時系列的にはリザレクションと2の間(というよりほぼリザレクション)
となります。
あと第1話ということでちょっと長いです。(気のせい?)
至らぬ点もありますが何卒よろしくお願いいたします。
それと妄想が色々とあります。ご了承下さい。
アラガミに対して極度な怒りをぶつけるのってアンチヘイトになるんでしょうか?
全ての行動に意味があるとするならば、彼の行動にはどのような意味があるのだろうか。
フェンリル極東支部外部居住区の大通り、そこに1人の少年が佇んでいた。一見すれば何処にでもある光景だ。だが、よく目を凝らせば何がこの少年に奇妙な雰囲気を漂わせているのか分かるだろう。
幼さが残るその右手には白く、赤に染まる神機が、足元には原型を保てていない肉塊が。
少年は一心不乱に神機を肉塊に振り下ろしていた。神機が下に降ろされれば代わりに赤黒い血と肉が少年と神機を赤に染める。
しかし、そう動くようにプログラムされた機械のように彼の手が休まることはなかった。まるで薪割りのように。いや、この時切っていたのは薪ではなくアラガミであったが。
先ほど神機について白く、と言った言葉を使ったが、肉塊に振り下ろす前にすでに赤くなっていた。ただし、その「赤色」は人のものであるが。
守れなかったのだ。守ると決意した矢先に奪われた。あと一歩、あと僅かに速く、動けていられれば助けられた。「赤色」はその時の血であった。
この時、純粋であった少年の心に僅かだったが暗い影ができ始めた。
そしてその影は行き場のない怒りとともにアラガミを滅し、少年をさらなる影へと堕とした。
「血で血を洗う」という言葉がある。少年はそれを思い出した。行き場のない怒りと守れなかった証である「血」を同時に落とせると思ったからである。故に自ら「赤く」なる事を選んだ。
だが、人の血はアラガミの血では洗えそうになかった。
きっとこの行動に意味が見出さられる時は来ないだろう。
それほど人の血とアラガミの血は、少年の純粋で純白な心を醜く変えていった。
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その日はいつもと何も変わらない日であった。演習を終え、一息つきながら同期の仲間と談笑していた。丁度その時であったか、
『緊急連絡!アラガミが外壁を破り、外部居住区に侵入!すでに被害の報告が来ています!支部にいる神機使いは直ちに迎撃して下さい!繰り返します!...』
突如、サイレンと共に焦っている様子が伝わるほど声を荒げているアナウンスの放送が平穏な空気を切り裂いた。
「うわ〜、こんな事もあるんだね〜。」
「支部にいる神機使いって言ってたけど、私達も行くのかな...?」
「それはないでしょ〜、だって僕等、入隊してまだ1カ月ちょっとだよ〜。」
2人の会話を聞きながら少年は黙っていた。この状況なら行かねばなるまい、だが、1人が言うようにまだ入りたての新人なのだ。このような危機的状況に新人が行ったところで足手まといになる。
先輩神機使いの戦いぶりをみて、彼はそう確信していた。
「でも、このまま手をこまねいて見てるなんて出来ないよ...。」
「...。」
彼女の意見に誰も何も言え無くなった。その時、
「ナズキ、ここにいたか。」
突如、自分の名前を呼ばれ、少年は顔を上げた。上を見ると教官のツバキが立っていた。
「お前にやってもらうことがある。今の放送は聞いただろう。外部居住区の防衛任務にあたってもらう。」
「...えっ...?」
「多方向からアラガミが侵入していて、人手が足りん。第一部隊は別の任務で出払っている。戦力的にも物量的にも、今のままでは圧倒的に足りない。そこで新人のお前にも出撃してもらう。」
「えっ...でも...そんな、1人で...」
「誰が1人で行けと言った。同行者は1人居る。第二部隊隊長のタツミだ。」
「...?!」
「ともかく時間が足りん。急いで出撃準備してくれ。」
「あっ...でも...」
「ナズキ、私が最初に言ったことを忘れたか。ともかく死にたくなければ、私の命令には全て」
「...YESで答えろ...」
「そうだ、頼んだぞ」
そういうとツバキはエレベーターへ向かっていった。
「お〜名誉じゃん。張り切って行きなよ〜」
「...うん」
どうもあの人は苦手だ。あの凛とした目と声に言われたら逆らえない。あれほど怖い女性は初めてだ。
「大変だと思うけど、頑張ってね、何かあったらすぐ助けるから...」
「...うん。」
様々な疑問はあったが、ともかくナズキは出撃の準備をし、外部居住区へ向かう為、ヘリポートへと向かった。
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特に解せない点がある。なぜ「タツミ」が自分と出撃するのか。
第二部隊隊長大森タツミといえば、相当な実力者として有名だ。
大型アラガミ複数体相手に1人で立ち向かえるという。
そんな大人物がなぜ自分と...
