言葉使いのヒーローアカデミア   作:スズきょろ

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 遅くなってしまって申し訳ないです。
 お気に入りが55件もありがとうございます!
 感想をくださった方、ありがとうございます!

 それでは、本編どうぞ!!


受験結果

 

 

 

 

 僕と切島くんの顔に影がかかる。決して日陰に移動したからだとか、曇りになったからだとかではない。

 

「あはは・・・これは予想してなかったなぁ・・・」

「おいおい!?何だよあれ!?でかすぎんだろ!!」

「うん・・・さすがに僕もビルの高さを超えるとは思ってなかったよ・・・」

 

 僕らの目の前に出現したのは巨大仮想(ヴィラン)、プレゼント・マイクが言っていた0Pのお邪魔キャラだった。

 ビル10階建てより、さらに大きい圧倒的な脅威がそこにはあった。

 出現した巨大仮想(ヴィラン)は、辺りを破壊しながら進んでいく。圧倒的大きさを前に受験生達は、冷静さを失う。

 

「ヤバい!!逃げろ!!」

「うわぁ!?」

「いや、デカすぎだって!!?」

「無理だ!」

「あ、あぁぁ・・・・」

「あの時、私がプリンを食べました!!ごめんなさい!!」

 

―まあ、取り乱しますよね。それと最期の人、それでいいんですか!?遺言がプリンを食べた報告でいいんですか!?

 

「おい、言紡早く俺らも逃げようぜ!?」

「そうしたいのは山々ですが、そんなわけにもいきませんね!“ショートカット”バギー!!」

 

 僕はバギーを呼び出し乗り込んだ。

 

「うおっ!?これがお前の個性なのか!?」

「説明は後で!早く後ろに!」

「わ、わかった!」

 

 切島くんが乗ったのを確認した僕は他の受験生と()の方向つまり、巨大仮想(ヴィラン)に向かって走り出す。

 

「お、おい!逃げるんじゃねえのかよ!?」

「まさか!逃げ遅れた人がいないか見に行くんです!

 人命救助もヒーロー活動の一つですよ!」

「そっか、そうだな!男らしいぜ!!わかった、手伝ってやるよ!」

「ありがとう!僕は女ですけどね・・・って言ってるそばから!」

 

 僕の視界の先には、心配していた逃げ遅れていたピンクの肌に頭に角を生やした女の子がいた。転んでしまったのか動かず座り込んでいた。僕はバギーを彼女の横で停めた。

 

「大丈夫か!?」

「ちょっと、大丈夫じゃないかも・・・足を捻ってすごく痛い。ちょっと動けそうにないよ・・・」

「腫れてるね、すぐには歩けなさそうだし・・・それと、すごくまずいね」

「何がまずいんだ?言紡」

「デカイのがこっちに来た!!」

「「!?」」

 

 この状況で巨大仮想(ヴィラン)が進行方向をこちらに向けてきたのだ。さすがに怪我人を乗せて走るほどの技術は持ち合わせてはいない。

 

「切島くんの個性じゃ、防げない、よね?」

「当たり前だ!俺の個性は《硬化》、俺の身体を硬くするだけだ!さすがにあの大きさをぶっ壊すのは無理だぜ!?

 そういう言紡はどうなんだ?」

「私の個性なら、ワンチャンあるかもしれないけれど、でもさすがに足止めが限界だと思うけど・・・」

「じゃあ、一応やってみてくれ!」

「う、うん!“ショートカット”列車砲ドーラ!」

 

 すると、道にさっきのバギーの非ではない青白い光が走る。あまりの眩しさに葉由良以外の二人は目を瞑り、光が収まりそこに出現したのは、巨大な砲身を持った列車だった。

 

「で、でかいな!?」

 

 葉由良が呼び出したのは、80cm列車砲ドーラ、第二次世界大戦でドイツ陸軍が実用化した世界最大の巨大列車砲。ドイツのクルップ社製で、総重量約1350トン(1500トンの説もあるらしい)、全長42.9m(全砲身長含めれば47.3m)、全高11.6m。

 たった二両のみ製造され、一両目がクルップ社会長グスタフ・クルップの名前からグスタフ 、二両目が設計主任エーリヒ・ミューラーの妻の名前から取られたドーラ の名を持っている。葉由良はその内のドーラを呼び出したのだ。

 

「耳塞いで!!」

「「え?」」

「いいから!!」

 

 葉由良が二人に耳を塞がせた次の瞬間、

 

 

ドォォッンッ!!

 

 

 腹のそこに響く轟音とともに、発射された砲弾は仮想(ヴィラン)のボディに当たり爆発する。

 

「やったぜ!あれを喰らえば流石に無理だろ!」

「うんうん!」

「バッ・・・・!?」

 

 

 僕は知っている。さんざん読んできたから。

 

 このテンプレの展開は、

 

 敵を倒したことを確認せずに掲げた勝利は、

 

 

 

ズズンッ

 

 

「お、おい、おいおいおい!嘘だろ!?」

「そんな・・・・・っ!?」

 

 

 

死亡フラグいうことを!

