ニードレス・オーダー 【ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか】   作:概念

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長期にわたる蒸発大変申し訳ありませんでした。


.02

サーヴァントのマスター自身が戦闘するという行為は端的に言ってしまえば絶対絶命を意味する

 

過去行われたとされる聖杯戦争ではその限りではなかったのかもしれないが、藤丸立香が人理修復において戦闘の矢面に立つ事は少なくとも推奨されていなかった

 

考えれば当たり前のことではあるが藤丸立香は人類史を修復できる最後の存在であるとともにマスターとして見出される前までは一般人として生きて来たのである

急ごしらえの魔術はサーヴァントを支援するだけのものであったし、戦闘は極力サーヴァントに任せていた

 

死ぬ事はそれ即ち人類史の消滅

 

そんな状況で彼はある一つの能力を身につけていた

 

能力というには少しばかり大げさであるが、そのせざるをえなかった成長は対峙しているベート・ローガの精神を逆なでするには十分であったのだ

 

「…チィ」

 

一瞬

 

なんの力も持っていない生意気なクソ野朗なんて一瞬でかたをつけてやろうと考えていた

 

しかしこの状況はなんだ?

 

なんでアイツは『立って』いられる?

 

「痛ったいなぁ…」

 

口では弱音を吐いているがその目は未だ死んでいなかった

 

最初の一撃

 

ベートは軽く意識を刈り取ろうと顎に向かって横薙ぎの蹴りを放った

 

少なくとも初見では俺の蹴りに反応できていなかったしこれで終わるとそう確信して

 

しかし現実はどうであろうか?

 

急所へと放った攻撃はその尽くが外され現実としてまだ目の前に立ち続けたいた

 

もちろんベートは全力ではない

 

レベル5であるベートが全力を出すという事は相手を『殺す』時だけであり、ましてやなんの力も持っていない常人に力を使う事などあってはならない

 

だが相反してベートは本気であった

 

手を抜いて万が一にも目の前の勘違いした男に合格されてはたまったものではない

 

だから全力は出していないが手を抜いてるわけではないのである

 

「うざってぇ…」

 

「それは…褒め言葉として受け取っとくよ」

 

と、軽口を叩いてみたもののそれほど立香自身にも余裕があるわけではない

 

ベートの攻撃を全て躱しているわけではない、躱せないものを単に急所から外しているだけだ

故にダメージは蓄積しているし立香自身もほぼ満身創痍の状態である

加えて立香の方には肉弾戦以上の攻撃手段は存在しない

決死を賭すなら一撃ぐらいは当てられる可能性は存在するであろうがそれでは意味がない

 

「なぁ、そろそろ止めては良いのではないか?」

 

リヴェリアがそう進言するもフィンとガレスは止めようとはしない

 

「レベル5のベート相手にあそこまで持っているなら素質はあると認めても良いだろう?これ以上はただ怪我を増やすだけだと思うのだが…」

 

そんな正当性溢れる言葉にフィンは苦笑いを浮かべる

 

「女性であるリヴェリアにはちょっと理解しがたいかもしれないね」

 

「何が…」

 

「意地だ」

 

ガレスはそう短く答えるとまた黙り込む

 

その視線は真剣に実力があまりにも離れた2人の戦いに向いていた

 

「ここで止めたらきっとわだかまりが生まれるよ、だったら全部ここで吐き出させちゃえば良いとは思わないかい?」

 

その言葉にリヴェリアは深くため息をつく

 

怪我をした場合治すのはこの3人のうちの誰になるかなどは分かりきった話になる故に

 

「そろそろ立ってんのもやっとだろ?横になって休んだ方がいいんじゃねぇか?」

 

その言葉に立香は己の状況にもかかわらず笑みをこぼす

 

「…結構優しいんだな」

 

「冗談も分かんねぇほどフラフラしてるってか?あぁ?」

 

戦い始めの頃から立香とベートは反比例しているようにその感情を変えて行った

 

