酷評が多いですが書きました。
穂乃果の言葉に荒川と岩尾は声が出なかったがなんとか言い返そうとする。
「フ、フン! 私に勝てるものなら⁉︎ 逆でしょ⁉︎ 私たちにあんたが勝てるかでしょ⁉︎」
「そ、そうよ…!」
穂乃果の瞳にビビりながら荒川と岩尾は穂乃果に言い返した。
しかし、2人以外はまだ言葉がでないようだ。
穂乃果はそれを見て軽く笑った。
「そうですか? まあいいですよ… 論より証拠、実際にポケモンバトルで確かめましょう… そちらは今のルールであるタッグバトルで結構です。私は1人でのダブルバトルで戦います」
「「「⁉︎」」」
穂乃果の提案に穂乃果以外の全員が驚いた。
タッグバトル対ダブルバトルでは圧倒的にタッグバトルの方が有利だ。
何故ならタッグバトルはパートナーと息を合わせないと勝てないと言う欠点があるがさっきのポケモンバトルを見るからに荒川と岩尾の相性は良い、さらに、指示をだすのは自分のポケモン1対のみですむ、対してダブルバトルでは2体のポケモン両方に指示をだしつつポケモンたちの状態にも気を配りながらバトルをしなければならないからだ。
しかし、荒川と岩尾はこれ幸いと顔を見合わせニヤリと笑った。
そして、そのバトルのルールを承諾した。
「自分から不利なルールを提案してくるなんて、アンタって馬鹿?」
「私たちの勝利は決まったも同然ね!」
荒川と岩尾はもう穂乃果に勝利した気でいる。
しかし、穂乃果は余裕の表情だ。
「ポケモンバトルはやってみないと結果なんてわからないよ…?」
穂乃果は荒川たちに聞こえないように呟いた。
しばらくしてポケモンバトルの準備が整った。
審判の男子生徒がバトル開始の声をあげ、右手を上に突き上げた。
「これより、荒川渚と岩尾美希のタッグと高坂穂乃果のポケモンバトルを始める! 使用ポケモンは2体、どちらかのポケモンが2体とも戦闘不能になった時点でバトル終了です! では、バトル開始!」
男子生徒が勢いよく右手を振り下ろしバトルが始まった。
穂乃果がポケモンを繰り出そうとすると、荒川と岩尾が穂乃果に話しかけた。
「2人がかりだからって言い訳はなしよ!」
「私たちが勝てば貴女のポケモン全部寄越しなさい!」
荒川と岩尾が穂乃果に言った。
その言葉を受けて穂乃果はしばらく、考えていたが何かを思いつき荒川たちに言い返した。
「分かりました。もし、貴女たちが私たちに勝てば貴女たちの願いを何でも一つ聞きましょう、しかし、負けたら、貴女たちはもう2度とこの2人に関わらないでください」
「「‼︎」」
穂乃果はカチューシャの少女たちを指差しながら言った。
穂乃果のこの言葉に荒川と岩尾は驚く。
「だってそうでしょう? 私のことを弱いトレーナーだと言うのなら私に負けるはずないじゃないですか、だったら良いじゃないですか」
「そ、それはそうだけど…」
「それに、私だけがリスクを背負うのは理不尽です。そちらにもそれ相応のリスクは負ってもらわないと…」
「っ! わかったわよ! 勝てば良いんでしょ! 勝てば!」
穂乃果の提案を荒川たちは自分たちから言い出したことのため渋々了承した。
苦い顔をしている荒川と岩尾に対して穂乃果は言質を取ったことを心の中でガッツポーズを取った。
もちろん、そのことを荒川たちが知るはずもないが、
「さあ、出番だよ! ファイトだよ! ガブリアス! エレキブル!」
『リアス!』
『レッキ!』
穂乃果はいつもの掛け声とともにドラゴン、じめんタイプのガブリアスと電気タイプのエレキブルを繰り出した。
「いけ! フリージオ!」
「頼むぞ! グライオン!」
『ジオッ!』
『ライ!』
対する荒川と岩尾は相性で選んだのかこおりタイプのフリージオとじめん、ひこうタイプのグライオンを繰りだした。
両者がポケモンを繰りだし、ようやくポケモンバトルが始まった。
「先制攻撃だ! フリージオ! ガブリアスに冷凍ビーム!」
『ジオー!』
「ガブリアス、穴をほるでよけて!」
『リアス!』
先制攻撃のフリージオの冷凍ビームを穴をほるでよけてガブリアスは地中に潜る。
「グライオン! エレキブルにシザークロス!」
『ライオン!』
「エレキブル! 自分に雷を打ってかわして!」
『レッキ!』
グライオンの方はシザークロスをエレキブルに放つ。しかし、エレキブルは自分に雷を放ちエレキブルの特性『電気エンジン』で上がった素早さでシザークロスを躱す。
「今度は、こっちの番! ガブリアス、地面の中ですなあらし!」
ふしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
『ライ⁉︎』
「グライオン⁉︎」
地面の中からのガブリアスのすなあらしにより地面から砂の竜巻が舞い上がった。
グライオンは地面から出てきた砂の竜巻を避けることができず、竜巻にのまれ空に舞い上がる。
「チャンスだ! ガブリアス! グライオンにドラゴンクロー!」
『リアス!』
ガキーン!!!!
