そして、糸守で闘う星矢とアテナの運命は?
これが、邪悪の女神ティアマトとの最終決戦です。
糸守では、瀧の体の星矢とキングーの闘いが続いている。そんな中、彗星は、刻一刻と糸守に近づいていた。
ようやくキングーに流星拳を喰らわせる事が出来たが、それで倒せるほど神は甘くない。キングーは前よりも何倍もコスモを高め、再び立ち上がって来た。
「愚かなり、ペガサスよ。大人しく自分の拳を受けていれば、我の、この神の裁きを受ける事も無かったものを……」
「お前達のような、邪悪な神を俺は認めない!裁かれるの貴様の方だ!もう一度喰らえ、ペガサス流星拳!!」
俺は、再度コスモを高めて流星拳を放つ。
「ぶわぁかめ!人間ごときの拳が、何度も神に通用すると思うか?」
俺の流星拳は、今度は全てキングーに弾かれてしまう。
「くっ……」
キングーは両腕を広げ、俺の頭上を見上げて叫ぶ。
「今こそ、神の裁きを受けよ!ヘブンステイブル!!」
キングーから放たれた強大なコスモが、俺の頭上に集まり巨大な石版の形を成す。
「な……何だ?これは?」
「これぞ、我がティアマトより授かりし“天の石版”!」
「て……天の……石版?」
「彗星に潰される前に、塵となるが良い!」
その石版は、俺を押し潰そうと俺の真上にから覆い被さって来る。
「砕け散れ!ペガサス流星拳!!」
俺は、流星拳で石版を破壊しようとするが、流星拳にも石版はびくともしない。
「うわあああああああっ!」
「星矢っ!」
俺達は、混成獣達にやられた傷を三葉のコスモで癒してもらいながら、リフィアの話を聞いていた。
「1年前、ティアマトはあなた方に倒される直前に、この世界から……」
そう言いながら、リフィアは三葉と俺の方を向く。
「三葉、あなた方の世界へ転移したのです。」
「しかし、あの断末魔で、そんな事ができたのか?」
紫龍が問い掛ける。
「それを手助けした者がいます。」
「誰が?」
「キングー……ティアマトの夫である、神です。」
『何だって?』
これには、事情を知らない一輝以外の皆が驚く。
「更にキングーは、ティアマトのために11の混成獣も復活させたのです。」
「そうか、それでこのタイミングで、奴らは現れたのか。」
と氷河。
「じゃあ、アテナに復讐するために、星矢と沙織さんを瀧くん達の世界に送ったの?」
瞬が尋ねる。
「いいえ、違います。」
「え?じゃあ、どうして……」
「ティアマトが三葉達の世界に転移したのは、ここで成せなかった世界の滅亡をやり直すためです。アテナの居ない世界なら、それも容易であるから。」
「何だって?じゃあ、この世界で世界を滅ぼせなかった腹いせに、俺達の世界を滅ぼそうってのか?」
俺は、思わず怒鳴っていた。
「理不尽な話ですが、その通りです。」
「な……何て奴だ!それで、本当に神様なのかよっ!」
「た……瀧くん、お……落ち着いて。」
三葉が、俺を宥める。
「じゃあ、誰が、星矢達を瀧達の世界に送ったんだ?」
氷河が、核心を突く。
「三葉です。」
『ええ~っ?!』
この言葉に、俺と三葉は揃って大声を上げる。
「正確に言えば、三葉の中に眠る、“三葉の世界のアテナ”です。」
『ええっ?』
今度は、全員で驚く。
「まだ覚醒していませんが、三葉は彼女たちの世界のアテナなのです。いずれティアマトが転移して来ることを予期し、地上に転生していたのです。」
「そうか、戦いの女神アテナは、この世に邪悪がはびこる時に地上に転生する。だから……」
瞬が解説してくれる。へえ~っ、そうなのか。
「ですが、三葉の世界は聖闘士も存在しない、過去に神々の聖戦も無かった世界です。その世界のアテナの力で、ティアマトのみならずキングーまでも相手にするのは困難です。だから、この世界のアテナと、最も信頼のおけるアテナの聖闘士星矢を呼び寄せたのです。」
