ちょっと田舎で暮らしませんか?   作:なちょす

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皆さん、こんにチカ。
最近スランプ気味の、なちょすです。
今回はすっごい詰まりました⋯よりによってサブタイに。
知人にファンミ用Tシャツのデザイン頼まれて四苦八苦中でございます。

それではちょ田舎第15話、どうぞ!


タエ婆ちゃんと

皆と過ごした3週間を終えて、僕は今タエ婆ちゃん家の畑に来ている。この間の残り分の収穫の為だ。

平日は皆の練習とか学校の施錠もあるからなかなか来ることは出来なかったけど、週末となれば話は別。

先週・先々週で3人ずつ畑の収穫を皆に手伝ってもらったから、後は目の前に広がるミカン畑だけだ。

 

「ん〜いい匂い!今日はミカン日和だよぉ♪」

「あはは!千歌ちゃんは今日も、でしょ?」

「いっぱいなってるずらぁ⋯!」

 

ご存知我らがミカン大好き娘達。

これを最後にしてたから、この3人を後に回して置いて良かった。

 

「今日はこの間の残り分を全部収穫するからね?」

「おーーー!!」

「あれ?そう言えばお婆ちゃんは??」

「寒いから僕らが行くまで家で待っててって連絡しておいたよ。」

「じゃあお婆ちゃんを迎えに行くずら!」

 

家のインターホンを鳴らすと、奥からぬくぬくとした格好のタエ婆ちゃんが歩いてきた。

⋯暖かそうだなぁ。

 

「おや、皆いらっしゃい。」

「お婆ちゃんこんにちは!今日は私達がバリバリ働いちゃうよ~!」

「そうかい?それは助かるよ!最近体の動きが悪くてねぇ⋯昔みたいに1人で何でもっていうのが出来なくなってきちゃったよ。」

「お婆ちゃん、まる達がいつでも来るから無理しないでね⋯?」

「ありがとね、まるちゃん。本当孫みたいで可愛いねぇこのこの〜!」

「あはは!くすぐったいずら〜!」

 

久々に孫に会ったお婆ちゃんってこんな感じなんだろうな⋯なんか凄い⋯。

 

『まったりする⋯。』

 

ようちかコンビとハモる。見ると、2人ものほほんとした顔で目の前の光景を眺めている。

恐るべし田舎パワー⋯。

 

「千歌ちゃんも曜ちゃんもまるちゃんも⋯ここに来てくれたみーんなが私の孫みたいなもんさね。勿論ナツ坊もだよ?」

「はは、ありがとう婆ちゃん。」

「寒かったろう?中でゆっくりしていき。急がなくても畑のミカンは逃げないからね。」

「分かった!おじゃましまーす!」

「ちょ、千歌ちゃん!?お、おじゃましまーす!」

「⋯何とかは風邪ひかないって言うけどあながち間違いじゃないかもね。」

「夏喜さん、それバレたら怒られますよ?」

 

しまった!つい口が⋯!

いや、まぁ⋯元気なのはいい事だよ。

 

「ねぇ、お婆ちゃん。」

「何だい曜ちゃん?」

「この間の続きで、ナツ君の昔の事聞きたいな♪」

「え。」

「あ、私も聞きたい!夏喜少年の一生!!」

 

諦めてなかったのか曜ちゃん⋯!正直前回のでかなり羞恥心というものを思い知らされたけど、この子はどこまで知りたいんだ!!

てか変なタイトルつけられてる!

 

「ふふふ、じゃあ何から話そうかねぇ⋯。」

「お手柔らかに頼むよ婆ちゃん⋯。」

「それじゃあナツ坊がよく近所の女の子を連れて来た話でも⋯」

「ストーーーーップ!!」

「うわぁっ!ビックリした!!」

「夏喜さん、大声出されると心臓に悪いずら⋯。」

「それはごめん!でも婆ちゃん、それだけは!それだけは何卒ご勘弁を!!」

「あっはっは!ナツ君、往生際が悪いよ?」

「あら、可愛い話だと思うけどねぇ?女の子を泣き止ませる為にオデコにチューしたり⋯。」

『え?』

 

忘れたい⋯あれは幼い日の僕の間違った知識なんだ⋯!!

