なちょすです。
初期のちょ田舎っぽさを目指しましたが、おふざけが過ぎました。反省はしていません。
どうぞ!
未成熟DREAMER
「これは夢だ。」
見慣れた景色を見つめながら、一人そう呟く。強い日差しも、鳴き叫ぶ蝉の声も、目の前に広がる海も⋯夏に見た内浦の景色そのものだ。けれどここには人が居ない。見知った顔も見知らぬ顔も、誰1人として居ないんだ。
「おにーさん、何見てるのー?」
「ふふ⋯夢を見てるんだよ。」
「そっかー!」
声の主は、僕の下半身ほどの身長しかない小さな女の子。ピョンと飛び跳ねたアホ毛に橙色の髪の少女は、みかんのめいっぱい詰まったビニール袋を持ち、僕の隣に立っている。
見間違えるはずも無い⋯。こんな特徴的な子は一人しか知らないんだもん。
「⋯随分縮んじゃったね、千歌ちゃん。」
「あー!今千歌のことちっちゃいって言ったー!あれ?どうしておにーさん千歌の名前知ってるの!?」
「ふっふっふ⋯お兄さんはエスパーなんだよ!」
「カッコイイー!!♡」
いくら幼馴染みと言えども、この絵面はどうしたものか。夢じゃなかったら僕はもれなく不審者だよ⋯ははっ。
「それで、千歌ちゃんはそんなにいっぱいミカンを持ってどこに行くの?」
「んーとね、これからナツ君のお家でミカンを食べるの!皆も来るんだよ!」
「皆?」
「うん!千歌のお友達!でもよーちゃんと途中ではぐれちゃって⋯。」
なるほど。嫌な予感はするけど、この流れは皆きっと幼女化してるっていうアレだ。
幼馴染みを幼女化させる夢を見た自分を思いっきり殴り飛ばしたいね。どうするんだよこの罪悪感⋯。
「そっか⋯じゃあ曜ちゃんを見つけたら僕がそのナツ君って子の家まで送ってあげるよ。」
「本当!?あ!でもおにーさん、よーちゃんもナツ君も分からないんじゃ⋯。」
「エスパーだからね。皆のことは知ってるよ?特に⋯ナツ君はね⋯。」
「エスパーって凄いんだね!!」
そのナツ君がこうして話しかけてるのを知ったらこの子はどう思うかな⋯。
「千歌ちゃーん!」
「あ!梨子ちゃんだ!!」
「ひっ⋯!ち、千歌ちゃん⋯この人⋯だれ??」
「うーんとね⋯エスパーのおにーさん!」
赤みがかった髪の毛に、ツインテールの少女。そういえば梨子ちゃんの小さい頃を見るのは始めてかもな。
うん、どことなく面影が残ってる。
でも千歌ちゃんの後ろに隠れてる当たり、恥ずかしがり屋さんなのはこの頃からみたいだ。
「こんにちは、梨子ちゃん。」
「こ、こんにちは⋯。」
「だいじょーぶだよ梨子ちゃん!おにーさんナツ君のお友達だって!」
「あっはは⋯。2人ともナツ君とは仲がいいのかい?」
「うん!だって千歌、ナツ君の事だーいすきだもん!♡」
おぅふ。
「梨子ちゃんもだもんねー?♪」
「えっ、あっ⋯!ち、千歌ちゃん!!///」
「そっかそっか⋯それは何よりだよ⋯。」
「胸を押さえてどーしたの?」
「何でもないよ⋯恥ずかしくなったんだ⋯。」
『??』
その純粋な眼差しが痛い。一体僕の夢はどうなってるんだ。一体何をしてるんだよナツ君。
⋯⋯僕か。
「あっ、じゃあこれあげる!」
「これ⋯ミカン、皆で食べるんじゃないの?」
「みとねぇがね、『1人で食べないで皆に分けなさい』って言うの!だからおにーさんにもあげるね!」
「⋯ありがとう。」
「じゃあ行こう梨子ちゃん!」
「あっ、待って千歌ちゃん!あ、あの⋯失礼します⋯!」
「うん、気をつけてね。」
ビニール袋の持ち手を一緒に持ちながら、2人の幼馴染は『ナツ君』の家へと向かった。
