ちょっと田舎で暮らしませんか?   作:なちょす

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やっほー、松浦果南だよ♪こんにチカ⋯で、良いんだっけ?今回は私達、AZALEAのお話だね。
マルの泳ぎの練習って事で、淡島に集まった私達AZALEAとナツ。それなのに、ナツに振り回されるしトラブル続きだしもう大変っ!主にダイヤが!!

ユニット編最後にお送りする、私達とナツの夏の⋯⋯ねぇ、このカンペ『なつ』が多すぎて読みにくいよ⋯。


水着の有用性について話をしようwith AZALEA

あぁ⋯太陽が眩しい。

ウミネコさんも鳴いている。

波が行き来する音で眠りにつけそうだ。

そう言えば、ウミネコさんの鳴き声って笑い声にも聴こえるんだよな。群れで飛ぶと仲間と笑いあっているみたいでこっちも思わず笑ってしまう。

 

まぁそんな事は割とどうでも良くて。水着のまま桟橋に座り、ぽけーっとしてるのも悪くない。

 

「なーにしてんの♪」

「冷たっ!!あぁ、果南ちゃんか⋯。」

 

青色のポニーテールを揺らしながらラムネを持ってきてくれたのは果南ちゃん。緑地な薄手のパーカーを着た彼女は、そのまま僕の隣へと腰掛けた。

 

「泳がないの?折角海に来てるのに。」

「果南ちゃんこそ良いのかい?海の申し子なのに。」

「あっはは!私ってそんなイメージなの?」

「う〜ん、曜ちゃんと果南ちゃんから水は切れない縁だからねぇ。」

 

高飛び込み日本代表クラスと、ダイビングショップの看板娘。海かプールかの違いはあれど、THE 水って感じだよね。

 

「疲れたずらぁ⋯。」

「少し休憩ですね。」

「お疲れ様マルちゃん、ダイヤちゃん。」

 

水着姿のまま海から上がってきた2人。これで、AZALEAの3人が勢揃いというわけだ。

8月も終わりへと駆け足になる頃、僕は淡島へと渡っていた。何やらマルちゃんの泳ぎの練習という事で、暇人と思われた僕は一緒に付いてくることになったのだ。予定が無かったわけではないけれど夕方くらいに戻れば全然大丈夫だし、何よりマルちゃんに泣きつかれてしまっては断るわけにもいかないしね。

彼女曰く、堅物と脳筋を1人で相手するのは無理だそうで。

思わず笑ってしまったけれど、このユニットの事が少しだけ心配になった夏喜君です。

 

「おや、果南さんまだ泳いでないのですか?」

「もうそろそろ干からびる頃ずら⋯。」

「私は魚かっ!」

『河童。』

「ナツ、ちょっと2人と泳いでくるね。」

「う、嘘ずらっ!冗談で⋯ずらぁっ!?」

「果南さんっ、私はまだ死にたく⋯ぴぎゃっ!?」

「あっはははははは!!飛び込めーーーっ!!♪」

『きゃあああああああっ!!』

 

桟橋の果てで、大きな大きな水しぶきが3本上がった。果南ちゃんの役回りが分かった気がする。娘さんと奥さんには結構からかわれるけれど、休日の家族サービスは盛大にしてくれるパパだ。すぐさま浮いてきた果南ちゃんは、マルちゃんの手を引いて浮き輪をその身体に被せていた。

 

⋯⋯おや?もう1人が見当たらない。

辺りを見回しても浮いてる様子はなく、思わず桟橋の縁へと近づいた時───。

 

「死ぬかと思いました。」

「うぉっ!!??」

 

縁に手を掛けて水面から顔を出したのは、ダイヤちゃんだった。

 

「何ですか?人を化け物のように⋯というか、前が見えません。」

「は⋯ははっ⋯⋯やめよ?心臓に悪いから⋯。」

 

髪の毛が顔の前に垂れ下がり表情の見えないダイヤちゃんは、直接言ったら怒られるけどテレビの中から現れるあの子にそっくりだった。

彼女は、髪の隙間からこちらを確認するなり手を伸ばしてきた。

 

「どうしたの?」

「ここからでは上がれないので手を貸していただければと⋯。」

「あぁそういうことか。はい、どうぞ?」

「ありがとうございます。では⋯果南さん。」

「はーい。」

「えっ、果南ちゃん?あれ?えっ?」

 

どうしたものか⋯いつの間にかこちらへ来ていた果南ちゃんは桟橋の下から姿を現すなりダイヤちゃんの手を掴んでいる僕の右手をがっしりと両手で掴んだ。

無論、ダイヤちゃんも両手⋯おやおや、これはひょっとすると───

 

