アルトリア・オルタのフェアリーテイル   作:かな

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たくさんのお気に入り登録ありがとうございます。ちなみに主人公の服装は『悪性隔絶魔境新宿』の服装です。


アルトリアと妖精

現在、私はルーシィ、ナツ、ハッピーと共に『妖精の尻尾』のギルドの前に立っていた。

 

「わぁ…大きいね」

 

思わず声を漏らすルーシィに私は微笑ましい顔を向けてナツ、ハッピーと共に『妖精の尻尾』の新しい仲間になる少女を歓迎した。

 

――――ようこそ『妖精の尻尾』へ

 

「ただいまー」

 

「今、戻ったぞ」

 

「あら、ナツ、ハッピー、それにアルトリアお帰りなさい」

 

私たちが中に入ると『妖精の尻尾』の酒場のウェイターをしている前髪をヘアゴムで縛った銀髪の少女、ミラジェーン・ストラウスが親しみやすい笑顔で私たちの帰りを出迎えてくれたのを聞いて、そのテーブルの近くにいた仲間たちがハルジオンの港の半壊の件でからかおうとしてナツにテーブルごと蹴り飛ばされる。

 

「てめぇ、サラマンダーの情報嘘じゃねぇかっ!」

 

「あら、ナツが帰ってくると早速お店が壊れそうね。でも、アルトリアが他の人と一緒に帰ってくるなんて珍しいわね」

 

「人をぼっちみたいに言うな。依頼終わりに出会ってそのまま帰ってきたんだ。あと、ミラ、此方はルーシィ、『妖精の尻尾』に入りたいそうだ」

 

「ルーシィです。よろしくお願いします」

 

「あらぁ、よろしくねルーシィ、私はミラって呼んでね」

 

「あの週刊ソーサラーのミラさんと握手できるなんて感動ですぅ」

 

ルーシィがもう幸せそうな表情を浮かべてミラと握手している隙にナツが起こした騒ぎが周りに飛び火して大乱闘と化しており、お前たちは子供かと呆れて私はため息をついた。

 

「あのあれ止めなくていいんですか?」

 

「いつものことだからぁ放っておけばいいのよ」

 

「ああ、そのうち静まる。だが、こんなもめ事ばかりのギルドに入って良かったのか?」

 

私はミラの方に向かって飛んでくる酒瓶をキャッチしながら皆の乱闘に困った顔をしていたルーシィに尋ねる。

 

『妖精の尻尾』の他にも魔道士ギルドは多々ある。『妖精の尻尾』はこのフィオーレ王国の中で大きな勢力を持っているギルドだが評議院という魔道士ギルドを統括している組織に問題ばかり起こすから睨まれている魔道士ギルドである。

 

ギルドの大きさの規模で言えば『幽鬼の支配者(ファントム・ロード)』も同じくらいであり、フィオーレには他にも様々なギルドがあるなか本当に『妖精の尻尾』を選んで良いのか気になったのだ。

 

「うん、ここは私の憧れのギルドだから」

 

「そうか、なら良かった」

 

「でも、いくらなんでも騒ぎすぎよぉ!それに皆魔法を使おうとしてるし!」

 

「これはちょっとマズイわね」

 

二人が焦る中でこんな状況を止められるストッパーがいることを理解している私は特に焦ることなく、そのストッパーが出てくるを待っているとギルドの天井に届くと思えるほど大きな巨人が現れ一喝する。

 

 

「――――やめんかバカタレ!!」

 

その一喝によって多くの人が動きを止めるなかで高笑いするナツ(バカ)が一人いたのだが

 

「だーっはっはっはっ、皆してびびりやがってこの勝負は俺の勝ぴっ…」

 

――その巨人に呆気なく踏み潰されダウンする。

 

「あら、マスター」

 

「マスター!?」

 

ルーシィが驚きの声をあげるなかその巨人の顔が此方に振り向いて咆哮したと思うと体が一気に小さな子供サイズにまで小さくなりそこには一見ただの白髭を生やした老人にしか見えない『妖精の尻尾』のマスター、マカロフ・ドレアーがいた。

 

「ええーっ!?」

 

「君は新入りかね?」

 

「は、はい」

 

「ワシはマカロフ、『妖精の尻尾』のマスターじゃ。よろしくね」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

挨拶をするとマカロフはバク転しながら二階の手すりまで跳躍して、持っていた書類を皆に見せつける。

 

「まーた、やってくれたのう貴様ら。見よ評議会から送られてきたこの半端ない文章の量を」

 

