少年成長記   作:あずき屋

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よく見ておけ。
絶望が口を開ける様を。


第26話 少年、絶望と再会する

 

「さて、どこまで早く倒せるかですね」

 

 

ラジエルとリューが参戦し、巨人の勢いを抑え始めた頃、彼女は密かに懸念を抱いていた。

ティオナ救出時に言っていた赤きゴライアスの特徴。

一言で済ませるなら、普通のゴライアスより遥かに強い存在であるということ。

そのレベルは恐らく中層の中でも上位に食い込むほど。

下手をすれば下層の中に食い込む程だ。

傷を負った矢先から始まる高速復元能力。

多くの敵を一時的に行動不能にする咆哮(ハウル)

主にこの二つが主要の能力と見ていい。

筋骨隆々の大柄な肉体を有しておきながら、厄介な能力まで身につけている。

これだけでも十分な脅威になる。

単騎で一騎当千を実現させる力に対し、こちらの戦力は徐々に削られていくばかりの現状。

二人の参入で戦局を動かす土俵に入れたとはいえ、このまま悠長に構えていられない。

神に恩恵を受けている身とはいえ、その身は人のものに変わりはない。

無尽蔵の体力があるというわけではないのだ。

長期戦になる程疲弊していき、本来の力を発揮できなくなっていく。

前衛を交代していって疲労を分散したとしても長くは保たない。

後方支援にしてもそうだ。

精神力の回復は純粋な時間経過によるもの。

仮に精神力を回復させられる回復薬(ポーション)があったとしても、全員に行き渡らせることは不可能。

出鼻を挫いたとはいえ、未だ巨人の体力は有り余っている。

反面こちらの疲労は溜まっていくばかり。

どうあっても短期決戦に持ち込むほかない。

危険な賭けを、必ずどこかで仕掛けなければならない。

そのタイミングを見計らいつつ、リューは迫り来る豪腕を交わしつつ戦局を常に把握し続ける。

その時は今ではない。

 

 

鉄犀剛掌(てっさいごうしょう)

 

「────────────ッッッ!!!?」

 

「てめぇらそれでも男か!!

チビ助に負けてんぞ!!

気合入れて押し戻せ!!」

 

「うるせェ!!

あんなガキに遅れっかよォ!!」

 

 

 今はこそはラジエルの技のお陰で何とか持ち堪えている状況だ。

彼が縦横無尽に動き回って敵を翻弄し、鍛え上げた技を持って敵の体勢を崩して動きを封じる。

ギリギリ均衡状態を保てている。

それも長くは続かないだろう。

巨人は徐々にラジエルへ狙いを変えてきている。

開幕成功した不意打ちはもう通用しない。

崩しは出来なくなり、攻撃も上手く通せない状況へ逆戻りだ。

 

 

「(思ったより状況が好転しない。

既にラジエルの遊撃効果も薄く、ダメージも通りにくくなった。

全員の士気は未だ健在でも、体力は確実に削られてしまっている。

後方支援もそろそろ精神力が底をつく頃合いでしょう。

魔法は打てて二波が限度。

駄目押しも考慮すのならば、次の一波で仕掛けるほかないでしょう)」

 

 

 リューは戦闘の合間でも思考を絶やすことはない。

現状の打てる手、使える手札、有効な打開策、味方の戦力状況等を戦局にいかに組み込むか。

猶予は刻々と削られていく。

タイミングを逃せば、その先に向かうのは全滅。

嫌な幻界を弱音とともに頭から振り落とす。

今必要なのはそんなものじゃない。

明日を迎えるために生に向かって手を伸ばし続けること。

死ぬことをイメージするな。

常に笑って生きる明日をイメージしろ。

生きることを放棄した時こそ、本当の敗北が待っている。

 

 

「ならば、私も全力で行かなければ」

 

「援護は任せろ『疾風(リオン)』殿。

私の精神力全てを使って、奴の動きを完全に封じる」

 

「......その先に、勝算は見えますか?」

 

「あぁ、決して自棄になっているわけじゃない。

私が奴の足を止め、其方が追い込みをかけ、総員で息の根を止めにかかる。

不安要素がちらつくのは確かに否めないが、同時に勝利の兆しも見えているのだ。

これを逃せば恐らく我らに勝ち目はない。

救援の見込みはもう望めない。

ならば、早急に打てる最善手は打つべきだ。

問題ないさ、今度は持てる全ての力を注いで、奴を封じ込める。

今度こそ、決して逃れることのできない絶界に閉じ込めて見せよう」

 