夢でもミカン食べれるのかな⋯。どうやったら覚めるのかも分からないし、取り敢えず歩こう。
人の居ない静かな町中を、自分のペースで歩き続ける。波の音、ウミネコの笑い声にも似た鳴き声。それら全てが、現実の内浦と何も変わらない。
1年を通して色んな表情を見せるこの町だけれど、やっぱり夏が一番好きかな。
「善子ちゃん、危ないよー?」
「私は天使だから大丈夫なの!」
「うゅ⋯。」
そんな賑やかな声に視線を向けると、案の定小さくなった幼馴染み達の姿が。公園のジャングルジムの上に立つ女の子と、心配そうにそれを見つめる2人の女の子。
あぁ⋯この頃はまだ天使だったっけ。
「こんにちは。」
「あっ、こんにちは!」
「こ、こんにちは⋯。」
「貴方だれ??」
「んー⋯通りすがりの超能力者だよ。」
エスパーに引き続き超能力者。
我ながら何て言い分だ。もう2度とこんな事は言わないぞ。さっきから罪悪感と羞恥心が酷いよ⋯。
「ずら〜⋯お兄さん、超能力が使えるずら?」
「能力は使えないけど、皆の名前を当ててみせよう。うむむ⋯花丸ちゃん!」
「ずらっ!」
「ルビィちゃん!」
「ぴぎっ!」
「そして⋯天使の善子ちゃんっ!」
「何でわかるのー!?」
ふっ⋯当然さ。なんて、本人の前では口が裂けても言えないよ。
「超能力者だからね。皆はこれからお出かけかい?」
「あの⋯なつきしゃんのところに⋯遊びに⋯。」
「そっかそっか〜⋯頭を撫でてあげよう。」
「えへへ⋯///」
「おにーさんはプレイボーイずら??」
「ぐふっ⋯!一応聞くけれど⋯どうしてかな⋯?」
「なつきさんも同じように頭を撫でてくれるずら!!」
まるちゃんの中では、今も昔も僕はプレイボーイらしい。強く生きろよ、夢の中の夏喜。
「皆も夏喜君と仲が良かったりするのかな?」
「当然よ!ナツキは『てんかいじょーれい』で私と契約したからね!」
「その契約ってどういう意味?」
「んーっと⋯あ!これから先ずーっと愛し合って隣に居ること!」
「ぶっ!?」
「じゃあオラも『けいやく』したら一緒に居られるずら?」
「とーぜんでしょ!天界はふところが広いのよ!」
「る、ルビィ⋯も、大丈夫かな⋯?」
「ナツキもずら丸もルビィもみんな一緒なの!」
はぁ⋯いい子なんだよなぁ⋯。和むんだよなぁ⋯。でも実質プロポーズじゃないか。早すぎるよこっちの夏喜。
「それじゃあその夏喜君の所へ行かないとね。きっと千歌ちゃん達も待ってるよ。」
「ん!行くわよずら丸、ルビィ!」
「あっ!待ってよ善子ちゃん〜!!」
「置いていかないでぇええ〜〜〜!」
⋯これであと4人。出来れば4人まとまってもらえてると有難いんだけど⋯。
「ナツ〜〜〜!!♡」
「ぬっふ!!」
「果南ちゃんっ!!」
油断した⋯完っ全に油断した⋯。そうだよ⋯千歌ちゃんにミカン砲を伝授したのは、この子だったじゃないか⋯。恐るべし、元祖『カナン砲』⋯。
「あれ?ナツじゃない⋯。」
「だ、だから言ったじゃないですかっ!似てるけど大人だから違うって!!」
「果南は相変わらずアクティブね!♪」
「なに⋯元気なのはいい事だよ⋯。」
後々ポニーテールになるであろう髪を、後頭部でお団子にしている果南ちゃん。今とは正反対で、ルビィちゃんのようにオドオドしているダイヤちゃん。そして一番背が小さくても、変わらずにシャイニーな笑顔を見せている鞠莉ちゃん。
もう1人は⋯居ないか。
「ん〜⋯でもナツみたいな顔してるんだけどな〜⋯?」
「もう、果南ってば。ナツキはもっと子供っぽいよ?」
「それは褒められてるんだろうか⋯。」