そのまま殆どのギルメンの名前と起こした被害を読み上げられ、その呼び上げられた面々は後ろめたい表情を浮かべているが恐らく呼び上げられることをした覚えがない私は余裕の表情を浮かべていた。

 

「アルトリア」

 

だが、予想外に名前を呼ばれた問題を起こしてないはずの私はマカロフに抗議する。

 

「むっ、私が何をしたって言うんだマスター!?」

 

「……果物採集の手伝い後採集祭で採った果物の半分が全滅」

 

「あれか。好きなだけ食べて良いと言われて満足するだけ食べたんだが何か問題があるのか?私は言葉通り好きなだけ食べただけだぞ」

 

「食い過ぎじゃー!!もっと遠慮というものを知れぇ」

 

そのあと他の多くのギルメンの名前が呼ばれていき、最後の書類を読み終わったマスターは顔を下に向けて体を小刻みに震えさせていた。

 

「貴様らぁ、ワシは評議院に怒られてばかりじゃぞぉ……だが、評議院などクソくらえじゃ」

 

顔を上げたマカロフは手に持っていた書類を燃やし、そのまま捨てるとナツがフリスビーに飛び付く犬のように跳躍して、燃えた書類を口に入れる。

 

「よいか…理を越える力はすべて理の中より生まれる。魔法は奇跡の力ではない。我々のうちにある気の流れと自然界に流れる気の波長があわさり、はじめて具現化されるのじゃ。それは精神力と集中力を使う。いや、己が魂すべてを注ぎ込むことが魔法なのじゃ。上から覗いている奴等を気にしてたら魔道は進めん。評議院のバカ共を恐れるな。自分の信じた道を進めェい!!それが『妖精の尻尾』の魔道士じゃぁ!!」

 

それと共に周りから歓声が上がり、皆が満面の笑みを浮かべて笑っており、かくいう私も頬を緩めて笑みを浮かべているだろう。

 

「まったく退屈しないな『妖精の尻尾(このギルド)』は……」

 

 

 

 

 

 

「ナツ、アルトリア、見てー。『妖精の尻尾』のギルドマーク入れてもらっちゃったぁ」

 

私が大量のハンバーガー、ナツがジャンボサイズのステーキと夕食を摂っている中ルーシィが上機嫌でスキップをしながら右手の甲に刻まれたギルドの紋章を見せてきた。

 

「ルーシィ、良く似合ってるぞ」

 

「アルトリア、ありがとう」

 

私は素直に褒めるとルーシィは嬉しそうに笑い、ステーキの肉を食べ終わったナツの方に向き直ってどうと尋ねる。

 

「良かったなルイージ」

 

「ルーシィよ!!アンタ絶対わざとでしょ」

 

「ぷぷぷ、永遠の二番手……」

 

「笑うなぁ…!!」

 

「じゃあ、金もねーし。仕事行くか」

 

そんな漫才みたいなことをしている最中食を食べ終えたナツは立ち上がり、依頼が貼ってあるリクエストボードに向かっていくのを私はハンバーガーを片手に見送っているとマカロフに『妖精の尻尾』の中年の男の魔道士、マカオの子供であるロメオが声をかけるのを聞いてそっちの方に視線を移す。

 

「くどいぞロメオ。貴様も魔道士の息子なら親父を信じておとなしく家で待っておれ」

 

「だって、三日で戻るって言ったのにもう一週間も帰ってこないんだよ。探しに行ってくれよ!!心配なんだ!!」

 

「ロメオ、貴様の親父は『妖精の尻尾』の魔道士じゃ。自分のケツもふけねェ魔道士なんてこのギルドにいない。大人しく帰ってミルクでも飲んでおれぃ!!」

 

マカロフにそう言われたロメオは目に涙を浮かべて、走り去っていくのを見届けているとアルトリアと自分の名前をマカロフが呼ぶのが聞こえ、私はクスリ笑いをしてマカロフの前に立った。

 

「どうした?何か用かマスター」

 

「ちょっとマカ……」

 

突如、マカロフの声を遮って轟音が響き、視線を向けるとそこにはリクエストボードにめり込んだ依頼書とそこからなんとも言えない顔をしたナツが外に向かっていき、辺りはマカオを助けに行ってしまうであろうナツに非難の声が上がる。

 

「進む道は自分で決めるもんじゃぁ。放っておけぇ。アルトリア、やっぱなんでもないわい。急に呼んだりしてすまんな」

 