「私もやる」

 

「貴方は」

 

 

 リューの決意は、リヴェリアとアイズにはしっかりと伝わっていた。

彼女たちもこの機を逃せば勝ち目がないことには勘付いていたからだ。

そんな可能性を打ち消すため、自分の持てる力全てを使って勝負に出ようという心意気らしい。

博打には違いないが、賭けるだけの価値はある。

過去に成功してきた者たちは、皆そうして自らの道を切り拓いてきた。

有効打になるかどうかは分からない。

成功するかどうかなんてやって見なければ分からない。

だからこそ、そこに賭けてみたい。

自分たちが本当に、明日を生きるに値する存在なのかどうか。

それを今こそ示そうとしている。

覚悟ある者だけが灯せる決意の眼差し。

これ以上問いを投げかけるのは無粋。

彼女たちの光に賭けてみよう。

自分たちの道を、未来を作っていくために。

 

 

「私の魔法で、リヴェリアの魔法を後押しする。

範囲は広がるし、リヴェリアの負担も少しは減らせる。

そろそろ、決めに行こう」

 

「貴女達の決意、確かに受け取りました。

ですが、それにはやはり時間を稼ぐ必要が」

 

「いらねェよ、ンなモン」

 

「私たちがいるの、忘れないでよね!」

 

「ベート、ティオナ......」

 

「ケッ、トリは譲ってやるから一発で決めろ」

 

「もう、ホントに素直じゃないんだから。

俺にも手伝わせろーみたいなこと素直に言えないの?」

 

「うるっせェぞこのバカ!!

ンなくだらねェこといちいち言ってられっか!」

 

「バカって言う方がバカなんですぅ!!」

 

「やれやれ全く......」

 

「決まりですね。

動きを止めた後に私も渾身の魔法を叩き込みます。

恐らくそれだけでは足りないでしょうから、彼の力を借りることにします」

 

「彼?」

 

「アイズ、あの子のことさ」

 

「『大猿剛毅(だいえんごうき)』」

 

「──────────────────────ッァァ!!!」

 

 

この作戦を成功させるためには、より多くの力を一点に集める必要がある。

注意を引き、動きを止め、大火力で一気に形勢を崩し、総当たりで仕留めにかかる。

誰一人欠けてはならず、タイミングも外してはならない。

暗黙の了解もとい、阿吽の呼吸が求められる。

チャンスは一度だけ。

これを逃せば押し切られる。

外したら最後、二度と日の目を見ることなく、このダンジョンの一部となる。

覚悟を決めろ。

もはや退路はなく、活路は閉じかけている。

生き残りたいのなら、その手で抉じ開けろ。

 

 

「ラジエル!」

 

「よっ......と。

リュー、呼んだ?」

 

「はい、これより勝負を決めに行きます。

貴方はこの二人と共に、こちらの準備が整うまでの時間稼ぎをして欲しいのです。

幸か不幸か、巨人は貴方からの攻撃に敏感になりつつある。

それを利用して、ゴライアスの注意を引いておいて下さい」

 

「うん、分かった」

 

「こんなガキ入れて大丈夫なのかよ......。

死んでも知らねぇぞ?」

 

「大丈夫!

ラジエルはすっごく強いんだから、きっと上手くいくって!」

 

「あぁ、新参の域はまだ出ないが、実力は私が保証しよう。

彼ならきっと上手くやってくれる」

 

「頑張ってね、ラジエル」

 

「うん、アイズもね」

 

「ゴラァ!

ガキの分際でアイズを呼び捨てにしてんじゃねェ!!

ゴライアスの前に、テメェから蹴り砕くぞォ!!」

 

「ベートうっさい!!

そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」

 

「緊張感の欠片も見受けられませんね」

 

「恥ずかしくて何も言い返せん......」

 

「みんな、そろそろ行くよ」

 

 

 この戦場を覆さんと集中力を研ぎ澄ませて行く。

戦況は戦闘初期の段階に戻りつつあり、赤い巨人は未だに暴虐の限りを尽くしている。

この惨状をこれ以上眺めていたくはない。

全てを終わらせるため、六人は巨人に対して向き直る。

一番の後ろにリヴェリアが待機し、その前をアイズが陣取る。

二人の前にリューが待機し、その前をラジエル、ティオナ、ベートが列になって駆ける態勢を整える。

少数から織りなす多段攻撃の構え。

これで、決着をつけよう。

 

 

「前衛、行ってください!!」

 

「行くよ」

 

「指図すんな!!」

 

「いっくよぉ!!!」

 

「『終末の前触れよ、白き雪よ』」

 

「絶対、守ってみせる」

 

 

リューの合図とともに駆ける三人。

先陣を切るのはロキファミリアの特攻隊長ベート。

彼の脚力はファミリア随一。

ラジエルの縮地を除けば、この中で彼より速い者は存在しない。

後続にはティオナとラジエル。

即席のパーティではあるが、不思議と何故か不安な気持ちはない。

ティオナには間違いなく成功する未来しか見えなかったのだから。

 

 

「行くよ、先手ひっしょー。

弔獣戯我 空蝉礫(からつぶて)

 

「─────────────ッッ!!」

 

 

 空気を殴り付け、不可視の衝撃波を繰り出す戯拳を見舞う少年。

威力は低いが連打ができ、且つ見えない攻撃のため不意打ちに最適な技。

自分の咆哮(ハウル)の御株を奪うかのような攻撃に面食らうゴライアス。

たじろいだ隙を見逃さず、一斉に腹部に飛びかかる二人。

一人が追撃を仕掛けては、もう一人が更に追撃を仕掛ける。

一方に意識を集中させない多重攻撃だ。

 

 

「チィ......また意味わかんねェ技使いやがって。

あのガキは一体何なんだ?」

 

「ブツクサ言わないで殴る!!

これ逃したらもうホントに終わりなんだかんね!!」

 

「うっせェ!!」

 

「『黄昏を前に風を巻け』......っ!」

 

「焦らないで、落ち着いて確実に精神力を込めなさい。

大丈夫。

今はこちらに意識は向けられていない。

慎重に大胆に力を溜めて」

 

「......『閉ざされる光、凍てつく大地』」

 

「そう、それでいいのです。

私もそろそろ動きます。

アイズ、と言いましたね。

彼女のことは頼みましたよ?」

 

「うん、任せて」

 

「その言葉を聞いて安心しました。

では、参ります。

『今は遠き森の空。

無窮の夜天に鏤む無限の星々。

愚かな我が声に応じ、今一度星火の加護を』」

 

「走りながら......しかも早い。

あれが、平行詠唱」

 

 

 吹き荒れる風となって疾走するリューは、呪文を詠唱しつつ戦場に躍り出る。

魔法の詠唱は途轍もない集中力を有するため、一節の詠唱以外は止まって詠唱を紡ぐのが基本だ。

詠唱を一度始めたが最後、唱え終えて放たなければ魔法が暴走し、使用者に多大な損害を与える。

しかし、中には詠唱を戦闘を行いながらこなす者が存在する。

それが平行詠唱。

魔法支援を主体とする者の目指す頂のうちの一つであり、魔法を極めた者の集大成でもある。

魔法は確かに奇跡を発現させ、戦局を優位にすることの出来る特別なものだ。

だがその弱点として、詠唱中はその場から離れることのできない。

詠唱中は完全に無防備になってしまうのだ。

その弱点を無くす技法が平行詠唱。

戦闘や行動中に詠唱を完成させ、自分自身で隙を作って打ち込む。

固定型の人間大砲が、自立式砲台となるのだから恐ろしい。

この戦闘スタイルが実現できるからこそ、リューは数少ない魔法剣士としての称号を掲げることができるのだ。

 

 

「『汝を見捨てし者に光の慈悲を。

来たれ、さすらう風、流浪の旅人。』」

 

「──────────────────────ッッッッ!!!」

 

「オイオイ、詠唱しながら戦闘とかどうなってやがる!

