アルトリア・オルタのフェアリーテイル 作:かな
闇ギルド、それは普段ギルドと言うものは地方ギルドマスター連盟に属している。だが、それに属さない非正規ギルドが存在する。それが闇ギルドであり、非正規だからこそ評議院が決めた法律を無視することだってできてしまう。
それこそギルド間条約によって禁止されているギルド間の
現在、私は魔物討伐の依頼の帰りに闇ギルドの一つである『
仮に『鉄の森』の本拠地があるという噂が偽だったらそれで良いし、真だったら討伐するだけであるので普通の人だったら怯えているであろうが私は完全に軽い気持ちで野山を歩いているとそれっぽい建物の前にガラの悪そうな雰囲気の男が門番のように立っていた。
「確かに闇ギルドっぽいな」
「なんだお前は?此処等に近づくな!」
私に気づいた男はガンを効かせてくるが生憎実力のない奴の威嚇など格上には通用せず私は尋ね帰す。
「お前らは『鉄の森』のメンバーか?」
「ああン、だったらどうするって言うんだ?」
「壊滅させる」
「ガキが…やれるものならやってみろや!」
1分後……無傷で立っている私はボロボロに倒れ伏している男たちを見降ろしながらそんなモブ敵が言いそうな台詞通り魔法を使うまでもなかったなと思いつつ鉄の扉を蹴り飛ばし中に入るがそこはもぬけの殻となっていた。
闇ギルドは普通拠点を設けて評議院等から隠れて行動しているがこんな綺麗さっぱり人がいないってことは普通あり得ない。これは何かあるかもしれないと思った私は倒れ伏している男を起こす。
「『鉄の森』の他の奴等はどこにいる?」
「へっ、誰が言うかよ」
男はそっぽを向いて私の質問に答えないためここは強行手段をするしかないようだなと私は不気味に笑みを浮かべて男の前に座って語りかける。
「……人間は首の骨を折ったくらいで死んでしまうか弱い生物らしい。だが、私は人間がその程度で死ぬとは思えなくてな折角、良い機会だしお前で試してみようか。死んでも痛みは一瞬だけですぐに楽になれるらしいから安心しろ」
この
「だが、『ララバイ』なんて欠陥しかない魔法を使うなんて自殺志願者か」
『ララバイ』、そんな笛の音を聞いた者を無条件で殺してしまうのならば奏者本人やその仲間も呪殺してしまう欠陥だけな魔法を使うのは正気の沙汰とは言えない。
「これは止めに行かないとまずそうだな」
『ララバイ』を止めるために私は最寄りのクヌギ駅に行くと人だかりがてきており、立ち入り禁止のマジックテープを貼って駅の中には入れないようになっていた。
「何があった?」
「ああ、この辺のいた闇ギルドの連中が電車を乗っ取って行っちまったんだよ」
周りの人に事情に聞くと闇ギルドが列車を乗っ取りオシバナ駅の方に向かったらしくそれを聞いた私は風の羽で全速力で飛行しながら思考をしていた。
確かにオシバナ駅は人口がまぁまぁ多い町で『ララバイ』で多くの人を呪殺することができるだろうがそれをして何の意味があるというのが素直な感想だ。
多くの人を殺したいならわざわざ『ララバイ』という魔法を使うまでもなく一般市民なら魔道士の魔法だけで殺すことができるのにも関わらず『ララバイ』を使うということは『ララバイ』じゃないといけないことがあるのかと思いつつオシバナ駅に到着するとちょうど事情を最も知っていそうな『鉄の森』で死神という異名を持っている鎌を持った白髪の男、エリゴールが飛んでいたので蹴りで地面に叩き落とした。
「なんだぁ?」
「何でもいいだろう。所詮、貴様は私に倒されるのだからな」
「ッ、お前は『妖精の尻尾』のアルトリア!」
「死神に名前を覚えられて光栄だ。だが、その鎌で拐えるほど簡単な命はしていないぞエリゴール」
私は軽口を叩いて不敵な笑みを浮かべているのに対して『鉄の森』のエースであるエリゴールは余裕のない表情を浮かべるなか先に動いたのはエリゴールだった。
「くらえ
螺旋状に回転する竜巻が此方に向かって放たれるが私は表情を変えずに手を前に出して触れた瞬間に風が拡散して無力化させた。
確かに並みの魔道士よりは幾らか格上だがその程度では私に傷一つ与えることも難しく、ここからは圧倒的な力量の差による一方的な殲滅になるだろう。
「さて、此方も…」
「おい、待てぇ――――!!」
その聞き覚えある声と共に私とエリゴールとの間に降り立ったのはナツであり、私は面倒な奴が来たなと思い軽くため息をつく。
「アルトリア、このそよ風野郎は俺の獲物だ。横取りするんじゃねぇ!」
「ちょっとナツ、ここは協力して……」
「いいだろう。だが、ナツ、お前ごときの実力ではエリゴールに勝てない」
「アルトリアまで…」
「なんだとぉ!このそよ風野郎位楽勝に勝ってやるよぉ」
