アルトリア・オルタのフェアリーテイル   作:かな

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アルトリアと決闘

『ララバイ』の事件解決から数日経ち、あれから『鉄の森』のメンバーたちは軍に連行されていったがカゲだけは答えを出せたお陰か満足そうに笑っていた。

 

それと『ララバイ』は『約束された勝利の剣』によって完全に消滅し、もう二度と使えないようになって事件は収束し、それを壊した張本人である私は現在、ハンバーガーを食べながら今から始まるであろうエルザとナツとの試合を観戦していた。

 

「なぁ、アルトリアも賭けるかい?」

 

「いいや、今回は遠慮しておこう」

 

酒飲みの少女、カナがエルザ、ナツの勝負についての賭け事を誘ってくるが戦いの観戦を純粋に楽しみたい私は断りをいれて次のハンバーガーに手をつけるとルーシィが駆けながらやって来た。

 

「二人とも本気なの!?だって…最強チームの二人が激突したら…」

 

「最強チーム?なんだそりゃ」

 

グレイがルーシィに聞き返すとルーシィはナツとグレイ、エルザが『妖精の尻尾』のトップ3であると述べるとそれを聞いた皆は嘲笑ったり、納得いかないと声をあげる。

 

事実ナツ、グレイ、エルザは『妖精の尻尾』の中でもトップクラスに強いがエルザは兎も角、ナツとグレイはトップクラス止まりで最強ではない。

 

厳しい試験によってS級魔道士になった者と普通の魔道士には大きな差があり、正直勝敗自体はS級魔道士のエルザが勝つだろうが私が楽しみにしてるのはそのS級にナツがどれくらい食らい付けるかということだ。

 

「ナツ、こうしてお前と闘うのは久しぶりだな」

 

「あの頃の俺とは違うんだ。勝負だエルザ」

 

「ああ、私も本気で行かせてもらうぞ」

 

そう言い空間にストックしている武器や鎧を取り出す魔法『換装』でナツの得意分野である炎の攻撃を半減する『炎帝の鎧』を装備して真剣な表情でナツを睨み付ける。

 

「全力で来い!」

 

「『炎帝の鎧』かぁ…そうこなくちゃな。じゃあ、全力で行くぞ」

 

二人が構えあってマスターの試合開始の宣言と共にナツがエルザの懐に突っ込むがそこをエルザは剣で斬りさいたがそれを咄嗟にしゃがみこんで回避した。

 

「チャンス~!」

 

ナツは蹴りを振るうがそれはあっさりと避けられ、エルザに足払いされ、転ばされるがそこを口から火を吹くがそれも華麗に回避されてギャラリーの方に飛んでくるのを私は黒い疾風を引き起こして防ぐと闘いに見入つてたルーシィは息を飲んで呟く。

 

「すごい攻防ね…」

 

「まぁ、ナツとエルザならこれくらい普通だ。だが、エルザはまだまだ全力を出していないようだがな」

 

「え?」

 

「見てればわかる」

 

私の言葉にルーシィは再び闘いに向き直ると実力の差が出てしまったのかナツは徐々にエルザに押されつつあった。

 

只でさえ炎が半減され、ナツの魔法が効きにくくなっているのに実力の差があるならこうなるのは当然のことである。

 

ナツは剣を避けたり、防御したりと防戦一方であり、あとは時間の問題であろう。押されていると一番理解しているのは押されている本人自身であり、それが焦りに繋がり足元を掬われる。

 

「攻撃が単調になっているぞ」

 

「ぐっ、負けるかぁ…!」

 

ナツは焦りながらも負けじと拳を突きだすがその力を込められた拳を冷静に避けたエルザは足払いでナツを転ばせて、そのままなら首と胴体をさよならしたであろう剣を首筋で寸止をして勝負はエルザの圧勝という結果で終わった。

 

「私の勝ちだな」

 

「ちくしょう、今回は勝てると思ったのになぁ」

 

「たが、良い勝負だった」

 

「おう、次は負けねぇからな」

 

エルザは地面にあぐらをかいて座っているナツに手を差し伸べるとナツはそれを握って立ち上がる様子にエルザは過去にアルトリアとした試合に似てるなと思う。

 

あのときは敵わなかったが実力をつけてきた今ならばアルトリアに敵わなくても良い勝負ができるかもしれないと考えたエルザは私にゆっくりと近づいてきた。

 

「アルトリア、私と勝負してくれないか?」

 

その声に周りがざわめく。エルザと私は同じS級魔道士、『妖精の尻尾』の最強女魔道士と噂される二人の闘いであり、ギャラリーがざわめくのも仕方ないことであろう。

 

「いいだろう」

 