ドガーン!!!!
ガブリアスはグライオンのところまで飛び上がり、グライオンが落下している最中にドラゴンクローを放った。竜巻にのまれて落下中のグライオンは避けれずドラゴンクローをまともにくらってしまい地面に叩きつけられる。
「グライオン! しっかりして!」
「何してんの⁉︎ フリージオ! ガブリアスに氷の礫!」
『ジオー!』
グライオンがダメージをくらったのを見て荒川がフリージオに指示をだし、フリージオがガブリアスに氷の礫を放つ。ガブリアスも空中で避けられずダメージを負った。
『リアス!』
ドサッ!
「ガブリアス! 大丈夫⁉︎」
『リアス!』
ガブリアスは氷の礫を空中でくらったがすぐに体制を立て直し地面に着地した。穂乃果がガブリアスを心配したがガブリアスは大丈夫だと言うように威勢良く鳴いた。
「追撃よ! グライオン、ガブリアスに一撃必殺! ハサミギロチン!」
『イオン!』
シャーーー!
「ガブリアス! 穴を掘るで避けて!」
『リアス!』
ドガーン!!!!
ダメージを負ったガブリアスを見て、チャンスだと思ったのか岩尾がグライオンに一撃必殺の大技であるハサミギロチンを指示した。グライオンが自分のハサミを鋭く光らせガブリアスに向かってくる。しかし、グライオンのハサミギロチンをガブリアスは再び穴を掘るで避けた。ハサミギロチンは当たったら確実に相手を戦闘不能にできる技だが当たらなければ意味がない。穴を掘るで避けたおかげでグライオンのハサミギロチンはガブリアスに当たらず地面に激突した。
「グライオン⁉︎」
「今だ! エレキブル! グライオンにけたぐり!」
『レッキ!』
ドスッ!
ドガーン!
「グライオン!」
ハサミギロチンが外れたせいでグライオンは地面にぶつかりエレキブルの攻撃に瞬時に反応できなかった。そのせいでグライオンはエレキブルのけたぐりを攻撃をノーガードで受けてしまった。グライオンの体重はそれほど重くないのでけたぐりの威力は高くないが不意を突かれてしまったことでグライオンは空中に舞い上がる。
「グライオン! 何とか体制を立て直して!」
「させない! エレキブル! グライオンにもう一回けたぐり!」
「そうはいくか! フリージオ! 冷凍ビームでエレキブルの動きを止めろ!」
空中に舞い上がったグライオンを見て岩尾は何とか体制を立て直そうとするが、穂乃果はすかさずエレキブルに追撃のけたぐりを指示する。しかし、これは相手はタッグを組んでいるポケモンバトルだ。岩尾の相方の荒川がフリージオに冷凍ビームを指示し、エレキブルのけたぐりを阻止しようとする。
しかし、そう上手くはいかなかった。
「こっちだって2体いるんだよ! ガブリアス! フリージオに炎の牙!」
『リアス!』
荒川と岩尾に対する穂乃果もダブルバトルでありポケモンは1体ではなく2体いる、今、グライオンは空中に舞い上がって体制を立て直そうとしているため相手の自由に動けるポケモンはフリージオだけだ。穂乃果はそれを狙いガブリアスにフリージオにとって効果抜群である炎の牙を指示する。エレキブルに気を取られていた荒川とフリージオは咄嗟に反応できずフリージオは大ダメージを負って地面に叩きつけられた。
『ジオッ⁉︎』
「フリージオ!」
『ライオン!』
「グライオン!」
フリージオがガブリアスの炎の牙をくらい地面に叩きつけられたと同時にグライオンもエレキブルのけたぐりをくらいグライオンも地面に叩きつけられフリージオの近くに落ちる。
「今だ! ガブリアスはグライオンに全力で流星群! エレキブルはフリージオにフルパワーで雷!」
『リアス!』
『レッキ!』
ドドドドドドドドドドドド………!
