遂に休みが終わります、なちょすです。
3作品とも仕事になる前に連続であげました。やりたい放題です。
今回は1年生'sがメインなので推しの人、やりました。
シリアス⋯では無いかもしれませんが、やりたかったことの一つです。ごゆるりと⋯。
それではちょ田舎第12話、どうぞ!
さてさて⋯僕が夏に帰ってきてから早いもので2ヶ月が過ぎようとしている。そして同時に思ったんだよ。
皆が良く遊びに来たり拉致⋯もとい遊びに連れていかれる事はあっても、僕から誘ったことが無い。
ヤバくない?夏喜ヤバくない??
だから3週間に渡って週末に皆と遊ぶ事にしたんだ。
用務員がJKを誘って遊ぶとか、言葉にしたら完全アウトだけど幼馴染みだから⋯幼馴染みだから⋯!
「ナツキ、何1人で唸ってんのよ?」
「えと、大丈夫ですか?頭⋯。」
「うぐっ!!」
「ルビィちゃんルビィちゃん!言葉の順番間違えて罵声になってる!」
「あ!えとその、ごごごごめんなさい!そんなつもりは⋯!!」
「うん⋯大丈夫⋯僕が悪かったよ⋯。」
「⋯涙拭きなさいよ。」
「ありがとう、ハンカチちゃん⋯。」
「重症ねこれ。」
まさかルビィちゃんからキラーパスが来るなんて⋯誘われた事が死ぬほど嫌だったとか考えてしまったよ⋯。
「でも珍しいわね。ナツキから誘いに来るなんて。」
「まぁ夏休みは割と遊んでたけど皆学校始まって僕も仕事したら、同じ学校に居ても会う機会って放課後ぐらいだしね。それに⋯これを見よ!!」
「⋯?封筒ずら。」
「そう⋯遂に出たんだよ!初任給が!!」
『し、初任給!?』
「嬉しいんですか?それ。」
「ふふふ⋯皆も大人になれば分かるよ⋯働き始めて一番最初に貰う給料がどれだけ思い出深いか⋯!」
「ほぇ〜⋯大人って凄いずらぁ⋯。」
「いや、ナツキだけでしょ⋯。」
そ、そんなことないはずだよ!!きっと初任給を貰って初めて自分の為に使ったり、彼女や家族にプレゼントしたり⋯あるよね??
「ま、まぁそんな事だから!折角だから3人に何かあげようと思ってさ!!」
「⋯別にいいわよ。ナツキが貰ったんだから好きに使えばいいじゃない。」
「そうですよ!そんなに大事なら自分の為に使った方が⋯。」
「まぁまぁ!今日ぐらいは夏喜お兄さんにカッコイイ所見させてよ。ね!」
恐らくバチコーン☆となるぐらい素晴らしいウィンクが決まった!
これには1年生も⋯。
「えと⋯。」
「⋯アンタはウィンク止めた方がいいわ。鳥肌立つから。」
「胡散臭さ全開ずら。」
「あっれれ〜可笑しいぞ〜⋯!」
駄目でした。うっ⋯。
まぁこんな事してると時間も無くなるからそろそろ行こう⋯。
「ま、今日は気にしないでのんびりしてよ。さ、行こうか。」
そう言って頭を優しく撫でる。
「ま、まぁそこまで言うんだったら良いわよ!?///」
「えへへ⋯///」
「やっぱり変なことしない方が良いです///」
3人のリクエストに応じてやって来たのは地元の本屋さん。マルちゃんとルビィちゃんの3人で来た店だ。
長い事この辺の人達から利用されていて、顔馴染みや常連さんも多い店。
決して店舗が大きいとか従業員が多いとかでは無いから、単純に居心地がいい本屋さんなんだと思う。所謂地域密着型書店とでも言えばいいのかな⋯?
