒を解く

 

 

まったく

あんな人が来るなんて

 

それより親父、知り合いだったのかよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それでなんで翌日から電話をかけてくるかね」

 『いいではないか』

 

俺はホテルの部屋で椅子に座って携帯電話を耳にあて通話をしている

 

 『で、まずどこに行くつもりかね?』

 「まだ決まっていないな」

 

電話の向こうでため息が聞こえる

 

 『ドイツなんてどうかね?』

 「ドイツか………いいな」

 『そう言う事はわかっていたから君の携帯にチケットの番号を送っといたよ』

 「はやいな」

 『僕にかかればこれぐらいお手のものさ』

 「あっそ。じゃあ、もうきるぞ」

 

返答を待たず赤い受話器のマークを押す

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さってと、行きますか」

 

棺を担いでホテルのドアを開けて進みだす

 

 

 

 

これが俺の濃い一年間の旅の始まりだった

 

 

 

 


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