 

『せぇーのっ!!』

 

 

桟橋の支柱に足をかけたJK2人分のパワーが、僕を空へと放り出した。世界は反転し、僕の頭上には青い世界が広がっている。

ほぅら⋯耳を澄ませば、今にも歌声が聞こえてきそうじゃないか。

こーのー大空───

 

「にぃいいいいいっ!!!」

 

最後に見たのは、してやったりとニヤける2人の3年生と浮き輪にハマったままキョトンとしている1年生の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさかダイヤちゃんが主犯だったなんて⋯。」

「ふふっ、私だってたまにはこういう事をしますわ。」

「それに折角だからナツも泳がなきゃね〜♪」

 

島原 夏喜水没事件の真相を聞かされた僕は、思いもよらない犯人に驚きを隠せなかった。(2~3分だけどね。)

今は4人でぷかぷかと海月のように海の上を漂っている最中だ。浮き輪にハマったマルちゃんとダイヤちゃん。浮き輪にお尻だけハマった僕と果南ちゃん。

やってみたかったんだよなぁ、これ。何にも考えないでただプカプカと浮かび続けるってこんなにも気持ちいいものだったなんて⋯。

 

「あっはは、ナツってば凄い腑抜け顔!」

「もう⋯このままでいたいよ⋯。」

「ここはお風呂じゃないずらよ。」

「わっぷ。」

「まぁ⋯漂うのが落ち着くのは何となく分かりますが⋯果南さん。」

「ん?」

「いつまでそのパーカーを着てるんですか?」

「っ⋯!///」

 

ん⋯確かに。

 

「寒いのかい?」

「そ、そう言うわけじゃ⋯無いけど⋯///

「じゃあ⋯日焼けしたくないとか。」

「えっと⋯///」

「素直に言えば良いじゃないですか。新しい水着を見られるのが恥ずかしいと。」

「ダイヤッ!!///」

「純情果南さんの乙女な悩みずら〜。」

「うぅ⋯マルぅ⋯///」

 

成程成程。これは⋯僕にどうにかできる問題なのだろうか。確かに幼馴染とはいえ彼女だって年頃の女の子だ。普段はダイビング用のウエットスーツも来てる事だし、少々恥ずかしさもある事だろうしね。

 

「⋯ナツは見たい?///」

「うん?」

 

バッターボックス高めの轟速ストレート。

 

「うんって言ったずら。」

「うんって言いましたね。」

「いや、今の『うん』はそういう事じゃ───。」

「うぅっ⋯///ナツがそこまで言うんだったら⋯。」

「ここには会話をしてくれる子が居ないみたいだ。」

 

どんどん話が進んでいってしまう。というか、これじゃあ僕が幼馴染みの水着姿を期待しているみたいじゃあないか。いけないいけない⋯新学期から彼女達の高校で用務員生活だというのに、根も葉もない噂話になってしまう。

 

「果南ちゃん、一旦落ち着こう。落ち着いて話をすれば───。」

「ど、どうぞっ!!///」

「Wao!!」

 

時すでに遅し!!眼前に広がるのは白と青のストライプ柄で、赤い紐で結ばれた可愛らしい水着だった。

 

『⋯⋯⋯⋯。』

「な、何か言ってよ⋯。」

「どうぞって⋯。」

「妙にエッチずら。」

「素直に可愛いと思うよ。」

「っ⋯ありがと⋯///」

 

そう言うや否や、彼女は僕のハマっている浮き輪に手を伸ばし、透明な樹脂な部分を引っ張った。

 

あれ?これ空気穴じゃ───。

 

「ねぇ果南ちゃん。何で今ここ引っぱっがぼぼぼぼぼ⋯⋯。」

「ふふっ⋯。」

「プレイボーイな夏喜さんは、こうして内浦の海に沈んでいったずら⋯南無。」

「てゆーか、なんで私だけなのさ!///ダイヤとマルだって新しいじゃんっ!!」

「言ったところで伝わりませんし。」

「そもそも果南さんほど普段から水着も着てないです。」

 

何やら水上で話し声が聴こえる。ある事ない事言われているのだろうか⋯。このまま水の中で気持ちよく漂うのもいいけれど、やられてばかりじゃあ僕だって悔しいものがある。

ふふふ⋯キャピキャピ出来るのも今の内さ!!

