ポケットモンスターミューズ   作:sunlight

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この小説はオリジナル設定です。
今回は視点がかなり変わります。


事後処理

ー希 sideー

あの事件の翌日、ウチがいつものように学校に登校すると生徒たちがザワザワ騒いでいた。

ウチは疑問に思って近くにいた男子生徒に理由を聞く。

「あの、何かあったん?」

希が聞くと男子生徒は答えた。

「ああ、なんか俺もよく知らないけど、昨日、校舎裏で大暴れした生徒がいてその人に怪我を負わされた人たちが『そんな奴学園から追い出せ!』って、今、職員室で先生たちに言ってるんだって」

ウチはそれを聞いた時、職員室でそんな事を先生たちに話している人物たちが誰なのかすぐに分かった。

 

(アカン! このままやとウチを守ってくれた穂乃果ちゃんが犯人にされてまう! そんなことは絶対にウチがさせん!)

 

気がつけばウチは職員室へ向けて駆け出していた。

 

ー希 side endー

 

 

 

 

 

ー職員室ー

その頃の職員室では穂乃果がたくさんの先生たちに囲まれていた。海未、ことり、真姫も一緒だ。

朝、穂乃果たちが学校に登校するといきなりたくさんの教師たちが穂乃果を取り囲み強引に職員室に連れてきたのだ。

穂乃果が強引に職員室に連れて行かれたのを見て海未たちは心配でついてきたのだ。

今は怪我を負わされた被害者たちが自分たちに穂乃果がどんな仕打ちをしたか教師どもに説明しているところだ。

「以上のことがあったんです! 高坂の奴は俺たちに暴力を振るったんです! あの校舎裏の壊れたブロック塀や折れた木が証拠です!」

大きな声で自分の主張を言い被害者を演じている人物は当然岩川大輔だ。

その横には昨日、穂乃果たちを校舎裏で犯そうとして逆に穂乃果にボコボコにされ返り討ちにあったストロングウォーリアーズの4人もいた。

4人とも怪我を主張するようにわざとらしく絆創膏や包帯を見える位置にしていた。

穂乃果はそんな4人を見て怒りを通り越して逆に呆れていた。

(サイコキネシスで投げ飛ばしたくらいで怪我なんてするわけないでしょ… ゴミ箱の中から出てきたときみんな無傷だったじゃん… あったとしてもちょっと擦りむいたぐらいだろうに…)

穂乃果は岩川たちを見てそんな事を考えていると岩川は何も言わない穂乃果を見て調子に乗ったのかさらに続けた。

「それに、その後、俺たちのポケモンにも乱暴をしたんです! ポケモンたちはみんな酷い目にあわされたっていって泣いていましたよ…」

岩川がそう言うと岩川の後ろにいたストロングウォーリアーズの男子生徒は無念そうに俯き、女子生徒は泣き出していた。

泣き出した女子生徒を教師たちが支えて、教師たちは敵意のこもった目で穂乃果を睨みつける。

(分かりやすい嘘泣き… 騙される方もどうかと思うけど…)

しかし、穂乃果は全く気にしておらず『証拠品をどのタイミングで見せようかな』などと余裕の表情だった。

その時、

 

 

 

バンッ!!!!

 

 

 