ジジジジジジジィィィィィィ………!
ドカーーーーーーーーン!!!!
動けないグライオンとフリージオに凄まじい威力の雷が落ち、さらに無数の流星群の隕石が降り注ぎ煙が巻き上がる。その煙に全員が目を瞑った。煙が晴れるとそこには目を回して地面に埋もれて戦闘不能になったフリージオとグライオンの姿があった。
「グライオン⁉︎」
「フリージオ!」
荒川と岩尾が戦闘不能になったフリージオとグライオンを見て信じられないというような声をあげた。その場にいた荒川と岩尾の仲間たちもカチューシャの少女たちも呆然と戦闘不能になったグライオンとフリージオを見ていた。
「審判の君… 判定をお願い」
穂乃果が呆然としている審判をしていた男子生徒に声をかけると男子生徒もハッと我に帰り判定を言った。
「フ、フリージオとグライオン戦闘不能! エレキブルとガブリアスの勝ち! よって勝者、高坂穂乃果!」
ザワザワ… ザワザワ…
審判が判定を言うと周りがざわついた。
「嘘…」
「荒川と岩尾に勝ったぞ…!」
「そ、そんな馬鹿な…」
荒川と岩尾の仲間たちが信じられないと言いたげに言い出した。
穂乃果の後ろにいるカチューシャの少女とショートヘアーの少女も目を丸くして、声も出ない状態だ。
「う、嘘よ! 2人がかりで戦ったのに負けるなんて!」
「そうよ! あんた何かインチキしたでしょ⁉︎」
バトルに負けたのが納得がいかないのか荒川と岩尾が穂乃果に食ってかかった。荒川たちの仲間もそうだそうだと言いだす。
しかし、穂乃果は眉を寄せて言い返す。
「私は何もインチキなんてしてませんよ。 逆になんで私がインチキしたと思うんですか?」
穂乃果の言葉に荒川と岩尾も言い返す。
「だっておかしいじゃない! 2人がかりで戦ったのに私たちが負けるなんて!」
「そうよ!」
荒川と岩尾があくまでもインチキだと言うことに穂乃果はため息をついた。
「2人がかりで戦ったからといっても必ず勝てるとは限りませんよ? 確かに貴女たちの連携は良かったけどその分隙も多かったですし」
「ど、どういうことよ⁉︎」
穂乃果の言い分に荒川が言い返した。
「例えばグライオンたちが戦闘不能になる直前の指示、グライオンをエレキブルが攻撃した時、どうしてフリージオにエレキブルを攻撃させたんですか?」
「決まってるでしょ! グライオンが危ないんだからフリージオに援護をさせたのよ!」
荒川が怒鳴ると穂乃果は目を細めた。
「そうですか? 私ならあの状況ではフリージオの冷凍ビームをガブリアスに向けて放つんですが…」
「アンタ馬鹿⁉︎ そんな事してどうすんのよ?」
穂乃果の説明に岩尾が声を荒げて返したが、穂乃果は気にせずに続けた。
「だから、あの時、グライオンはどっちみちエレキブルの攻撃を受けていたんだから、言い方は悪いけどグライオンを見捨てて、ガブリアスに冷凍ビームを放てば少なくともフリージオは無事だったはずですよ。 さらにエレキブルにとっては効果は普通の冷凍ビームもガブリアスに放っていれば効果抜群ですからガブリアスに倒せはしなくても大ダメージは与えられたはずです、こっちの方が作戦としては良いと思いますが?」
「「…………」」
荒川と岩尾は言葉が出なかった。確かに穂乃果の言う通り、あの時、フリージオがグライオンの援護ではなく自分を攻撃してくるガブリアスに攻撃していればフリージオまで戦闘不能になることはなく状況は不利になっても勝敗はついていなかった。さらに電気タイプのエレキブルには効果は普通の冷凍ビームもドラゴンタイプを持っているガブリアスには効果抜群なためこの作戦の方がまだ勝機はあっただろう。荒川と岩尾の作戦より穂乃果の作戦の方が有利だ。
