ちょっと田舎で暮らしませんか?   作:なちょす

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『奇跡』と「軌跡」

季節を駆け抜けてきたんだ。

ナツ君と、ヒロ君と、皆と⋯ただ、我武者羅に走って、走って、走って。

いっぱい笑った。

泣くこともあった。

それでも、楽しかった。その1つ1つを思い出して、声を出して、笑顔で歌って。

 

そうして、私達の最後の曲は終わりをむかえる。

これが、本当に最後だった。

 

 

「さ⋯さ⋯!最高だったよAqoursーーー!!」

「果南ー!ダイヤー!鞠莉ーー!!超可愛いよーー!!♡」

「いよっ!堕天使!天使のよっちゃん!!花丸ちゃんとルビィちゃんもキャワたん!!♡」

「千歌!曜!梨子ちゃん!!もうサイッコーーー!♪」

 

 

観客席から色んな声が飛んでくる。

やっ⋯た、んだよね⋯?やり切れたんだよね⋯??

 

 

「千歌ちゃん⋯!」

「梨子ちゃん⋯私、私⋯!」

「うん!出来たよ、私達!!やり切れたんだよ!!」

「さて⋯最後はしっかり頼みますわよ、リーダーさん?」

「ダイヤさん⋯!はいっ!!」

 

また流れそうになる涙を腕でゴシゴシと拭い、お客さんへと向き直る。

 

「皆さん!応援して下さって、ありがとうございました!!皆さんの前で歌を歌って、私達は見つけられました!私達の輝きを!ラブライブまであともう少し⋯私達は私達らしく、最後まで駆け抜けます!今日ここで過ごしたこの日を、絶対に忘れません!!」

 

9色の光が沢山動いてる。

こんなに見てくれた人達が居る。

一緒に分かちあってくれる仲間が居る。

こんなに幸せな事ってあるのかな⋯。

 

 

「すぅ⋯高海 千歌!」

 

「渡辺 曜!」

 

「桜内 梨子!」

 

「国木田 花丸!」

 

「黒澤 ルビィ!」

 

「津島 善子!」

 

「黒澤 ダイヤ!」

 

「松浦 果南!」

 

「小原 鞠莉!」

 

「今日は本当に⋯⋯!!」

 

 

 

『ありがとうございま───』

 

 

 

 

「ちょぉおおおっと待ったぁああーーーー!!」

 

 

 

 

「⋯へ?」

 

 

最後の挨拶を終える直前、会場に私たち以外の声が響いた。

聞き覚えのある声⋯こんな話し方するのは⋯。

 

「ヒ⋯ヒロ、君⋯?」

「ぜぇー⋯はぁーっ⋯!!ま、間に合ったぁ⋯!!」

「なになに?」

「あの人誰??」

 

突然の飛び入り参加にお客さん達もざわめき出す。いや、私達もビックリしてるけど!!

と言うか⋯何でトナカイの着ぐるみ⋯?

 

「ア、アンタ⋯何して⋯!」

「そうだよ!今大事なライブ中で⋯!!」

「まぁまぁ落ち着いてくれよ梨子ちゃん、よっちゃん。これはあれだ。『サプライズ』ってやつ?」

『はぁ?』

「お客さーん!ビックリさせてすいませーん!自分怪しいものじゃないです!ドラムやってるヒロって言います!!運営さんからのサプライズ企画ってやつなのでご安心を!!」

「サプライズ?」

「そんな話あったっけ⋯?」

「ほら!お客さんも困惑してるじゃないですか!!」

「してるなぁ⋯にこにーめ、無理があるっつの。ま、良いや。ほい、これ皆の衣装な?」

「うわっとと!?い、衣装?」

 

手に持っていた紙袋を、ヒロ君から投げ渡される。でも全然理解が追いついてないよ⋯。

 

「皆ー!Aqoursのライブ、まだ見たくないかー!?」

「ちょおっ!?」

 

 

 

「み、見れるなら見たい!!」

「でも無理はしないでー!!」

 