 

 

「ヤバい・・・・」

 

 僕の頬に冷や汗が伝う。流石にあれ以上の兵器となると二人を守れる自信がない。

 壁をつくって守る?どんな硬度の物を壁にする!?もし効かなかったら!?どうすればいい!?でも何もしない訳には!?

 

 

 どうすれば!?

 

 この状況で一体どうすればっ!?

 

 どうすれば二人を助けることが出来るっ!?

 

 焦っていた僕の中に一つの光が見えた気がした。

 

―そうだ・・・

 

「どうすんだ言紡!?」

「私のことはいいから早く逃げなよ・・・」

 

―もしも・・・

 

「んな事出来るかよ!?」

「でもそうしなきゃ二人とも巻き込んじゃうよ・・・!」

 

―もしも、こんな時・・・

 

「男らしくねぇ事が、見捨てるなんて出来るわけねぇだろうが!?」

「でも!?」

 

 

 

憧れの、ヒーローだったら!

 

 

 

 その考えにいきついた時には、僕の身体は勝手に動いていた。

 

「言紡っ!?」

「ちょっと!?」

 

 葉由良は動いた、何も考えてはいなかった。気付いたら身体が動いていた。

 

 そう、この世界の主人公、緑谷 出久と同じように。

 

「“ショートカット”―」

 

 葉由良はこの状況を引っくり返す絶対的な力をイメージする。

 

 イメージしたのは、英雄といわれた者達の持つ奇跡の力。圧倒的な絶望を、希望にするその神秘の力を。

 

 作り出すのは、人々の「こうであって欲しい」という願いが星の内部で結晶・精製された神造兵装、最強の(ラスト・)(ファン)(タズム)

 

 聖剣の代名詞にして、最強の聖剣。

 

その名は―

 

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)

 

 

 葉由良の右手に握られていたのは、Fateではお馴染みの騎士王アーサー、青セイバーこと、アルトリア・ペンドラゴン。

 その彼女の聖剣約束された勝利の剣(エクスカリバー)だった。

 葉由良はアルトリアの宝具を発動させるために、両手で剣を持って上段で構え、星の力を束ねる。

 

―真名解放、宝具展開。

 

「綺麗・・・・」

 

 誰かがそう呟いた。今彼らの視ているのは星の光。

 この星の命と願いの光。その光が足下から現れ約束された勝利の剣(エクスカリバー)に集まっていく。その神秘を見て綺麗ではないと思う人はいないだろう。そして、

 

「―――束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流!いけっ!

 

 ―――《約束された(エクス)・・・」

 

 

 葉由良は、目の前の圧倒的脅威(ヴィラン)に向けて、人々の願いを束ねた星の一撃を、放った。

 

 

「―――勝利の剣(カリバァ)ァァッッ》!!」

 

 

 放たれた星の極光は、仮想(ヴィラン)をのみ込み、文字通り跡形もなく消し去った。

 

「おいおい、マジかよ・・・あのデカブツが・・・」

「消されちゃった・・・・・」

 

 

「「「「え、ええぇえぇっっ!!??」」」」

 

 

『終~~了~~!! 』

 

 他の受験生の驚愕する声と、プレゼント・マイクの試験終了の合図を耳にしながら、葉由良は一つ思ったことがあった。

 

()()使()()の『誤変換使い』を使えば、何事もなく助けられたよね・・・でも使わなくても良いって思ってた節もあったからな・・・

 

 自分もまだまだだと再認識した葉由良だった。

 

 

 

∽ ∽ ∽ ∽

 

 

 

「お疲れ様~。ハイハイ、ハリボーだよお食べ。ハイハイ、怪我してる子はいないかい?」

 

 しばらくすると白衣を着たお婆ちゃんが歩いてきた。怪我をしている人に近づいてはキスをしてまわっていた。一瞬何をしているのかと思ったけど、葉由良は彼女の名前を知っていた。

 

―リカバリーガールだ!

 

 妙齢ヒロイン『リカバリーガール』。何十年も看護教諭として雄英高校に勤める、いわば屋台骨的な存在。雄英がこんな無茶な受験を出来るのは彼女の存在が大きい。

 

 リカバリーガール:個性『治癒力の超活性化』

 文字通り、キスした相手の治癒力を大幅に上昇させ、どんなケガでもあっという間に治す《個性》!

 ただし治癒力は相手の体力に依存するため、大きなケガを続けて負えば、体力消耗で最悪死んでしまうから要注意だ!

