アルトリア・オルタのフェアリーテイル   作:かな

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注意、作者はFateのアニメとFGOしか知らないにわかです。


プロローグ

「ごちそうさま。うん、美味だった」

 

私は丼を既に食べ終えて山盛りになった丼の上に乗せて、食った食ったとお腹を押さえると人の良さそうな店長さんらしき男がニコニコしながら笑みを浮かべた。

 

「お粗末様、気持ちいい食べっぷりだったねお客さん」

 

「ああ、依頼(仕事)終わりでお腹減ってたのと旨かったからつい気が済むまで食べてしまった。流石は港町ハルジオン、新鮮で脂が乗った魚がたくさん揃っているな」

 

私は笑みを浮かべながら店主と談笑していると店の扉が乱暴に開かれ、二人組の柄の悪い男がワイワイと騒ぎながら入ってきて、粗暴な座り方をしたりマナーのなってない奴等だなぁと茶を啜りながら横目で見ていると店長がその柄の悪い男たちの注文を取りに行く。

 

「お客さん、ご注文は何にしますか?」

 

「ああ、とりあえず、金を持ってこい」

 

「ひっ」

 

そう言って男が剣を店主につきつけようとするのを見た瞬間、これはもう手を出すしかないなと思った私は瞬の速度でその店主に向けられた剣を掴んだ。

 

「おい、貴様ら何をやっている?」

 

そう言うと男たちは苛立ちの顔を此方に向けてくるが、怯えて腰を抜かす店主と男たちの間に立った私は男たちを睨み付けていた。

 

「おい、俺たちは『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』のサラマンダー様の部下たちだぜ。俺たちに逆らって只で済むと思うなよ」

 

「おいおい、この女、よく見たら結構いい顔してんじゃん。でも、そんな生意気なしゃべり方はいただけないなー。俺たちが厚生させてやるよー」

 

――こいつら実力の差も分からないのか?

 

薄気味悪い笑いをしてくる男たちに内心呆れて溜め息をついた私は剣を握っている手に軽く力を加えるとその剣はいとも容易く粉砕された。

 

「そちらこそ私が気に入った飯屋でこんなことして只で済むと思っているのか?それに私も『妖精の尻尾』の魔道士だがうちのギルドのサラマンダーはお前らのような下衆を部下にするような奴じゃない」

 

覇気を出して、そう語るとやっと実力の差を理解した男たちは腰を抜かし、ガクガクと体を大きく震わせながら怯えた目で此方を見ており、最初の威勢の良さは幻想のごとく消えてしまっていた。

 

それにしても、今、言った通り『妖精の尻尾』の魔道士である仲間のアイツがそんなことをする部下を持っていると思わないが、もし、仮にこいつらの上司がアイツだったとしたらそのときはぶちこ……軽くお仕置きをする必要がある。

 

「おい、貴様らそのサラマンダーのとこに案内しろ。拒否したら次はお前の頭がこの剣のようになるだけだが……勿論、案内してくれるよな」

 

「「は、はい」」

 

私が優しく笑顔で言うと男は震えた声ですぐに返事をしてくれた。物分かりがいい奴等で助かる。他人から見れば脅したからだろと言われそうだが、あくまで私は脅したのではなく、お願いしただけだ。勿論、異論は認めない。

 

「店主、店で騒いですまなかったな」

 

「いや、とんでもない。むしろ、助けてもらって感謝してもしきれないぐらいですよ。それにしてもお客さん、すごい魔道士だったんですね」

 

「ああ、じゃあ、これは代金だ。少し多いがこれは騒ぎを起こしてしまった迷惑料としてとっといてくれ。じゃあ、行くぞ」

 

私はお辞儀して見送りをしてくれる店主に律儀だなと思いつつサラマンダーの部下たちの案内によりそのサラマンダーの潜んでいる船がある船場に来たのだが肝心のその船がなかった。

 

これが意図することは――――

 

「私を騙すとはよっぽど怖いもの知らずの連中らしいな」

 

「やめてくれ。俺たちは船に近づかせないように見張る係りだ。俺たちがいない間にもう船が出ちまったんだよ。そのときにはもう女共を乗せ終わってたから」

 

私は男の襟元を掴んで軽く脅すが、男の話を聞くにどうやら本拠地である船がもう出港してしまったようでもうこの港から離れたところにいるらしい。

 