「おっ、あんたがナズキか?」
ぼーっとしながらヘリに乗り込んだナズキにフレンドリーな雰囲気の青年が後ろから話しかけてきた。
「えっ...そうですが...」
「今日はよろしくな!俺は大森タツミ。タツミって呼んでくれ!」
?!?!
(この人がタツミさん...!?想像してたのと全然違う...!)
「...?どうした、そんな鳩が豆鉄砲を食ったような顔して?」
「えっ...いやあの...」
「まあ、ともかく急ごう!こうしてる間にも被害が拡大してるかもしれないからな!」
タツミと名乗る青年の雰囲気に飲まれながらもナズキはヘリに乗り込み、外部居住区へと向かった。
「あの...付かぬ事をお聞きしますが...」
「そんな改まった態度じゃなくて、もっとリラックスしてくれよ。俺も疲れちまうからさ。」
「あっ...あの...。なんで、タツミさんが、その、僕なんかと...」
「...そうだな...」
タツミはさも意外というような表情をして、こう語った。
「お前に期待してるから、かな」
「...?」
「お前みたいに素質のある奴がいればもっともっとすごいことやらせたくなる。俺等が出撃不可能な時、防衛を任せられる。お前に、皆そう期待してるんだぜ。」
「...」
「だから、実地演習として今回の任務に同行して貰ったんだ。」
ナズキにとってこれは嬉しいものでもあった。が、
「なんで『今回』の任務に...?なんで、こんな大変な時に...」
そう、率直な意見をぶつけた。
「そんなもんきまってるだろ、『習うより慣れろ』、って奴だ。」
「...」
「緊迫した状況で自分が選び取った行動、思考、それこそ、自分にとって一番価値のあるものだ。絶体絶命のなか、見出したその一筋の光明から得られたものをお前に感じてもらいたくてな。」
「...」
「おっと、カッコつけすぎたな。まぁ、どうしてお前を選んだかってのはそういう理由だ。幸い、これから向かうのは被害がまだ少なく、他の部隊が対処してるとこに比べりゃ、新人でも何とかなるからな。
お前がヘマしても俺がいるから、安心してくれ!」
「...はいっ...!」
まだ、完全に納得した訳じゃない。でも、タツミといると何とかなる気がしてならないのだ。
きっと何とかなる。僕はここで強くなれるはず。
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(やっぱりひどいな...)
フェンリルの建造物を見た後だと余計そんな風に感じる。
荒れ果てた家、舗装されていない通路、トタン板を貼り付けただけの屋根、崩れかけた外壁。多くの家が既に崩壊寸前だった。だが、それらの傷跡を見れば随分前からあるように見える。今回のアラガミによる被害ではなさそうだ。
タツミが言っていた通り、想像より外部居住区の被害は少ない。
だが、油断は出来ない。アラガミとの戦いはいつ、何が起きてもおかしくないのだ。
「よしっ。まずは近辺のアラガミの掃討。その後、二手に分かれてこの付近の被害状況を確認。それでいいな?」
「了解です」
タツミの指示に従い、作戦を実行する。
話の通り、タツミの腕は卓越していた。大型アラガミは今回現れなかったのであの話の腕は見られなかったが、その話以上の腕を見られた。一刀のもとに小型アラガミを薙ぎ払い、中型アラガミをもものともしなかった。
(これが『隊長』か...)
思わず感心していると、
「よしっ。これでここらはおわりだな。」
(あっ...あれ...!?)