穂乃果に完璧に論破され、荒川と岩尾はもう穂乃果になにも言い返せなかった。
周りにいる荒川たちの仲間もそうだった。
穂乃果はそんな荒川たちに近づいた。
「さあ、約束です。 2人のポケモンを返してください。そして、この2人にはもう関わらないでください」
穂乃果がそう言うと荒川と岩尾は唇を噛み締めた。
このルールは他ならぬ自分達から言い出した事だ。今さら取り消すと言うのは2人のプライドが許さなかった。
荒川たちは舌打ちをし、
「フン、こんな弱いポケモン要らないよ!」
「そうさ! こっちから願い下げだ!」
荒川と岩尾はカチューシャの少女とショートヘアーの少女に自分たちが奪ったボールのついたホルターを乱暴に投げつけると、悪態をつきながらフリージオとグライオンをモンスターボールに戻し、ブツブツ言いながら空き地を出て行った。荒川たちの仲間もその後に続いて出て行った。
完全に荒川たちが空き地から去り見えなくなった後、穂乃果は「ふう…」と息を吐き緊張を解いた。
そして、荒川のレディアンのいとをはくで縛られたままのショートヘアーの少女を見た。
「ガブリアス、腕の刃であの子の糸を切ってあげて」
『リアス』
穂乃果がそう言うとガブリアスは頷き、腕についている鋭い刃を上手く使い、ショートヘアーの少女を傷つけずに糸を全て切った。
ガブリアスが糸を切り終えると穂乃果はエレキブルとガブリアスに労いの言葉をかけモンスターボールに戻した。
カチューシャの少女とショートヘアーの少女を見るとまだショックから立ち直れないのか呆然と座り込んだままだ。
穂乃果はそんな2人を怖がらせないように優しい声で2人に話しかけた。
「もう大丈夫だよ、安心して」
穂乃果の言葉に2人の少女は穂乃果の顔を見た。
穂乃果の言葉で2人は少しショックから立ち直ったのか小さく『大丈夫』と言うように頷いた。
穂乃果はそれを見て一安心した。そして、さっきの黒い制服を着た人たちについて2人に質問した。
「ねえ、嫌な事を思い出させて申し訳ないんだけど、さっきの人たちって何なの?」
穂乃果が聞くと2人は顔を見合わせてから申し訳なさそうに答えた。
「じ、実は私たちもあの人たちのことは知らないんですぅ……」
カチューシャの少女が消え入りそうな声で穂乃果に言った。
穂乃果は『え?』と言うような顔をした。
すると今度はショートヘアーの少女も言いだす。
「そうにゃ… かよちんといつもみたいに帰ろうとしたら、さっきの奴らが細い路地からいきなり出てきて、この空き地に連れてこられて無理矢理ポケモンバトルをさせられて負けたら気に入ったアンタらのポケモンをもらうって言われて…」
2人はそう言うと俯いた。
穂乃果は助けられてよかったと心の底から思った。
そして、同時にフツフツと怒りも湧いてきたのだ。
「そんなのポケモンバトルしゃないよ!」
穂乃果が言うとショートヘアーの少女が俯いたまま続けた。
「そして、凛たちはあの人たちに負けちゃって…」
「あなたが助けてくれなければ私たちはポケモンを奪われていました! 本当にありがとうございます! えっと…」
ショートヘアーの少女が落ち込んでいる時にカチューシャの少女が大人しめの外見からは想像できないような大きい声で穂乃果にお礼の言葉を言った。名前を言いたいけど分からないと気づき穂乃果は自分の名前を2人に教えた。
「私は高坂穂乃果、音ノ木坂学園2年生だよ」
