まるには好きな人が居ます。
ニブチンでプレイボーイで無自覚で⋯優しくて気を配ってくれて、いつも大切に見守ってくれている人。
たまたま立ち寄った花屋さんで見つけた一本の花。
とても綺麗な花だったんだけど、お花屋さんに花言葉を聞いてビックリ!。
この花にまるの願いを込めて⋯あの人へ送ります♪
今日は練習がお休みの日。
だからまるは、放課後に図書委員の仕事をしてたんだ。
いつもはルビィちゃんと善子ちゃんが居たんだけど、2人共用事があったみたいで⋯。
「国木田さん、これ返却したいんだけど⋯。」
「あ、それならどうぞこちらに。」
1人で本を読んだりお仕事をして時間を過ごす図書室は久しぶりな感じ。
下校時間が過ぎてからも思わず本を読みふけっちゃって、夏喜さんが鍵を締めに来た時はビックリして大声出しちゃった⋯。///
それから、何か新しい発見があるかなって思って、今日はいつもと違う帰り道を1人で歩いてた。
本当は時間も遅いからあんまり良くないんだけどね⋯。
今日のまるはちょっぴり悪い子ずら♪
そこで見つけたのが、一軒のお花屋さん。
そんなに大きくないけれど、店の前に並ぶ花達は色とりどりに咲き誇っていた。
「わぁ⋯綺麗ずらぁ⋯♪」
「いらっしゃい、可愛いお客様?」
「あっ、こ、こんにちは!」
「あっはは!そんなに緊張しなくていいよ。」
店の奥から出てきたのは、夏喜さんと同じくらいの年齢のスラッとしたお姉さん。
まるとは対照的の綺麗な人ずら⋯。
「今日は何かお探しかな?」
「あ、いえ⋯初めてこの道を通ったんですけど、何かあるかなって探してて⋯そしたら、ここのお花が凄く綺麗だったから思わず眺めちゃいました。」
「お、嬉しい事言ってくれるね〜♪これ、全部私が育ててるからね!」
「本当ですか!?お姉さん凄いずら〜!!」
「えっへん、どんなもんよ!!って、ん?君は⋯もしかしてこの辺で話題のスクールアイドルちゃんかな?」
「はい!まる達の事知ってるんですか??」
「有名だよ?今人気急上昇中のスクールアイドル、『Aqours』だよね?」
「えへへ⋯そうです///」
こんな所でAqoursの事知ってる人に会えるなんて⋯まだまだ頑張らないといけないって皆で話してたけど、やっぱりこうやって声をかけてもらえるのは嬉しいな♪
「う〜、可愛いねぇ!と・こ・ろ・で⋯⋯君、誰かに恋してるでしょ?」
「へ?///」
そう言うとお姉さんはニヤッと含み笑いをする。
「な、なな、何でですか??///」
「お姉さんね、恋する乙女の香りはビンビンに感知しちゃうのよ!それにあなたは、かな〜り奥手な子と見た!」
「うぅ⋯居ます⋯///」
「にしし♪まぁ安心して!別に誰かに話すとかじゃないからさ。私も応援してあげるよ!そうだなぁ⋯男子に送るならどれがいいだろう⋯うむむ⋯。」
お姉さんが、まるの為に一生懸命花を見繕ってくれている。
綺麗で楽しくて優しいお姉さんだなぁ⋯。
その時、一輪の花がまるの目に止まった。
ピンクに黄色と様々な色が綺麗に咲いてるけど、どこか控えめで⋯けど、誰かに気づいて欲しいかのように静かに咲いている。
それがどうしても気になって、気づいたらまるはその花を手に持っていた。
「あの、お姉さん!」
「ん?」
「まる、これにします!」
「これって⋯なるへそ、そういう事か。」
お姉さんは1人で納得したようで、また笑顔になる。
「いいよ!きっと君にピッタリかもしれないね♪」
「あ、でもお金あんまり持ってきてなくて⋯。」
「うん?要らないよ?」
「え?」
「それは私からのプレゼントって事で、君にあげるからさ。初入店祝い?」
「そんな、申し訳ないです!」
「いいのいいの!私は恋する乙女の味方だから!それに、こういう時の好意は素直に受け取っておくのが大切だよ?1本は君に⋯1本は君の想い人に。どう使うかも、どう渡すかも君の自由だからね♪」
「お姉さん⋯ありがとうございます!」
「ふっ、良いってことよお嬢ちゃん。あ、その花の花言葉なんだけど⋯にひっ。ちょっとおいで?」
「?」
「ゴニョゴニョ⋯。」
「⋯え?」
耳元で意味を教えてもらったまるはビックリしちゃった。こんなに今の自分にそっくりな花があったなんて思わなかったから。
だからおもわずお姉さんと笑っちゃった。
本当にピッタリですね、って。
改めてお姉さんにお礼を言ってその日は家に帰った。もらった花の1本を部屋に飾り、もう1本は⋯本を読むのが好きだって言ってた夏喜さんへの贈り物に。
「これで⋯よし。」
出来上がったのは栞。
貰った花を押し花にした簡易的な栞だけど⋯喜んでくれるかな?