突然、職員室の机を叩く音が聞こえみんなびっくりする。

叩いたのは海未、ことり、真姫の3人だ。

「穂乃果はそんな事をするような人ではありません!」

「そうだよ! ポケモンに暴力を振るったりなんて穂乃果ちゃんなそんな事は絶対にしない!」

「それに、穂乃果先輩がやったという証拠もないはずよ?」

海未とことりは穂乃果にかかっている容疑を完全否定し、真姫は一応中立の意見を言っているようだが内容はどう考えても穂乃果の味方だ。

「なにいってるんだ! 高坂が俺たちに暴力を振るった証拠はあの荒れた校舎裏のことだとさっきから言っているだろ!」

真姫にストロングウォーリアーズの男子生徒が言い返すと真姫は冷静な目で男子生徒を見返した。

「それなら、あなたたち以外に誰かその光景を見た人はいるの?」

真姫が岩川に聞くと岩川は「う…」と押し黙った。

「それならあなた達の証言が嘘だと言うこともあるわね…」

真姫がそう言うと海未とことりもそれに便乗し始めた。

「そうですよ! あなた達の嘘だと言う可能性もあるじゃないですか!」

「岩川くんにいたってはその動機もあるしね!」

「なんだと! 俺の言うことが信用出来ないのか!」

海未とことりの言葉に岩川も言い返しとうとう言い争いになってしまった。

海未たちも岩川たちも今にも掴みかかろうとしている。

穂乃果はそれを冷静な目で見ていた。

 

 

(そろそろ、証拠品を提出するかな…)

 

 

そう思うと、ゆっくりと立ち上がった。

 

 

そして全員を見渡しこう言った。

 

 

「皆さん、岩川たちに騙されていますよ」

 

 

 

ー廊下ー

 

ー希 sideー

 

 

ダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッ………!

 

 

ウチは今、職員室に向けて廊下を走っていた。

副生徒会長が廊下を走るなんてあってはならないことだろうがそんな事を言っている場合ではない。

「人通りが少なくて良かった。 この先の廊下の曲がったところが職員室や…!」

ウチは脇目も振らずに職員室へ通じる曲がり角を曲がろうとした。

すると……

 

 

「えっ⁉︎」

「あっ⁉︎」

 

 

キキーーーッ!!!!

 

 

ドッシーーーーン!!!!

 

 

ウチは曲がり角から出てきた人にぶつかってしまった。

その人に慌てて謝ろうとすると、

「イタタ… なにしてるのよ…? 希…」

聞き覚えのある声にウチが顔を上げるとそこには、

「イタタタタ… え? 絵里ち?」

そう、音ノ木坂学園の生徒会長でありウチの親友である綾瀬絵里がいたのだ。

「ご、ごめん… 絵里ち…」

「あ、私の方こそ…」

慌ててウチが謝ると絵里ちも謝り返す。

でも、こんな事をしている場合ではない。一刻も早く穂乃果ちゃんのところに行って誤解を解かないと!

「ねえ? 何をそんなに急いでいるの?」

ウチがそんな事を考えていると、絵里ちが首を傾げて聞いてきた。

確かにぶつかるほどのスピードで廊下を慌てて走ってきた人にどうしてそこまで急いでいるのか理由を聞きたくなる気持ちは分かる。

でも、今はそんな暇はない。

「悪いけど、ウチは今は急いでいるんや! 話はまた後でな!」

ウチが再び走りだそうとすると絵里ちがウチに聞いてきた。

「もしかして、高坂さんの事?」

「⁉︎」

ウチはその言葉に体がビクッと反応した。絵里ちは正解だと思ったのか続ける。

「あの子なら、今、職員室ですごく問い詰められていたわよ、あの子が何かやらかしたの?」

「そんな訳ないやろ…」

絵里ちがウチにそう言うとウチは少しムッとしながら返した。

絵里ちはウチに続ける。

「あの子の肩を持つの? まぁ、貴女はあの子に最初から随分と好印象を持ってたようだったからね、でも、職員室であんな風に問い詰められているって事は余程の規則破りな事をしたのね」

「……」

絵里ちは穂乃果ちゃんを貶すような言葉を次々にウチに言った。いくら親友と言えどもウチの事を体を張って守ってくれて、ウチを受け入れてくれた穂乃果ちゃんの事をそんな風に言われるのは酷く気分が悪い。

何も言わないウチを見て絵里ちはさらに声を高めて言った。

「まぁ、希もあんな子とはもう関わらない事をお勧めするわ、規則破りな常識のない子と一緒にいたら貴女の印象も悪くなるからね〜」

「……!」

 

 

ブチッ!!!!