「いいさ。それにしてもマスター、そろそろその素直じゃない癖を治したらどうだ?」

 

「ふむぅ、言ってる意味がよくわからんのぅ」

 

マカロフは惚けているように言うがナツがマカオの捜索に向かってなかったら私を捜索に向かわせたに違いない。結局、マカロフは私を含めて『妖精の尻尾』の皆を家族のように思っており、そんなマカロフが一週間も見てない家族の心配をするのは当然極まらないことだ。

 

さて、ご飯も食べ終わったし私も帰るとするかと思い、外に出ようとしたとき『待てよアルトリア』という男の声が背後から聞こえる。

 

「なんだラクサス?」

 

私が振り替えると声をかけた張本人であるヘッドホンをしたマカロフの孫である金髪の青年、ラクサス・ドレアーが二階の手摺から此方を獰猛な笑みを浮かべていた。

 

「少し頭貸せや」

 

「ふん、帰ろうと思ってたが食後の運動にぴったしだ。いいだろう。相手になってやる」

 

「こら、ラクサス、アルトリア」

 

「安心しろマスター、勿論皆の迷惑にならないところでやるさ。じゃあ、マグノリア外れの森で待っているぞラクサス」

 

私はそう言って上着のポケットに両手を入れてギルドの扉を開けて外に出ていって、森の外れに着いてすぐにラクサスも到着した。

 

「早かったなラクサス」

 

「俺から売ったケンカだ。これで遅れたら男の恥だろ」

 

私とラクサスは互いに不敵な笑みを浮かべ、ラクサスが動いたのがケンカの開始の合図だった。

 

ラクサスの雷を纏った拳が私に襲いかかろうとしてくるがそれを黒い大地の力を纏った拳をぶつけて封殺するとラクサスは舌打ちをして間合いをとった。

 

「相変わらず痛ぇな」

 

「だが、以前と比べると威力は上がっている」

 

「けっ、でも、お前にはノーダメージじゃねぇか。じゃあ、此方は早速とっておき使わせてもらうぞ」

 

「雷の『滅竜魔法』か……良いだろう」

 

「行くぞぉ!!雷竜―方天戟!!」

 

ラクサスは滅竜の性質を持った雷の槍を作り、此方に向かって放り投げてきたそれは空を轟かせるほど激しい威力を持ったラクサスの必殺技である。

 

切り札の一つを切れば優に無効化できるがそれは反則技、このような勝負で使う技ではないと思う私は漆黒に染まった『聖剣』を何もない空間から取り出して一振りをすると雷槍を意図も容易く真っ二つにした。

 

「雷竜方天戟か…そんなすごい技を産み出していたなんて驚きだったぞ」

 

「その技をあっさり真っ二つにされちまったがな。まったくやっぱりアルトリアには敵わねぇわ」

 

「だが、『滅竜魔法』の力はS級魔道士試験の頃とはまったくの別人と言っていいほど腕をあげたことは見てわかる」

 

S級魔道士試験、それは普通の依頼より数倍難しい依頼を単独で受けるために適正があるか判断し、見事合格すればS級魔道士としてそのようなクエストを受けることができるのだ。

 

S級魔道士試験の時はS級魔道士が試験官を努めることが多くラクサスがS級魔道士になった試験の相手はラクサスより数年速くS級魔道士になった私が努めるときに戦った時以来戦っていなかったが雷竜方天戟は並みの者なら圧殺してしまう位の威力を持っておりあの頃より格段に成長していることが分かる勝負だった。

 

「ところでラクサス、お前は『妖精の尻尾』の中で孤立してきていないか?」

 

ラクサスはラクサスの父であるイワン・ドレアーが破門された時から孤立を深めているような気がしていたが最近では仲間を罵倒したりなど態度の悪さから皆の反感を買ってきていた。

 

「当たり前だろ。なんで、俺があんな雑魚い連中と足並みを揃えないといけないんだ?普通の依頼ごときで苦戦しているマカオみたいな連中は俺の目指すギルドにいらねぇ。そんな奴等はさっさとギルドからいなくなってくれた方がギルドのためになるんだよぉ」

 

「お前本気で言っているのか?」

 

私が鋭い視線を向けるとさーてねと誤魔化してラクサスはその場から去っていった。

 

ラクサスはマカロフの血を引いているし、あんなことを言っても仲間のことを心のうちは大事に思っているかもしれない。なら、素直じゃないのも孫もかとラクサスの後ろ姿を見送りながらため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 


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