ヤンデレ勉強中の、なちょすです。
寒いですね。皆さん体調は気を付けて下さい。
コラボ短編第2話が始まりますよ。短編とか言いながら本編ぐらいありますが⋯。
前回に引き続き、病ん病ん頑張ります。
どうぞ、ごゆるりと⋯。
「ナッツキーーー!!!」
「やぁ鞠莉ちゃんんんんんっ!?!?」
100mぐらい助走をつけてきたんじゃないかと思う勢いで抱きつかれ、2人揃って玄関から廊下に吹っ飛ぶ。
「もう!帰ってきたならそう言ってよ!!私会いたかったんだからぁ♡」
「あっはは⋯ごめんごめん。昨日帰ってきてバタバタしててさ。」
「それって他の女の子と会ってたから?」
息が詰まる。
出会い頭にこんな豪速球を投げられるとは思わなかった。
ここで正直に話しても多分意味が無い。たまたま他のメンバーに出会ったなんてそれこそ言い訳でしかないのだろうから。
ごめん鞠莉ちゃん⋯。
「まさか⋯そんな女の子は向こうでもこっちでも居ないよ?」
「ふーん⋯嘘つくんだ。」
「え?」
「梨子から写真、送られてきたんだけど。これって会ってたんじゃないの?」
いつの間に撮られてたんだ。
鞠莉ちゃんが見せてきた携帯には、紛れもなく僕の写真が送られていた。
「ねぇ、何で嘘ついたの?メールも電話も出なかったし何で?」
冷や汗が背中を伝う。まさか幼馴染みにこんなに恐怖を感じるなんて⋯。
言葉を発する前に鞠莉ちゃんをこちらに抱き寄せる。
「ごめん。でも梨子ちゃんは本当にそういう関係じゃないんだ。でなければこんな風に君を抱きしめたりしないし、写真もカメラ目線になるはずでしょ?」
「んっ⋯まぁ、そこまで言うんだったら今日は許してあげる///次は無いから。」
「あぁ、鞠莉ちゃんにはもう下手糞な嘘はつかないよ。」
なんとか許してもらったけど⋯。
ヤバイな。予想以上に拗れてて手強い。
これがあと何人続くんだろうか。
「ふふ、じゃあ許してあげる代わりに⋯。」
「ちょちょちょ、鞠莉ちゃん!?なんで脱ごうとしてるのさ!!」
「あら、当然でしょ?ナツキは私のものなんだから。それにナツキになら良いわよ、何されても♡」
完全に予想外だ。ここまで独占欲が強くなるのかヤンデレって!
こんな事なら章を帰らせるんじゃなかった⋯。
「ストップ!一旦落ち着こう鞠莉ちゃん!」
「なーに?私とじゃ嫌なの?」
「違うよ、こういうのはやっぱりムードも大事だしそんなに急ぐことでもないでしょ??」
「あら、そうでも無いわ。だってマリーにとっては、これからナツキを私のものにする最高のムードだもの。それに、もう気づいてるんでしょ?Aqoursから好意が向けられてること。」
「それは⋯。」
「皆良いメンバーよ。大好きなのは本当。でもナツキに関しては譲らないわ。正直うっとおしいもの⋯ぜ・ん・い・ん♪」
この子、一体どこまで知ってるんだ。どっかで情報が漏れてたのか分からないけど、とにかくこのままじゃ不味い⋯!