 

 

「だ、そうだけど⋯どうする?」

「⋯⋯⋯まだ、やっていいの?」

「運営のおっかな〜い人も良いって言ってるんだ。それに、これはAqoursのライブ⋯だから、皆が決めてくれ。」

 

ライブが出来る。

でも、私達が出来る曲は一通り歌っちゃったんだ。良いのかな⋯。

 

「やろう、千歌。」

「果南ちゃん⋯。」

「折角の機会だし、ダメになるまでやっちゃおうよ!千歌っち♪」

「ル、ルビィも⋯やりたいです!」

「クックックッ⋯堕天の刻は終わらない⋯!」

「善子ちゃんは相変わらずずら⋯。」

「いつでも行けるよ、千歌ちゃん!」

「素直になって下さい。」

「私達は、どこまでも付いていくよ?♪」

 

皆がそう言ってくれる。

良いんだ⋯やっても。

なら⋯なら⋯!

 

「やるよ、ヒロ君!私達、歌いたい!!」

『いぇーーーーーい!!!!』

「にしし、だと思った!じゃあそれに着替えてきなよ!伝説の衣装担当が拵えた特別性だかんな!後の事は⋯俺達に(・・・)任せときなよ。」

「俺⋯達⋯?」

「そうだろ⋯相棒?」

 

 

ステージの端から出てきたのは、ギターを肩から下げたもう1匹のトナカイさん。

頭に包帯を巻いて歩いてくるその姿が、目から離れなかった。

 

 

「な⋯何、で⋯。」

 

「ちゃんと⋯聴いていたよ。皆の歌。最高のライブ、ありがとうね。」

 

「ナツ、君⋯なの?」

 

「遅刻、しちゃったかな⋯?」

 

 

いつ目が覚めるか分からないって言われた。私の代わりに事故に遭って、眠り続けてた人。

その人が、同じ場所に居る。

もう何年も見てなかった気さえする、その笑顔が⋯ずっと見たかった⋯。

 

「ナツ君⋯何で、ここに⋯。」

「あっはは⋯一応顧問だし⋯。手伝うって、言ったからね。」

「遅すぎんのよ馬鹿ナツキっ!!どんだけ心配したと思ってんのよ⋯!!」

「ごめん、善子ちゃん⋯。皆も、心配掛けちゃったね⋯。」

「まぁまぁ、お説教はまた後で!ライブもあるし、ぱぱっと着替えてきちゃいなよ!」

「もう!後で説明してもらうかんね、ナツ!!」

「ぶん殴ってやるから覚悟しなさいよ!?」

「あはは⋯覚悟しておきます⋯。」

 

皆が衣装チェンジの為にステージ脇へと走っていく。私も行かなくちゃ。

走り出して、ナツ君とすれ違った時⋯声をかけられた。

 

「千歌。」

「え?」

「ありがとう。」

 

ギターに手を掛けたナツ君の視線が鋭くなる。今まで見たことの無い顔で、私のことを呼び捨て⋯まるで、人が変わってしまったみたいに、彼は言葉を続けた。

 

「ステージで、待ってっからさ♪」

「え、あ、あの⋯ナツ、君?」

「千歌ちゃん、早く早くー!!」

「あ、うん!今行く!!」

 

楽しい遊び道具を手にしたように、無邪気に笑うナツ君。

何がどうなってるのか全く分からないけど、今は急がなくちゃ!折角貰ったチャンスだもんね!!

お願いナツ君、ヒロ君!