お前ンとこの冒険者はあれがデフォなのかよ!」

 

「ベートが何を言ってるのかよくわかんない」

 

「“さん”をつけやがれェ!!!」

 

「いいから集中しなさいっばぁ!!」

 

「わかってらァァ!!」

 

「弔獣戯我 鎧壊馬蹄(がいかいばてい)

 

 

 迫り来る豪腕を華奢な足が打ち返す。

強靭な鎧をも蹴り砕く馬の如き足は、巨人の腕などもろともせず弾く。

脚具が悲鳴をあげる。

ヒビが修繕不可能な段階に差し迫り、端から徐々にその形を失っていく。

最早少年の防具も限界だった。

籠手は既に拳しか覆えてなく、その形は見るも無残な姿に成り果てている。

だが、それでも止まるわけにはいかない。

例えこの身、この防具が壊れようとも、戦うこと姿勢だけは崩してはいけない。

命ある限り、どこまでも愚直に進むしかないのだから。

 

 

「『空を渡り荒野を駆け、何物よりも疾く走れ』」

 

「『吹雪け、三度の厳冬をーー我が名はアールヴ』!」

 

「みんな、行くよ」

 

 

 準備は整い、舞台もまた整った。

この階層に渦巻くは深緑の風。

その風に乗るは極寒の吹雪。

そして、その吹雪を後押しする一陣の風。

今こそ冒険の時。

この一撃をもって、この戦いに幕を降ろそう。

 

 

「っ!!?

来るか!!離れるぞガキ!!」

 

「ぬぇっ」

 

「いっけぇ!!

アイズ、リヴェリアァァ!!!」

 

「『ウィン・フィンブルヴェトル』!!!」

 

「『吹き荒れろ(テンペスト)......エアリアル』!!!」

 

 

 深緑戦ぐ緑豊かなこの階層に、全ての生命の動きを止める冷気が吹き荒れる。

吹雪は風の後押しによって吹雪く範囲を広げ、自然の猛威を再現するかのように巨人に襲いかかる。

最初に放ったものとは比べ物にならない規模と速度に、ゴライアスはなす術もなく飲み込まれる。

瞬き一つする合間に両脚が凍てつき、一呼吸の間に胴体が氷に覆われていく。

叫ぶより早く、その吹雪は両腕をも凍らせてしまった。

幕引きが近づく。

その吹雪をも飲み込む深緑の風が唸る。

星の命を再現するかのような美しい光球が、リューの背後に浮かび上がっている。

 

 

「すげェ冷気だ。

あのままだったら俺らもヤバかったぞ...」

 

「ねぇねぇベート。

さっきの続きなんだけどさ」

 

「だから“さん”をつけろっつーのォ!

......何の話だ?」

 

「みんながどれぐらい強いのかはわかんない。

俺も全員見てきたわけじゃないから」

 

「だから、一体何の話だ」

 

「それでも、俺は知ってる」

 

「......あァ?」

 

「『星屑の光を宿し敵を討て』」

 

 

風が爆ぜる。

大地の怒りを体現したかのような攻撃が、ゴライアスに無情に迫り寄る。

その在り様、まさしく疾風。

風と共にあらゆる敵を打ち倒すエルフの姿が、そこにはあった。

 

 

 

 

 

 

 

「リューは、一番強い。

いっちばん強い俺の、じまんのお姉ちゃんなんだ」

 

 

「『ルミノス・ウィンド』!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 瞬間、誰もが見惚れた。

数多の光球を自在に操るエルフの姿に、誰もがその視線を釘付けにした。

光球一つひとつが上位魔法に匹敵する威力を持ち、その数は使用者の精神力が続く限りいくらでも生み出せる。

風の化身と思わせるような姿だった。

巨人の絶叫は暴風に掻き消され、自身を縛り付ける氷諸共に打ち砕かれる。

両腕、両足を砕かれ沈みゆくゴライアス。

その巨人の遥か頭上にて、リューは叫ぶ。

 

 

「だから、俺も強くならなきゃ」

 

「来なさい!ラジエル!!」

 

「お、オイ!!

何するつもりだガキっ!!」

 

 

突き出た氷柱を足場にして、高く跳躍するラジエル。

その先に待つのは自慢の姉の姿。

光球を放ち終えたリューは木刀を両手に構え、少年に対して刀身の腹を見せつける。

そこには戦場に似つかわしくない微笑み。

まるで、少年の狙いを把握しているかのように。

少年と共に戦えていることに喜びを感じているように。

ラジエルは木刀の腹を足場にして、ゴライアスに向かって縮地で急接近する。

全てはこの時のための布石に過ぎない。

この中で唯一打撃でゴライアスを圧倒できる少年に、リューやリヴェリア、アイズ、ティオナを含む冒険者たちは全てを託す。

その小さな体に、多くの人たちの期待を背負って、巨人の頭目掛けて急降下する。

 

 

 

 

「弔獣戯我 鯨跳沈足(げいちょうちんそく)

 

 

「─────────────────────────ッッォォォォ!!!!」

 

 

 

 それは巨大な物が落ちたかのような一撃だった。

鯨跳沈足とは、空中から繰り出される大振りの踵落とし。

かの巨大生物、鯨の跳躍から閃いたこの技、命中率は低いが当たれば一撃で再起不能に追い込める大技。

その一撃は、氷諸共巨人を踏み砕いた。

踏み砕かれる立場であった存在が、その立場を逆転させてみたのだ。

 

 

「......おい、見ろよアレ」

 

「ゴライアスが、灰になっていくぜ......」

 

「や、やったぁぁぁぁ!!!