「2人とも!まずは謝るのが先ですわ!特に果南ちゃんっ!!」
『ごめんなさい⋯。』
あぁ⋯いつもの光景に戻ったようで安心したよ。怒りながらも、『ちゃん』付けしてるところが可愛らしいけどね。
「本当にごめんなさい!私が知り合いに似てると言ってしまったばっかりに⋯。」
「ううん、気にしなくても大丈夫だよ。君達3人はそのくらい元気があった方が良いからね。夏喜君に会いに行くんでしょ?」
「ナツを知ってるの!?」
「勿論。千歌ちゃんやルビィちゃん達にも聞いたよ。これから皆で行くんだよね?」
「そうなの!ナツキと会うの久しぶりだから、今からすっごい楽しみ!!♪」
「あっはは⋯夏喜君も喜ぶよ。」
「皆ナツの事大好きだもんねー!♪」
「果南ちゃんっ!!///」
凄いな、夢の中の僕。幼くしてハーレム築いてるじゃないか。何だってこんな夢を僕は見てるんだろう⋯もう彼女達の真っ直ぐな言葉の一つ一つが突き刺さるよ⋯。
「じゃあそろそろ行くよ!またね、おにーさん!!」
「チャオ〜!♪」
「あっ!2人ともーーー!!」
「⋯行ってしまった。何にせよ、あとは1人⋯だな。」
でも、彼女の行きそうな場所は何となく想像がつく。それが例え夢でも、現実でも。きっと彼女は⋯みとしーにいる。
幸い今居る場所からみとしーが近かったから、そんなに時間はかからなかった。伊豆・三津シーパラダイスと書かれているバス停の横で、案の定彼女は泣きながら座り込んでいた。
本当であれば、声を掛けるのがベストアンサーだと思うし、間違いじゃない。でも僕がこの姿のまま行くのはきっと不正解なのだろう。
だってそうでしょ?
そうでなければ、道端にうちっちーの着ぐるみが置いてあるもんか。
「はぁ⋯。何でもありかよ、僕の夢⋯。」
謎のこだわりを持つ自分の夢に呆れながらも着ぐるみを装備する。炎天下の中これを着たら流石に死ぬかもしれないと思ったけれど、夢の影響なのか結構涼しかった。
これで大丈夫⋯なはず。
「うぅっ⋯ひっく⋯!千歌ちゃぁん⋯果南ちゃぁん⋯!ナツ君どこぉ⋯ひっく⋯!」
「どうしたのかな?」
「ぁ⋯うちっちぃー⋯!千歌ちゃんと、皆とはぐれちゃって⋯どこにいけばいいかわかんないよぉ⋯!」
「お友達とはぐれちゃったんだね?よーし、じゃあ僕に任せてよ!僕は色んな魔法が使えるからね♪まず君は⋯曜ちゃん!」
「わ⋯私の事、知ってるの?」
「勿論!お友達がいーっぱいいて、千歌ちゃんや果南ちゃんと仲良しなんだよね!」
「うん⋯。」
「うんうん、そんな素直な曜ちゃんには〜⋯はいっ!ミカン!どうぞ♪」
「わぁっ!曜ね、ミカンが大好きなの!千歌ちゃんもミカンが大好きなんだよ!」
「とっても仲良しさんだね〜!」
ゴメン千歌ちゃん。でも本当に助かった⋯この夢が覚めたらミカンあげるね。
「千歌ちゃんも果南ちゃんも、他の皆も⋯今は夏喜君っていう子の家に居るんだよ。」
「ナツ君の家⋯?そこに行ったら会える?」
「大丈夫、必ず会えるよ。千歌ちゃんとそう約束したからね♪」
「分かった!あ⋯で、でも1人だと怖いよ⋯。」
「僕が一緒に行ってあげる!夏喜君は良く知ってる子だからね!」
「良いの!?ありがとう、うちっちー!」
すっかり泣き止んでくれた彼女の小さな手を取り歩き出す。そういえばこの頃の曜ちゃんって、ルビィちゃんに匹敵するぐらい甘えん坊さんだったっけ。
彼女はたくさんの事を教えてくれた。友達の事、飛び込みの事、今日集まって遊ぶ事、『ナツ君』という子の事。