 

 

そこまで聞いてウチの中の何かが切れた。

 

 

「それに… 「いい加減にしいや‼︎」……⁉︎」

ウチは絵里ちに思いっきり怒鳴った。

「の、希…?」

ウチが急に怒鳴ったことに驚き目を見開いた。

幸い人通りが少なくて騒ぎにはならなかったがウチは我慢の限界だった。

ウチは絵里ちをキッと睨みつけた。

「穂乃果ちゃんの事を何も知らんくせして何でそんな事を言うんや! 穂乃果ちゃんが悪い事をした? 冗談じゃない! それどころか穂乃果ちゃんはウチの恩人や!」

「ち、ちょっと…」

普段あまり声を荒ないウチに絵里ちはオロオロし始めた。でも、ウチはそれを気に留めずに続ける。

「穂乃果ちゃんが悪いって何を根拠に言うんや! 言うてみい!」

次々と捲したてるウチに絵里ちは言葉が出ないようだ。ウチは絵里ちを睨みつけながら言った。

「もういい! 絵里ちなんて知らん!」

ウチはそう言うと絵里ちを押しのけて穂乃果ちゃんのいる職員室に絵里ちを振り向かず向かった。

 

 

だからこそ気づかなかった。

 

 

ウチを絵里ちが呆然とした表情で見ていたことに…

 

ー希 side endー

 

 

ー職員室ー

「は⁉︎ 騙されているだって⁉︎ まだ、そんな嘘を言うのか!」

「そうだ! そうだ!」

その頃、職員室では穂乃果の言葉に岩川たちを信じていた教師が穂乃果に掴みかかったところだった。

岩川たちもそれに便乗している。

海未たちがその教師をとめたおかげで大事にはならなかったが、穂乃果は涼しい顔で続ける。

「まあ、これを見てください」

穂乃果はそう言うとポケットから昨日の証拠品である携帯電話を取り出した。

「あ、私の携帯電話!」

持ち主である女子生徒が声をあげる。穂乃果は女子生徒を無視して続ける。

「実は、校舎裏があんなことになったのはこれが原因なんです」

穂乃果はそう言うと携帯電話を動画モードにし、昨日の動画を再生させた。

そこには岩川たちが副生徒会長を犯そうとしているところがバッチリ映ってた。

「こ、こんな…」

「う、嘘…」

「マ、マジかよ…」

岩川たちを信じていた教師たちは目を見開いて驚き、海未、ことり、真姫は岩川たちを射殺さんとばかりに睨みつけた。

さっきまで余裕ぶっていた岩川たちは顔が真っ青になった。

穂乃果はそんな岩川たちを横目で見て気づかれないようにニヤリと笑い続けた。

「実は、昨日、校舎裏で岩川くんたちに副生徒会長が犯されそうになりましてね、私は慌ててそれを止めようとしたんです、それで弾みで校舎裏のブロック塀を破壊してしまったり、木を折ってしまったりしたんです」

穂乃果が教師たちの方を見ながら言った。

穂乃果は続けた。

「ちなみにこの携帯電話はさっきの通りあの女子生徒のものです。私の携帯電話ではありません。この映像は岩川くんたちが副生徒会長を犯そうとしていた時にこの携帯電話の持ち主であるあの女子生徒が撮影したものです。おそらく、犯した後、これをネタに副生徒会長を言いなりにするつもりだったんでしょう」

穂乃果はそう言うと今度は岩川たちを見た。

「まあ、返ってそれが証拠品になった訳だけどね」

穂乃果の言葉に岩川たちは目を伏せた。

教師たちは岩川たちに「今の話は本当か?」と聞いている。

ストロングウォーリアーズは観念したようだが、1人だけ違った。

 

 

「ちょっと待ってください!」

 

 

