ちょっと田舎で暮らしませんか?   作:なちょす

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皆さん、こんにチカ。
ぷちぐる中毒の、なちょすです。
ラストが近いのに今回はコメディチックに遊びます。
その為⋯人によってはちょ田舎らしくないキャラ崩壊が見受けられるかも知れませんが、『まぁ⋯なちょ公だし。』と思って頂ければ幸いです。

それではちょ田舎


キャラ作りと決め台詞

「身体中が痛い⋯。」

 

この間1年生と一緒に練習した疲れが未だに取れない⋯。僕ってこんなに貧弱だったんだな⋯。もう少し普段からちゃんと体力作りしよう。

そんな筋肉痛も取れないまま、何故か僕は理事長から呼び出しを食らっていた。

 

「それで⋯何で僕はここに呼ばれたのかな?」

「ごめんナツ⋯。」

「馬鹿を止められませんでしたわ⋯。」

「バカって何よ!マリーだってちゃんと考えてます〜!!」

「話が見えないんだけど⋯。」

「ほら、クリスマスライブの話。」

 

クリスマスライブ?彼女達が気にする事って⋯『自信を持て。』だっけ。

やっぱり皆、あの時の言葉を気にしてるんだな。なんて言うか⋯昔からの長い付き合いだからあまり気にしてなかったけど、にこちゃんの言葉の力って凄いよなぁ。

 

「私達に足りないのは自信⋯つまり恥を捨ててやらなくちゃいけないの。」

「はぁ⋯。」

「だからキャラ作り手伝って欲しいなって♡」

「あぁ、そういう事か。じゃ、仕事に戻るから頑張ってね♪」

「Wait!何処に行こうとしてるのよ!!」

「夏喜さん、全てを忘れて職務を全うしてくださいな。」

「こっちは私達で何とかしておくからさ。」

「果南!?ダイヤ!?待って待って!理由があるんだってば!!」

『理由〜?』

 

心底呆れた顔で、幼馴染み2人は言い出しっぺの理事長をじっとりと見つめている。

まぁ何だかんだで頭も切れるし、根の部分はかなり真面目な鞠莉ちゃんの事だから何か考えてるんだろうけど⋯。

 

「ほら、私達⋯っていうか、私以外どっちもお硬いイメージがあるじゃない?特にダイヤ。」

「否定はしませんが。」

「私そんな硬いかな?」

「ちょっとクール過ぎるのよね〜⋯。だから、どうせなら恥を捨てて色んなキャラをやってみようってこと!そしたら、ちょっとやそっとじゃ恥ずかしいだなんて感じないでしょ?」

「分からなくもないけど⋯僕が必要な理由は?」

「夏喜に色んな私達を見てもらうのが、1番恥ずかしいからよ♪」

「⋯⋯よりによって貴方は⋯。」

「言っとくけど⋯絶対自爆するからね、鞠莉。」

「まぁ⋯見るだけでいいなら大丈夫だけど⋯。」

「大丈夫だって!み〜んなハッピーになっちゃうんだから♡」

 

彼女が言うにはこうだ。

僕の目の前には二つの箱があり、そのうちの片方を僕が引く。そしたらそこに書いてある人物がもう一つの箱を引き、引いたキャラを演じるという実にシンプルなルールだ。

やるキャラに関しては、鞠莉ちゃんが事前に用意していたらしい。

 

「じゃあサクッと言っちゃいましょう♪」

『⋯⋯⋯⋯。』

「あ〜⋯大丈夫、かい?」

「ナツ⋯これから見る事は全部忘れて。」

「忘れられそうになかったら、どんな手を使ってでも忘れさせますので。」

「何されるんだ僕は⋯。」

「ほらナツキ、hurry hurry!!」

「はいはい⋯。あ、果南ちゃんだ。」

「げっ!?」

「じゃあ果南!引いて!」

「はぁ⋯もうなるようになれば───。」

 

一枚の紙を取り出した途端、選ばれし少女はその顔をどんどん赤くしていく。

そしてその場でうずくまりながら、たった一言呟いたのだった。

 