「はぁ、もういい」

 

私は男を突き放して、海上を見下ろすと一つだけ結構、大きな船があるのを見つけてあれかと標的を定めて海に向かって駆け出していくか 通常だとこのまま海に向かっていけばダイブしてしまうが私の体は落ちてしまう。

 

そう…それは通常ならばの話……だが、この世界ではファンタジーの世界のような奇跡を起こす力がある。

 

()()』、この世界にはそれが存在している。

 

そのとき、背中に突如現れた黒い魔方陣から黒いオーラを纏った風の翼を出す魔法を使い、そのまま風を斬って船に向かって飛んでいくと船の上が爆発する音と共にうちのギルドのサラマンダーの連れである私とは大違いの天使のような羽を生やした青い猫、ハッピーと見知らぬ金髪の少女が船から飛び出してきたのが見える。

 

「ハッピー」

 

「あ、アルトリア」

 

「誰この人?ってか飛んでる!!」

 

「あい、この人はアルトリア、ものすごく怖い人だけどオイラたちの仲間だよ」

 

「なんか聞こえた気がするが気のせいと言うことにしておこう。それで何が起こっている?」

 

「『妖精の尻尾』のサラマンダーを名乗ってる偽者とナツがこの船の中にいるんだ」

 

「そのサラマンダーが女性たちに人々を魅了する魔法『魅了(チャーム)』を使って外国に売り捌こうとしているんです。魔法を悪用して人を騙すなんて『妖精の尻尾』の魔道士ってこんなに最低最悪だったなんて……」

 

とりあえず、大体の状況を理解した。理解したからこそ私の中で『妖精の尻尾』の魔道士を名乗って外道行為をするその偽物のせいで私たち(フェアリーテイル)がこの外道と同じように扱われたことに怒りを覚える。

 

まだ『妖精の尻尾』の『妖精女王(ティターニア)』の異名を持つエルザみたいにオーバーキル、つまり、『聖剣』を使わない分甘いと言えるがやりすぎは良くないので半殺しで済まそうと私は妥協した。

 

「とりあえず、この船を沖に戻すことから始めるか」

 

「え?どうやって?」

 

「フッ、簡単なことだ」

 

私は不敵な笑みを浮かべて船の下に黒い魔方陣を出現させると黒い竜巻が船を包み込んでそのまま沖に運んでいく。勿論、着陸は優しくゆっくりと降ろしたがこの時ら船は軽くジェットコースターを越える絶叫マシンと化したから気持ち悪くなったやつがいるかもしれないがまぁ、良しとしよう。

 

「ほら、簡単なことだったろう」

 

私がルーシィとハッピーの方に向き直ると二人は開いた口が塞がらないような状態で驚いていた。

 

「いや、船を竜巻で沖に戻すなんて常識から外れすぎなんですが…」

 

「あい、それが……アルトリア様です」

 

「じゃあ、私も乗り込むとするか」

 

「あたしも行きます」

 

「オイラも」

 

こうして船に入ったのはいいが、船が止まり酔いが覚めたのか本物の『妖精の尻尾』のサラマンダーである桜髪の少年、ナツが偽物のサラマンダーを睨み付けていた。

 

「おい、さっさとこいつを摘まみ出せ」

 

「はっ」

 

偽物のサラマンダーは部下に命令を出して、部下にナツを襲わせそうとするが魔道士でもない人間がどうやっても『妖精の尻尾』で屈指の実力を持つナツに束でかかろうが敵うわけないだろう。それに今のナツはギルドを勝手に語られてキレている状態であり、これは私が手を下す前に彼らは半殺しになってしまいそうだ。

 

「ルーシィ、手を出す必要がないぞ」

 

「でも……」

 

「そう、言い忘れてたけどナツも魔道士だからね」

 

「えーっ、そうだったの!」

 

力任せで向かってくる男を無視して、ナツは着ていた上着を脱いでこの事件の主犯格である偽物のサラマンダーに静かな声で尋ねる。

 

「お前が『妖精の尻尾』の魔道士か?」

 

「そうだ、だから、どうした?」

 

「俺は『妖精の尻尾』のナツだ。おめぇなんか見たことねぇ」

 