 

「あれ?ダイヤ⋯浮き輪沈んでない?」

「何をおっしゃいますか。果南さんこそ。」

「あ、あれ?オラのも段々⋯。」

 

『⋯⋯⋯⋯⋯あーーーーーっ!!!』

 

「あっはっはっは!!今ごぼ気づいてももうおぼぼぼ!!」

「ナツっ!!」

「溺れながら勝ち誇られるのは何故か屈辱ですわっ!!」

 

正直めっちゃ苦しい。少しだけ水を飲んだ事で喉の奥が塩辛いんだ。

けれど、それを気にする余裕は無い。だって泳げない子が1人居るからね!!

 

「え!?えっ!?ど、どうしたらっ⋯!」

「やぁマルちゃん。」

「夏喜さん、オラ本当に泳げなくて───!!」

「うん、知ってるよ。だからこうして⋯ほら!おんぶすれば、もう大丈夫!」

「そうするぐらいなら最初から沈めないで欲しいずらぁ⋯。」

「恨むなら、あそこで沈んでいく先輩方を恨んでおくれ。それとね?」

「何ですか⋯?」

「あんまり密着されると、ちょっと不味いかな〜って⋯。」

「どういう⋯っ!///ご、ごめんなさいっ!!///」

 

よっぽど焦っていたのか、僕の首はギリギリと締め上げられていたよ。バランスが取りにくいから別に離れたりはしなくて良かったんだけど⋯どうしてかマルちゃんは忙しなくモゾモゾと動いている。

 

「見なよダイヤ、あれ絶対考えが食い違ってるやつ。」

「花丸さん程のモノを持ってしても気づかないのですね⋯あの鈍感は。」

 

沈んだ3年生からの視線が凄く痛い。何だろう、この気持ち⋯。

 

「と、取り敢えず桟橋に上げるよ。登れそうかい?」

「えっと⋯多分、大丈夫です⋯ずら///」

「んじゃあ⋯よいっ、しょ!!」

 

桟橋の近くまでいき、背中で彼女を上へと押し上げた。頭の上から溜息が聴こえたから、多分上手く登れたことだろう。

 

さっ、後は僕もしれっと登って───。

 

「ナーツ?♡」

「どこへ行くつもりですか?♡」

「⋯⋯あっはは⋯ですよねー⋯?」

 

両肩に指がめり込んでいる。

恐らくは逃がしてもらえないだろう。ヒロ、後はヨロシクな⋯。

 

『せいっ!!!!』

「うぼぁっ!!」

 

2対1の復讐は、彼女等に軍配が上がった。

愚かな22歳無職の社会人は海面に叩きつけられ───海へと還っていくのだった。

 

何かに指が引っかかった感覚と共に。

 

 

 

 

 

 

 

視界に広がるのは、ただ何処までも続く雲1つない青空だ。ぷかぷかと漂いながらも、ふと予定の事を思い出した。今は何時だろう。夏場のこの時期は秋が近づいているとはいえ、まだまだ日が暮れるまでは長い。だから思いの外時間が経っている事にも気づかずに過ごすことも結構ある。

 

そんな事を考えていれば、波とは違うちゃぷんとした水の流れが顔にかかった。

 

「ん⋯?」

「な、夏喜さん⋯。」

「ダイヤちゃ───いったぁ!?」

 

ぷかぷかを止め、そばに居た彼女の方を振り向くなり首をグリンと回されてしまった。余程さっきの浮き輪沈めが頭に来ているのだろうか。ここまで勢いのいい回し方は初めて食らったと思う。しかもダイヤちゃんに。

 

「ど⋯どうしたの?」

「あの⋯こっちを、向かないで下さい⋯。」

「えっ⋯⋯ゴメン、やり過ぎたね⋯。」

「ち、違いますよっ!?別に怒ってるとか嫌いになったとかではなく⋯その⋯///」

 

彼女にしては珍しく歯切れが悪い。それに、一瞬視界に入った時に見た彼女は緑色のパーカーを着ていた。それが意味する事はつまり───何?