迷惑な大声でその場の空気を壊したのは、そう、岩川だ。

もう証拠品があるのに岩川は何を言うのかと、穂乃果たちは思った。

しかし、次の瞬間、岩川は信じられない事を言った。

 

 

「俺たちを誘ったのはあの副生徒会長の方からです!」

 

 

「「「「「⁉︎」」」」」

 

 

岩川の言葉に穂乃果たちや教師たち、さらにはストロングウォーリアーズの4人も驚いたようだ。

岩川はさらに声を荒げて続けた。

「昨日、校舎裏にあの副生徒会長が俺たちを呼び出して誘惑したんですよ! そしてわざと俺たちに犯されようとしたんです! 多分、その事をネタにして俺たちを揺するきだったんですよ!」

全てを知っている穂乃果は苦し紛れの言い訳だな、と思ったが、周りは余りの

急展開に頭の理解が追いついていないようだ。

岩川はさらに副生徒会長が悪いと言い始めた。

穂乃果が問い詰める言葉を変えて岩川が言い逃れできないようにしようとしたがその必要はなかった。

 

 

ガラッ!!!!

 

 

「ちょっと待ったぁ!」

 

 

突然、職員室のドアが勢いよく開いて大声が職員室に響き渡った。

全員が大声の主の方を見た。

「ふ、副生徒会長?」

大声の主は副生徒会長こと希だった。

希はドアから手を放し腕組みをして金剛力士像のような威圧感のまま岩川に近づいた。

「出鱈目を言うな! 穂乃果ちゃんを昨日、校舎裏に呼び出したのはウチや!

校舎裏があんな事になったんは、アンタがポケモンバトルで穂乃果ちゃんに負けた腹いせに穂乃果ちゃんを襲って、穂乃果ちゃんが自分の身を守るために抵抗したからやろ! その後、ウチを犯そうとして、穂乃果ちゃんはウチを助けるためにアンタたちと戦ったんや! 暴力を振るったなんて片腹いたいわ!」

希はいつものゆったりした静かな声からかけ離れた大声の早口で捲したて、岩川たちの前に立った。

 

 

「そしてこれも嘘やろ!」

 

ビリッ!!!!

 

 

 

希はそう言うと絆創膏や包帯を思いっきり剥がした。

 

 

 

全員がさすがにやり過ぎと思い怪我を見るが、包帯や絆創膏がされていた箇所には怪我どころか擦り傷一つなかった。

またまたみんなが目を見開いた。

希は岩川たちを鋭い目で睨みつけて続けた。

「校舎裏が滅茶苦茶になった事は次の日になったらすぐにバレる。そしたらウチらの口から自分たちのしたことがバレる。せやかららアンタらは昨日、穂乃果ちゃんを襲おうとして返り討ちにあった仕返しに校舎裏の事件の犯人は穂乃果ちゃんで自分たちは被害者だと言うことにしようとしたんやろ!」

希は岩川たちに指を突きつけて言った。

「「「「「………」」」」」

岩川とストロングウォーリアーズはもう言い逃れはできなかった。

追い討ちをかけるかのように希は続けた。

「ウチの予想やけど、アンタらは穂乃果ちゃんがその後、自分たちのポケモンに暴力を振るったなんて言ったんやないか? 自分たちのポケモンたちにも暴力を振るっていたのはあんたらやろ! そして、アンタらが気絶していた時に穂乃果ちゃんがそのポケモンたちを介抱したんや」

「「「「「………」」」」」

全員が岩川たちを侮蔑の目で見ていた。

そして、希は自分の近くにいたストロングウォーリアーズのポケットからモンスターボールを1つひったくり投げた。

『ブネーク!』

モンスターボールからはハブネークが出てきた。

希はハブネークに暴力を振るったのは穂乃果かと聞いたがハブネークは首を横に振り違うと言い、岩川たちの方を尻尾で指差した。

全員がこれで確信した。

さっきの岩川たちの証言は全部嘘だったのだ。

何も言えなくなった岩川たちに1人の教師が低い声で岩川たちに言った。

「君たちは許されない事をしたね、高坂さんのおかげで未遂に終わったが一歩間違えれば取り返しのつかないことになっていた。親御さんに連絡をして君たちには厳重に処罰を下すぞ」

