ポケットモンスターミューズ   作:sunlight

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この小説はオリジナル展開です。
今回はフルボッコ要素があります。
穂乃果が少し怖いですのでご注意を…


イジメという名のポケモンバトル

穂乃果の言葉に岩川たちは驚いた顔になった。

自分からイジメて欲しいなんて言うとは思わなかったからだ。

でも、穂乃果の瞳からの冷気に岩川たちはビビるばかりだ。

「な、何だよ… そんなにイジメて欲しいならイジメてやるよ!」

穂乃果の絶対零度の瞳を受けて岩川たちは声が出なかったが、何とか岩川が震える声で穂乃果に言い返した。

言い返したものの岩川はかなりビビっていた。

なぜなら、今の自分たちを睨みつける穂乃果の瞳は、あの時、教室で自分に向けられたものとは全く違うものだったからだ。

睨みつけられているだけで自分は恐怖で動けなくなってしまう。

今の穂乃果の瞳はあの時より冷たく、睨んだだけで相手を凍らせるような瞳になっていた。

そして、そう思っていたのは岩川の隣にいたこの4人も同じだった。

 

 

 

 

「「「「………」」」」

ストロングウォーリアーズの4人も岩川と同様に穂乃果にかなりビビっていた。

正直、4人とも穂乃果のことを舐めていたからだ。

しかし、岩川にポケモンバトルで勝ったのと今の素早い技の指示、それに自分たちを睨みつけるあの瞳により最初の余裕はもうどこかに吹き飛んでしまっていた。

 

 

 

 

ビビって攻撃してこない岩川たちを見て穂乃果はニヤリと笑い挑発するように言った。

「どうしたの? 早く私をいじめてみなよ… それとも出来ない? 腰抜けめ…」

その言葉に単純な岩川たちはカチンと来たらしくすぐに穂乃果に怒鳴り返す。

「んだと‼︎ てめぇ! 俺たちを舐めんじゃねぇぞ! コラァ‼︎」

「もう泣いて謝っても許さないわよ!」

「徹底的に叩きのめす‼︎」

穂乃果の挑発に簡単に乗ってしまった岩川たちは戦闘態勢をとる。

そんな岩川たちに穂乃果はふふっと軽く笑い小さな声で呟いた。

「徹底的に叩きのめされるのは貴方たちだよ……!」

穂乃果はそう呟くとメタグロスとゲッコウガを見た。

「愚か者供に本当のイジメを教えてあげて… ファイトだよ、ゲッコウガ、メタグロス!」

『メター‼︎』

『コウガ!』

メタグロスたちは岩川たちを鋭い目で睨みつけている。

それもそうだ、自分たちの大事な主人をこいつらに犯されそうになったのだから。

穂乃果はメタグロスとゲッコウガを見た後、今度は希の方を見た。

「希先輩、危ないので私の後ろに絶対にいてください」

「は、はい…」

希は思わず敬語になってしまった。

なにしろあの冷たい瞳でそう言われたのだから、

穂乃果は希にそういった後再びメタグロスたちを見た。

(メタグロスたちも本気だね。私ももう我慢出来ないからね… やるからには徹底的に叩きのめすよ…)

穂乃果はそう心の底で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果がそんなことを考えている間にストロングウォーリアーズの4人はモンスターボールを構えた。

「いけ! アリアドス!」

「頼んだぞ! デンチュラ!」

「いくのよ! レパルダス!」

「それいけ! ペンドラー!」

『アリ!』

『チュラッ‼︎』

『ニャプ!』

『ドラー!』

4人は一斉にボールを投げポケモンを繰り出した。

繰り出したのはアリアドス、レパルダス、デンチュラ、ペンドラーの4体だ。

「頼みますよ!」

ポケモンが全て倒された岩川はストロングウォーリアーズの4人の後ろに隠れた。

そして、ポケモンバトルという名のイジメというものが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ペンドラー! ゲッコウガにメガホーン!」

「アリアドス! お前はメタグロスにミサイルばり!」

「レパルダス! メタグロスにつじぎり!」

「デンチュラ! ゲッコウガにエレキボール!」

『ドラ!』

『アリ!』

『ニャプー!』

『チャラ!』

4人がそれぞれのポケモンに技を指示し、技がゲッコウガとメタグロスに飛んでくる。

「メタグロスはまもる、ゲッコウガはメタグロスの後ろに隠れて!」

『コウガ!』

『メター!』

 

 

 

 

ドガーン!!!!