ナツをここまで運んできたハッピーは協力を促そうとするが私はそれを遮って現時点でという言葉を伝えずに二人の戦闘の邪魔にならぬように下がっていくがその言葉が効いたのかヤル気満々のようである。
「アルトリア、さっきのナツは勝てないって本当なの?」
私とハッピーは少し離れた場所で観戦をしているとハッピーが心配そうな表情を浮かべて尋ねてきたので正直なことを話す。
「ああ、本当だ……あくまで
ナツとエリゴールを比べた場合このままだと僅かな差でエリゴールに軍配があがるが、潜在能力で言えばナツの方が格段に上である。
エリゴールはそのナツの潜在能力を引き出すのにはいい相手だと思うし、『ララバイ』を吹こうものならばその隙に攻撃を仕掛けて阻止してしまえばいいだけである。
「私はこの戦いの最中成長しナツが勝利することを確信したからこそナツに任せた。ハッピーお前はナツと私を信じるかナツと私を信じないかどうする?」
「そんなの――二人を信じるに決まっているよ!」
「なら、この勝負を大人しく見守ろう。ところでさっきから気になってたんだがお前たちはなんでここにいるんだ?」
「えっと、最初から話すと……」
ハッピーから聞いた話によると『妖精の尻尾』の『妖精女王』の異名をもつ委員長性格の鎧を着た少女、エルザがララバイの封印を解こうとしているという話を酒場で聞いて、ナツ、ハッピー、ルーシィ、ツンツン頭の氷の造形魔法を使う少年、グレイ、エルザがララバイを阻止するためにチームを組んで動いてたということだ。
「それで彼奴等の目的はクローバーで定例会にいるマスターたちを『ララバイ』を使って呪殺することなんだ」
「権利を奪われたことによる復讐か……そんなことをやっても権利がもどってくるはずないのによくやるもんだ……」
「よっしゃ~!!どうだアルトリア」
危なげであったがボロボロになりつつあるナツはなんとかエリゴールに勝利して声をあげるナツに対して私は当然だと声をかける。
「あんな相手に苦戦するなど私に勝つには百年早いな」
「なんだとぉ、何処からどう見ても圧勝だろ。な、ハッピー」
「微妙なとこです」
「なら、そういうことにしておこう」
「ナツ――!!」
その時、魔力を原動力に動く魔道4輪に乗ってルーシィ、グレイ、エルザと身体中に包帯を巻いた男が此方にやって来た。
「お、きたか。もう終わったぞ」
「流石だなナツ、それとアルトリアがどうしてここに?」
「お前たちと同じ理由だ。まぁ、結局、私がいなくても解決できたみたいだがな」
「ハッハッハ、当たり前だろー」
「そんなこと言ってほんとはアルトリアに手伝ってもらったんじゃねぇのか?」
「アルトリア自身が違うって言ってたし、なわけねーだろ耳ついてんのか?」
『『やんのかコノヤロー』』
「やめんか二人とも」
『『あい』』
犬猿の仲でかなり仲が悪いナツとグレイにその仲裁役のエルザが一声かけると二人は間抜けな声を出して肩を組んで返事をする。
「何はともあれナツ、お前のお陰でマスターたちは守られた 。ついでだ……定例会場に行き、事件の報告と笛の処分についてマスターに指示を仰ごう」
「クローバーはすぐそこだもんね」
その時、『鉄の森』のメンバーの包帯の男、カゲが魔道4輪を動かし、『ララバイ』の笛を自分の影の魔法で拾ってクローバーの町を向かっていく。
「油断したな
「あんのやろぉぉぉぉぉ!!」
「何なのよ!助けてあげたのに……」
「追うぞ!!」
こうして魔道4輪で走ってゆくカゲをナツ、ハッピー、ルーシィ、グレイ、エルザは追いかけるのであった。
「これですべてが変わる……」
クローバーに到着したカゲは手を震わせてそう呟くが頭のなかには『妖精の尻尾』に言われたことが残っていた。
『そんなことしたって権利は戻ってこないのよっ!』
『もう少し前を向いて生きろよ。お前ら全員さ……』
『カゲ!お前の力が必要なんだ!!』
『同じギルドの仲間じゃねぇのかよ!!』
その言葉が頭に浮かぶがカゲは頭を横に振ってそんな考えを頭から取り除こうとする。
「いや、俺の行為は間違ってないはず………」
「本当にそう思っているのか?」
私は魔道4輪の座席から私は腕と足を組んでそう声をかけるとカゲは此方を振り向いて驚きの声をあげる。
「自己紹介がまだだったな。私はアルトリアだ」
「どうやってここに……?」
「お前が笛を拾ったと同時に乗った。まぁ、そんなことはどうでもいい。お前がやっているということは例えるなら子供がおもちゃを欲しいと親に駄々をこねるのと同じだ。そんなことをしてもお前はなにも変わらない。変わるというのは他人から奪ってできることではない。多くのものから学び、色々なことを経験し、人は変わっていくものだ」
「ッ……」