それから数日たったある日のこと。
また練習が休みの日と、図書委員の仕事が被った日。
今日、まるは渡すんだ。
多分あの人に送る初めてのプレゼント。
緊張でじんわりと手に汗をかく。
少しだけ体も震えてる。
告白をするわけじゃないのに、どうしてまるはこんなに緊張してるんだろう⋯。
気を紛らわす為に読んでいる本の内容も頭に入ってこない。
「あれ、まるちゃん?」
聞き慣れた声に顔を上げる。
「夏喜さん⋯。」
声が震えてなかったかな⋯ちゃんと笑えてるかな⋯。
あの花の花言葉を、この人は知ってたりするのかな⋯?
そんな心配事だけが、今のまるの頭を駆け巡っていた。
「どうかした?ちょっとぼんやりしてるけど⋯。」
「い、いや⋯何でもない、です⋯。」
「それならいいんだけど⋯無理はダメだからね?」
「はい。でも夏喜さんがそれ言えないと思いますよ?」
「うぐっ⋯!思わぬカウンターが⋯。」
「でもその時は、また皆でお手伝いするずら♪」
「お、いいのかい?そいつは助かるよ、まる先生。ちなみにこの間借りた本なんだけど、すっごい面白かったよ!」
「本当ですか!?」
「もう泣いたもん。ボロッボロ泣いたもん。」
「あはは!それはちょっと見たかったずら♪」
何気ない会話が⋯いつも見ている筈のこの笑顔が、さっきまでの緊張も不安もどこかへ連れ去ってくれたみたい。
まるはこの人が大好きなんだって、改めて気づいた。
もう、怖くない。
きっと⋯今なら言えるかな。
ちゃんと渡せるかな。
「夏喜さん。」
「ん?どうしたの?」
「これ、良かったら⋯使って下さい。」
「綺麗だね⋯栞かい?」
「はい。この間お花屋さんで見つけた花を押し花にしたんです。」
「なんだか優しい花だね⋯どことなくまるちゃんに似てる気がするよ。」
「え?」
「こんなに綺麗なのに、どこか控えめで、大人しくて⋯でもキラキラしてる。決して自分から目立つような感じじゃない所とかそっくりだよ。」
「ふふっ、それって新しい口説き文句ですか?」
「あっはは!こりゃ手厳しいな。でも本当にそう思ったんだよ。」
初めてまるがこの花を見た時、自分自身だと思った。
お姉さんに話を聞いて、それが確信になって⋯。
そして今、夏喜さんがこの花をまるみたいだって言ってくれた。
「夏喜さん、その花の名前⋯知ってますか?」
「ん〜⋯初めて見るかな?」
「それ、ヒメキンギョソウって言うんですよ。ヨーロッパやモロッコ、北アフリカに咲いてる花で、リナリアの花って言われてるんです。」
「へ〜そうなんだ!まる先生は物知りだなぁ⋯。」
「まるもお花屋さんの人に聞いただけなんですけどね⋯。けどその花は⋯。」
「ん?」
「⋯いえ、何でもないです。それでまたいっぱい本を読んでくれると嬉しいなって♪」
「勿論!大事に使わせてもらうね。あ、それと最終下校時間までにはちゃんと帰るんだよ〜?」
「ずら〜!」
そう言って夏喜さんは図書室をあとにする。
今はこれで満足かな。
きっとまだ伝えるべきじゃないから⋯。
まるの気持ちは、そっと心に秘めておくんだ。
けれどもし⋯もし夏喜さんがその花の意味を知って、まるが自分の気持ちを伝えられる日が来るのなら。
その時はきっと⋯。
「さ、そろそろ帰る準備をしようかな♪」
帰りの荷物をまとめながら、夏喜さんが歩いていった方を見つめ⋯ポツリと呟いた。
まるの気持ちを。
いつか叶って欲しい、小さな小さな願い事。
ヒメキンギョソウ。
リナリアの花。
花言葉は⋯⋯。
「夏喜さん⋯
な「まるちゃん破壊力ヤバいよ⋯文学少女強いよ⋯。」
花「そ、そうですか?えへへ⋯///」
な「ここまで本と栞が似合う女の子は中々居ないって。まるちゃん秋編から株爆上がり中だよ!」
花「カブ?まるの家はカブ育ててませんよ?」
な「もうそういう所も可愛いです。まるちゃん、これからお茶でもどう?」
花「お気持ちは有難いんですけど、お父さんとお母さんがなんて言うか分かりませんよ??」
な「へ?」
果ダ「「⋯⋯。」」
な「ゲェーッ!AZALEA一家!!」
果「ウチの娘を口説くなんていい度胸だね?」
ダ「ちょっとお話があるのでこちらへ来てくださいませ。」
な「ま、待ってください!活きアジの刑だけは!それだけはぁっ!!」
花「次回は善子ちゃんずら!素敵な堕天使ちゃんのお話をお楽しみに♪」
な「いやぁあああああああ!!」