穂乃果は笑顔で2人に名前を教えた。
笑顔の自己紹介により緊張が解けたのか、つられて2人も笑顔になり自己紹介をする。
「星空凛です! 音ノ木坂学園1年生です! 高坂先輩!」
ショートヘアーの少女が穂乃果の手を握って元気よく自己紹介をした。
「こ、小泉花陽です… 音ノ木坂学園1年生です…」
それに続いてカチューシャの少女も恥ずかしそうに自己紹介をする。
穂乃果は2人の名前を知り「凛ちゃんと花陽ちゃんだね、高坂先輩だと堅苦しいから、私のことは穂乃果と呼んでね」といつもの太陽のような笑顔で言った。
((綺麗な笑顔…))
「「………」」
2人はその笑顔を見て固まった、うっすら頰も赤い。
さっきの荒川たちとポケモンバトルをしていた時にしていた氷のような冷たい瞳と違い、自分たちに見せている太陽のような温かい瞳と笑顔に凛と花陽は思わず見惚れてしまっていた。
「どうしたの? 2人とも?」
ポーッと見惚れている凛と花陽に穂乃果が首を傾げながら聞くと2人はハッと我に返る。
「な、なんでもないにゃ!」
「そ、そうです! なんでもないです! 助けてくれてありがとうございます!穂乃果先輩!」
突然、アタフタして穂乃果にお礼を言う花陽と凛に穂乃果は首を傾げながら凛と花陽に笑顔で言った。
「気にしないで、同じ音ノ木坂学園の生徒としてもあんなのは放っておけなかったからね」
穂乃果はそう言うと花陽たちに手を差し伸べ立ち上がらせ花陽と凛の服についた汚れを払った。
「こんなに汚されて… 本当に災難だったね…」
穂乃果が汚れを払い終えると優しく2人に言った。
「あ、ありがとうにゃ…」
「あ、ありがとうございます…」
凛と花陽は穂乃果をポーッと見ながらお礼を言った。
汚れを払い終えると穂乃果はカバンを持ち凛と花陽に言った。
「もう、大丈夫だよ。 あの人たちは貴女たちにはもう2度と関わらないだろうし、しつこいようなら、先生に言えばいいよ。その時は私も力になるよ」
穂乃果は笑顔で凛と花陽にそう言うと、「またね」と2人に言い空き地を去っていった。
残された2人は穂乃果の後ろ姿をじっと見ていた。
ー凛 花陽 sideー
(穂乃果先輩、ポケモンバトルとても強かったな… それに私たちのポケモンを取り返してくれた。 すごくカッコよかったな…)
(穂乃果先輩ってとても優しい人にゃ! なんだかとても頼り甲斐のある人だにゃ〜!)
穂乃果が去った後、凛と花陽は一緒に帰り道を歩きながらそれぞれさっきの事を考えていた。
2人は助けてもらったことで穂乃果にかなり好感を持ったようだ。
((また、穂乃果先輩に会いたいな…))
そして、この言葉が自然に頭に浮かんだ。
ー凛 花陽 side endー
一方、穂乃果は帰り道を歩きながらさっきの空き地にいた荒川と岩尾たちのことを考えていた。
「……」
穂乃果はあんな人たちは音ノ木坂学園にいたことすらあの時初めて知った。
いろいろ引っかかる点はあるが一番気になるのはあの黒い制服だ。
(あの黒い制服… あれは音ノ木坂学園の制服だけど本当に音ノ木坂学園の生徒なのかな… でも2年生にはあんな人たちはいないし… 1年生だとは思えない… となると3年生かな…)
穂乃果はあの人たちは1番生徒の人数が多い3年生だと推測した。
(となると、明日、希先輩に聞いてみようかな、生徒会役員だからあの人たちのことも知ってるかもしれないし…)
考えが纏まるといつの間にか自分の家に着いていた。
家の扉を開け、ただいまーと明るい声で言い穂乃果は家に上がった。
ー? sideー
ガターン!!!!