 

 

 

 

 

ストロングウォーリアーズの4人の攻撃をまもるでメタグロスが防ぎ、さらにゲッコウガがメタグロスの後ろに隠れることで二体ともノーダメージですんだ。

「今度はこっちの番! メタグロス! アリアドスにサイコショック!」

『メター!』

穂乃果の指示を受けメタグロスがアリアドスにサイコキネシスを放つ。アリアドスにとって効果抜群の技のためアリアドスは吹き飛ぶ。

「ゲッコウガ! 追撃だよ! 飛んでいったアリアドスに冷凍ビーム!」

『コウガ!』

メタグロスのサイコショックにより吹き飛ばされたアリアドスにゲッコウガが追撃の冷凍ビームを放つ。効果は普通だが吹っ飛ばされたことにより防御が出来ずアリアドスは大ダメージを負い、さらに吹き飛ばされた先にはブロック塀がありアリアドスはそこに頭から突っ込んだ。

 

 

 

ドガーン!!!!

 

 

 

ブロック塀にアリアドスが突っ込んだことで派手な音を立てながら石埃が巻き上がる。煙が晴れるとそこにはブロック塀に頭から突っ込んだまま目を回しているアリアドスの姿があった。

「ア、アリアドス!」

アリアドスのトレーナーである男子生徒が悲痛な声をあげる。しかし、いくら呼びかけてもアリアドスは動かなかった。

「そんな…」

アリアドスのトレーナーが呆然としている。

「そんな… 一瞬で…」

「あり得ない…」

「嘘…」

他の3人も呆然としていた。

そのせいで自分たちのポケモンたちのことを見ていなかった。

『ニャプ……!』

『チャラー!』

『ペンドラー!』

「「「‼︎」」」

ポケモンたちの悲鳴が聞こえて我にかえった3人が自分たちのポケモンを見ると、

「メタグロスは破壊光線! ゲッコウガはハイドロポンプでとどめ!」

『メッ…ター!』

『コウガ!』

 

 

 

 

ズドドドドドドドド!!!!

 

 

 

ドガーーーーーン!!!!

 

 

 

 

 

シューー………

 

 

 

 

 

 

メタグロスとゲッコウガにより3人のポケモンであるデンチュラ、レパルダス、ペンドラーの3体が目を回して地面に倒れていた。

「「「………」」」

3人は言葉が出なかった。決して彼らのポケモンたちが弱いわけではない。ただ穂乃果のポケモンたちが強すぎるのだ。おまけにメタグロスたちはノーダメージで自分たちのポケモンを一掃した。

穂乃果は戦闘不能になった4体を一瞥し4人に再び視線を向けた。

「これで終わり? 話にならないんだけど…」

眉毛をあげて冷笑する穂乃果に4人はカチンときたのかまた簡単に挑発に乗ってしまった。

「そんなわけねーだろ! 今のはちょっと油断しただけだ! いけ! ハブネーク!」

「そうだぜ! いけ! ペラップ!」

「頼むわよ! エアームド!」

「いくのよ! パンプジン!」

『ブネーク…』

『ラップ!』

『アームド!』

『プジン…』

ストロングウォーリアーズの4人は新たに4体のポケモンを繰り出した。

次に繰り出したポケモンはハブネーク、ペラップ、エアームド、パンプジンの4体だ。

「ふーん… やっぱり簡単には折れてくれないか… まあいいや… その方が潰し甲斐があるからね…」

穂乃果は自分にしか聞こえない小さな声で呟くとメタグロスたちを見た。

「よし、行くよ! メタグロス、ゲッコウガ!」

『メター!』

『コウガ!』

穂乃果の呼びかけにメタグロスとゲッコウガは威勢良く返事を返した。

そして、再びポケモンバトルが始まった。

 

 

 

 

 

 

「エアームド! エアスラッシュ!」

『エアー!』

「メタグロス! まもる! ゲッコウガは後ろに隠れて!」

『メター!』

『コウガ!』

 

 

 

 

 

 

 

ドガーン!!!!