決して軽い男だとかそんなんじゃなくて、単純にそう教わったんだよ!

爺ちゃんに!!

 

「ナツ君⋯それは⋯。」

「幼い頃からプレイボーイだったずら。」

「ん〜⋯流石の曜ちゃんもカバーしきれないなぁ⋯。」

「本当にすみません⋯。あれ、何で僕皆に謝ってるんだ?」

「さぁ〜そろそろミカンでも取りに行こうかね!」

『おーーー!!』

「え、あの⋯皆?皆さん!?置いてかないで!?」

 

自分の過去ほど精神的にきっつい黒歴史もなかなか無いよな⋯。いや、確かにあれは僕が悪かったんだけどさ⋯!

ミカン畑にやって来た僕達だったけど、既にメンタルダメージは致命的に受けている。

その上状態異常:涙とかいうオマケ付きで。

 

「夏喜さん、なんで泣いてるずら?」

「見ちゃいけないよ花丸ちゃん。」

「こういう大人になっちゃダメだからね?」

「2年生が辛辣過ぎる⋯。」

「さて始めようか!千歌ちゃんと曜ちゃんは前回手伝ってもらったから分かると思うけど、高い所は脚立を使うからね。怪我しないように頼んだよ?」

『はーい!!』

「まるちゃんは、ババと一緒に手の届く所を取ろっか!」

「分かったずら!」

「ナツ坊は、あの2人を見てておくれ?」

「ぐすっ⋯承りました⋯。」

 

今日は辛辣な2年生組相手⋯。

夏喜、負けない。

 

「ナツ君早く早く〜!」

「私達で全部取っちゃうよー?」

「あぁ、今行くよ!」

 

この間半分くらい収したと思ったけど、やっぱり木の数が多いだけに収穫するミカンも大分残ってるな。

脚立は一つしかないからどうやれば効率よく取れるか⋯。

 

「はい、曜ちゃん!」

「ヨーソロー!」

 

早いな。

脚立に登ってる千歌ちゃんはタオルを風呂敷みたいにしてミカンを沢山包んでる。それを曜ちゃんが受け取ってダンボールに入れる。

あれ?これ僕要らなくない?

 

「あの⋯僕の仕事って⋯。」

「ナツ君はそこにいるだけでいいよ〜♪」

「そうそう、私たちのマスコット的な?」

「え〜⋯。」

「ちょっと疲れたしナツ君撫でて〜!」

「はいはい⋯お疲れ様。」

「わ、私も良いかな⋯?」

「良いよ。曜ちゃんもありがとね?」

「いや、良いよ!⋯全然///」

 

これでいいのか島原 夏喜⋯。

喜んでもらえてるなら⋯良いのか?

 

「じゃあ今度は僕が取るからさ。2人で段ボールに入れてくれるかい?」

「「ヨーソロー!!」」

「仲良しで結構。じゃ、ぱぱっと終わらせようか!」

 

ようやく僕の真価を発揮する時だ。

2人のコンビネーションにも驚いたけど、昔から手伝ってる僕の力もそろそろ見せないとね!

 

「ほい、千歌ちゃん。」

「わっとと⋯!」

「曜ちゃんよろしく!」

「りょー⋯かいっ!」

「まだまだ行くよー!!」

「ナツ君早すぎるよぉ〜⋯!」

「2人で追いつかないって⋯どういう、事なの〜⋯!」

 

全てのミカンを収穫し終えた頃、僕は2人から『収穫の神』と呼ばれていた。

ふふっ、満更でもないかな⋯。

 

「おやおや、流石に5人も居たら早いねぇ。」

「あ、婆ちゃんお疲れ様。」

「お婆ちゃん、ナツ君すっごい早いんだよ!」

「私達が追いつかないくらいに⋯。」

「あっはっは!そりゃババが昔っから鍛えてたもの♪」

「ちょっと疲れちゃったけど、お婆ちゃんと一緒にやるの楽しかったずらぁ♪」

「まるちゃんもお疲れ様。今日はありがとうね?」

 

頭を撫でてやると、擽ったそうに肩をすくめるまるちゃん。

そして後ろから飛んでくる野次。

 

「あれ、ナツ君。オデコにチューしなくていいの?」

「そうだそうだ!私達にもやってー!!」

「くっ⋯ここでそれを出してくるなんて⋯!まるちゃんもオデコ出さなくて大丈夫だよ⋯。」

「ずら?」

 

本当にこの2人は⋯まぁいい所でもあるんだけどね?

