君のコスモは   作:JALBAS

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今回は、聖域の瀧達の話です。
いよいよ、聖域にティアマトの混成獣達が押し寄せて来ます。
アテナの聖闘士VSティアマト混成獣の最終決戦の幕開けです。
当然、瀧も星矢として闘うことに……




《 第八話 》

 

入れ替わりから約1ヶ月が経ったその日。とうとう、敵の動きがあった。

聖域の周りに、邪悪なコスモが沸き起こり、それは真っ直ぐ12宮に向かって来ていた。

「とうとう現れたな……」

紫龍が呟く。

アテナ神殿に、今はアテナとなっている三葉を囲み、紫龍、氷河、瞬、そして今は星矢である俺が集まっている。

「雑兵達は何とかなるだろうが、混成獣は他の聖闘士では防ぎきれないだろう。人馬宮までは、突破されると考えた方がいい。」

氷河が言う。

「よし、では俺は、磨羯宮で迎え撃つ。ひとりでも多くの混成獣を倒すつもりだが、後は任せる。」

そう言って、まず紫龍が出て行く。

「なら、俺は宝瓶宮だな。」

続いて、氷河も出て行く。

「僕は、双魚宮だね。アテナは任せたよ、瀧くん!」

そう言って、瞬も出て行こうとする。

「み……みんな行っちまうのか?」

俺は、少し不安になって泣き言を言ってしまう。

「心配しないで、君はこの1ヶ月間、死にもの狂いで修業をした。今は、星矢と比べても見劣りしないコスモを身につけている。自信を持つんだ。」

「あ……ああ。」

「それに、万が一の時は、必ず兄さんが来てくれる。」

「兄さん?」

そう言って、瞬も出て行ってしまった。

「た……瀧くん……」

三葉が、心配そうに俺を見詰める。

「は……ははっ!心配ねえよ、俺も、この1ヶ月で見違えるくらいに強くなったんだぜ!ティアマトの混成獣なんて、俺の流星拳で塵にしてやるよ!」

俺は、三葉に心配掛けないように、目いっぱい強がって見せた。

 

 

磨羯宮。氷河の予想通り、人馬宮までを突破して来たティアマトの混成獣が、紫龍と対峙している。その数、8人。

「混成獣は、残り9人だった筈。ひとり足りないな。」

「ふん、アテナの聖闘士ごときに、俺達全員が出向くまでもなかろう。8人でも多すぎるくらいだ。」

先頭の、龍を模った甲冑を纏った男が答える。そして、

「かかれっ!」

その男の号令で、全員が一斉に紫龍に襲い掛かる。

「廬山!百龍覇!」

その軍勢に向かい、紫龍は百龍覇を放つ。無数の龍が、混成獣達を襲う。その一撃は磨羯宮の床も砕き、辺りは粉塵に包まれる。その粉塵が晴れた時、その場に残っている混成獣はふたりだけだった。

「ちっ、足止めできたのはふたりだけか。」

「別に、俺達は足止めされた訳では無い。お前を葬ってから、ゆっくりと後を追おうと思っただけだ。」

「たったふたりでか?」

「言っただろう、アテナの聖闘士ごときに、そんなに人員は割けない。お前ひとりには、ふたりでも多すぎるくらいだ。」

まず、7つの首を持つ海蛇を模った甲冑の男が名乗る。

「俺は、ティアマト11混成獣がひとり、ムシュマッヘ!」

続いて、翼を持つ龍の甲冑の男が名乗る。

「同じく、ティアマト11混成獣がひとり、ウシュムガル!」

対する紫龍も、自分の名を名乗る。

「アテナの聖闘士、ドラゴン紫龍!」

まずムシュマッヘが、一歩前に出て先陣を切る。

「俺は無駄に時間を掛けるのは嫌いだ。一気に決めさせて貰うぜ!」

ムシュマッヘの放つ光速拳が、紫龍に襲い掛かる。

「はあああああああああっ!」

しかし、紫龍はドラゴンの盾で、その全てを防いでしまう。

「何っ?」

「このドラゴンの盾は最強の盾。いかなる拳も、この盾の前では無力!」

「ちっ!」

「次はこちらから行くぞ!廬山!龍飛翔!」

紫龍の闘気が、拳となってムシュマッヘとウシュムガルに襲い掛かる。

「ふんっ!」

「無駄だっ!」

しかし、紫龍の攻撃は、相手の鎧に弾かれてしまう。

「我らの神衣は、ティアマト様から与えられた最強の鎧。そんな攻撃など利かん!」

「ならば、ドラゴン最強の拳で、その最強の鎧を砕いてやろう。」

紫龍は、昇龍覇の構えに入る。

「ぬかせ!こっちこそ、俺の最大の技で貴様の自慢の盾を砕いてくれる!」

ムシュマッヘが必殺技の構えをする。ウシュムガルは、あえて手を出さず静観している。

「ヒュドラーフレイム!!」

「廬山!昇龍覇!!」

ふたりの必殺拳が激突!