 

 

 

 

 

 

 

エアームドの先制攻撃のエアスラッシュをさっきと同じ手を使い防いだメタグロスとゲッコウガ、しかし、これで終わりではなかった。

「2度も同じ手を食うか! 今だ! ペラップ! ハイパーボイス!」

「続くわよ! パンプジン! シャドーボール!」

『ラップー』

『プジン!』

その指示を聞いてメタグロスとゲッコウガにパンプジンはシャドーボールをペラップはハイパーボイスを放つ。

そう、エアームドのエアスラッシュはメタグロスにまもるを使わせるための囮だったのだ。まもるは相手の攻撃をノーダメージで防げる反面、使用した後はすぐには使えなくなるという欠点がある。ストロングウォーリアーズはエアームドのエアスラッシュでメタグロスにまもるを使わせその後に攻撃をするという作戦だったのだ。

((((いける‼︎))))

ストロングウォーリアーズの4人は作戦が上手くいったと思っていた、

しかし…

 

 

 

 

 

「そうくると思った…」

 

 

 

 

 

穂乃果は少しも慌てる素ぶりはなく口元をつりあげた。

まるでそれを予測していたようだった。

そして…

 

 

 

「ゲッコウガ! ハイパーボイスが放たれる前にペラップの口に向けて冷凍ビーム!」

『ゲッコー!』

 

 

 

ジジジジジジジ………‼︎

 

 

 

 

『ペラ⁉︎』

「「「「えっ⁉︎」」」」

穂乃果の指示でペラップのハイパーボイスが放たれる直前にゲッコウガはペラップの口に向けて冷凍ビームを決めた。

効果抜群に加えて口だけではなく顔全体を凍らせたのでペラップはハイパーボイスのダメージを自分自身で負い、大ダメージを受けた。さらに顔全体を凍らせたのでペラップは息ができず混乱状態に陥ってしまった。

「まだまだ! メタグロス! コメットパンチでシャドーボールを弾き返して!」

『メター‼︎』

穂乃果の指示を受けメタグロスが飛んできたシャドーボールをコメットパンチで弾き返す。弾き返した先にはパンプジンがおりコメットパンチの威力も加わり自分で放った技だとはいえゴーストタイプのパンプジンは大ダメージを受けた。

『プジッ‼︎』

パンプジンがその攻撃を受けペラップの近くに落ちる。

「チャンスだよ! メタグロス、サイコショック!」

『メター!』

 

 

 

 

 

ドドドドドドドドドドドドドド!!!!

 

 

 

 

ズガーン!!!!

 

 

 

 

 

 

 

『ペラー!』

『プジー!』

メタグロスのサイコショックが動かないペラップとパンプジンに決まる。煙が晴れるとそこには目を回したペラップとパンプジンが倒れていた。

「ペラップ!」

「パンプジン!」

トレーナー2人がペラップたちに呼びかけるが起き上がることはなかった。

「く、くそ! エアームド! ゲッコウガにメタルクロー!」

『エアッ!』

「ゲッコウガ、影分身!」

『コウガ!』

 

 

 

シュシュシュシュシュシュシュシュ………

 

 

 

 

「う… どれが本物なんだ…?」

ゲッコウガの影分身によりたくさんの分身が現れた。トレーナーもエアームドもどれが本物だかわからない。

「仕方ない… エアームド! 片っ端から攻撃だ!」

『エアー!』

「ハブネーク! お前も片っ端からポイズンテール!」

『ネーク!』

本物を見つけるために片っ端から攻撃するハブネークとエアームド、徐々に分身が消えていき本物が割りだされていく、しかし、穂乃果は少しも慌てず、

「今だ! メタグロス! 破壊光線!」

『メター!』

穂乃果はチャンスだと思いメタグロスに破壊光線を指示した。そう、ゲッコウガ に影分身を指示したのは相手を分身に気をとらせておいて隙を作るためだったのだ。

「「しまった‼︎」」

 

 

 

 

ドドドドドドドドドドドドドド

 

 

 

 

 

 

ドガーーーーーン!!!!

