ニードレス・オーダー 【ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか】 作:概念
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まず一閃。
少年に襲いかかる寸前だった怪物の体勢を崩す。
次いで一閃。
振り返り殴りかかろうとして来た怪物の腕を舞うように躱しそのまま薙ぐ。
終に一閃。
壁に倒れかかった怪物の左肩から腰までを両断した。
切られた怪物の切断面からは醜悪な血が噴水のように吹き出し周囲の空間を紅く染める。
断末魔の叫びをあげる怪物はその目に宿していた凶悪な光を失い絶命した。
瞬間その体は塵となる。
そんなスプラッタな情景の最中でもその剣士は汚されることはなかった。
悪魔ぐらいの大きさの化物を切り捨てちゃったよ、あの人…
よく見ると剣士の正体は金髪美少女だ。
英霊…か?
確認するために歩き出そうとする足を後ろから肩を掴む強い力が遮った。
「よぉ、すまねぇがあのミノの野郎は遠征帰りの俺たちが逃しちまったやつなんだわ、ただでさえメンドクセェ事態になってるのに分け前だなんだとか更にメンドクセェことは言わないでくれるよなぁ?」
痛い痛い!この人力強すぎる!
どんなヤンキーかと振り返るとそこには銀髪のてっぺんにかわいいお耳を付けたDQNが立っていた。
「何だか分かりませんが分かりました!分かりましたからっ!」
「うし、もう行っていいぞ。」
強い力から解放されるがまだ鈍痛の残る肩をさする。
銀髪DQNは美少女の方に歩いて行ってしまった。
今のがこの特異点でのファーストコンタクトって考えるとこの先が思いやられるぞ…
それにしても分け前だなんだって言ってたが、もしかしたらさっきの怪物を倒すための職業がここには存在しているのか?
だとしたら頼もしいことこの上ないけど。
そんなことを考えているとすごい叫び声をして血に塗れた少年が走って逃げて行く。
直後DQNの大爆笑が聞こえる、また脅しでもかけたのだろうか?
あのDQN猫背でポッケに手突っ込んで口調も悪くて絵に描いたようなDQNだしありえるな。
あの耳は可愛いけど。
何はともあれ第一村人!
歩いて戻ってくる2人に声をかけて情報収集レッツゴーだぜ!
勇気を出して、せーの
「あのぅ…」
「あ゛ぁん?」
第一村人の難易度おかしいだろ絶対…
「テメェ、まだいやがったのか。そんなに死にてぇか、よしわかった。」
言い終わるのが早いか何かが目の前を通り過ぎた。
視界にはハラハラと前髪が何本か切られて宙を待っている。
え!うそ!?今攻撃されたの!?
「いやっ、違うんです、そうじゃなくて!」
「何が違ぇんだ、聞いてやるから言ってみろ。」
聞いてくれるのに構えは解いてくれないんですね…
「ベートさん…」
「あ?ちっ…わぁったよ」
美少女の言葉で何とか構えは解いてもらえた。
「私は…アイズ、アイズ・ヴァレンシュタイン。こちらがベート・ローガ。」
「チッ」
「藤丸立香です」
「どうか…したの?」
やっとまともに話ができる人に出会えた…
「もしかしてお二人は英霊ですか?」
「えい…れい?」
「二つ名のことか?『えいれい』なんて二つ名聞いたことねぇが…」
しまった、選択肢をミスったか…
2人が英霊を知らないという事は現地人と考えていいだろう。
「あ、いえ、少し混乱してて、実は…道に迷いまして…」
「道に?」
「迷ったぁ?」
ん?なんだこの2人の反応…
「ぶぅわははは!!迷った!こんな上層で?こいつズブの初心者じゃねぇか!地図の代わりに方位磁針でも持ってきましたか?わははははは!!」
「ベートさん…」
大爆笑じゃないですか、俺はいつの間にギャグを言っていたんだ?
「あー、こんな短時間に2回も大笑いするとはなぁ、くくくっ、お前、どこのファミリア所属だ?」
「ファミリア?」
サ◯ラダ?
「オイオイ恥ずかしいのは分かっけど隠すのはナシだぜ?これから助けてやるんだからそれぐらい教えろよ?」
「ファミリアってなんですか?」
「あ?」
爆笑ムードから一転。
ベートと呼ばれた銀髪の青年は明らかに顔をしかめた。
「まさか気でも狂ってんのか?ダンジョン内にファミリアすら知らない奴がいるなんて冗談にしても笑えねぇ…」
おいおい、空気が一気に変わっちまった、此処ではその『ファミリア』って奴がそんなに重要なのか?
「魔法」
「あ?」
「さっき魔法使ってた」
気付かれてたか…
魔法じゃなくて魔術だけどね、明確な違いは俺には分からないが。
「あぁ?やっぱてめぇ冒険者じゃねぇかよ!」
「いや、本当に分からないんですって!」
さっきからダンジョンだの冒険者だの魔法だのRPGか何かですか!?
「やっぱり頭がおかしくなったんじゃねーのか?」
会話するごとに明瞭になるこれは何かが違うという違和感。
今までの特異点だってだいぶ様々な違いはあったけど、あくまで『特異点』という一つの事象上での差異だった。
けれどこれは…
なんて表現したらいいか分からないけど何か根本的な所がずれているような…
こんな状況で全て話す訳にはいかないし、どう説明したものかな。
ピコーン!
決してミではないぞ、ピだ。
安心しろ、俺にいい考えがある!
「実は…自分記憶喪失でして」
「記憶喪失だぁ!?」
どーだこの完璧な言い訳は!
これでどんなに何も知らなくても俺は許されるはずだぜ、俺ってば天才な。
「はい、今まで自分が何してたのか、どんな理由で此処にいたのか、そういう記憶がスッポリと…」
「魔法は?」
「あ、あれは咄嗟に体が動いて…」
大丈夫、不自然なところはないはず、そのはずだ。
「ともかくコイツぁ胡散臭いトンデモ野郎って事だけは分かった。どうする?殺っとくか?」
まって!物騒すぎてシャレになってない!
及び腰になっていたところを少し考えていた金髪美少女、アイズさんが鶴の一声
「とりあえず、団長のとこ…」
「こんな怪しい奴をかぁ?」
「私が責任を持ちます、それに…」
「あの団長はそんなヤワな奴じゃねぇわな。」
団長?話から聞く限り相当すごそうな人だが…
「とりあえずついて来い、移動中妙な真似したら殺す。」
物騒だなぁ…
「分かりました…お願いします」
とりあえずは何とかなったけどこあれからどうするか、だ。
とりあえずその団長って人に合わせてもらえるのであったら話は早く進むかな。
DQN代表のベートみたいな人でなければだけど…
それにしても2人は英霊じゃなかった。
もしかしたら本当に俺1人しかレイシフトしていないのか?
まだ結論付けるには早すぎるけど…
これは最悪の場合も想定しないといけないかな。
「置いてくぞ。」
「あ、待ってください!」
アイズさんの表情からは何を考えてるのかは読めないけど
ベートは明らかに不機嫌そうだ。
そんな2人の速度少し早く、ついて行くのには苦労する事になった
アイズちゃんのぉ!
喋り方がぁ!
わからないぃ!
イェェェェェェェェェェイ!
…原作で勉強中です。
第一村人とのやりとり、いかがだったでしょう?
基本的に自分がやりたいように書いてる小説なのでフィーリングが合えば良いなと思ってます。
6/10 追記
アイズの言葉遣いを修正しました。
継承者さん、ありがとうございます。