最初に見せたベートへの激情は見る影もなく、ただ虎視眈々と反撃の機会を伺う立香

 

弱者と断じたものに煽られ、圧倒的な力の差を見せつけてるにもかかわらず立ち上がる姿により苛立ちを募らせるベート

 

誰がどう見ても立香が一方的に嬲られているだけの光景

 

にも関わらず、余裕をなくしているのはベートである

 

「やっぱり優しいよ、ベートは」

 

「テメェ…いい加減に…」

 

「確かに俺は弱いしベートは強いよ、でもそれは戦わない理由にはならないしベートに『庇われる』理由にもならない」

 

「俺には俺の戦いたい理由があって、それを妨げるなら幾ら強さに違いがあっても俺はそれを超えて行く」

 

過去、幾度となく困難はあり、試練はあり、絶望があった

 

その全ては度重なる奇跡の上に成り立っており、もう一度同じことをしろと言われてもほぼ不可能だろう

 

ただ、今この場所まで藤丸立香を立たせているのは何より、前に進む意思があったからに他ならない

 

この瞬間空気は完全に立香が支配した

 

「余計な事ぐだぐだ考えてないで来い!ベート・ローガ!今、この瞬間の敵はこの俺だ!」

 

もう言葉は必要ない、ここまで言われて黙っているベートでもない

 

返答は確実に意識を刈り取る蹴りとなって帰って来た

 

狙いは側頭部、立香の反応速度では絶対に回避できない一撃

 

だからこそ立香は見る前に回避を始めなければいけない

 

速すぎる一撃、だからこそ立香はこの瞬間にかけた

 

ジッっと髪に蹴りが掠める音がなり一か八かの賭けがここに成る

 

指をベートに向け唱える

 

「ガン…う…」

 

回る視界、絶えぬ吐き気、気を抜くと意識を持っていかれそうになる

 

「直撃は避けても風圧は避けられねぇだろ。それでも、人間相手なら脳を揺らすのには十分だ。」

 

「これで…ケリだ」

 

今までの中で一番弱い攻撃、それによって呆気なく立香は地に伏した

 

「不愉快なんだよ、雑魚が…」

 

倒れた立香を見ようともせずにベートは背を向ける

 

その表情は勝者だと言うのにも関わらず暗いものであった

 

「そこま…なっ…」

 

試合終了の掛け声をかけようとしたフィンが驚きの声を上げる

 

「テメェ…なんでまだ立っていられる…」

 

余裕はなかったはずだ、意識を断ったはずだ

 

「立ち上がれるはずがあるわけねぇだろ!」

 

「ーーーーーー告げる」

 

「汝の身は我が元に、我の運命は汝の剣にーーー」

 

「聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

「誓いを此処に」

 

「我は常世総ての善と成る者」

 

「我は常世総ての悪を敷く者」

 

「汝三大の言霊を纏う七天」

 

「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

誰も、その光景を見ていた誰もがその存在を知らない

 

神であるロキでさえも

 

それはこの世界、特にオラリオでは珍しくない「魔法」に到達する為に作り出された

 

多くの者が研鑽を積み、外法を犯し、冒涜的な手段にも手を染めてたどり着こうとした「魔法」という域

 

神の恩恵によって誰にでも手に入れられる可能性があるからこそ、この世界では発達しなかった文明

 

その名はーーー魔術

 

「やれやれ…どうにも私は厄介ごとに恵まれた運命にあるらしい…と言っても、今更だとは思うがね」




本文はリハビリ程度です。

今はただ、ご迷惑をおかけしたことに対して、謝罪をさせていただきます。

誠に申し訳ありませんでした。

PS

一年近く触れられなかったにも関わらず温かいお言葉をいただき嬉しさと申し訳なさでいっぱいいっぱいです…

ベートのレベルが4になっていた為レベル5に訂正しましたソウル01さん、ありがとうございます!

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