夢の中で幼馴染み完全攻略してるじゃないか⋯何なんだこの世界の僕。と言うより、これ僕の夢なんだよな⋯寝てる時に何を考えたらこんな罪悪感で一杯の夢を見られるんだよ⋯。
「よーーーちゃーーーん!!」
「あっ!!千歌ちゃんだぁっ!!」
「ね?言ったでしょ?♪」
「うんっ!ありがとう、うちっちー!!♪」
「じゃあ僕はそろそろ帰るよ。皆と仲良くね?」
「あ、待って!」
立ち去り際を彼女に呼び止められ、小さなその手が僕の手(うちっちー)を掴んできた。
「あのね⋯その、お礼にうちっちーだけに秘密を教えてあげる⋯。」
「秘密?」
「うん⋯千歌ちゃんにも言ってないんだ。だからうちっちーもナイショだよ?」
「うん、分かったよ。」
「あのね⋯曜ね───。」
◇
『待って///』
「うん?」
「その⋯変な夢を見たって話題を振ったのは確かに私達だけどさ⋯///」
「その内容は本人の前で言っちゃいけないと思う。///」
「そうだよ夏喜君!///曜ちゃんなんか体育座りして
今僕の家にはAqoursの9人が居る。元々特に予定も無くただゆるゆると過ごしてたんだけど、僕を含め皆が変わった夢を見たから話そうってなったんだ。まぁ⋯結果的に机に突っ伏したり、上を向いたり、ロダンの考える人の様になっていたりと実に様々なわけで。
隣に座ってる曜ちゃんの方を向くと、千歌ちゃんの言った通り体育座りで顔を埋めている。隠れていない耳は既に真っ赤っか。
「ってか、それを聞いた上でなんて返せばいいわけ⋯?///」
「あっはは、皆可愛いらしいなぁって思ってさ。」
「もう嫌ずら、このプレイボーイ⋯///」
「それで?結局曜ちゃんは最後になんて言ってたのかな〜?♪」
「ちょっ、果南さんっ!」
「マリーも興味あるなぁ♪夢の話なんだもん、現実なら話してOKじゃない?」
「え〜っと⋯。」
隣に目をやると、曜ちゃんはまだ動かない。ここは彼女の為にも内緒にするべきだろう⋯と、思ってはいる。
けれども、いつだって人間魔が差す時はあるんだ。それがたとえ自分の身を滅ぼすものだとしても、僕は僕自身の好奇心は止められない。
「⋯⋯『曜ね、ナツ君の事大好きだから、大きくなったらナツ君のお嫁さんになるんだ♡』って⋯。」
「わーーーーーーーーーーーっ!!!!///」
「へぶっ!!」
「あーーーー!!///あーーーーーーー!!!!///」
座布団が飛んできたと思ったらペチペチとした追撃!JKの無慈悲な往復ビンタが、僕の両頬を襲うっ!!
「ちょっ!?曜さんストップストップ!!」
「離して善子ちゃんっ!///はーなーしーてー!!///」
「落ち着こう曜ちゃんっ!ナツ君馬鹿になっちゃうからっ!!」
「もう馬鹿だから関係なーいーーー!!///」
「曜さん、大胆だね⋯///」
「あのぐらい言わないと伝わらないのかもしれないずら///」
「あっはは!曜ってば昔から恥ずかしがり屋さんだもんね〜♪」
「とってもCuteよ、曜〜♡」
「そこのかなまり!お茶飲んでないで止めるの手伝いなさいっ!!」
今日学んだ事。
恥ずかしがり屋な子を怒らせると、とても怖い。
夢の中の夏喜よ、間違ってもこういう大人になるんじゃないぞ。
「ナツ君の、馬鹿ぁーーーーーーーっ!!!!///」
次回、『ウチの堕天使は可愛い』
いつ上げるかは未定です。
※アンケート投票は、2020/03/20〆切とします。
最終話の1個前、何を期待しますか?
-
μ's妹勢+サブキャラとの絡み
-
ヒロにこの馴れ初め+Aqours
-
理亜ちゃんとのまさかのイチャコラ
-
作者が1から考えるヤンデレもどき
-
最終話に繋がる何か