「ちょ……ちょっと待って。」
俺は、気になる事があって話の腰を折る。
「でも、何で俺と星矢が入れ替わるの?三葉は分かったけど、俺と星矢に何か関係があるの?」
「瀧、あなたは、この世界だったらペガサスの聖闘士となる存在、星矢と同じ運命を背負うべき存在なのです。」
『ええっ?!』
またも、皆驚きの声を上げる。
「そうか……瀧が、星矢に似ていたのはそのためか……」
氷河が呟く。
「だが、何故ティアマトの混成獣達はこの世界に復活した?ティアマトの手下なら、転移した世界に復活させるべきじゃ無いのか?」
紫龍が、更に尋ねる。
「自分達の企みを、悟らせないためです。ここでアテナを襲撃すれば、まさか異世界で世界を滅ぼそうとしているなどと思わない。」
「そうか、搖動か。だから奴らは、三葉が本当のアテナだと思って襲って来ていたのか?」
「自分の家臣達まで、駒のように使い捨てる。酷い奴らだ。」
氷河と瞬が、やるせないように呟く。
「そ……それで、私達の世界は今どうなっているんですか?」
三葉が、リフィアに尋ねる。
「ティアマトが、彗星を引き寄せて、地上に……糸守に落とそうとしています。」
『ええっ?!』
もう、驚いてばっかりだ。
「星矢とアテナが、それを阻止すべく立ち向かっていますが、キングー相手に苦戦しています。」
『何だって?』
「相手は、邪悪な神です。いくらアテナとペガサスでも、他人の体ではコスモも全開にはできません。」
「僕達が、応援に行く事はできないの?三葉さん?」
瞬は、三葉に聞いて来るが、
「え?で……でも、どうやって?」
そう言われても、三葉は戸惑うばかりだ。
「彼女に言っても無理です。元々、入れ替わりは無意識に行われた事ですし、覚醒していない彼女の力では、本体ごと他人を異世界に転移させる事はできません。」
「では、もう打つ手は無いのか?」
「いや、ある。」
紫龍の言葉を、一輝が否定する。
「本当か?」
「そのために、彼女にここまで来て貰ったのだ。」
一輝に続き、リフィアが本題を述べる。
「我が神、オーディーンの力を使えば、短時間ならあなた達を転移させる事ができます。」
「本当ですか?」
「はい。」
瞬の言葉に、リフィアは頷く。
「しかし、何故あなたは、そこまで我々に協力してくれるのですか?」
紫龍が問う。
「私達アスガルドの民は、2度もあなた達アテナの聖闘士に助けられました。今こそ、その御恩に報いる時なのです。」
「2度?俺達がアスガルドに行ったのは、1度だけだが?」
氷河が言う。
「その話はまたいずれ……時間がありません。今から、あなた方を三葉の世界へ転移します。」
「分かった。」
「お願いします。」
皆、了解し、リフィアを囲んで円を作るように並ぶ。リフィアは、両手を天に翳して叫ぶ。
「オーディーンよ!この者達を、アテナの元へ導きたまえ!」
「星矢!せいやあああああっ!」
石版の下敷きになってしまった、瀧(星矢)に向かって三葉(アテナ)は叫ぶ。
「こおれで終いよ……アテナよ、そなたも石版で塵となるか?」
「ま……まだだ!」
石版の下からコスモが燃え上がり、少しずつ、石版が持ち上がる。
「うおおおおおおおおおおっ!」
石版の下に、再び瀧が姿を現す。
「星矢!」
三葉の顔に、安堵の表情が浮かぶ。
「無駄な事よ!」
キングーは、瀧に向かって右手を翳す。
「ぐううううううっ!」
石版が更に重くなり、瀧を押し潰そうと圧力を増す。瀧は必死に堪えるが、徐々に、体が押さえ付けられていく。
「せ……星矢っ!」
三葉も、コスモを送って石版の力を抑えようとするが、やはり三葉の体では真のコスモは発揮できない。
「うぐっ!」
瀧は膝を付き、更に体勢が低くなってしまう。
「今度こそ、塵になるが良い!」
キングーは、更に圧力を強める。
「ぐうううう……」
その時、