勝ったんだ俺たちは!!!」

 

「マジかよ......あのガキ、やりやがった」

 

 

モンスターの灰化を確認した冒険者たちは、みな一応に喜び、喝采をあげた。

一進一退の攻防の末、見事大逆転劇を披露して見せた。

これが冒険。

危険を冒し、その先にある財宝を手にすること。

それは形あるものではなく、掛け替えのない物のことを指す。

この場にいる冒険者たちは、皆それを手にできた。

見知らぬ者同士肩を組み、喜びのあまりに抱擁をし涙する。

活気と生に満ち溢れたこの感覚こそが、危険な冒険の報酬なのだ。

 

 

「ゴライアスの消滅を確認......。

何とか、なりましたね」

 

「やったねリュー」

 

「えぇ、貴方のお陰です。

初めての大掛かりな戦闘、お疲れ様でした。

よくやりましたね」

 

「リューもお疲れ様」

 

「おおーい、ラジエルゥー!

お疲れー!

凄かったね最後のキック!!」

 

「ティオナ......少し静かにしてくれ。

魔法の使い過ぎで頭が痛む...」

 

「ハッ、歳とったんじゃねェの?」

 

「おいベート、折檻するだけの気力は残ってるぞ?」

 

「みんな、凄かったね」

 

 

 これぞ大団円。

強敵を力を合わせて撃破し、皆で勝利を分かち合う。

正しく冒険者としての在り方。

少年はこの時ようやく冒険者としてスタートラインに立ったのだ。

未だ雛鳥の如き器ではあるが、着実に進歩しつつある。

今回は始まりに過ぎない。

これから様々な難関や脅威が待っている。

だが、今くらいは勝利の余韻に浸るのもいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────タイミングとしては上々。

さて、次はどうするかな」

 

 

「──────えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少なくともこの時ばかりはそう思っていた。

あの雄叫びを再び聞くまでは。

誰も予想だになんてしていない。

灰化を巻き戻すほどの回復力があるなんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───────────────────ッッッッッッァァァ!!!」

 

 

「『疾風(リオン)』殿っ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 だからこそ、この絶望もまた正しい在り方。

禍福は糾える縄の如し。

幸福の後には必ず不幸がやってくる。

突如姉の姿は、ボロボロの赤い剛腕によって掻き消え、鮮血を撒き散らしながら宙へ投げ出されてしまった。

冒険はまだ、終わってはいない。

そして、あの時と同じ現実を再び、この目で見ることになる。

 

 

 

 

「リュー......?」

 

 

 

 

 




いらっしゃい、あずき屋です。
お待たせしたぜ。
新作お待ちどうです。

当初の目的に近づきました。
ここまで来ると中盤なんだか終盤なんだか分からなくてなっている様であります。
まぁありきたりですかね。
でも私は満足です。
まだこの話の最後に入っていないのに満足するのもアレなんですが、この話の最後はどうなんでしょうか。
やっぱりありきたりなんですかね。
書いている側に立った途端に読者の気持ちがイマイチ掴めなくなります。
でもなんだかんだ言ってもこの感じで書いていくつもりなのでよろしくです。

さて、初めての大掛かりな戦闘、如何でしたでしょうか。
ここまでの大人数を動かしたことがないもので、如何せん勝手がわかりません。
これで良かったのかどうかはみなさんの判断にお任せすることにしましょう。
食べる前の提供ならいざ知らず、食べ終えた後の始末はできませんので、好きに厠で処理してください。
赤いゴライアスくん、どうでしたか?
これより大人数で、Lvが高い冒険者がたくさんいた原作に比べれば劣るのではないかと思います。
原作では魔剣もぶっ放してましたが。
今回は違う方法で狂気に拍車をかけます。
ゴライアスの真相については、また次回のお楽しみということで。


 ではでは、また次のページでお会いしましょう。



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