 

「絶対後でしてもらおうね。」

「ヨーソロ。」

「ん?何か言ったかい?」

「何でもないよー!お婆ちゃん、これからどうするの?」

「もう取り分は終わったから、今年はこれでおしまいだよ。帰って休憩しようかね。皆がとってくれたミカン、ご馳走するよ♪」

『バンザーイ!!』

「あ、そうだ婆ちゃん。今日もいいかな?」

「あぁ、私の方はいつでも大丈夫だよ。助かるくらいさね。」

「何の話?」

「もし皆が良ければ、今日婆ちゃん家に泊まっていかないかい?他のメンバーも皆泊まって婆ちゃんの手伝いしてたみたいだし⋯。」

「え!?良いの!?」

「勿論、ちゃーんと家の人に連絡するんだよ?」

「おら、お婆ちゃん家に泊まりたい!」

「私も私も!」

「決まりみたいだね。僕は取り敢えず帰るから、後の事はよろしく頼んだよ。」

『はーい!!』

 

折角の機会だし、皆には世代の違う女子会でも開いて楽しんでもらおう。

1人家までの道のりを帰る途中、皆からメッセージが届く。

ミカンを囲んで談笑してる姿。

夕飯の準備をしてる姿。

まるちゃんとタエ婆ちゃんのツーショット。

たまにぶつけられる僕の恥ずかしい話も、4人が楽しんでる様子が目に浮かぶようで⋯そんなに悪くないかな。

そういえば、爺ちゃんが残してくれた野菜の育て方を纏めたノートがあったっけ⋯。㊤って書いてたからどこかに続きがあるのかもしれない。

畑もあることだし、来年は皆で菜園を作るのも良いかも楽しそうだな。

そしてタエ婆ちゃんを呼んでまたワイワイやって⋯。

そんな当たり前の日々が続けばいいな。

家に着いてから、久しぶりに爺ちゃんの遺品の中からノートを取り出した。

これを持って明日は婆ちゃんに会いに行こう。

色んな事を教えてもらおう。

皆で過ごしていく、これからの為に⋯。

 

 

 

 

 

「ん⋯朝か。」

 

時計を見るとまだ5時だ。流石に早起きしすぎたかな?

まぁ二度寝するにも半端だしこのまま起きていよう。

枕元に置いてあった携帯が、突然震え出す。

着信先はまるちゃん。

どうしたんだろうか、こんなに朝早く⋯。

 

「はい、もしも⋯」

「夏喜さんっ!!」

「ま、まるちゃん?どうしたの?」

「夏喜さん大変なんです!お婆ちゃんが⋯!まる、まる⋯!」

「落ち着いてまるちゃん!何があったの?」

 

 

 

当たり前の日々を願ってた。

 

婆ちゃんと皆と過ごす、楽しい未来が見たかった。

 

それだけだったのに。

 

 

 

「お婆ちゃんが⋯!お婆ちゃんが倒れて目を覚まさないんです!!」

 

「⋯えっ?」




ダ「皆さん、ごきげんよう。」

ル「えっと⋯こんにちは!!」

ダ「いよいよ佳境と言ったところですわね⋯。」

ル「お婆ちゃん、大丈夫かなぁ⋯?」

ダ「夏喜さん達もいますし、今は信じましょう⋯?」

ル「うん⋯次回はそんなお婆ちゃんと私達Aqoursのお話です。」

ダ「これからどうなっていくのか、皆さんの目で頂けたら私達も幸いですわ。」

ル「それじゃあ次回のちょ田舎。」

ダ「赤い紅葉と⋯。」

ル「ありがとう。」


ダル『あなたも、ちょっと田舎で暮らしませんか?』

P.S.あと2話で惜別の秋編が終了となります。

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