「鳳翼天翔!!」
「ネビュラストーム!!」
「廬山!昇龍覇!!」
「オーロラエクスキューション!!」
四方から石版に攻撃が加えられ、天の石版は粉微塵に砕け散った。
「な……なあにいいいいいっ?」
「あ……あなた達!」
瀧の周りに、4人の戦士が現れる。
「フェニックス一輝!」
「アンドロメダ瞬!」
「ドラゴン紫龍!」
「キグナス氷河!」
「み……皆!」
喜ぶ瀧の横に、今度は星矢が現れる。そして、三葉の横にはアテナが。
「まさか、三葉?……」
「アテナ……」
「た……瀧か?」
「星矢、待たせたな!この体返すぜ!」
そして、星矢、瀧、アテナ、三葉の4人の体が輝き、4人は自分の肉体に戻る。
「星矢!今こそ、あなたの真のコスモを開放する時です!」
「おおっ!」
元に戻ったアテナの言葉に、星矢はコスモを最大限に燃やす。
「燃え上がれ!俺のコスモよおおおおおっ!」
星矢の体が、青白い炎に包まれる。そこにアテナのコスモも加わり、星矢の体を眩い光が包み込む。その光の中から現れたのは、ペガサスの聖衣では無かった。翼を生やし、遥かに輝きを増したその聖衣は……
「あ……あれは?」
「あれは、ペガサスの神聖衣さ。」
茫然とする瀧に、瞬が解説する。
「おのおおおおおれ、ペガサス!あくまでも、神に逆らうか?」
「言った筈だ!貴様のような邪悪な神など、俺は認めない!消え去れ!ペガサス流星けええええええええええん!!」
最大限にコスモを高めた流星拳が、キングーに襲い掛かる。
「人間ごときの拳など、この私には……な……何?!」
星矢の拳は、キングーの反応速度を上回る。何発も、キングーを捕える。更に……
「こ……これは……星矢の拳が、ビックバンを起こしている?」
「うおおおおおおおおおおおっ!!」
「ぶわぁかなああああああああっ!!」
神衣は砕け、キングーも星矢の究極の流星拳で消滅した。
「や……やった……」
俺は、思わず声を上げていた。
「き……キングーが?おのれ、アテナ!どこまでも、このわらわを邪魔するか?」
「瀧っ!」
星矢が、俺に向かって叫ぶ。
「射手座の矢で、ティアマトを撃つんだ!」
「え?」
「お前が撃つんだ!その手で、自分の世界を護れ!」
「お……おうっ!」
俺は、身に着けている射手座の黄金聖衣の弓を引く。矢の先を、御神体の巨木の前に立つティアマトに向けて。
「俺達のコスモも、矢に込めるんだ!」
『おおっ!』
星矢の号令で、他の聖闘士達のコスモも矢に込められる。
「私達のコスモも込めるのです。」
「はいっ!」
アテナに言われ、アテナと三葉のコスモもそれに加わる。
「お……おのれ、アテナ……アテナの聖闘士ども!」
「俺達の世界は、俺達が護る!消え去れ!ティアマト!!」
俺自身も、渾身のコスモを込め、射手座の矢を放つ。
「させるかああああああっ!」
ティアマトは彗星を引き寄せるのを止め、その手を自分の前に翳し、コスモの壁を作る。しかし、俺の放った矢はその壁を砕き、ティアマトの体を貫いた。
「ぎいやあああああああああああああっ!」
ティアマトの体が、青白い炎に包まれる。
「お……おのれ……だが、もう遅い……わらわの名を受けし彗星は、既に地球の重力に引き寄せられておる……このまま、地上は滅ぶ……お前達も……」
そこまで言って、ティアマトは完全に消滅した。
俺達は慌てて空を見る。そこには、地球に接近しているために、どんどん大きくなっていく彗星の姿があった。辺りは彗星の重力の影響も受け、凄まじい嵐が吹き荒れている。
「三葉、私達の力で、彗星を止めるのです!」
「は……はいっ!」
アテナが、三葉と共に彗星に向かって両手を広げ、コスモを放つ。ふたりの体から、金色のオーラが溢れだす。
「おお……」
それにより、彗星は大きくなるのを止める。一時的に、接近が抑えられたのだ。しかし……