「鞠莉。」
「⋯あら、何の用?カナン。」
「果南⋯ちゃん⋯?」
玄関に立っていたのは幼馴染みの1人、松浦果南ちゃん。
その目に光は無い。
「何してんの?」
「見て分からない?マーキングよ。ナツキは私の、私だけのものなの。邪魔しないでくれる?」
「へぇ⋯ナツは困ってるように見えるけどね。」
「ふふ、なーに?僻みかしら?」
「⋯⋯。」
服を脱ごうとしてる鞠莉ちゃんに馬乗りにされてる僕。そして玄関の果南ちゃん。
⋯地獄絵図だ。
「良いからどきなよ。それにダイヤに呼ばれてんでしょ?」
「あら、内緒にしてたはずなのに⋯梨子ね。OK、今日は退散するわよ。元々挨拶みたいなものだしね。じゃバイバイナツキ♡この続きは後でね♡」
嵐の様な彼女はそれだけ言い残して帰っていった。
ここに居るのは2人だけ。
鞠莉ちゃんに問い詰められた時以上の焦りを感じる。空気がまるで違うんだ⋯。
「ねぇ。」
「⋯うん。」
「大丈夫だった?」
「え、あ、うん、なんとか。ありがとう果南ちゃ⋯。」
その瞬間乾いた音が鳴り響く。
頬からじんわり来る痛みが無ければ何が起きたか分かんなかった。
「⋯え?」
「ねぇ、なんで鞠莉とあんな事になってたの?」
「いや、あれは鞠莉ちゃんが⋯」
再び頬を叩かれる。
「そういう事聞いてるんじゃないんだよ、ナツ。」
「⋯ごめん。本当に、ごめん。」
「反省してるならさ⋯ハグ、しよ?」
そう言って果南ちゃんは抱きついてくる。
さっきとは打って変わって、恥ずかしがりながらも甘えてくる様子は、昔のままだ。
「ごめんねナツ。痛かったよね?」
「いや、軽率だった僕がいけないんだよ。ありがとう果南ちゃん。」
「えへへ⋯そう言ってくれて嬉しいな///」
そう、軽率だった。彼女に問い詰められて、口から出たのは事実という名の言い訳。
下手をすれば、この子が一番変わってしまったのかもしれない。
いや、違うか⋯多分、皆がこのぐらいになってしまってるかもしれないなんて、頭によぎってしまう。
「ところで、今日はどうしたの?」
「会いたくなったから来ちゃった♪ねぇ、これから時間ある?」
「う、うん。まぁ⋯。」
「そっか!じゃあ家に来なよ!久しぶりで私も嬉しいんだよね⋯なんちって///」
申し訳ないけど、章には連絡を入れておこう。
家を出て果南ちゃんの家がある淡島に向かう為、僕らはフェリー乗り場へと足を運ぶ。
「ねぇ果南ちゃん。」
「ん?何?」
「この10年⋯僕が居なかった間は何があったんだい?」
「⋯⋯。」
隣を歩いてた彼女の足が止まる。
「何で?」
「ううん、気になっただけだよ。果南ちゃん昔より可愛くなってたから何があったのか知りたくなって⋯なんて?」
⋯我ながらなんて理由だ。
「ふーん。ま、まぁ?ナツがそう言うなら教えるけど⋯///」
「あぁ、お願いするよ。」
「って言っても、なんてことは無いんだよね。鞠莉が留学に行って帰ってきたり、スクールアイドルやったり⋯まぁ、ナツが居なくなった時は泣いちゃったけどさ。」
「⋯ごめん。」
「でもこうして戻ってきてくれたから許します。」
「ふふ、ありがとう。」
こうしてるだけなら普通の会話だ。
あったかも知れない別の世界。けど現実には、僕が変えてしまったというどうしようもない事実がつきまとう。
「あれ、夏喜さん!」
「へ?花丸ちゃん?と、ルビィちゃん⋯。」
「⋯夏喜さん、どうして果南さんと居るんですか?」
⋯最悪だ。1番起こって欲しくなかった事態になってしまった。
ルビィちゃんからしたら、友達が来るからと自分を帰らせた男が女の子と居る⋯そういうふうにしか見えてないと思う。
「友達って果南さんなんですか?それとも果南さんに会う口実を作るために騙したんですか??」
「⋯これを見てくれルビィちゃん。僕が朝会っていた男友達とのトーク履歴。帰らせるための口実なんかじゃないよ。」
「⋯なら良いです。」
「夏喜さんカッコよくなったずらぁ///」
「はは、ありがとうまるちゃん。」
そう言って彼女の頭を撫でると擽ったそうに肩をすくめる。
けどその手がいきなり掴まれ、彼女は無表情で僕に聞いてきた。
「こういう事、他の子にもしてるんですか?」
「い、いや⋯帰ってきてからはまるちゃんが最初だけど⋯。」
「⋯えへへ///おらが最初⋯ずら♪」
心臓のバクバクが止まらない。ここには3人の女の子がいる。
1人安心したらもう2人は爆発寸前。その繰り返しだ。
鋭い目つきをしたルビィちゃんの近くへ行き、頭を撫でる。
ダメで元々⋯果南ちゃんにまた叩かれるかもしれないけど、不器用でゴメン果南ちゃん!