店内に入ると、以前会話をしていた店員さんの声がする。
「いらっしゃいませ!⋯はっ!花丸さん!!」
「ルビィ嬢もようこそ!!」
「あはは、そんなに畏まらなくても大丈夫ずら。」
ん〜、貫禄が凄いよ花丸さん。
「あ、この間のお客さんもいらっしゃいませ!」
「度々お邪魔します。」
「いえいえ、お客さんが増えるなんて有難いことですよ!ん?そっちの子は⋯。」
「へ?」
店員さん達は堕天使の事をじっくりと見つめる。そして暫しの沈黙の後に叫ぶのだった。
「そ、その前髪⋯!ツリ目!!極めつけは頭のお団子!!!まさか、『天使のよっちゃん』!?」
「んなぁっ!?///」
「天使の⋯。」
「よっちゃん⋯?」
「ひ、人違いよ人違い!!///」
「いやいや、間違いじゃ無い!最近顔を見せなかったからどうしたもんかと心配してたんだよ!天使のよっちゃん!!」
「あーーーもーーー!!!///」
思わぬ所に伏兵。
善子ちゃん⋯やっぱり天使だったのか⋯。
「今変な事考えてたでしょ⋯。///」
「い、いや〜?何も!何も考えてないよ!?」
「夏喜さんは顔に出るずら。」
マジかー⋯。でも善子ちゃんがこの店に来てたのは意外だったな。結構運動神経もいいほうだったから余り本とか読まないと思ってたけど⋯。
「まさか三人娘が揃うなんて⋯て、店長!店長ー!!」
「え、店長?」
「大丈夫ずら!店長さんはとっても優しい人ですから!」
「うん、ルビィも優しくしてもらったよ♪」
「あ、皆は店内をどうぞご自由に!お客さんだけ此処で待っててもらえますか??」
「あ、はい⋯。」
あの2人が大丈夫って言うなら多分大丈夫なんだろうけど、僕だけ待ってて何を話せば良いんだろうか⋯。
「すみません、お待たせしました。」
「あ、大丈夫で⋯す⋯。」
出てきたのはスキンヘッドでガタイがいい男性だった。僕よりも頭1つ分は大きい。そしてサングラス。
昔から人は見た目で判断してはいけないと教わってきた僕だけど先に言いたい。
無理!!無理無理無理!!怖い怖い怖い!!
「あ、えっと⋯初めまして!!し、島原といいます⋯!」
「ご丁寧に有難うございます。私が店長の強面(こわもて)です。」
名が体を表してるぅ!ヤバイヤバイ、僕はどうなるんだ⋯!それとも静岡の本屋さんはこれがノーマル!?僕がアブノーマルなのか!?
「それで島原さん⋯1つお尋ねします。あの子達と貴方はどういった関係でしょうか?」
「えと⋯お、幼馴染みです!後彼女達の学校の用務員とスクールアイドル部の顧問です!!」
「⋯なるほど。では貴方が⋯。」
そう言うと強面さんはサングラスを外して笑いかけてくれた。
「いや〜すみません、変な空気にしてしまって!見たことない顔でしたから変な輩だったらどうしようかと!」
「あ、あはは⋯。」
先程までの緊迫した空気とは違い、店内が和やかな雰囲気になる。人ってこんなに変わるんだなぁ⋯。
取り敢えずシバかれるとかじゃなかった事に胸をなで下ろす。
「島原さんのことは花丸ちゃんとルビィちゃんから聞いています。私もAqoursのファンでしてね⋯顧問が来たって聞いた時はビックリもしましたが。」
「僕自身もビックリしてますよ⋯まさか幼馴染み9人が全員Aqoursのメンバーだったとは⋯。」
「はっはっは!そんな事もあるもんなんですなぁ!子供の頃一緒だった幼馴染みが⋯大きくなってひとつの夢に向かうなんて、素敵なことですよ。」
「そうですね。だから少しでもあの子達の手助けが出来ればいいですが⋯。」
そう言って店内にいる彼女達の方を向く。
3人一緒になって本についてアレコレ話している。いつも通り堕天使が出る善子ちゃん、それにツッコミを入れるマルちゃん、それを見守るルビィちゃん⋯。
そんな光景を見て、強面さんが口を開く。
「⋯本当に、奇跡みたいですよ。」
「え?」
「あの子達は、良く子供の頃にここへ遊びに来てたんですよ。定期的に読み聞かせもやってますし、皆本が好きな子達でね⋯。けどある日、私のよく知る子供達が遊びに来て、花丸ちゃんとルビィちゃんを誘ってくれたんです。『一緒に遊ばないか』ってね⋯。」
「⋯⋯。」
「けど2人は断った。『自分達は鈍臭いから、きっと楽しい空気が悪くなってしまう』って言って⋯。その時の2人の顔が、今でも頭から離れないんですよ。」
何となく、分かる。
元々運動は得意な方じゃないと言っていた。子供ながらに、他人に気を使って身を引くことを覚えてしまったのかもしれない⋯。
それだけ優しすぎるんだ。
「ほかの奴らは知らないが、善子ちゃんも中学の頃に何度かここに来て悩んでたんですよ。自分の『好き』が強すぎて周りから孤立していたって⋯俺は、大したアドバイスもしてやれなかった⋯駄目な大人だよ。」