「いつまでも、この状態は続けられない。このままでは、アテナ達のコスモもいつか尽きてしまう!」
紫龍が叫ぶ。
確かに、これじゃあふたりはここから一歩も動けない。永遠に、コスモを燃やし続けるのも無理だ。
「瀧っ!」
星矢が、また俺に向かって叫ぶ。
「俺達で、彗星の軌道を変えるんだ!」
「ええっ?」
星矢が突然、とんでも無い事を言い出す。
「人間の力で、そんな事ができる訳が無いじゃないか!」
「できるかできないかじゃ無い!やるんだ!自分の世界を護りたくないのか?三葉を護れなくていいのか?」
俺は、三葉の方を向く。三葉は、アテナと一緒に、一心にコスモを燃やして彗星を抑えている。
「わ……分かった!」
俺は、覚悟を決める。
「コスモを限界まで……いや、限界を超えて燃やすんだ!」
「おおっ!」
俺と星矢は、目いっぱいコスモを高める。俺達の体を、青白いオーラが包み込む。
「俺達のコスモも、星矢と瀧に送るんだ!」
『おおっ!』
紫龍の号令で、瞬、氷河、一輝のコスモも俺達のコスモに重なる。虹色の凄まじいオーラが、俺達の体を包み込む。
「いくぞ!瀧っ!」
「おおっ!星矢っ!」
ふたり、同時に叫んで拳を放つ。
『ペガサス!彗星けええええええんっ!!』
極限まで高めた俺達のコスモが、彗星となってティアマト彗星にぶつかる。
『うおおおおおおおおっ!!』
俺達は、更にコスモを高め続ける、他の聖闘士達のコスモもそれに加わる。ティアマト彗星は、少しずつ俺達の彗星拳に押し戻されて行く。
「地球の重力から突き放すんだ!」
「おおっ!」
更に、更にコスモを燃やす。アテナ達のコスモも加わり、ティアマト彗星は徐々に地球から逸れて行く。
『はああああああああああああっ!!』
そして、遂にティアマト彗星は、地球から大きく逸れ、通り過ぎて離れて行った。
ティアマトの重力の影響で起こっていた嵐も収まり、空には、いつもの糸守の美しい星空が広がっている。
「やったな、瀧。」
星矢が、右手を俺の目の前に翳す。
「お……おう!」
俺も右手を出し、がっちりと握り合う。
「あ……アテナ……」
三葉が、アテナに声を掛ける。
「あ……ありがとうございました……それと……ごめんなさい!無意識でやった事とはいえ、あなたをこんな大変な目に合わせてしまって……」
すると、アテナは優しく笑って首を振る。
「いいえ、私の方こそごめんなさい。」
そう言って、三葉に頭を下げる。
「元はといえば、私達の世界の争いでした。それに、あなた達の世界まで巻き込んでしまって……」
「そ……そんな!助けて頂いたのに、あ……頭を上げて下さい!」
三葉は、おたおたするばかり。そんなふたりを見て、俺達は笑い合っていた。
「ん?」
すると、星矢の体が光り出した。良く見ると、星矢だけでは無く、アテナも、瞬達他の聖闘士の体も光っていた。更に、俺の体に装着されている黄金聖衣も光り出した。
「どうやら、お別れの時間のようだね。」
瞬が言う。
「瀧。」
星矢が、もう一度右手を……今度は腰の辺りに出し、握手を求めて来る。
「星矢……」
俺はそれに応じ、がっちりと握手をする。
「これからも、三葉を護り抜けよ。」
「あ……ああ!」
アテナは、三葉と別れの言葉を交わす。
「三葉、もう今回のような事は無いでしょうけれど、万一の時は、アテナとしてこの世界を護って下さい。」
「はい……はいっ!」
三葉は、少し涙ぐんでいる。
「じゃあな!」
「元気でね!瀧くん!」
「達者でな!」
「日々精進しろよ!」
星矢、瞬、氷河、紫龍が、声を掛けてくれる。一輝は何も言わずに目を閉じているが、口元は笑っている。だんだん、皆の姿が薄れていく。
「あ……ありがとう!星矢、瞬、氷河、紫龍、一輝、み……皆も元気でな!」
「あ……ありがとうございました!アテナ!」