「⋯⋯⋯無理///」

「拒否権はありまセーン☆」

「無理無理無理っ!!///出来るわけないでしょこんなもんっ!!///」

「一体何引いて⋯あぁ。」

 

紙にでかでかと書かれていたのは、『妹』の文字。

つまりあれか⋯このサバサバお姉さん系女子の彼女が、誰かの妹という設定でキャラを演じなくてはならないのか⋯。

 

「⋯⋯⋯うん、悪くない。」

「ナツ!?」

「でしょ♪さ、果南?パパッとやっちゃって〜!」

「待って待って!い、妹って誰のさ!?///」

「アイツ。」

「僕らしい。」

「は、はぁ⋯!?///何で⋯うぐぐっ⋯あーーーもぅ!!///」

 

決心が付いたのか、それともヤケになっているだけなのか。何にせよ、果南ちゃん(妹)は顔を真っ赤にしながら僕の方へと近づいてくる。

 

「な、ナツ兄ぃ⋯?たまにはさ⋯ナツ兄ぃの方からハグ⋯して??///」

 

辺りを包む無音の静寂。

恥ずかしそうにモジモジとしている少女を前にして僕達は⋯。

 

「なんというか⋯。」

「これは⋯。」

「ええ⋯。」

 

『可愛い。』

 

「うるさいっ!///うるさいうるさい、ばーかばーかっ!!///」

 

素直な感想を述べただけなのに⋯。

というかあれだね。これで分かった事がある。

 

僕は妹に弱い。

 

あんなに可愛らしかった我が妹は、部屋の隅で顔をうずめ体育座りをしてしまった。

 

 

「これは⋯ヤバイですわね⋯。」

「じゃあナツキ!next!」

「ほいきた。あ、ダイヤちゃん。」

「まぁ⋯死ぬほど恥ずかしい思いをするのなら先に死んだ方がいいですわ⋯。」

「なーに言ってるのよ!さぁさぁ、ダイヤも引いて!」

「気乗りしませんが⋯これで。」

「ぶふっ!それ⋯それヤバイわ⋯!!」

 

彼女が引いた紙には、『極道』の文字。

⋯⋯アイドルの為のキャラ作りをしてるんだよな?あのダイヤちゃんが極道だなんて想像出来ないけど⋯。

 

「おい。」

『え?』

「これ入れたんは⋯お前か?」

「え、えっと⋯ダイヤ?」

「はよ答えろや。」

「はいっ!!私ですっ!!」

 

何だか見てはいけないものを見てしまった気がする。というか見ている。現在進行形で⋯。

 

「なぁ。自分アイドルやってるって自覚あるんか?仮にも人前で歌と踊りを見せる人間が極道キャラ?極道舐めとんのかっ!?」

「ダイヤ〜⋯お顔がscaredだよ⋯?」

「はぁああっ!?お前がやれ言うたんやろがっ!!こんなしょうもない紙まで用意して⋯見てみぃあそこのポニーテール。こんなんやらされたら誰だってあぁなるに決まっとるやろっ!!」

「はいっ!ごめんなさいっ!!」

「大体なぁ───」

「お⋯お姉、ちゃん⋯⋯?」

 

ドサッとカバンの落ちた音がする。理事長室の入口には、怯えた表情をした極道の妹さんの姿が。

 

これは⋯うん⋯擁護出来ないかもなぁ⋯⋯。

 

「⋯何やルビィ。」

「続けるんだ⋯。」

「そ、その⋯あの⋯善子ちゃんと花丸ちゃんと出掛ける事を言おうと思って⋯。」

「⋯⋯⋯遅くなる前に帰ってくるんやぞ。」

「う、うん、分かった⋯。お姉ちゃん、疲れてたらルビィに相談してね!えと⋯が、頑張ルビィ!!」

 

一人の来客は去り、この部屋には再びの静寂。さっきとは全く違う、言葉で言い表せない悲しみがこの空間を支配していた。

 

「⋯⋯ル⋯。」

「ル?」

「ルビィイイイイイイイっ!!誤解ですわぁあああっ!!」

 