 

 

 

 

 

 

 

『エアー!』

『ネーク!』

メタグロスの破壊光線を分身を消すのに夢中になっていたエアームドとハブネークは完全に不意を突かれて防御もなしにくらってしまった。

ハブネークは吹き飛ばされ校舎裏にある木に激突し、エアームドは咄嗟に飛んで避けようとしたがそれが上手くいかず破壊光線の攻撃で上空に舞い上がる。

空はエアームドのテリトリーだが攻撃のせいで上手く飛べずに真っ逆さまに地面に落ちていく。

「エアームド! 一旦、地面に落ちて体制を立て直せ!」

「そうはさせない! メタグロス! サイコショック! ゲッコウガは冷凍ビームでとどめ!」

『メッタ!』

『ゲッコ!』

 

 

 

 

 

ドガーン!!!!

 

 

 

 

 

『エアー!』

「エアームド!」

上手く飛べず逃げ場のない空中でメタグロスとゲッコウガの攻撃をノーガードで受けてしまいエアームドは地面に真っ逆さまに落ちていき翼がボロボロになった姿で目を回していた。

「そ、そんな…」

エアームドが戦闘不能になったのを確認し穂乃果は今度はハブネークの方を見た。

「しっかりしろ! ハブネーク!」

『ハ…ブネー…ク』

トレーナーの声を聞きフラフラになりながらも何とかハブネークは立ち上がる。しかし、もう限界だということは明らかだった。

しかし、トレーナーはハブネークが立ち上がると

「ハブネーク! ポイズンテールだ!」

『ブネー…ク』

ハブネークの状態を気にもとめずにポイズンテールを指示した。ハブネークはフラフラしながらぎこちない動きでポイズンテールをきめようとするが、

 

 

 

「ごめんね、ハブネーク… メタグロス、コメットパンチ、軽めでいいよ」

『メター』

 

 

 

ドガッ

 

 

 

 

『ブネ…』

 

 

 

バタン

 

 

 

 

それを穂乃果が見逃すわけもなくメタグロスにコメットパンチを指示した。しかし、軽めでいいとメタグロスに言ったのはおそらくハブネークに同情したのだろう。

「ハブネーク!」

トレーナーがハブネークに呼びかけるがハブネークはピクリとも動かなかった。

トレーナーは動かないハブネークを見ると舌打ちをした、

そして次の瞬間、信じられない行動をとった。

「この役立たずめ!」

 

 

 

ドガッ!

 

 

 

「っ‼︎」

 

 

 

 

 

なんとそのトレーナーは動かないハブネークを思いっきり頭から蹴ったのだ。

穂乃果は思わず目を見開いた、メタグロスとゲッコウガも同じだ。

そして、穂乃果があたりを見渡すとなんと他の3人もそれを見て戦闘不能になった自分たちのポケモンを罵声を浴びせながら殴る蹴るなどの暴力を振るっていた。闘っていなかった岩川までもだ。

今まで黙って見ていた希もさすがに我慢ならずに岩川とストロングウォーリアーズの4人に怒りの声を上げようとしたとき

 

 

 

 

 

 

「メタグロス! 破壊光線!」

『メター‼︎』

 

 

 

 

 

 

ドガーーーーーン!!!!

 

 

 

 

 

 

「「「「「うわぁっ!」」」」」

 

 

 

 

 

希は目を見開いた。なんと穂乃果のメタグロスがポケモンたちではなく岩川たちに向けて破壊光線を放ったのだ!

しかし、それを指示したのは間違いなく穂乃果だ。

メタグロスの放った破壊光線は岩川たちの近くをかするように通っていき、校舎裏の木に命中し木が木っ端微塵に砕け散った。

「な、なんてことをするんだ!」

「こっちのセリフだ!」

岩川が穂乃果に怒鳴ると穂乃果がいつもの明るい声からは信じられないような低い声で岩川たちに怒鳴りかえした。

穂乃果はさっきの氷のような冷たい瞳とは全く違う今度は火のような瞳で岩川たちを睨みつけ、今度はゲッコウガに技の指示をだす。

「ゲッコウガ! ハイドロポンプ!」

『コウガ!』

 

 

 

 

 

 

ドドドドドドドドドドドドドド!!!!