気が付けばあっという間に片付いていた。自分が1体倒してる間に、タツミは数体倒していたのだった。
「じゃあ、二手に分かれるか。俺は北の方を見てくる。ナズキは南の方を見てきてくれ。」
「あっ...はい」
「何かあったら俺に知らせてくれ。信号の使い方は知ってるか?」
「はい、把握しています。」
「頼もしいな!じゃ、任せたぞ!」
「はいっ!」
こうしてタツミと別れた。託される、とは緊張するが嬉しいものでもある。
自分が必要とされてる。
そう思えるだけでナズキはどんな困難にも立ち向かえそうだった。
(やっぱり自分は変なのかもしれないな...)
(でも頑張れるってのはいいことのはずだ...よし!)
気持ちを新たに南の方角に向かったナズキだが、ふと違和感を覚えた。
(さっきまで感じなかったのに、変な匂いがする...)
それは鼻の奥まで入り込み、神経を破壊しかねない程の匂いだった。
(物が焦げるような匂い...それに混ざるような獣臭...アラガミか!)
そう思うが早いか突如背後の瓦礫が崩れ、何者かが高く飛び上がった。
(...オウガテイル...!?でも、何か違う...?)
地に降り立ったそいつは数少ない実戦やターミナルで見たアラガミとはまた違う種類のものだった。ナズキにとってそのアラガミとは初の邂逅となる時だった。
グオガアアアアアアアアア!!
鼓膜を揺さぶる雄叫びと焦げ付くような匂いがナズキを尻込みさせる。
(負けるか...!僕は新型神機使いなんだ...!)
戦闘意欲を燃やすナズキ。だがそのアラガミの目はナズキを焦点に置いていなかった。
(こいつは何を見てるんだ...)
ふとその視線を追うと瓦礫に埋もれた男性の姿があった。
(なっ...まさか...)
再びアラガミの方をむく。
(...!?)
ナズキは視力には自信がある。見間違えなどあり得ない。だがその目でもあのアラガミの姿を視界に入れることができなかった。
(...ともかく、この人の救助だ...)
瓦礫をどかし、下敷きになっていた人を助け出す。
今までであれば瓦礫をどかす事も、人を抱え出し、引き上げることも出来なかった。神機と適合し、ゴッドイーターとなってから可能となったことだ。
...フシュウゥゥゥゥゥ...
悔しいが神機などはアラガミが元となっている。唯一彼がアラガミに感謝する部分である。
(...どうやらこの人、気絶しているみたいだ。)
しゃがみ込み、男性の様子を暫定的に見極める。本来であれば、すぐ起こしてやりたい所だがこの状況ではあまり得策とはいえない。
(取り敢えずタツミさんを呼ぼう。)
何かあったら知らせるという指示の元、信号「総員集合」を放つ。
(...2人しか居ないけど、これって遠くまで届く唯一の奴だからいいよね...)
...フシュウゥゥゥゥゥ...
...先程からガス漏れのような音が聞こえる。何か有毒ガスが出ているのかもしれない。早急にここから離れた方が良さそうだ。
(取り敢えずこの人の様子を...)
グルルルルル......
!!!
すぐ横にあのアラガミが立って居た。その距離わずか30センチ未満。
そしてそいつは機敏な動きで倒れていた男性を頭から噛み砕いた。
グシャッ... ガリッ... バリッバリッ... グチャッ...
クチュッ...クチュッ... ゴリッ...
アラガミがかつて人だったものを噛み砕くたび、まだ温かい鮮血と肉片が飛び散る。そのうちいくつかはナズキの身体を紅く染めていった。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
狂ったように叫び出し、ナズキはアラガミに神機を振り下ろした。急所に当たったのか、そいつは意外にも呆気なく死んだ。
「アアアアああああアあああアアアアアアアア!」
しかし、ナズキの手が止まる事はなかった。
総員集合の信号を受け、現場に向かったタツミが見たのは先ほどとは違い、純粋で純白な心を醜く変えていったナズキの姿だった。
そう。半狂乱に叫びながらヴァジュラテイルを何度も切り裂いていた、「少年」の姿であった。
END
以上となります。くそ長いうえ駄作で本当に申し訳ございません。
皆様の意見を是非伺いたいので少しでも思った事が、ございましたら是非教えて頂けると幸いです。
もしかしたらどこか、誤字脱字があるかもしれないのでそちらもよろしくお願いいたします。(信号とか不安...)
お付き合い頂き、本当にありがとうございました。
ちなみにもし、挿絵の依頼がありましたら描くかもしれません。
下手ですが。