向かってきた男を簡単に殴り飛ばしナツがそう言った瞬間、偽物のサラマンダーとルーシィ、部下の男たちが驚きの声をあげている中で私はハッピーに向き直る。

 

「なんだ言ってなかったのか?」

 

「ってことはアルトリアもハッピーも……」

 

「あい」

 

「『妖精の尻尾』の魔道士だが」

 

ハッピーは背中にある『妖精の尻尾』の紋章(ギルドマーク)、私は上着を軽く脱いで右の腕にある紋章を見せるとルーシィは驚きに固まっていた。

 

「本物だぜボラさん、どうします?」

 

「バカ……その名で呼ぶな!!だが、此方にも切り札がある。お願いしますゴマオ先輩」

 

「あーオラの出番だかー?」

 

現れたのはかなり太った身長二メートルもある男、ゴマオと呼ばれた男、確かどちらも昔『巨人の鼻(タイタンノーズ)』というギルドを追放された身であり、ボラは魔法で盗みを働き、ゴマオは無銭飲食を繰り返して現在、指名手配されていたはずだ。

 

「このゴマオにケンカ売るなんて良い度胸だ――――ッ!!」

 

私はゴマオと呼ばれた男を魔法を使わずに普通に殴り飛ばすと壁を破壊して、そのまま海に落ちていった。

 

「ゴマオ先輩――!」

 

「お前らこそ『妖精の尻尾』の名前を語って只で済むと思っているのか?」

 

「ごちゃごちゃうるせぇんだよこのクソガキ共がー!!」

 

私は怒りを込めて言うとボラが赤の魔方陣から炎の魔法を繰り出してくるが、ナツが私の前に立ち塞がり、炎に飲み込まれ、ルーシィは心配の声をあげ、ボラたちは邪悪な笑みを溢すがナツには火が()()()()ことを知っている私とハッピーは表情ひとつ変えずにそれを見ていた。

 

「あーこんな不味い火は初めてだ」

 

火をもしゃむしゃと喰らうナツに再び私とハッピー以外の顔が驚きに染まる。まぁ、ナツの魔法である竜を倒すために編み出された火の『滅竜魔法』は魔法のなかでもその強大な力によって封印され、見る影もなくなってきた『失われた魔法(ロストマジック)』の一つであり知名度がかなり少ない。

 

「ふぅ、喰ったら力が沸いてきた!!」

 

「ナツ、そいつらはサラマンダーの名を語った偽物、お前がぶっとばしてやれ」

 

「おう、いっくぞぉ火竜の咆哮!」

 

ナツの口の前に燃え盛る火のように赤い魔方陣が出現し、口から炎のブレスを吐いて、回りの雑魚を一掃したあとに今度は右手に魔方陣を出現させ、燃え盛る炎の拳を打ち込んだ。

 

「これが本物の――――『妖精の尻尾』の魔道士だ!」

 

「すごい……」

 

「ああ、そうだろう。だが、ナツ、お前はやりすぎだ」

 

私は過剰に暴れて港を軽く破壊しかけるナツの頭に拳骨を降り下ろして、面倒事を起こす前に沈めさせる。ナツは『妖精の尻尾』の魔道士の中で一番の問題児、これは『妖精の尻尾』のためにもナツのためにも必要な正義の鉄拳なのである。

 

「いてて……」

 

「お前は少し後先のことを考えろ」

 

たんこぶになったところを押さえながら涙目になっているナツに私は手を組ながら軽く説教をすると大勢の兵士たちが騒ぎを聞き付けたのか此方に向かってやってくる。

 

「おい、君たちこの騒ぎ事を何かねー!!」

 

「やべ、逃げるぞ」

 

「えっ?」

 

「だって、『妖精の尻尾(俺たちのギルド)』に入りたいんだろ?」

 

「そうなのか?」

 

「ああ、来いよルーシィ」

 

「うん」

 

「じゃあ、新しい『妖精の尻尾』のメンバーに改めて自己紹介しようか。私の名はアルトリア・オルタだ。アルトリアと呼んでくれ。よろしくな」

 

「うん、よろしくねアルトリア」

 

兵士たちから逃げているなかで自己紹介した時に言ったアルトリア・オルタ、それがこの世界にセイバーオルタの能力、姿を持って転生してしまっていた元大学生の男の名前である。

 

 

 

 


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