「何? 収穫なし? ふざけるな!」
ここは、音ノ木坂学園の近くにある誰も住んでいない古い空き家、そこには十数人の男女がいた。全員が音ノ木坂学園のデザインの黒い制服を着ている。そこで今、その中の1人の男子生徒の怒鳴り声とイスを蹴り倒す大きな音がその空き家に響いた。
怒鳴り声をあげた男子生徒はギロリとある人物たちを睨みつける。
睨みつけられた人物たちは蛇に睨まれたカエルのように首を縮ませ震え上がっていた。
その震え上がっている人物たちはさっき凛と花陽からポケモンを奪おうとして穂乃果に返り討ちあった荒川たちだ。
荒川は男子生徒の声に震ながら返す。
「と、途中までは上手くいってたんだよ! でも、なんだがわからないけどすごく強い奴がやってきてさ…」
「私たちとポケモンバトルで私たちに勝っちゃって追い払われたのよ!」
荒川と岩尾が男子生徒に言った。
本当は自分たちが圧倒的有利な条件でのポケモンバトルだったのだがそれを言う勇気は荒川たちにはなく事実を少し捻じ曲げて伝えた。
しかし、男子生徒は大声で怒鳴る。
「でも、結局そいつに負けてポケモンは奪えなかったんだろう⁉︎ それなら意味ねえんだよ!」
「で、でも… 弱いポケモンだったから…」
「ふざけんじゃねぇ‼︎」
「ひっ……!」
言い訳ばかりする荒川たちに怒鳴り声をあげた男子生徒が殴りかかろうとすると、
「まあまあ… どっちも落ち着いてよ…」
1人の女子生徒が間に入って争いを止めた。
女子生徒は長い髪を揺らしながら、荒川に殴りかかろうとした男子生徒の方を向いた。
「小宮くん、荒川たちに暴力を振るったところで何も解決しないよ?」
「み、宮下さん… で、でも…」
「あたしに文句があるの?」
「い、いえ… すみません…」
小宮と呼ばれた男子生徒は言い争いを止めた宮下と言う女子生徒に違憲しようとしたが、宮下が有無を言わさない迫力を出しながら小宮に言うので小宮は細い目を大きくしてすごすごと引き下がった。
宮下はどうやらここにいる奴らのリーダーのようだ。
宮下は今度は荒川たちの方を見た。
そして、宮下は空き家でのことを荒川たちに聞いた。
「ねえ、アンタたちってその空き家に駆けつけた女子生徒に負けてポケモン奪えなかったんでしょ?」
「え? う、うん…」
宮下が聞くと荒川が頷く。
「ふーん… どんな子だった?」
宮下はさらにそれについて聞く。
荒川は頑張って思い出しながら宮下に穂乃果の特徴を伝える。
「え、えーと… 髪型はオレンジ色のサイドテールで、青色の大きな目をしていて… それから… 音ノ木坂学園の制服を着ていたからうちの学校の生徒で… あ、あと、リボンの色から2年生だと思うよ!」
荒川は思い出させるだけ思い出し、宮下に穂乃果の特徴を教える。
宮下は「なるほど」と呟いた。
荒川たちは宮下が何故今更になって穂乃果の特徴を聞いたのか分からなかったが、自分たちのことが有耶無耶になったため何も言わなかった。
荒川たちのことを気にせずに宮下は荒川たちが言った、女子生徒のことを考えていた。
(その子、もしかしたら岩川くんとポケモンバトルした子かな…)
宮下は荒川たちから聞いた特徴の条件がその女子生徒にピッタリあてはまっている事に気付いた。
宮下は岩川と穂乃果のポケモンバトルを見ていたのだ。
荒川たちが、その女子生徒の正体が穂乃果に気づかなかったのはその日も他の人たちから今日のようにポケモンを奪いに行っており、2人のポケモンバトルを見ていなかったからである。
そのため自分達に勝利した女子生徒が誰かわからずに他の人と話し合っているが、女子生徒の正体が穂乃果だと気づいた宮下は違った。
(なるほど… どうやらあの子の強さは見た通りかなりのものみたいね… 気に入ったわ… 次は自分の目で確かめてみましょう…)
どうやら宮下はバトルの強い穂乃果のことが気に入ったようだ。
宮下は心の底でそう小さく呟くとまるで子供が『明日が楽しみだ』と親に言うような顔で笑った。
笑顔を1人で浮かべる宮下、彼女たちの存在こそが音ノ木坂学園が廃校になった原因の一つでもある。
しかし、それは一部の人間しかまだ知らない。
やっかいな相手に気に入られた穂乃果、あの空き家での出来事が今回の彼女の受難の始まりだった。
そして、その受難はすぐ近くに近づいていた。
ご指摘、感想を良かったらお願いします。
次回も読んでくれると嬉しいです。