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて⋯と。やるか、ヒロ。」

「あぁ、まぁ⋯そのつもりだけどさ。お前そのギター持つと豹変するの治ってなかったんだな⋯。」

「そんなに違うか?」

 

自分ではそんなに変わったつもりは無いんだけどな⋯まぁ、それよりも。今は自分の役割を果たさなきゃ。あんまりのんびりしてたら、にこちゃんに怒られるしね⋯。

 

「皆さん、こんばんは。僕は島原 夏喜と言います。浦の星女学院の用務員で、一応Aqoursの顧問という形で働かせてもらってる者です。」

「顧問⋯?」

「用務員で顧問って新しいね〜。」

「島原先生ギターやってたんだ!」

「今日は皆さんに⋯お願いがあるんです。」

「お願い?」

「何すればいいのー島原先生ーー!!」

「あんまり僕が大きな声で言うと控え室まで聞こえちゃうかもしれないから⋯スクリーンを見て頂けませんか??」

 

僕がそう言うと、ステージの後ろにある大きなスクリーンに一つの画面が映し出される。これが、運営⋯にこちゃんや穂乃果達が考えてくれた事。

僕達からAqoursへ送る、ほんのささやかなクリスマスプレゼント。

 

「これって⋯。」

「これには、皆さんの力が必要なんです。彼女達の顧問として、幼馴染みとして⋯どうか、力を貸してください。」

 

ステージの上で、深々と頭を下げる。彼女達は歌うことを決めてくれた。心の底から、楽しんでいた。

とっても⋯輝いていたから。

 

「任しとけよ、先生ーー!!」

「千歌達の為なら何だってやるよー!!」

「何なら声出す練習もしておこうか!?」

「それは早いでしょ⋯。」

「⋯皆さん、本当に⋯ありがとうございます!」

「ナツ君!!」

 

着替えを終えたAqoursの皆が戻ってきた。それぞれ微妙に装飾の違うサンタの衣装⋯やっぱり凄いな、ことりは。

 

「おかえり、皆。」

「夏喜君⋯なんか、目つきが違うくない?」

「そんなに違うかい?まぁ⋯今だけだから大丈夫だと思うよ。」

「今だけって⋯ますます意味分かんないよナツ⋯。」

 

困惑してる皆の顔を、1人1人見ていく。何だか久しぶりだ⋯こうして皆と過ごしてる時が、やっぱり楽しいな。

まだ少し軋む体を無視して、ギターを構える。

 

「千歌、曜、梨子。花丸、ルビィ、善子。ダイヤ、果南、鞠莉。」

「へ?///」

「なななな⋯!?///」

「呼び捨て⋯くっ、ジャパニーズギャップ萌え⋯!///」

「あはは⋯違うと思う⋯///」

「Aqoursの皆。こんな事しか出来ないけれど、一夜限りのスペシャルライブ⋯楽しんでくれたら嬉しいな?」

「夏喜さん⋯?」

 

左手でコードの準備をし、深呼吸する。折れてるからやっぱり痛むけど、それ以上に楽しみなんだ。

ヒロが後ろに置いてあるドラムまで行ったのを確認して、準備が出来た事を目で合図する。

ドラムスティックによるカウントが始まり、最近までずっと練習してきたワンフレーズを繰り返しかき鳴らす。

 

終わったらもう1回。それが終わったらまた1回。

同じメロディーを、繰り返す。会場のボルテージが上がるまで、何度も。何度も。

 

 

「島原⋯夏喜⋯。ヒロ⋯?あっ!!」

「ど、どうしたの?」

「思い出したんだよ!夏喜とヒロって言ったら、μ'sと一緒にライブで演奏してた『ナツ×ヒロコンビ』だよ!!」

「へ?μ'sと一緒に姿を消したっていうあの2人?何でその2人が⋯それよりこの曲って!」

「⋯μ'sが、初めて9人で歌った歌⋯まさか⋯!!」

 

 

 

「皆ーーー!!」

 

 

 

 

ギターの音と共にヒロが声を張り上げる。

あぁ⋯わっるい顔してるなぁ⋯。そんな顔されちゃったら、楽しくなってくるじゃないか⋯!