嗚呼悲しきかな⋯。根が真面目故、キャラ作りにも全力を出した彼女はたった1人の愛しい妹にその姿を見られてしまったのだ。

部屋の隅には体育座りの少女が2人。

 

残るはこの案の言い出しっぺ。ある意味ラスボスの様な風格だ。

 

「さぁ、分かってるわねナツキ?」

「いいよ。鞠莉ちゃんの番なのは決まったんだ。楽しみにしてるよ。」

「ふふっ。マリーの虜にしてあげる♡カードは〜⋯これよ!!」

 

彼女が天高く掲げたカードには⋯『お嬢様』。

 

「あれ?なんか普通だ⋯。」

「⋯⋯⋯嘘⋯。」

「鞠莉ちゃん?」

「無理無理無理っ!!絶対無理よっ!!///」

 

彼女にとって有利なキャラかと思っていたけど、文字を見るなり真っ赤に狼狽え始めた鞠莉ちゃん⋯一体何が⋯。

 

「それはね⋯。」

「あ、おかえり2人とも。」

「鞠莉さんのあの破天荒な性格が、『お嬢様』というものを全否定してるのですわ。」

「まぁここだけの話、本人がちょっとだけ憧れてたりするんだけどね。」

「これ⋯引き直しってありかしら⋯。」

「許しませんわ。」

「言い出しっぺなんだから責任持ちなよ?」

「だってお嬢様よ!?この私が!!」

「僕は見たいかな。」

「ナツキ⋯いや、でも⋯⋯あぁーーーもうっ!やればいいんでしょっ!?///」

 

誰かさんと同じように半ばやけになってるけど、無事やってくれるそうで良かった。

息を整え、普段見ることのない優しい笑顔を彼女は見せてくる。

 

「ご機嫌よう。調子はどうかしら、夏喜さん?」

「え、あぁ⋯ちょっと身体が痛いけど元気だよ。」

「あっはは、それは大変♪しっかり休んで頂戴ね?夏喜さんが倒れでもしたら大変なんだから♡」

 

口元に指を当てクスリと笑う姿。優しい口調。

本物だ⋯本物のお嬢様がいる⋯。

まぁ⋯涙目になってるのは触れないでおくよ⋯。

 

「鞠莉、もう良いよ。お疲れ様⋯。」

「よく頑張りましたわね⋯。」

「もぅ⋯無理⋯⋯///絶対やるもんですか⋯///今度からちゃんと考えて発言する⋯。」

「ありがとう鞠莉ちゃん。ビックリしちゃったよ。でもやっぱり様になってるね。」

「ふっ⋯ふふふ⋯⋯ありがとうナツキ。なら『次』をやらなくちゃね。」

「へ?これで3人全員やったんじゃ⋯。」

「私、3人って言ったかしら⋯??」

「⋯⋯⋯まさか。」

「最後の役者が残ってるわよ、ナ・ツ・キ♡」

「嘘だぁーーーーーっ!!」

 

 

ここに来て僕まで回ってくるとは思わなかった⋯っていうか普通に考えたらそうだよね!僕だけ何もなしで終わるなんてこと、彼女が考えるはずないもんね!!

落ち込む僕をよそに、何やらもう一つ箱を出してきた鞠莉ちゃん。

 

「これは⋯?」

「中にナツキがやるキャラの名前が入ってるから、頑張ってね♪あ、もちろん決め台詞付きで。」

「ハードルが高いっ!!」

「そこはほら⋯大人の余裕ってやつで乗り切ってよ。三枚引いたら、そこに書いてあるキャラを誰にやるかはナツキの自由よ♪」

「3人分⋯。」

「もし私達をドキッとさせられたら⋯お仕事手伝ってあげる!」

「え。いいのかい?」

「もっちろんデース!!」

「分かった。じゃあやるよ。」

 

実は家に帰ってからどうしてもやりたい事があったんだ。最近バタバタしてて出来なかったから、穂乃果達に怒られるんじゃないかとヒヤヒヤしてたしね。

 