「店長さん⋯そんな事は⋯!」
「けどスクールアイドルを初めて、アンタが来て変わった。皆イキイキしてるんだ。それだけは、何年も見てきたから分かるよ。」
そう言うと、店長は頭を深々と下げた。
「ちょ、店長さん!?何を⋯!」
「島原さん⋯いや、島原先生!お願いします。あの子達を輝かせてくれ!!折角掴んだチャンス、もうあの子達のあんな顔は見たくないんだ!」
「俺達からもお願いします!」
「花丸さんもルビィ嬢もよく知ってる!だからこそ応援してやりたいんです!」
「皆さん⋯。」
子供の頃からの付き合いで、この人達の中ではきっと何も出来なかった自分というものが許せないんだ。
でもそれはちょっと間違いだと思う。
偉そうな事を言える立場なんかじゃない。この人達が感じた悔しさを完全に分かりきってるわけでもない。
それでも⋯
「顔を、上げてください。」
「先生⋯。」
「僕は、彼女達の歌が好きです。何もしてこなくて、やりたいことも無かった僕の中に暖かいものを運んでくれた⋯そんな歌が。あの3人も自分の意思でスクールアイドルになって、皆に笑顔と元気を届けてます。何も出来なかったなんて、言わないでください⋯。」
この人達に自分自身を責めて欲しくない。
「今の彼女達があるのは、皆さんのおかげです。僕は暫く東京に居て小学校も中学校も知らない⋯だから顧問ではなく、1人の幼馴染みとして僕からお礼を言わせて下さい。ずっと彼女達を見守って下さってありがとうございました!!」
「島原先生⋯。」
「僕1人ではきっと限界が来ます。でも皆さんが⋯この街の人達が居てくれたら、彼女達はどんな所へだって羽ばたけます!これからも⋯応援していただけませんか?」
「⋯あぁ、勿論⋯勿論だとも!なぁお前達!!」
「当たり前じゃないっすかー!」
「ライブだろうとなんだろうと駆けつけやすぜ!!」
暖かい、優しい⋯そんな簡単な言葉じゃ今の感情は表せないと思う。皆自分の子供のように愛情を注いで、その成長を見届けてる。
例えこの街から旅立っても、それは変わらないんだろう。
Aqoursなら、きっと大丈夫。根拠は無くても、僕はそう思わざるを得なかった。
だって⋯。
「グスッ⋯。」
「⋯うぅ⋯。」
「ひっく⋯。」
本棚の後ろから聞こえる3つの声が、それを物語ってるんだから。
「ありがとうございましたー!!」
「また来てくれよー!!」
素敵な3人に見送られながら、僕らは書店を後にした。
前を歩く3人の後をゆっくりとついていく。
「何か買わなくても良かったのかい??」
「はい、大丈夫です!」
「もっと素敵なお話が聞けたので♪」
「そっか⋯なら良かったよ。」
「ナツキ⋯。」
ふと、前を歩いてた善子ちゃんが振り返る。
「その⋯これからも、アイドルだけじゃなくて色々お世話になるけど⋯卒業まで、よろしくね⋯?」
「⋯善子ちゃんが」
「デレたずら⋯。」
「あによ!///人が真面目に言ってるのに!!///」
「ははは!ごめんごめん!!こっちこそ宜しくね!2人もさ!」
『はい!』
夕焼けの空の下で交わした約束。
この街の人の思いを受けて、きっと僕らは輝いてみせる。
「ところで⋯なんで君たちは僕をHoldingしてるのかな?」
「いいじゃない別に。」
「減るもんじゃないずら。」
「折角なので⋯///」
大木に群がる3匹のコアラ状態のまま、家までの道を帰った。
「店長、店仕舞いOKです!」
「おう、お疲れ。」
「島原先生の事考えてるんですか?」
「あぁ⋯ありゃあ惚れちまうわな⋯。」
「えっ!?店長ってそっちの気が!?」
「んなわけあるかアホ。」
『なぁ花丸ちゃん、ルビィちゃん、善子ちゃん。ちょいと聞きたいんだが⋯。』
『?何ですか??』
『あの島原先生ってどんな人なんだ??』
『えっと⋯優しくて鈍感で⋯///』
『カッコよくて鈍感で⋯///』
『⋯気が利く鈍感よ///』
『ほぉ〜、今時そんな男がいるのか⋯。皆お気に入りなんだな!』
『お気に入りと言いますか⋯///』
『その⋯おら達皆夏喜さんが⋯///』
「⋯モテる男って、良いなぁ。」
千「皆さんこんチカー!!」
曜梨「「こんチカー!!」」
千「いやー読書の秋を舞台にした話だったね!」
曜「1年生の話は暖かいのが多いね。」
梨「本屋さんも優しい方達で良かった⋯。」
千「私達もまだまだ頑張らなくちゃ!ね!」
曜「ヨーソロー!ナツ君にもバンバン働いて貰おう!」
梨「頑張るってそういう⋯??」
千「次回は私達!」
曜「なんとコンクールの話だよ!主役は〜⋯!」
梨「えと⋯私です。」
千「ピアノ頑張ってね!応援しに行くから!!」
曜「それでは次回のちょ田舎!」
梨「2年生と!」
千「コンクール!!」
曜「あなたも⋯」
千曜梨『ちょっと田舎で暮らしませんか?♪』