 

「もう気づいたろー!?こいつのギターだけじゃまだまだ力不足だ!皆の声を貸してくれ!!折角のクリスマスライブ、皆でサンタさんを呼んでやろうぜーーー!!」

 

『いぇーーーい!!』

 

「はっ!まだまだ足りないよっ!!もっともっと声を張り上げろーーーー!!!」

 

『いぇーーーーーーーい!!!!』

 

「夏喜さん⋯こんなキャラでしたっけ⋯?」

「Aqoursの皆も頼むよ!!」

「え!?い、いぇーい⋯?」

「はははっ!皆盛り上がれぇっ!!」

 

 

会場内をひたすら煽る。もう、大丈夫かな?ヒロと目を合わせると、アイツはドラムを叩きだし、そのリズムはどんどん加速していく。

これで⋯お膳立ては充分でしょ。

 

後は頼んだよ、『穂乃果』。

 

 

「皆で声出していくぞぉーーー!!!」

「俺達に続けぇっ!!」

 

 

 

「「僕らのLIVE!!」」

 

『君とのLIFE!!』

 

 

ドラムに合わせイントロが始まる。

 

この二つの楽器や僕達の声に負けないぐらいの破裂音と共に、会場内には銀テープが発射される。

 

ステージの下から出てきたのは───

 

 

『伝説』だった。

 

 

 

「いぇーーーい!!皆盛り上がってるーーー!?♪」

「えっへへ〜♪ことりのおやつになるのは誰ですか〜??♡」

「うぅ⋯///は、恥ずかしいですぅ〜!!///」

「穂乃果さん!?ことりさんに海未さんまで!?」

「久々のライブ、テンション上っがるにゃ〜!!☆」

「り、凛ちゃん!あんまり急ぐと転んじゃうよ!!」

「凛さんがいるずらぁ!!⋯本物?映像??」

「はな、はななな!!花陽さんっ!?!?///」

「ん〜!なんだか懐かしいなぁこの感じ!♪」

「結構ギリギリなのよね⋯年齢的に⋯。」

「東條さんにエリーさん⋯?まさか⋯!」

「やっほ!改めまして、ウチは東條 希♪」

「絢瀬絵里よ。よろしくね♪」

「え、エリー⋯チカァ!♡」

「ダイヤ⋯。」

 

体が痛む。柄にもなく興奮したせいで頭もズキズキする。それでも⋯こんなに楽しいライブ、止められるわけないよね。

Aqoursともまた違うサンタコスに身を包んだ9人は、あの時と同じように歌って、踊って⋯Aqoursの皆と手を取り歌っている。

ルビィやダイヤは緊張しながらも一緒になって踊ってる。

千歌は穂乃果と一緒に笑顔で歌っている。

他の皆も、『にっこにに〜』をしたり、思い思いの時間を過ごしていた。

一瞬だけ、心配そうな目線を向ける真姫と目が合うけど、大丈夫の意味を込めて笑いかける。

 

曲が終わるまでの4分弱は、あっという間に過ぎ去っていった。

 

「ひゃ〜〜〜!!熱気が凄いね〜!!♪」

「当然でしょ!何たってこのにこにーが居るんだから〜♡」

「気持ち悪い⋯。」

「ぬわぁによッ!!」

「で、でも何で皆さんがここに居るんですか!?」

「あれ?ヒロ君言ってないのー!?」

「いやいや、言ったからね!?」

「これがサプライズ⋯ビックリした?」

「ナツ君⋯ビックリというか⋯。」

「頭が追いついてない⋯。」

 

ポカンとしてる皆の顔を見て、思わず笑ってしまう。あんなに楽しそうにしてたのにね。

 

「僕達からのプレゼント⋯受け取ってくれないかな?」

「僕達って───。」

 

千歌の言葉を遮るように、会場内の明かりが全て消えた。

あたりは真っ暗になり、何も見えなくなる。

 

「ひぃっ!?なになになに!?やだ!電気どこぉっ!?」

「果南Wait!大丈夫だから落ち着いて!!」

「ふふっ⋯さーん。」

「ヒ、ヒロ⋯?」

「にーい。」

「穂乃果さん、何のカウントですか!?」

「いーち⋯!」

 