「じゃあこれ。⋯やったね。」

「なになに〜?『兄』、『舎弟』⋯『執事』。どんな手を使ったらこうなるのよ⋯。」

「ふふっ、分かりやすくていいじゃないか。じゃあ⋯やるよ。」

 

シンプルに、簡潔に⋯思ってる事を伝えよう。

 

「果南。」

「へ?///ナツ、いい今呼び捨て⋯///」

「気づけなくてごめんな。ハグ⋯しよっか。」

「いや、あの⋯ちょ、ナツ⋯??///」

 

恥ずかしさなんて捨ててやるさ。果南ちゃんの手を取り、自分の方へと抱きしめる。

 

「何かあったら、兄ちゃんに教えてくれよな。⋯大好きだよ、果南。」

「やっ、う⋯ぁ⋯⋯ありがと⋯///」

 

次、舎弟。こんなイメージしか無いけど、何事も勢いさ。

 

「お嬢。」

「私の舎弟なんですね⋯。」

「お嬢はいつも真面目すぎます⋯頭として気を張るのは分かりますが⋯たまには休むことも覚えてください。」

「は、はぁ⋯。」

「もしどうしても休む事が出来ないなら⋯俺が貴方の⋯ダイヤのそばでずっと支えますから。」

「っ⋯///す、好きにすればいいですわ⋯!」

 

最後は⋯彼女だ。

 

「お嬢様?」

「な、何かしら?」

「先程のキャラ作り、お見事でございました。ですが⋯。」

「あ⋯。」

 

彼女の手を取り、その綺麗な手の甲へと軽くキスをする。

 

「やはり⋯私はいつもの元気なお嬢様が好きです。勢い任せなところも、人1倍周りに目を向けているところも⋯その太陽の様な笑顔も⋯⋯愛しています。」

 

 

『⋯⋯⋯。』

 

 

今日の事は忘れよう。このキャラ作り三連チャンを思い出したら、きっと僕は夜も眠れなくなるぐらいの羞恥心に襲われる事だろう。

ましてや相手は幼馴染みで女子高生⋯こんな所見られてみろ、明日の朝はきっと警察署さ⋯。

 

「これで終わりなんだけど⋯⋯どうだった?」

「果南、ダイヤ行くよ。」

「そうだね。」

「元からそのつもりでしたし。」

「あ、あれ?あの〜⋯。」

「ほらナツキ、ボヤッとしてると私達で仕事終わらせちゃうわよ〜?」

「え。あ、ありがとう。じゃあ宜しくね。」

「まぁ⋯あれね。」

「元からナツに弱いのに⋯。」

「キャラ付けさせたら不味いですわね⋯。」

「え?なんか言ったかい??」

『馬鹿には関係ありません。』

「馬鹿って⋯馬鹿って⋯⋯。」

 

最後の最後で馬鹿呼ばわりされてしまったけど、お陰様であっという間に仕事を終える事が出来た。後は家に帰って続きをするだけ。

 

僕に与えられた役割⋯それを、きちんと仕上げなくちゃな。

 




千「皆さん、こんにチカー!!」

曜「おはヨーソロー!!」

梨「え?え??えっと⋯さよなら内⋯。」

千曜『⋯⋯⋯。』

梨「待って待って!今の無し!!///」

千「もう〜照れなくても良いのに〜♡」

曜「梨子ちゃんは可愛いなぁ♡」

梨「やらなきゃ良かった⋯///」

千「さてさて!今回は果南ちゃんが可愛かったり鞠莉ちゃんが自爆したり!」

曜「ダイヤさんがハッスルしたりと目白押しだったね!次はいよいよ私達!」

梨「クリスマスライブの前に過ごす最後の日常⋯それでも、いつもと変わらずのんびり過ごす私達をお楽しみ下さい♪」

千「それでは!次回のちょ田舎!!」

曜「光の海と!」

梨「あの日の笑顔!」


千曜梨『あなたも、ちょっと田舎で暮らしませんか?♪』










千「ただ⋯貴方に伝えたかったんだ。『ありがとう』って。」

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