ストロングウォーリアーズはそれを聞いてその場にへたり込んだ。岩川は小さな声で「違う、悪いのは高坂だ」と言っていたがオオカミ少年状態になった岩川の言葉を今更、誰が信じるでしょう、そして、教師たちは全員、疑ったことを穂乃果に謝り岩川とストロングウォーリアーズの4人を引きずるように職員室から連れて行った。

行き先はおそらく生徒指導室だろう…

 

 

 

そして、次の日から、岩川たちが音ノ木坂学園に登校する事はなかった…

 

 

 

 

 

岩川たちが連れていかれた後、今日は臨時休校と言うことになった。

それもそうだ、犯罪紛いなことが起きたのだから、

生徒たちは大喜びで帰っていった。

穂乃果もいつも通りに海未たちと一緒に帰ろうとして校門に来ると、

「穂乃果ちゃん!」

穂乃果を呼ぶ声が後ろから聞こえた。

穂乃果が振り向くとそこには希が笑顔で立っていた。

「穂乃果ちゃん、ウチと一緒に帰らへん?」

希はそう言うと穂乃果の腕に自分の腕を絡めた。

そして、海未たちの方を見てニヤリとしてやったりと言うような笑みを浮かべた。

「「「⁉︎」」」

海未、ことり、真姫の3人は希の笑みを見てそれがどう言う意味なのかに気づいた。

その時、周りの温度が一気に下がった。

「ちょっと、副生徒会長が穂乃果に何の用ですか?」

「穂乃果ちゃんは私たちと一緒に帰るんですよ〜」

「穂乃果先輩は私のものよ、部外者は引っ込んでてよ」

3人が希の腕から穂乃果を引き離し希を睨みつける。

「なんや? 穂乃果ちゃんとウチは帰っちゃダメなんか?」

希も一歩も引かず笑顔だが威圧感のある笑顔で海未たちを睨み返す。

「ダメに決まってるでしょう、穂乃果は私のものですから」

海未が穂乃果を抱き寄せてそう言うと、それに今度はことりが反応する。

「はあ⁉︎ 海未ちゃん、頭おかしいの? 穂乃果ちゃんはことりのものなんだよ!」

それを聞いては真姫も黙ってない。

「まだ、貴女たちはそんな事をいっているのかしら? 穂乃果先輩は私の事を愛しているのよ?」

「はあ⁉︎ ふざけた事を言わないでください!」

「そうだよ! 貴女なんかを穂乃果ちゃんが好きになる訳がないじゃん!」

「なんですって⁉︎」

そう言うと3人は激しくにらみ合った。

穂乃果が慌ててとめに入ろうとすると

 

 

グイッ

 

 

誰かが穂乃果の腕を引いて抱き寄せた。

穂乃果が自分の腕を引いた人物をみると

「フフフ…」

そこには優しい笑顔を浮かべた希がいた。

穂乃果はそれを見てあっと声を上げた。

「そうだ。希先輩、今日はありがとうございました! 職員室で私を庇ってくれて、とても心強かったですし、あの時の希先輩は凄く格好良かったです! とても心強かったです!」

穂乃果は太陽のような眩しい笑顔でお礼の言葉を希に言った。

「っ‼︎」

希はその穂乃果の笑顔に顔を赤らめた、そして、自分も穂乃果に笑顔を返す。

希の照れたような笑顔を見て穂乃果は希に微笑んだ。

そして、

「希先輩の笑顔ってとても可愛いですね!」

 

 

ズギューーーン!!!!