『0!!』

 

 

0のカウントと同時に、一斉に照明が点灯する。観客席は1面の青。そして⋯。

 

 

 

『メリークリスマーーース!!!!♪』

 

 

 

僕も、ヒロも、μ'sの皆も⋯隠し持っていたクラッカーを、観客席の皆と一緒にAqoursへ向けて盛大に鳴らした。

 

「へ⋯?」

「えっへへ♪どうだった!?これ穂乃果達で考えたんだよ!!」

「歌を歌ってくれた皆に、お客さんを含めた僕達から送るクリスマスプレゼント⋯メリークリスマス、皆♪」

「ナツ君⋯。」

 

正直ここで不発したら物凄いカッコ悪いから大分緊張した⋯ライブでかいた汗とは違う冷や汗が流れたのは内緒だ。

 

「さ、次はアンタ達の番よ。」

「にこさん⋯。」

「元々千歌達のライブなのですから⋯もう1度、聴かせてもらえますか?」

「凛も一緒に歌いたいよ!」

「折角やし、ウチらも歌わせてもらっても良いかな?♪」

「ふっふっふ⋯こう見えて皆の歌は歌えるように練習してきてるからね!まぁ最後の新曲は流石に無理だけど⋯あはは⋯。」

「⋯はいっ⋯やり、たいです!」

「千歌ちゃん⋯。」

「私も⋯!一緒に、歌いたい⋯です!!」

 

涙を流しながら、千歌はそう答える。

ヒロとアイコンタクトをして、自分の持ち場へ付くことにした。

僕らも何が来ても演奏できるように練習してきたつもりだ。でもきっと⋯彼女達が歌うのは、一つだと思う。

 

Aqoursの始まりの歌。

 

 

「皆に色々助けてもらって、こんなに素敵なライブをプレゼントされて⋯私、幸せ者だ⋯。」

 

 

腕で涙を拭った千歌は、観客の方へと振り返った。

その横に並ぶ8人も、皆キラキラとした表情で。

 

 

「最後にもう一度だけ、皆さんの力を貸してください!私達だけじゃなくて、皆さんの声を聴かせてください!!私達の⋯Aqoursの始まりの歌───『君のこころは輝いてるかい?』!!」

 

 

再びギターをかき鳴らす。皆の声と想いを乗せて、会場内に響き渡らせる。

 

5年前、学校を廃校から救ってラブライブ優勝を果たし⋯『奇跡』を起こした少女達が居た。

 

その姿に憧れて、どんなに辛い事があっても諦めず⋯その「軌跡」を歩んできた少女達が居た。

 

一つのステージに、その2グループがいる。夢と、憧れと、輝き。誰か1人が欠けていても作られることのなかったステージ。

 

これは⋯彼女達の物語だ。

 

 

「千歌ちゃんっ!」

「穂乃果さん?」

「スクールアイドル、楽しいね!♪」

「っ⋯はいっ!!」

 

 

 

この日開催されたAqoursのクリスマスライブは、訪れた人の記憶にいつまでも残る⋯新しい伝説のライブになった。

 

 

「皆ーーー!!一緒にーーーー!!」

 

 

 

 

『メリーーークリスマーーーース!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナツく〜〜〜ん!!」

「うぐぅっ!?」

「わぁ⋯今のは入ったね⋯!」

「感心してる場合ですか⋯。」

 

ライブが無事終了し、僕達は今会場の前。Aqoursとμ'sが揃い踏みという何とも不思議な空間に僕は居る。

そして再び魔のミカン砲を食らったんだ⋯死にそう。

 

「どうだ千歌ちゃん⋯耐えたよ⋯!」

「わ〜!本当だ!♡」

「余裕ぶってるけど⋯死にそうな顔してるわよ。」

「ははは、大丈夫!1回死んだようなものだから!」

「うん、今のナツが言うとシャレにならない。」

「でも無事に終わって良かったにゃ〜♪」

「そうやね〜。まぁナツ君が目を覚ますのもう少し早かったら、ウチらの準備も楽やったけどね?」

「うっ⋯すみません⋯。」

 

