ニードレス・オーダー 【ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか】 作:概念
ご協力いただいた方には多大なる感謝を!
ヤベェよ…
switch手に入っちまったよ…
ヤベェよ…(更新速度的に)
「俺は、ロキファミリアに入ります。」
そう告げると風の向きが変わったような気がした
もしかしたら今の選択はこの世界における自分の運命を大きく左右するものだったのかもしれない。
その答えを静かに受け止めたヘスティアは今までとは違う、ただ静かな雰囲気で尋ねる
「どうしてか…理由を尋ねてもいいかな?」
俺は…
「俺は此処でやらなければいけない事があるんです、頼まれた事も…それを成し遂げる為にはロキファミリアの方がいいような気がして、ただそれだけなんです。ごめんなさい…」
その答えを聞くとヘスティアは俯き肩を震わせた。
怒ってる?
泣いている?
もしかしたら俺はこの小さくて心優しい女神を傷つけてしまったのか?
「あの…」
「ふふっ、ごめんごめん。ちょっと嬉しくてさ。そっかーロキファミリアでやりたい事かーなら仕方がないね!」
顔を上げたヘスティアは意外にも笑っていた。
「嬉しいんですか?」
「嬉しいさ!だってリツカ君はちゃんと悩んでくれたんだろう?」
「はい、多分此処に来て1番悩みました。」
「だったら嬉しいよ、今まで自分が誘った中でしっかり悩んでくれたのはリツカ君が初めてだからね!」
「でも団員は1人いるって言ってませんでしたっけ?」
「ベル君は即決だったからね、だから悩んでくれたのは君が初めてで間違いないよ。」
そう告げると横に座りヘスティアは語る。
「今でこそファミリアを名乗れてはいるけどついこの間までは眷属が1人もいなくてね…声をかけては見たんだがこんな僕の眷属になんて誰もなってはくれなかった。それどころか考えてすらくれなかったんだ。眷属が1人もいないことを知ると皆同様に話も聞かず去って言ったよ。あの頃は子供達には見る目がないー!とか思ってたけど今考えれば初めてのダンジョンに1人で潜るのは大変だよね。ウチのベル君を見てたらわかるよ。それでも僕にとってはちょっとしたトラウマだぜ?だから君が最大派閥であるロキファミリアと団員が1人しかいないウチとをちゃんと迷って、答えを出してくれたんだって思うと嬉しくてね、君はいいやつだよ!」
背中をバシバシと叩かれる。
少し痛かったがそれは気分の悪いものではない。
「僕の事を振って行く先がロキの所っていうのがちょっと気に食わないけど、それはそれだ、君のことは応援してるよ!ロキの奴に追い出されたら僕のところに来ればいいさ!」
「はい…ありがとうございます!」
「あ、でもなぁ〜、僕、一度振られちゃったしなぁ〜そんな相手をファミリアにすんなり入れるのもなぁ〜。」
少しイジワルそうな顔をするヘスティア。
こういう人がするイジワルに関しての対処は簡単だ。
1.まずか弱い性格のフィーリングを下ろす。
2.目を少し潤ませて相手の瞳を見る。
3.なるべく切なそうな声で…
「えっ…だめ…ですか…?」
「うっ…」
WEAK WEAK WEAK
「じょ、冗談だからね!?君のことはちゃんと…」
ニヤニヤ
「は、計ったなぁー!」
心根が優しい人は庇護対象にすごく甘いからなぁ…この人神だけど。
きっと一生懸命で危なっかしくて放っておけない純粋な子供みたいなタイプがストライクだろう。
「ヘスティアが先にイジワルしたからでしょうに。」
「あ、名前…」
「ん?」
あ、普段から神格だの英霊だのと接してたせいで呼び捨てにしてしまった。
「いや、いいんだ。その呼ばれ方も嫌いじゃないぜ?リツカ君とはいい友達になれそうだ!」
なんだかこの世界に来て初めての気を許せる相手に出会った気がする。
「じゃあ僕は行くよ。あ、それと最後に…」
「なんですか?」
「君、『隠し事』してるだろう?」
「…ッ!?」
「やっぱりね、その反応を見ればわかるさ。」
「…どうしてそれを?」
「勘違いしないでくれよ?その事でどうこうって話じゃないんだ。君の隠してる事を暴こうとも思わない。ただ君が自分自身のことを話す時、どうも言葉を選んでる気がしてね。」
「…」
「まぁ話してみて君が悪いやつじゃないって思ったからね、おおかた嘘をあまりつきたくない、吐くとしても必要な時だけで済ませたいとでも思ってるんだろう。いいかい、知ってるかもしれないけど君たち子供は僕ら神には嘘がつけないんだ。だから
「はい…分かりました。」
納得がいった。
俺が『この世界の記憶』が無いと言った時に疑わなかった理由も。
俺の返答でヘスティアが喜んだ理由も。
俺の言葉が全て真実だとわかっていたんだ。
だからあんなに…
「俺の素性に関しては詳しい事は言えません。だけど、嘘をあまりつきたくないって…そう思ってます。」
嘘が通じない神に、そう告げる。
あなたの予想は当たっていてさっきまで楽しんでいたのも嘘じゃありませんよ、と。
「そうかい。」
そう言ってヘスティアは微笑んでくれた。
まっすぐ言うのが少し気恥ずかしかったからこんな言い方になっちゃったけど、伝わってよかった。
「ありがとうございます…俺、此処に来て色々大変だったりしてたけど何とかやって行けそうな気がします!」
頭を深く下げて感謝の意を伝える。
此処は異世界だ。
自分の知らない常識があって。
自分の知らない理があって。
それでも…
心の優しさと言うのはどの世界でも共通なんだ。
だったら常識や理の差なんて大した問題ではないではないか。
「それは何よりだよ。ロキの所に行く道は分かるかい?」
「そういえばそれで迷ったんでした…」
「此処の道を行くと大通りに出る、大通りに出たらバベルとは反対側にまっすぐ向かうんだ。町の一番端ぐらいに着いたら大きい館が見えるはずだからそこが黄昏の館だよ。」
「ありがとうございました!この恩は必ず…」
「いいって、それじゃあまたどこかで会おうじゃないか!」
そう言ってヘスティアは行ってしまった。
「…」
天を仰ぐと空は夕暮れの濃い赤に変わっていた。
そろそろ夜がやってくのだろう。
ヘスティアとはまたどこかで会えそうな気がする。
それじゃあ行こう。
その場に背を向けて立花は歩き出した。
「ふふ、面白い子だったなリツカ君。」
下界には様々な子供達がいて様々な物語を見せてくれる。
ベル君は一生懸命だけど危なっかしくて放っておけなくて、大好きなことには変わりないけれど…
あの子も大概危なっかしい。
果たして彼がロキファミリアに入った後にはどんな冒険が待ってるのだろうか?
「もしかしたら…」
自分のファミリアに入ってくれていた、そんな未来もあったのだろうか?
所詮は過ぎた事、
そんな事を想像せずにはいられなかった。