 

 

穂乃果にしてはなんてことない言葉だったのだが、いつもは飄々としているが実はピュアな希にしては破壊力抜群だったらしい。

希はその言葉に顔が熱くなり穂乃果に顔を見られないように顔を伏せる。

しかし、今、自分は穂乃果を抱き寄せている状態、そして、自分は穂乃果の身長より少し高いつまり今、自分の顔の下には穂乃果の顔がある。

「⁉︎」

希がそのことに気づいたのは顔を伏せた時、目の前には不思議そうな顔をした穂乃果の顔があった。

そして、今、自分は至近距離で穂乃果と見つめあっている状態だ。

さらに、自分の目の前には穂乃果の柔らかそうな唇があった。

「……」

そして、自分は吸い寄せられるようにその唇に…

 

 

 

 

 

「キリキザン! メタルクロー!」

『ギザッ!』

 

 

 

ドスッ!

 

 

 

「うわっ⁉︎」

「きゃっ⁉︎」

 

 

 

 

希の唇が穂乃果の唇に近づいた時、いきなりキリキザンが2人の間にメタルクローを放ったのだ。

2人はなんとかそれを避けたおかげで幸い怪我はなかった。

2人は慌ててキリキザンのトレーナーを探した。

「ハァ… ハァ…」

そこには、キリキザンのトレーナーであろう海未が荒い息遣いで希を射殺さんとばかりに睨みつけていた。

さらに、希は周りからも殺気が出ていることに気づいた。

「何してるんですか〜 副生徒会長〜?」

「私の穂乃果先輩の唇を奪おうとした… 許せない…」

希が辺りを見渡すとことりと真姫がモンスターボールを構えて希を取り囲んでいた。

ことりは笑顔だが殺気が笑顔からダダ漏れになっていた。

真姫はハイライトオフの瞳で希を見据えて後ろに黒いオーラを纏っていた。

「もう、これは許せないなぁ〜 いけ! チラチーノ!」

『チラー』

「絶対に許せない… いけ、 ブースター」

『ブスター!』

ことりはチラチーノを真姫はブースターを繰り出した。

3人はポケモンを繰り出し、希を取り囲む。

「ハ… ハハハ…」

自分の置かれている状況に気づいた希は乾いた笑いを浮かべた。

 

 

 

 

「キリキザン! メタルクロー!」

「チラチーノ! スピードスター!」

「ブースター! 大文字!」

 

 

 

 

『ギザッ!』

『チラー!』

『ブスター!』

 

 

 

 

 

海未、ことり、真姫の指示を受けてキリキザンたちが希に一斉に攻撃を放った。

希は痛みを覚悟して目を瞑った。

 

 

 

 

「メタグロス! まもる」

 

 

『メター!』

 

 

 

 

ドガーン!!!!

 

 

 

 

 

希はいつまでたっても痛みがこないので目をおそるおそる開けた。

そこにはあの時と同様に穂乃果がメタグロスを出してまもるで自分を守ってくれたのだ。

 

 

 

「はぁ… 仕方ないなぁ… それにしても何で海未ちゃんたちは私のことになるとこんなになるんだろう?」

 

 

 

海未たちがなぜ怒っている原因が自分だと気づかない鈍感はため息をつきながら、メタグロスに希を守っておくように指示を出し、海未たちを宥めに行った。

海未たちは納得はいってなかったようだが穂乃果が希との事を説明すると「またか…」とため息をついた。

怒ったり、ため息を吐いたりの海未たちに穂乃果はクエスチョンマークを頭に浮かべた。

希も海未たちと同様にため息が出た。

そして、心の中で小さく呟いた。

(ハァ… 競争率は高いけど、これじゃあ前途多難やな…)

 

「何でみんな私を見てため息ついてるんだろう…?」

そんな中、穂乃果はみんなを不思議そうな顔で見ていた。

 

 

 

みんなからの好意に気づかない鈍感はこれからも色々な人間のハートを無意識に掴んでいく、そして、修羅場はどんどん大きくなっていく

 

しかし、それに気づいた人間はこの場には誰もいなかった。

 

 




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