それに関しては何も反論出来ない⋯事実だからね!!でも間一髪間に合って良かった⋯。

 

「あ、あの⋯夏喜さん。」

「ん、どうしたの?ルビィちゃん。」

「や、その⋯呼び捨て、じゃないんですね⋯。」

「へ?呼び捨て?」

「そうだよナツ君!私達の事ライブで呼び捨てにしてた!!」

 

⋯⋯どうしよう。全く記憶に無い。え、だって僕がでしょ?皆を呼び捨て?いやいや無い無い無い⋯無いよね?

 

「気の所為じゃないかな〜⋯?」

「Oops⋯覚えてないの?とってもCoolだったのに〜⋯。」

「許してやってくれ皆⋯ウチの元部長がキャラ作りどうこう言った結果、ギター弾くとああなるんだ⋯。」

「じゃあギター弾いてくれればあっちのナツ君になるの?」

「そゆこと。」

「厄介な体ね⋯。」

 

ギター弾いてる時どうなってるんだ僕⋯。

 

「何にせよ、これで一区切りだな!パーっと打ち上げでもやるべ!」

「こらこら。未成年を連れて飲みになんか行けないでしょ?」

「わーってるよ絵里さん。だから今日はそれぞれ解散で、また皆で集まろうって話だからさ。あ!でも皆居るならいい機会だな!」

「何の話だ?」

「まぁ、そんな大したことじゃないけど⋯にこにー、良いよな?」

「いや何の話⋯⋯⋯アンタ、まさか⋯!///」

 

何故かにこちゃんの手を取り僕達に向き合うヒロ。

え?何これ⋯何でにこちゃんこんな真っ赤になってるの?何でちょっと動揺してるの??ヒロは一体何を言おうとして───。

 

 

 

 

「俺達、結婚します!!」

 

 

 

「は?」

「最っ悪⋯⋯///」

 

 

 

『えぇええええええっ!?!?』

 

 

 

骨が軋むことも忘れて大声出してしまった⋯!何でこうも大事な事をしれっと言うんだこいつは!!

まさか鞠莉ちゃん経由で聞いたヒロの想い人って⋯!

 

「ちょちょ、聞いてないわよにこ!!」

「言うつもり無かったからよ⋯。」

「水臭いやんにこっち〜♪」

「どどど、どっちから!?どっちからですか!?」

「かよちん食い付き過ぎだよ〜。でもにこちゃんとヒロ君がね〜?♪」

「ヒロ⋯そういう事は早く言ってくれよ⋯!式の準備とかお金とか色々準備しないと!いや、その前ににこちゃんの所に友人として挨拶に行って⋯!」

「何でおめぇがテンパってんだよ⋯つか、挨拶すんな!」

「ねぇにこ!話聞かせてよ!今日はもうしっかり聞くまで返さないからねぇっ!?」

「だーーーっ!!だから言いたくなかったのよ!!///」

 

思わぬカミングアウトに、僕を含めたμ's陣営はテンヤワンヤ状態。今までの人生で一番驚いたさ⋯。だって『付き合ってます!』とかなら、まだ多少のビックリで済んだものをいきなり結婚って⋯。

 

「さ、流石μ's⋯!」

「スーパーアイドルともなればやはり格が違いますわね⋯!」

「うゆ⋯!」

「おい夏喜、あそこの3人の視線を何とかしてくれ。」

「僕には手強すぎる。」

「取り敢えずヒロ君にはこの話をたっぷりみっちり聞かせてもらうからね!今日は呑むよ!!じゃあナッツん、そういう事なので!!」

「いやいや、出来れば僕も聞きたいんだけど⋯。」

「夏喜⋯それは恐らく無理だと思いますよ?」

「え?」

「ことりもそう思うなぁ〜⋯だってほら。」

 