 

 

 

 

 

「「ヒイッ!」」

「「キャーッ‼︎」」

「逃げろー!」

 

 

 

 

 

ドガーン!!!!

 

 

 

 

 

 

ゲッコウガのハイドロポンプは破壊光線同様に岩川たちの近くを凄まじい威力で通っていった。

希が思わずメタグロスとゲッコウガを見ると2体とも親の仇をとるかのような目で岩川たちを睨みつけている。

穂乃果も同じような目で岩川たちを睨みつけていた。

誰の目からも穂乃果たちがすごく怒っているというのは分かる。

攻撃が当たらないように逃げ回る岩川たちに穂乃果は今度はメタグロスに指示をだす。

「メタグロス、サイコキネシスで動きを止めて」

『メター!』

 

 

 

 

 

ピンッ

 

 

 

 

 

 

「「「「「うわぁっ!!!」」」」」

 

 

 

 

 

メタグロスのサイコキネシスに寄り岩川たちは宙に浮かばされ身動きが取れなくなってしまった。

穂乃果がメタグロスとゲッコウガを後ろに従えて岩川たちに近づいてくる

岩川たちはもうちょっと恐怖で顔面蒼白になっていた。

「さて… 次はどうしようかな?」

穂乃果がニヤリと笑って岩川たちに言うと岩川とストロングウォーリアーズの男子生徒2人は首を激しく横に振り『やめてくれ!』と訴えており女子生徒はあまりの恐怖で泣き出していた。

しかし、メタグロスのサイコキネシスで自分たちは逃げることもできない。

「な、何でこんなこと…」

男子生徒が穂乃果に聞くと穂乃果は「はあ?」と返した。

「何って… さっきあなたたちが私たちにしたことをそのまま私はやっただけだよ?」

穂乃果がそう言うと岩川たちはなにも言えない。

なにも言えなくなった岩川たちを見て穂乃果はニヤリと笑い。

「さあ… もう逃げられないから安心して当てられるね〜…」

穂乃果はそう言うとゲッコウガとメタグロスは攻撃体制に入った。

「や、やめて! 助けて! お願いします!」

女子生徒が泣きながら穂乃果に言うが穂乃果は鋭い視線を女子生徒に向けた。

「よくもまあ、いけしゃあしゃあと『助けて』なんて言えますね、さっきあなたたちは希先輩が『やめて』と言っているのにやろうとしていたじゃないですか」

「そ、それは…」

穂乃果はそう言うと今度は全員を見渡した。

「それに、これはイジメだと言ったのはそっちでしょう、あんなに大勢でかかってきて…」

穂乃果の言葉の一つ一つにより岩川たちに弁解の余地はなくなっていった。

穂乃果は言い訳が思いつかず俯いた岩川たちを一瞥するとメタグロスとゲッコウガの方を見た。

そして、攻撃の指示を出した。

 

 

 

 

『メタグロス! 破壊光線! ゲッコウガ! ハイドロポンプ!」

『メター!』

『コウーガー!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「うワァァァァァァァァァァァァァ!!!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドガーーーーーーーーーン!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ー希sideー

凄まじい威力の攻撃が岩川たちに向けてとんだ。

ウチは岩川たちがどうなったかみると驚いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なーんちゃってね! ありがとう、メタグロス、ゲッコウガ」

『メターグロース♪』

『コウーガー♪』

そこにはさっきとはまったく違う、いつもの太陽のような眩しい笑顔でメタグロスとゲッコウガの頭を撫でている穂乃果ちゃんがいた。

メタグロスとゲッコウガも穂乃果ちゃんに自分たちの頭を擦り寄せて笑っていた。

岩川たちはというとメタグロスのサイコキネシスでまだ浮かび上がらせたままだった。

ゲッコウガとメタグロスが放った技は岩川たちにあたらないように絶妙にコントロールされていたのだろう。

岩川たちはまったくの無傷だった。

しかし、ショックが大きかったのか全員が白目をむいて気絶していた。

ウチが岩川たちに近づくと岩川の股間の部分が濡れていた。あまりの恐怖で失禁したのだろう。

他の4人も白目をむいて気絶して動かなかった。

しかし、岩川も含めた5人の白目をむいた変顔にウチは思わず吹き出した。

 