 

「ふ、不本意なんですっ!///」

「不本意⋯?」

「探してたらたまたま近くに夏喜さんが流れてきて⋯その⋯焦ってしまって⋯!///」

「つ、つまり⋯?」

「だっ、だから!///⋯流されたんです⋯⋯///」

「あっ⋯あ〜⋯⋯あぁっ!!」

 

海面に叩きつけられた時、指が何かに引っかかっていた。まるで紐のようなものに。

つまりそういう事だ。

そして彼女は、今仕方なく漂流物(主犯)をひしっと掴んで後ろで待機している。

 

「⋯⋯僕だね。」

「だから『不本意だ』と言ったんですっ!///」

「すみません⋯。」

「マルー、あったー?」

「まだ見えないずらー!」

 

恐らく桟橋付近で外れてしまった(外してしまった)のだろう。果南ちゃんとマルちゃんの2人は桟橋の上と海からで手分けして探している。

 

「あの⋯僕も探してこようか?」

「良いから大人しくしてて下さい⋯本当に⋯///」

「はい⋯。」

 

不味い⋯これはどうしたものか。いや犯人僕だけどさ?言わば彼女のパーカーの下は何も纏っていないわけで。 肩を通して若干震手が震えている事も伝わっているわけで。きっと泣きそうなぐらい恥ずかしいんだろうし、そんな彼女の姿を考えると流石に───申し訳ない。

 

「⋯⋯夏喜さんは。」

 

ふと、ダイヤちゃんが口を開いた。

 

「夏喜さんは、どう思っているんですか?」

「えっ⋯?」

「私達の事です。」

 

肩を掴む手が、ほんの少し強くなる。

 

「10年振りにあった貴方は、良くも悪くも昔から変わらない貴方のままでした。だからこそ、私達も変わらずに接する事が出来ています。けど⋯その⋯い、異性として思うことだってあるんです⋯///」

「⋯うん。」

「貴方は無いんですか⋯?私達の事は、どう見えてるんですか?」

 

パーカーが背中に当たる。彼女がピタリと後ろにくっついたのだ。

異性として思う事⋯か。それはつまり、成長した彼女達を見たり、今のような状況でドキッとしたりするかどうかという事だろう。それは───。

 

「僕も1人の男だし、皆は本当に素敵に成長したと思う。」

「⋯⋯⋯。」

「だからその⋯ドキッとは、してるんだよ?余り表にしないだけで⋯。」

「そっ⋯そう、ですか⋯///」

 

だって、現役女子高生達が周りにいるんだもん。JKに手を出した男と言う話が広がった日には、未来は無いからね⋯いつでもドッキドキさ⋯!

 

「⋯夏喜さん。」

「何かな?」

「私は⋯いいえ。私達は───。」

 

『あったーーーーっ!!』

 

「果南さんっ!花丸さんっ!早くこちらにっ!!///」

「痛たたたたたたたっ!!えっ、ダイヤちゃん!?今そんな空気じゃ無かったよね!?と言うか指が!指が目にぃっ!!」

「お黙りなさいっ!!///大体、誰のせいでこんな事になってると思ってますのっ!?///少しでも目を開けてみなさい!新学期から貴方の良からぬ噂が浦の星中に広がることになりますわっ!!///」

「はいっ!すみませんでしたっ!!」

「これでしょー?」

「掲げて持ってくる馬鹿がどこに居ますかっ!!///」

「そんな照れなくても良いのに〜。ねぇ、ナツ?」

「がばほぼぼばぼ?」

「大体貴方はいつだって───!!」

 

幼馴染み特有のやり取りをするのは大いに結構なんですが⋯ダイヤちゃん。目を抑えたまま僕を沈めるのはどうかと。

あぁ⋯息継ぎ出来ない⋯意識がだんだん朦朧と───。

 

「ごめんってばー⋯って!ダイヤっ!ナツ浮いてきてるからっ!!死んじゃうからっ!!」

「は?何を言って⋯あっ。」

 

嗚呼⋯さようなら、愛しき日々よ⋯⋯。

 

 

 

 

 

次に目を覚ました時は、人工呼吸される寸前でした。




巷では何やら『渡辺 月』さんと言う名前が上がってますね。映画見てないので詳しくは存じませんが。
映画見てない⋯と言うより南の島に流されてお仕事してるので、映画どころか何も出来ませんががが。
立ち位置だけは決めちゃってます。

次回。
3話続けて、ちょ田舎番外編夏の陣⋯の、OVA。

『そうだ、島へ行こう。』

何と、映画を見てない作者の考える『渡辺 月』さんも登場(予定)。全員が高校を卒業した後のお話(予定)。μ'sからも、作者の推しと人妻が出ます(予定)。

あなたも、ちょっと田舎で暮らしませんか?

※アンケート投票は、2020/03/20〆切とします。

最終話の1個前、何を期待しますか?

  • μ's妹勢+サブキャラとの絡み
  • ヒロにこの馴れ初め+Aqours
  • 理亜ちゃんとのまさかのイチャコラ
  • 作者が1から考えるヤンデレもどき
  • 最終話に繋がる何か

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