食後の運動にちょうど良いし、エルザの成長がよく見れるかもしれないし私はそのエルザの申し込みを受けると周りから歓声があがった。

 

「エルザVSアルトリアか。やっぱりエルザより先にS級魔道士になったアルトリアが勝つのかな?」

 

「いや、エルザだってS級魔道士になってから大分経つし、まだわかんねーぞ」

 

「次はアルトリアとエルザの勝負で賭けるぞ」

 

周りが盛り上がっている中でエルザはライトグリーン色の和装の鎧『風神の鎧』に換装し、私の風の魔法に対抗しようとしてきた。

 

「『風神の鎧』、それで私の『風の魔法』をなんとかしようと考えてるわけか…」

 

ナツの時と同じように有利を取ろうとしてくるみたいだがこれくらいでなんとかできると少なからず思っているであろうエルザの考えを私は折ってやることにした。

 

「たが、エルザ、私の風は神だろうが喰らい尽くすぞ『風魔の黒狼(ふうまのこくろう)』!!」

 

手を突きだして現れた黒い魔方陣から黒い風の体を持つ狼がエルザに襲いかかり、エルザはそれをさせんと狼を斬りつけるがその狼は剣をかみ砕き鎧を爪で斬り裂いて鎧を破壊した。

 

「くっ…」

 

エルザが片方の膝をつくと周りが再びざわざわし始める。まぁ、私もこの系統の魔法を自身以外の使い手を知らないぐらいかなり珍しい魔法なので当たり前と言えるだろう。

 

「なんだあの魔法は!?」

 

「エルザの鎧を軽々と壊したぞぉ!?」

 

「私の風の魔法は悪魔を滅する性質を持った『滅悪魔法』と呼ばれるものだ。ナツの『滅竜魔法』の悪魔バージョンだと思ってくれればいい」

 

私はそうエルザを見下ろしながら説明して指パッチンするとその狼が空気に溶けるように消えていった。

 

「なぁ、悪魔なんかいんのか?」

 

「あの『ララバイ』はゼレフ書の悪魔って呼ばれてたでしょ!あれもアルトリアの『滅悪魔法』だったのね」

 

―あれは私固有の魔法だがな。ただ、私の使う魔法の中で最強にして最凶の技であることは間違いない。あれは使い方によっては簡単に多くの命を奪い、物を壊すことができてしまう。だからこそ、私の切り札な訳だが…。

 

私の使える魔法は大きく分けて『風の滅悪魔法』、転生してから会ったエルザに似た緋色の髪の女性に教えてもらった性質を付与する『付加術(エンチェント)』、そして、私の固有魔法の3つであり、エルザには風の『滅悪魔法』しか使ったことないが恐らくこのままでは同じ結果になることであろう。

 

「エルザ、お前弱くなったな」

 

「な、そんなはずは――」

 

「正直今のお前など微塵も怖くない。過去のお前の方がよっぽど強かったぞ。勝負する前から勝つつもりのない何処かの魔道士と違ってな。魔法は使用している者の内面を映す鏡だ。己の思いの力が魔法にかなり影響する。それこそ掛け算のように力を倍増することができれば、逆もあり得る。単純な力で負けているのに気持ちまで負けててどうする?」

 

私の言葉を聞いて自分は負けてもいいと思っていたことに気づいたエルザは馬鹿かと自分を叱咤する。

 

アルトリアの言う通り自分の実力が負けているのに気持ちで負けていたら一生勝てるはずもない。負けてもいいんじゃない――必ず勝つんだアルトリアにとエルザは勝利を得ようとする鋭い眼差しを持ってサラシ姿になり、その手には妖刀『紅桜』を持っていた。

 

「良い目だ。それに守りを捨てて一撃にかけるとは面白い。なら、撃ち破って見せろ『風魔の黒狼』!」

 

私は先程のように狼をエルザに向かって走らせるとエルザはゆっくりと剣を振りかぶった。その姿は私の『聖剣』を振るう時と似ていて紅桜には赤いオーラが宿りそのまま狼を一閃、綺麗な真っ二つに別れたが息を切らしながら倒れるのを私は受け止めた。

 

「はぁはぁ、見よう見まねでなんとかできたが…なんて魔力の消費量だ。あれを撃って平然としているなんてやっぱりアルトリアはすごいな」

 

「いや、あれを見よう見まねで再現するお前も流石だ。鍛練したらいずれ自分の物にできるだろう」

 

私たちが話していると皆は『良い勝負だったぞ!!』と、歓声をあげて拍手をし始め、審判のマカロフも異常に温かい笑みを浮かべている最中、少し離れたところで見ていた金髪の青年は不快そうな顔をして舌打ちをした。

 

「チッ、いつからアンタはそんな風に変わっちまったんだよ…」

 

 

 

 


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