 

 葉由良は、特に怪我をしていた訳ではなかったのでその場から離れるために立ち上がった。すると、横から人が近づいて来た。

 

「おう、試験お疲れ様!お前スゴかったな!!なんだよあれ!!」

 

 近づいて来たのは一緒に戦っていた切島くんだった。

 

「うん、お疲れ様。

 彼女は大丈夫だった?」

「今リカバリーガールに治してもらってるぜ」

「そう、良かった」

 

 僕は、彼女の怪我が問題ないと分かると安堵する。

 だがそれもつかの間、目の前にいる切島くんによって消える。

 

「それより、さっきのあれ、一体なんだよ!?」

 

 さっきのあれとは・・・

 

「え、えっと、ドーラの事じゃない、よね?」

「それもだけどよ!それよりも最後のあれは何なんだ!?」

「そ、それを説明するために、まず僕の個性を説明するね?

 ゴホン!僕の《個性》は『言霊使い(ショートカット)』って言うんだ。まあ、簡単に言えば記憶してるものは大体作ることができる個性なんだ」

 

「「「「「「「チートじゃん!?」」」」」」」

 

 うん、知ってる。神様から貰った個性だからね。

 

「えっと、私もう帰ってもいいかな?」

「え?お、おう悪いな!じゃあまた今度会えたらよろしくな!」

「うん!じゃあね、切島くん!」

 

 僕は何事も無かったかのように自然に帰っていく。

 

―思わず、私って言っちゃったよ。ふぅ、でもなんとか聞かれる前に帰れるね。

 

 宝具について聞かれる前に、更衣室で着替え葉由良は家に帰った。

 

「あー、あー」

―自然に喋れてたよね?

 

 葉由良が気にしていたのは個性による喉の酷使具合だった。

 『夜桜四重奏(カルテット)』の()()()ことはの能力《言霊使い》は喉を酷使する。アニメで()()()ことはが列車砲を呼び出していた時、喉が辛そうだったのを覚えている。葉由良はその事を知っていたので、小さい頃から喉を鍛えていた。鍛えていたお陰で声は枯れず普通にしゃべれていた。

 

「さて、試験は問題ないはず!後は結果を待つだけ!」

 

 原作介入できるよね。大丈夫だよな!?うん、大丈夫なはず、大丈夫・・・大丈夫?うん、大丈夫!!うん、不安なんて無い!いや、嘘です!怖いよ!?入試の結果は分かるまでは本当に怖いよ!この恐怖分かるよね!?

 

 

 

∽ ∽ ∽ ∽

 

 

 

「実技試験の総合成績が出ました」

 

 雄英にあるモニター室では雄英の教師達が実技試験の映像を見ていた。

 モニターに映し出されていたのは、紫色がかった黒髪の少女が映っていた。

 

「彼女の試験終盤になっても尚、衰えないあの動き。彼女は確か色んなスポーツの大会で優勝していたな。神童は伊達じゃなかったか・・・」

「それに今日会ったばかりの彼との共闘も見事だったね。相方の個性をしっかりと把握しそれを生かせる場を作っていた。判断力も申し分なしだ」

「基礎能力に関しては勿論、文句なしだったよ」

「次席と圧倒的な差をつけての首席合格。今年の一年生はすごいな」

 

 もう一つのモニターに映し出されていたのは、四肢がボロボロになり(ヴィラン)Pは0Pにもかかわらず救助(レスキュー)Pだけで合格した、緑色の髪を持った少年。

 

 出久と葉由良の邂逅はもうすぐそこまで迫っている。

 

 

 

∽ ∽ ∽ ∽

 

 

 

 試験から2週間後・・・

 

「はーちゃーん、雄英から結果来てるわぁ~」

「おお!ありがとう、お母さん!早速見てくるよ!」

「結果教えてねぇ~」

「モチのロンだよ!」

 

 語尾がしまっていないのは内のお母さんです。

 さぁ、家族の紹介はまた今度にして今は結果ですよ。

 手紙を開けると、中から丸い機械が出てきました。

 

「なんだこれ?」

 

 それを机の上において観察していると・・・

 

 

『私が投影されたっ!!』

 

「ウヒャアッ!?・・・あ痛っ!?」

 

 ビックリして椅子から落ちちゃったよ。

 何でオールマイトが出てきたんだ?

 

『私が何故この映像に映っているのは他でもない。今年から教師として雄英に勤めることになったからだ。

 さて、君の結果は・・・筆記は2位で通過だね。なかなかの好成績だ。そして、実技試験も(ヴィラン)P70Pで首席合格!うむ、実に素晴らしい!!』

「よしっ!!」

 

『だがしかし、試験で見ていたのは(ヴィラン)Pだけでは無い!』

 

 な、なん・・・だと!?

 

『この試験には裏P、救助(レスキュー)Pというものがある!これは教師達による審査制!!我々雄英が見ていた、もう一つの必要不可欠な基礎能力!!

 君の場合、危なくなっていた他の受験生達を助けつつ最後の二人を守って40P!合わせて110Pで次席と圧倒的な差をつけての首席合格だ!!

 言紡少女・・・君はプロのヒーローになれる素質を充分に持ち合わせている!共に学ぼう・・・

 

雄英(ここ)が君のヒーローアカデミアだ!』

 

「はいっ!!」

 

 これで本格的に始まるね。

 

 これからが僕のヒーローアカデミアだ!!


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