ムシュマッヘの拳が、ドラゴンの盾に亀裂を入れる。だが、砕く事はできない。逆に紫龍の拳は、ムシュマッヘを完全に捕えていた。

「うぎゃああああああああっ!」

神衣は砕かれ、ムシュマッヘは磨羯宮の柱に叩きつけられる。

「流石だな。それがドラゴン最大の奥義、昇龍覇か。」

仲間がやられても、ウシュムガルは動揺する様子も無い。

「次は貴様が、昇龍覇の餌食になるか?」

「いいのか?2度も昇龍覇を放って?」

「何?」

「龍の右拳ががら空きになるぞ。」

「……」

ウシュムガルは静観する事で、紫龍の昇龍覇の弱点を見抜いていた。

 

 

宝瓶宮では、氷河がふたりの混成獣と対峙していた。

「足止めできたのはふたりだけか?直ぐに倒して、後を追わねばならんな。」

「それはこちらの台詞だ。俺は、ラフム。貴様を含め、残りの聖闘士は全て俺が倒してくれる。」

氷河の倍以上もある巨体で、全体から無数の巻き毛を生やした甲冑を纏った男が言う。

「ならば、アテナの首はこのウガルルが頂くか?」

その横の、獅子を模った甲冑を纏った男が続く。

「俺はキグナス氷河、この凍気を受けて、まだそのような寝言をほざいていられるかな?」

氷河は、コスモと凍気を高めて拳を放つ。

「ダイヤモンドダストオオオオッ!!」

ラフムとウガルルは、一瞬で氷付けになってしまう。だが、

「ぬうおおおおおおおおっ!」

ラフムとウガルルは、気合を発して氷を全て弾き飛ばしてしまう。

「この程度の凍気で我らを倒すなどと、寝言をほざいているのは貴様の方だ!喰らえ、シルトカール!」

今度は、ラフムの攻撃。しかし、ラフムは氷河では無く、床に向かって拳を放つ。

「何?」

すると、床全体が一気に泥沼化していく。泥に足を取られ、動きが鈍ったところに……

「ぬうっ!」

泥の中から無数の巻き毛が飛び出し、氷河を絡め取る。

「何だこれは?」

その巻き毛は、氷河の動きを封じただけでは無かった。その巻き毛に、氷河のコスモが吸い取られていく。

「う……うう……」

「掛かったな?俺の外観を見た奴は、ほぼ誰もが力押しの攻撃を予想する。」

泥沼に半身を遣った、ラフムが言う。

「そのままでも、いずれコスモを吸い尽くされてお陀仏だが、俺達も先を急ぐんでな。」

いつの間にか、大きく飛び上がっていたウガルルが続く。

「獅子の爪で、一気に決めさせて貰うぜ!ライオネルタロン!!」

ウガルルの必殺拳が、氷河に炸裂する。

「うわああああああああっ!」

泥から弾き出され、巻き毛も引きちぎれ、氷河は神殿の柱に叩き付けられる。

「ふん、所詮この程度か?」

ラフムは技を解き、周りは普通の床に戻る。

「アテナの聖闘士等、やはり我らの敵では無い。こんな奴にやられるとは、ギルタブルルもバシュムも混成獣の恥さらしだな。」

ふたりは、そのまま宝瓶宮を抜けようとするが……

『何?』

目の前で倒れていた氷河が、行く手を塞ぐようにゆっくりと立ち上がった。

「ば……馬鹿な?俺のライオネルタロンを受けて、立ち上がるだと?」

「……お前が全力を出せていたら、やばかったかもしれないがな……」

氷河は冷やかに解説する。

「お前達が馬鹿にした俺の凍気で、お前達のコスモは著しく低下している。そんな状態で放った技で、この俺を倒す事などできん。」

「な……何だと?最初に放ったあの技で?」

「今度は、お前達のコスモを完全に絶つ。」

氷河は、再びコスモと凍気を高める。

「受けよ!キグナス最大の拳、オーロラサンダーアタアアアアアック!!」

『ぐわああああああああああああっ!!』

更なる強力な凍気を受け、ラフムとウガルルは再び凍りついた。

「さて、取り逃がした混成獣達を追うとするか。もう、瞬達が倒してしまったかもしれんがな……」

「ぐ……ぐぐ……」

「んん?」

行きかけて、かすかなコスモを感じて氷河は足を止める。

「うがああああああああっ!」

ラフムが、再び氷を弾き飛ばし、その姿を現す。

「な……何だと?」

「ざ……残念だったな、キグナス最大の拳とやらでも、俺のコスモを絶つ事はできなかったな……」

「ば……ばかな?」

「生憎、俺は混成獣の中で最もタフでな……どちらが先にコスモが尽きるか、根競べだなキグナス!」

「ぬううっ……」

氷河とラフムの闘いは、まだまだ続く。

 