ことりが僕の後ろを指さしたからゆっくりと振り返る。

顔は笑ってるのに目が笑ってない少女達が居るね。そう言えば⋯鞠莉ちゃんから殴る宣言されてたっけ⋯。

 

絶対怒ってる〜⋯。

 

「言っとくけど⋯逃がさないわよナツキ?」

「散々心配かけておいてさぁ⋯どこに行こうとしてるのかなん?」

「あ、あの⋯すみません!!」

「ナツ君⋯千歌達にいっぱい心配かけたもん。」

「曜は許しません。」

 

曜ちゃんが自分の事を名前で呼ぶの初めて聞いた⋯。目線で比較的穏やかな顔の梨子ちゃんに助けを求める。

 

「夏喜君⋯千歌ちゃんと曜ちゃんを泣かせたので大人しく罪を償って下さい♪」

「⋯え、えっと⋯。」

「返事は?」

「はい!ゴメンなさい!!」

 

普段大人しい人が怒るととても怖いって言うのがよく分かりました。

 

「あ。夏喜の事殴るのは良いけど、全部終わったら検査するからちゃんと返してね?」

『はーい!』

「真姫ちゃん!?」

「ふふっ、じゃあそういう事だから。頑張ってよね♪」

「バイバーイ、ナッツん!!♡」

 

え〜⋯μ'sの皆さんはお帰りになられました。

さて、と。⋯⋯土下座しようか。

 

「ナツキー、早く行くわよー!」

「え?あ、あれ?行くってどこに⋯?」

「どこって⋯ナツの家だよ?」

「怒らないの⋯?」

「怪我が治ったら目一杯怒ってあげる♪」

「だからナツ君⋯帰ろう!一緒に!!」

 

笑顔のまま、9人はほんの少し泣いていた。

指し伸ばされたその小さな手が暖かくて⋯僕はここに居ていいんだって、そう教えてくれる。

 

いつか⋯こうして過ごす日々も終わってしまうのだろう。そう考えると、胸の中で余計に寂しさは増してしまう。

 

それでも、一緒に居たい。

 

いつか来る別れより、今皆と過ごしているこの時間が大切だから。

 

 

 

「ナツ君!」

 

 

 

 

 

『おかえりなさい!!』

 

 

 

 

 

「⋯ただいま。皆。」

 

 

 

 

僕達は、止まることは無い。

 

差し出された手を取って、皆で歩き出す。

 

笑いながら歩く帰り道。

 

 

 

 

季節外れの蝉が、鳴いた気がした。

 




ル「皆さん、こんにちは!」

花「こんにちは〜♪」

善「堕天降臨っ!!」

花「それ挨拶ずら?」

ル「あっはは⋯。皆さんのおかげ、このお話もここまで来る事が出来ました。本当にありがとうございます!」

善「クライマックスまであと一つ⋯けどその前に、3年生の話を挟ませてもらうわよ?♪」

花「3年生のお話は、おら達や千歌さん達とは少し違う⋯ちょっぴり切ない感じになる予定です。って、作者さんが言ってました!」

ル「最初は果南さん。『Act.7 貴方と見た流星』。 」

善「次はダイヤ⋯『Act.8 姉である為に』。」

花「最後は鞠莉さんで、『Act.9 託された願い』。」

ル「卒業を前にした3年生と夏喜さんのお話⋯。」

善「本編完結までほんの少しだけ空いちゃうけれど、いつも通りゆっくり見てくれれば有難いわ。」

花「ではでは!」


善花ル『あなたも、ちょっと田舎で暮らしませんか?♪』


P.S.春編終わってからにしようかめっちゃ悩んだけど、先にやります。

※アンケート投票は、2020/03/20〆切とします。

最終話の1個前、何を期待しますか?

  • μ's妹勢+サブキャラとの絡み
  • ヒロにこの馴れ初め+Aqours
  • 理亜ちゃんとのまさかのイチャコラ
  • 作者が1から考えるヤンデレもどき
  • 最終話に繋がる何か

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