 

 

 

「希先輩!」

 

 

 

その時、ウチの背後から聞きなれた声が聞こえた。

ウチが後ろを振り返るとそこには自分に向けてくれる優しい笑顔の穂乃果ちゃんが立っていた。

ウチはやっぱりこの笑顔を見ると顔が熱くなる。

「顔が真っ赤ですよ⁉︎ 大丈夫ですか⁉︎」

穂乃果ちゃんはウチに心配そうに聞いた。うんは顔が赤いのを必死に隠そうとしたが無理だった。

「う、うん… 大丈夫…」

ウチはいつもの飄々とした声ではなく消え入りそうな声で穂乃果に言った。

「それは良かったです!」

穂乃果ちゃんはそれを聞くとニッコリウチに微笑んだ。

ウチはその笑顔を見てまた顔が熱くなる。

 

 

(やっぱり… これって… これって…)

 

 

ウチは自分の気持ちが信じられなかった。

でも、そうとしか考えられなかった。

ー希side endー

 

 

 

 

「希先輩どうしたんだろう…」

さっきと同じように穂乃果の顔を見ると急に赤くなったり驚いた顔になったりしている希の百面相に穂乃果はまた不思議そうな顔をする。

「まあいいか…」

百面相をまだ続けているの希を余所に穂乃果は気絶したままの岩川たちのところへ行った。

メタグロスのサイコキネシスで浮かび上がらせたまま、穂乃果は5人のポケットの中を手を入れて何かを探し始めた。

「う〜んと… おっ! あった!」

穂乃果は女子生徒のポケットの中から何かを見つけて取り出した。

穂乃果はその何かを取り出すとメタグロスにもういいと言いサイコキネシスを解いた。

サイコキネシスが解かれ岩川たちは地面に落ちたがまだ白目をむいて気絶したままだった。

その声と音を聞いて希もようやく我に返り穂乃果の元に駆け寄る。

「どうしたん?」

希が聞くと穂乃果は女子生徒のポケットから取り出した携帯電話を希に見せた。

「携帯電話? それ、どうするん?」

「どうするって、これを生徒会長と先生に見せるんですよ、今回の証拠品としてね」

穂乃果は希に言うと希は頭にクエスチョンマークを浮かべた。

「何でその携帯電話が証拠品になるん?」

希が穂乃果に聞くと穂乃果は笑顔で説明する。

「実は希先輩があの人たちに犯されそうになっていた時、女子生徒が1人携帯電話でその様子を撮影していたんですよ、これを見せれば、希先輩は本当に犯されそうになっていたという証拠になります。さらに、この状況だけを見れば私たちがあの5人に一方的に暴力を振るったように見えますし、あの5人も本当のことは話さないと思いますし、ですが、この証拠品があればあの人たちも言い逃れはできません」

「………」

穂乃果の考えに希は唖然とした。

「も、もしかして穂乃果ちゃん… 最初からそれが狙いでサイコキネシスを…」

希が聞くと穂乃果は頷きながら答えた。

「ええ、まあ、ポケモンに暴力を振るったのが許せなかったというのもありましすが、 なにより…」

穂乃果は一旦そこで言葉を区切った。

そして、希を真っ直ぐ見つめ眩しい笑顔でこう言った。

「希先輩を傷つけたことが許せなかったからですね」

 

 

 

ズキューーーン!!!!

 

 

 

 

 

その言葉に希は胸を押さえてうずくまった。

急に胸を押さえてうずくまった希を見て穂乃果は驚き慌て始めたが希は顔を上げず「大丈夫…」とさっきと同じ消え入りそうな声で言った。

穂乃果は顔を上げない希を心配そうに見ていたが顔なんて上げられる訳がなかった。今の自分の顔は顔から湯気が出るほど真っ赤なのだから、

「希先輩… 本当に大丈夫ですか?」

穂乃果が心配そうにかがんで希の顔を覗き込む。

嬉しい気遣いだが今の希にとってはマズいことこの上ない気遣いだ。

希は沸騰しそうな頭を懸命に働かせて上手い言い訳を考える。

「ほ、穂乃果ちゃん… ウチは本当に大丈夫やから…」

結局、上手い言い訳はいくら考えても思いつかず苦し紛れにそう言う。

穂乃果はまだ心配そうにしていたが大丈夫だと無理矢理顔が見えないようにした。

 

 

(アカン! こんな顔は人に見せられん!)