そうして星矢達は、自分達の世界に帰って行った。俺の体に装着されていた、黄金聖衣と共に……
「ん……んん……」
スマホのアラーム音で目が覚める。1ヶ月振りの、私の部屋だ。
すると、階段を上がって来る音が聞こえて来て、襖が開く。
「お姉ちゃん!ごはんやよ!」
1ヶ月振りの、四葉だ。
1ヶ月振りのお婆ちゃんに挨拶して、1ヶ月振りの家の朝御飯を食べる。そして……
「三葉、すまんが醤油を取ってくれるか?」
「はい、お父さん。」
これは何年振りだろうか?お父さんが、宮水家に帰って来た。
もちろん、町長を辞めた訳では無いし、神主に復帰した訳でも無い。だけど、ちゃんとお婆ちゃんと腹を割って話し合って、お互いの主張を尊重した上で再び同居する事になったのだ。“雨降って”ならぬ、“彗星降って(降りかかって)地固まる”かな?一番喜んでいるのは、四葉だ。
朝食を終え、今度は1ヶ月振りの学校に向かう。
「お先に!」
そう言って、四葉は元気良く玄関を飛び出して行く。
私は、その後をゆっくりと出て行くと、
「おはよう、三葉。」
瀧くんが、外で待っている。
「おはよう、瀧くん。」
この日課は、沙織さんと星矢さんが私達と入れ替わってる時に作ったのだけど、自分の体に戻った時に記憶として残っていた。私はしっかり期待していたんだけど、瀧くんはその期待にちゃんと応えてくれた。
ふたりで学校に向かって歩いていると、後ろから私達を呼ぶ声が、
「三葉~っ!」
「瀧~っ!」
振り向くと、自転車にふたり乗りした男女がこちらに向かって来る。1ヶ月振りの、サヤちんとテッシーだ。
「おはよう!三葉!」
「おはよう!サヤちん!」
「おす!瀧!」
「おう!テッシー!」
声を掛けて来るふたりに、私達も答える。
「お前、早く降りろ!」
辛そうに自転車をこいでいたテッシーが、サヤちんに不満を言う。
「いいにん、ケチ!」
文句を言いながら、サヤちんは荷台から降りる。
「重いんやさ!」
「失礼やな!」
夫婦漫才のような、会話を続けるふたり。
「相変わらず、ふたりとも仲いいな。」
『あんたらには負けるわ!』
ステレオでそう返されて、私達は、お互い見詰めあって苦笑いをする。
その夜は、お祭りだった。
ティアマトのせいで彗星は予定より早く通り過ぎてしまったので、お祭りの夜の天体ショーは無くなってしまったが、それでも空には綺麗な星空が広がっている。
私も瀧くんも浴衣を着て、サヤちん達とお祭りに出掛けた。4人で夜店を回った後、お互い気を利かせてカップルごとの別行動に移る。
私達は神社の境内の石段に腰かけ、ふたりきりで星空を眺めていた。あの、アテナ神殿の時のように。
しばらく無言で星を眺めていたけど、私は、どうしても気になる事を瀧くんに尋ねる。
「ね……ねえ、瀧くん?」
「ん?」
「ほ……ほんまに、私でええの?」
「え?何が?」
「だって……私、ほんまは人間じゃ無いんよ……やから……」
「関係ねえよ、三葉は三葉だろ?」
「瀧くん……」
「それに、お前が女神アテナだってんなら、俺は、アテナを護るペガサスの聖闘士だぜ!」
「う……うん!」
瀧くんの言葉に、私は、満面の笑みを返すのだった。
ここまで読んで頂いて、ありがとうございます。
この話を始めた時から、気付いていた方も多いかもしれませんが、最後は“ペガサス彗星拳”で彗星の軌道を変えてしまいました。何とも人間離れしたとんでも無い話ですが、まあ、それが聖闘士星矢の世界ですのでご容赦下さい。
“聖闘士星矢”側は、邪悪な女神ティアマトとの聖戦を、ふたつの世界を跨って戦う話。
“君の名は。”側は、お互い意識し合うけど中々距離が縮まらなかったふたりが、異世界で絆を深める話でした。
視点が三葉、瀧、星矢、沙織で切り替わっていたので、読み辛くて分かり難いところも多々あったと思います。その点は、申し訳ありませんでした。