「ルビィちゃんも、変な誤解させてごめんね。」
「⋯いいです、撫でてくれましたから⋯///」
「じゃあおら達はこれで。行こ、ルビィちゃん。」
そう言って2人はまた歩いて行った。
けど視界に入ってしまう⋯まるちゃんは、スカートの裾を強く握りしめていた。
「ナツ。」
「うん。」
振り向きざまに頬を叩かれる。
「ねぇ、何で?何で私だけ見てくれないの??」
「⋯ごめん。」
「⋯いいよ。私がナツの事どれだけ思ってるか教えてあげる。」
それだけ言い残して果南ちゃんは再び歩き出した。
連絡、入れとくか⋯。
それから果南ちゃんの家に着いて、家の人は居ないという状況が分かり僕は今リビングに居る。
手を縛られて。
「あのー⋯これはどういう状況?」
「だってこうでもしないとナツは分かってくれそうにないしね。これからはずっと一緒だよ、ナツ。」
そう言って微笑む彼女の目に光は無い。
この子は本気だ。
僕の行動を束縛してる意識は無くて、ただ自分だけを見ていてほしいんだ。
自分で言うのも気が引けるけど⋯。
「でもこれじゃあハグ出来ないよ?」
「私がするから良いの。ぎゅーっ!♪」
「⋯ありがとう。」
そんなやり取りをしてると、玄関からインターホンが鳴り響く。
「あれ、お客さん?今日予約あったかな?」
「僕はここに居るから行ってきてもいいよ。」
「うーん⋯じゃあすぐ帰ってくるね。」
「すいませーん。」
「はーい!」
「ここに島原さんは居ますか?」
「えっ?」
あぁ⋯連絡しておいてよかった。伝わるか分からない内容だったから来てくれるか心配だったけど⋯。
「⋯え、何?島原氏は縛りプレイが好きなの?」
「楽しくやってるように見えるなら眼科を紹介するよ、章。」
「冗談だよ。ほら、帰るぞ。ゴメンなさい、俺は彼の友達の章って言います。引越しの片付けほっぽり出してたんで一旦連れ帰ってもいいですか?」
「それは⋯。」
「ちゃんと帰しますよ。俺も彼も嘘はつきませんので。」
待ってくれよ章。そんな話は聞いてない。
「⋯絶対返して貰えますか?」
「もちろん。ですよね、中尉殿?」
「⋯そうだね。約束する。」
「ふーん。じゃあ良いですよ。」
恐ろしい約束を取り付けられたがこの場はなんとか助かった。
章に手の紐を解いてもらい、僕らは淡島を後にした。
「本当に助かったよ章。」
「全く⋯出掛けるだとかヘルプだとか忙しいな島原中尉は。愛されてんねぇ。」
「はは、ありがとうとでも言っておくよ⋯。」
「で、どうだい。何とかなりそうか?」
「⋯正直言うとキツイ。」
「だろうね。」
「章は知ってるのかい?ヤンデレの事。」
「知ってるも何も⋯色々あったからな⋯。」
そんな話をしてると、見知った後ろ姿を見かけた。
丁度いいや、『彼女』には聞きたいこともある。
「梨子ちゃん。」
「?あ、夏喜君♡」
「こんにちは。いきなりなんだけど聞きたいことがあるんだけど⋯。」
「うん、良いよ。」
「帰ってきた初日、いつの間に僕の写真撮ったの?」
「⋯鞠莉さんね。よく撮れてたでしょ?」
「あぁ、ビックリしたよ。」
心臓が潰れそうなくらいには。
「ねぇ夏喜君。私は⋯ううん、Aqoursはね、皆貴方のことが大好きなの。」
「そう⋯みたいだね。」
「なら情報を共有しないとフェアじゃないよね?だから教えたの⋯夏喜君が帰ってきた事。そしたら当然皆が取り合おうとする。その中で貴方に振り向いて貰えたら、ホントの勝ちだと思わない?」
⋯何を言ってるんだ?情報を共有?ホントの勝ち?
「でもね、教えてない事もあるんだよ?私は夏喜君の事なんでも知ってるんだから。例えば⋯鞠莉さんと一線越えようとしたり果南さんに監禁されそうになったり。」
「何で⋯その事⋯。」
僕の動揺もお構い無しに、彼女は僕の手を掴み自分の方へと引き寄せる。
ふと、耳元で囁かれた。
「ねぇ⋯もっと私の知らない夏喜君を見せて?」
背中がぞわりとする。
どこまで見透かされてるか⋯いや、『見られているか』全く分からない。
「じゃあ私はこれで。バイバイ、夏喜君♪」
「⋯すっごいなあの子。俺もビビったわ。」
「あぁ⋯不用意な行動は出来ないね。」
「取り敢えず⋯部屋、片付けるか。」
明日には果南ちゃんの所へ行かなきゃならないから、実質的今日中に色々と終わらせないといけない。片付けが終わり次第、章も東京へと帰る。
これからの事に一抹の不安を抱えながら、僕らは家へと戻ることにした。
はい、なちょすです。
さてさて、次回はコラボ短編最終話。
出番の少ない子もちらほらいますが、推しの方はごめんなさい。
次は一番長くなりそうです。
どのぐらいかと言われたら本編導入のイチャコラパートぐらいですよ。
ヤンデレになってるか全く謎ですね⋯なってます?
最終話も病ん病ん頑張ります。