 

 

希は顔を真っ赤にしながらそう心の奥底で叫んだ。

 

 

 

 

 

「希先輩、本当にどうしたんだろう…」

希があんな風になっている原因は自分のせいだと言うことに全く気づかない鈍感は不思議そうな顔をしながら希を見ていた。

「まあ大丈夫ならいいか… さてと… 今度はこっちを何とかしないとね…」

希から視線を移し穂乃果は今度はポケモンバトルで戦ったハブネークたちを見た。

「こんなに傷ついて…」

穂乃果は心配そうにハブネークやペラップたちの体を優しく撫でた。

「サーナイト、出てきて」

『サーナ』

穂乃果は今度はサーナイトを繰り出した。

そこでようやく希も顔を復活させ穂乃果の方を見た。

「穂乃果ちゃん、何をするん?」

希が聞くと穂乃果は「まあ、見ていてください」と言った。

そして今度はメタグロスとゲッコウガに指示を出す。

「メタグロスはサイコキネシスでさっき戦ったポケモンたちをここに連れてきて、ゲッコウガはアリアドスをブロック塀から助けてあげて」

『メター!』

『コウガ!』

穂乃果の指示を受けメタグロスはサイコキネシスで戦闘不能になり動けないポケモンたちを1箇所に集めゲッコウガはブロック塀をハイドロポンプでアリアドスが突っ込んだ周りだけを壊しアリアドスを無事に助けだした。

「ありがとう、メタグロス、ゲッコウガ」

穂乃果がメタグロスとゲッコウガにお礼を言う。

希は穂乃果が何をするつもりか分からず首をかしげた。

穂乃果はメタグロスとゲッコウガが連れてきたストロングウォーリアーズのポケモンたちを見て

「サーナイト、全体に癒しの波動で回復させて」

『サーナ』

穂乃果ちゃん指示を受けサーナイトが癒しの波動を全体にかけポケモンたちを回復させる癒しの波動によりハブネークたちの傷がみるみるうちに治っていった。

『ブネーク!』

『ドラー!』

『チャラ!』

『ニャプ!』

そしてついにポケモンたちが回復し元気に起きあがった。

「おお! 良かった! 元気になったんだね!」

穂乃果が元気になったポケモンたちを見て笑顔で言う。

『ラップ!』

『エアー!』

『プジン!』

『アリー!』

ポケモンたちも自分たちを助けてくれた穂乃果にかなり好感を持ったらしくまるで『ありがとう』と言っているようにそれぞれの鳴き声を上げている。

「よしよし、みんな無事でよかった〜!」

穂乃果が笑顔でポケモンたちを撫でながら言うとポケモンたちもつられて笑顔になり穂乃果に擦り寄る。

なんとも微笑ましい光景だった。

希はそんな穂乃果を見ていて思わず感心していた。

穂乃果は元気になったハブネークたちに岩川たちが目覚めたら『文句の一言でも言ってやれ』と言い、ハブネークたちの元を去った。

ハブネークたちはそんな穂乃果の後ろ姿を寂しそうに見送った。

 

 

 