 

双魚宮。宝瓶宮を抜けて来た4人の混成獣が、一気に駆け抜けていく。その眼前に、ひとりの聖闘士が立ちはだかる。

「ネビュラチェエエエエエン!」

その聖闘士の放つ鎖が、4人の混成獣を絡め取る。

「僕は、アンドロメダの瞬。この鎖を抜けて、ここを通り過ぎる事はできないよ。」

「クックックックックッ……」

しかし、鎖に絡め取られて、動きを封じられた筈の混成獣達は含み笑いをする。

「通り過ぎる事ができない?既にふたり抜けているのにか?」

「何だって?」

すると、4つあった筈の影がふたつ消え、鎖はその場に落ちる。

「ばかな?」

「ここに残った俺達とて、こんな鎖など……」

そう言って、残ったふたりは鎖を引き契る。

「ティアマト混成獣がひとり、ムシュフシュ!」

「同じく、クルール!」

2本の角を生やした蛇の甲冑のムシュフシュ、魚人の甲冑のクルールが名乗りを上げる。

「ならば、君達は僕が確実に止める。行け、チェーンよ!サンダーウェーブ!」

瞬はチェーンでムシュフシュとクルールを攻撃するが、その攻撃は、彼らの甲冑に弾かれてしまう。

「そんな物は、我らの神衣には通用しない。ギルタブルルとの闘いで分かっているのではないのか?」

「勿体つけずに、お前の真の力を見せたらどうだ?」

その言葉に、瞬は覚悟を決め、チェーンを捨てる。

「確かに、生身の拳は使いたく無いなんて、言ってられないようだね……燃え上がれ、僕のネビュラよ!」

瞬の体の回りに、気流が沸き起こる。

「ネビュラストリーム!」

凄まじい気流が、ムシュフシュとクルールを包み込む……と、思いきや、ふたりに近付いた途端に気流は消滅してしまう。

「な……どうして?」

ムシュフシュは、不適に笑い答える。

「無様に逃げ帰ったギルタブルルの手下から、お前の技については聞いている。」

「何だって?」

「気流を自在に操るようだが、それは空気があって初めて可能になる。俺達の合体技は、周囲に真空状態を作り出す。だから、お前の技は俺達には届かない。」

「そ……そんな?」

「いくぞ!クルール!」

「おう!ムシュフシュ!」

『アンドロメダを切り刻め!バキュームシュナイデン!!』

巨大なかまいたちが、瞬を切り刻む。

「うわあああああああああっ!」

 

 

アテナ神殿。

玉座に座るアテナの手を、その前に跪いている星矢が握っている。

アテナは俯いて目を閉じ、少し震えている。

 

ま……また、コスモがひとつ感じられなくなった。誰かが、倒されたんだろうか?

私は、1ヶ月間ここに居て、特にコスモを高める修行をしていた訳でも無い。でも、日に日に、聖闘士さん達のコスモを感じる事ができるようになっていった。瀧くんが修行をしているのも、近くに居なくても感じる事ができた。

ただ、今迄は皆がコスモを高めるのは感じられても、コスモを感じなくなるような事は無かった。邪悪なコスモも感じなしなかったかった。

だけど、今日は違う。邪悪な、恐ろしいコスモがこの聖域を包み込んでいる。その邪悪なコスモが大きくなる度に、聖闘士さんたちのコスモが感じられなくなっていく。皆が、倒されているんだ。それが、感じ取れてしまうのが、辛い……怖い……悲しい……皆、私を護るために戦っているのだから。

「み……三葉。」

瀧くんが、震えている私の手を握り締めて言ってくれる。

「心配しないで、瞬達が、必ず混成獣を食い止めてくれる。万一討ち漏らしても、俺が必ず倒す。絶対に、三葉を護るから。」

違うの、自分が襲われるかもしれない事が怖いんじゃ無い!私のために、多くの聖闘士さん達が倒れていくのが、辛いの、怖いの……もしかしたら、次は瀧くんが……

「?!」

その時、このアテナ神殿に入り込む邪悪なコスモを感じた。真っ直ぐ、こっちに向かって来る。と……とうとう来てしまった。瀧くんが、闘う時が……

「来たか!」

瀧くんも、敵のコスモを感じ取って、私の手を離して玉座の前に立つ。

部屋の戸を蹴破って、ひとりの男が中に入って来る。

え?ひとり?最初は、ふたり分のコスモを感じたような気がしたけど……

 






こうなると、もう“君の名は。”は殆ど関係無くて、“聖闘士星矢”の二次創作が主流になってしまいます。“聖闘士星矢”の世界に迷い込んだ、三葉と瀧って感じです。

何で混成獣の最後のひとりが一緒に来ていないのか?
まあ、“聖闘士星矢”知ってる人ならもう分かってると思いますが……そう、アテナの
聖闘士側も、まだひとり居ないですからね。

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