「私はとある英雄を知っている。その英雄は『正義の味方』になりたくて、大勢の者を救いたくて小を切り捨てた。その結果、その英雄が得たものはなんだと思う?」
「……名誉とか賞賛じゃないのか?」
いいやと私は首を振って残酷な答えをカゲに告げる。
「答えは無、当たり前のことだ。小を切り捨てるということはもとの数から少ない数を引き算し続けるということだ。繰り返し引き算をし続ければ残った数より引いた数の方が大きくなってしまう。英雄は自分のやって来たことは結局、なんだったのかと思い絶望した。そして、絶望したままその英雄は残された者によって処刑された……。この話を聞いても『ララバイ』を使いたければ使うがいい。だが、その先に待っているのは地獄だぞ」
「なら……俺はどうすればいいんだよ!!分からないんだよ!!こんな俺がどうすればお前たちみたいになれるのか……」
カゲの心からの叫びに私は笑みを浮かべ、歯を食い縛りうつむくカゲに手をさしのべる。
「それがお前の本音か。なら、お前は罪を精算し、『妖精の尻尾』に来い」
「……俺は闇ギルドだぞ!!そんなことできるはずが…」
「悪人とか関係なく悩める者に手をさしのべるのも『妖精の尻尾』だ」
『妖精の尻尾』は良い意味で甘い。以前の私は問答無用で害する敵を排除してきたがそんな雰囲気に飲まれて私も本当に甘くなったと思う。甘くなったと思うが私はそれを後ろめたく思わない。それも私の強さの一つになっているのだから。
「さぁ、その笛を捨ててこの手を取るか、取らないかはお前次第だ」
「そんなの……答えは決まっているじゃないか」
カゲは笛を捨てて、その顔はぐしゃぐしゃになっており、ひどい顔をしていたが笑って私の手を取ったのと同時に私は背後を振り向く。
「そろそろ出てきたらどうだ?盗み聞きとは感心ならないぞ」
そう声をかけるとマカロフやナツ、ハッピー、ルーシィ、グレイ、エルザが近くの叢から姿を現し、此方にやって来る。
「いやー見事じゃアルトリア」
「マスターの言う通り流石の一言だったぞ」
「うんうん、すごくかっこよかった」
「まぁ、アルトリアならこれくらい当然だなー」
「とりあえず、これで一件落着だな」
私たちが祝勝会ムードになっていく中でカゲに捨てられた『ララバイ』の笛が黒い煙を吐き出し、その吐き出した煙が巨大な樹木の怪物のような姿になって私たちの前に現れた。
『どいつもこいつも根性のない魔道士で困る。だから、お前らの魂をワシ自らが喰わせてもらうぞ。これだけの魔道士を喰えばワシのお腹も満腹になることだろうしな』
「なんだこいつは……?」
「こいつは『ゼレフ書の悪魔』じゃ」
「どうして笛からこんな化け物が……」
「あの怪物自体が『ララバイ』…そのもの、つまり生きた魔法じゃ。それが伝説の黒魔道士ゼレフの魔法……」
「ああ、まさかここでかなり低いレベルであろうがゼレフの書の悪魔と会うことになるとはな」
ルーシィの声にマカロフは焦りの表情で簡単に説明している中私は軽口を叩きながら黒い『聖剣』を取りだし、その剣を両手で振りかぶるとマスターが驚愕の表情を浮かべる。
「アルトリア、貴様、『アレ』を使う気か!?」
「安心しろ。被害は最小限に抑える。『ララバイ』はこの世界にあってはいけないものだ。お前らも下がっていろ。一瞬で終わらせる」
私は皆にそう告げて前に向き直り睨み付けると私がこの『聖剣』を振りかぶったことの重要さを知らない『ララバイ』は嘲笑っていた。
『ハッハッハ、一瞬で終わらせるだと。できるものならやってみるがよい小娘』
「お前は私とカゲの話を聞いていたな。他人から奪ってその先に待っているのは地獄だと……お前は過去多くの命を奪ってきた。地獄に落ちるが良い『ララバイ』よ……」
その言葉を告げると共に私は魔力を放出させて『聖剣』は黒いオーラを纏い、その『聖剣』が強い禍々しい黒い光をあげていく。
「空気が震えている。ものすごい魔力だ」
「じーさんあれは……?」
後ろで見ているエルザは思わずそう呟き、グレイは『聖剣』に宿る異常な程の膨大な魔力量に思わず尋ねるとマスターは真剣な表情を浮かべて答える。
「あれは地を焦がし、天を切り裂くアルトリアの必殺の技じゃ。それは『妖精の尻尾』に伝わる三大魔法に匹敵するであろう技、それゆえにアルトリア自身が普段封印している技…」
『小癪な…我に魂を寄越せ!』
流石の『ララバイ』も余裕の顔を崩し、口から呪歌を放つがもう手遅れだ。マスターも言った通りこれは必殺の一撃、冥土の土産として私の『
「『卑王鉄槌』、極光は反転とする。光を呑め――――『
『聖剣』の真名開放と共に剣を振るうと漆黒に染まった光の閃光は空を切り裂いて、『ララバイ』の上半身を飲み込み跡形もなく消滅させ、残った下半身は力なく崩れ落ち朽ちていった。