「ありがとう、メタグロス、ゲッコウガ、サーナイト」

元気になったポケモンたちを見てもう心配はいらないと思ったのか穂乃果が大活躍したメタグロスたちにお礼を言いボールに戻した。

そして、今度は自分の携帯電話を見た。

「あ⁉︎ もうこんな時間だ!」

穂乃果は携帯電話の液晶画面に映った時間を見て驚いた声をあげた。

なんやかんやで気づかなかったが、今は放課後、辺りはもう真っ暗に近かった。

一人暮らしの希は大丈夫だが穂乃果は「お母さんに怒られる」とオロオロしていた。

「プッ… アハハハハハハハハハハ……!」

さっきまで自分を守ってくれた時と全く違い、今の穂乃果はお母さんに怒られるとまるで小学生のように慌てていた。そのギャップに思わず希は吹き出した。

笑いだした希に穂乃果がほおを膨らます。

「笑いごとじゃないですよ! お母さん怒ると本当に怖いんですから!」

「ゴメンゴメン…」

子供っぽい仕草で怒る穂乃果がまたおかしく謝っても笑いが止まらない。

「全く… 希先輩の家ってどこですか?」

「え?」

穂乃果がまだ笑っている希を見ながら聞くと希が不思議そうな顔をした。しかし、穂乃果がしつこく聞くので仕方なく教えた。

「でも、どうしてそんなの聞くん?」

希が穂乃果に聞き返すと穂乃果は笑顔で希に言った。

「もうこんな時間ですし送っていこうと思って!」

「‼︎」

「可愛い女の子が暗い夜道を1人で歩くのは危険ですからね! 1人より2人で帰った方が安全ですよ!」

穂乃果が笑顔でそう言うと希の顔がまた熱くなる。

「い、いいよ…」

希が拒否しても穂乃果は「やるったらやる」が私の信条です!と言い、ボールからサーナイトを再び出し、

「何度もゴメンね、サーナイト、希先輩の家までテレポート!」

『サーナ!』

 

 

 

ピカァーーッ!

 

 

 

 

眩しいテレポートの光が辺りを包み込み希は目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー希の自宅前ー

「着きましたよ! 希先輩!」

穂乃果の声で希は目を開ける。見るとそこは紛れもなく自分の家であるマンションの前だった。

「サーナイト、ありがとう!」

『サーナ』

穂乃果がサーナイトにお礼を言うと希も慌てて穂乃果にお礼を言う。

「穂乃果ちゃん… 今日は本当に何から何までありがとう… それとゴメンな… 穂乃果ちゃんの知られたくないこと探ろうとして…」

お礼を言った後、希は申し訳なさそうに言った。

しかし、帰ってきた言葉を聞いて驚いた。

「いいんですよ、気にしてませんから、それにそれがあったからこそこうして希先輩と知り合えたわけですし!」

穂乃果は希の手を握って笑顔で希に言った。

希は思った、なんて優しいのだろう、普通自分の隠していることを探られたら人は怒るか嫌悪するのに目の前の少女は嫌悪するどころか探ろうとしている人間を受け入れてくれている。

そう考えたら自分の胸がすごく熱くなってきた。

 

 

「希先輩! また明日学校で!」

そんなことを考えていると穂乃果が希に笑顔で手を振っていた。

見るとサーナイトのテレポートの光が辺りを明るく照らしていた。

希も穂乃果に笑顔で手を振り返した。

そして、テレポートの光が完全に消えた。

穂乃果に会えなくなるとなぜか急に寂しく感じた。

そして、今すぐにでも穂乃果に会いたくなった。

こんなの今まで感じた事のない感情だ。

 

 

ここまできたらいくら色恋沙汰に疎い自分でも穂乃果に抱くこの気持ちが何なのかくらい分かる、

 

 

(ああ、ウチは穂乃果ちゃんに恋してしまったんやな…)

 

 

なぜか思考回路は冷静だった。

自覚する前にもう心のどこかではこの気持ちに気づいていたのかもしれない。

嫌な感じも全然しなかった。

希はふっと軽く笑い。

 

 

(まさかウチの初恋の相手は女の子やったなんてな…)

 

 

 

同性同士の恋愛なんてこのオトノキ地方では珍しくない。

自分には縁のないものだと思っていたが、今ほど同性愛に寛容的なこのオトノキ地方に生まれてよかったと思ったときはなかった。

 

 

(だけど、穂乃果ちゃんは競争率高そうやなぁ… せやけどウチは誰が相手でも負けん! ウチの初恋、絶対に実らせてみせるで!)

 

 

 

希は心の底でそう思うといい気分で部屋の鍵を開け部屋に入った。

 

 

 

 

しかし、希はまだ知らなかった、自分の想い人にはライバルがすでに大勢いることを、そして、これからも増えていくことを…

 

 

 

 

 

 

 




ご指摘、感想をお待ちしております。
上手く書けたか評価もして頂けると嬉しいです。
穂乃果の性格を改変し過ぎたかもしれません…
岩川たちがその後どうなったのかは次回で明らかとなります。

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