「えー、せっかく出たんだし魔法使って見たいよ」
「魔法はいつだって使えます。
ですが戦闘のクセはそうそう抜けるものではありません。
優先順位を考慮しての考えです。
それでもラジエルは私が間違っていると言えますか?」
「ぶぅ、分かったよ。
リューってさ」
「なんですか?」
「なんとなく、ししょーに似てるかも」
「それは......私にとって褒め言葉ですね」
「シッ」
「ギャアァッ!!」
「迷いのない一撃、流石ですね」
アストレアファミリアで3人が応酬を繰り広げている中、二人はダンジョン上層にてモンスターと戦闘を行っていた。
迫り来るゴブリンを埃を払うように葬って行き、小石を蹴るようにコボルト等の下級モンスターを一蹴していた。
端から見れば高レベル冒険者にも見えただろう。
しかしその実、高レベル冒険者は『
その傍らにいる少年は、この街にきてひと月と経っていない新参者。
冒険者と言われても素直に飲み込めないその小さな姿。
黒で塗り固められた服装に、防具は籠手と脚具と胸当てのみの軽装スタイル。
武器の類いと呼ばれるようなものは一切装備していない。
どこからどう見てもリューに付いてきた子どもにしか見えない。
「リュー、ここじゃ物足りないよ。
もっとつよいやつがいるところにいこーよ」
「ダメです。
この先へ潜って行くなら、この上層にいるモンスターの情報を知り尽くしてからじゃないと行かせません。
雑魚と侮れば、そのうち必ず痛い目を見ますからね」
「はーい」
会話は冒険者として有り触れたもの。
ダンジョンの中で最も弱いモンスターが跋扈するのがここ上層である。
体格はどのモンスターも基本的に小さく、個体差があったとしても比較的大差はなかった。
その上力も弱く、知能も高くない。
本能に従って活動するモンスターばかりであるため、上層の中では危険度は低い。
だが、こと命のやり取りの中では、圧倒的な戦力差があろうと何が盤台をひっくり返す要因になるかは誰にも分からない。
蟻が像に致命症を与える可能性だって有り得るのだ。
そういったことが起こり得ないよう、極小の危険分子を常に排除する心掛けが必要となって来る。
故にリューは先達者としてラジエルに警告する。
雑魚といえど、当たりどころが悪ければ簡単に殺されてしまう。
まとめるとすると、いつ如何なる時も油断するなということだ。
「そう、どんなことがあっても油断はしてはいけません。
お師匠さんに教わったでしょう?
周囲の気配りが、自分の命を守るのです」
「あ、そーだった。
ごめんリュー、あんまりにも弱いから忘れかけてたよ」
「ダメですよ?
相手が強くても弱くても、それが敵ならば一欠片も油断を見せてはいけません。
私もそうですが、貴方の身体には必ず弱い箇所が存在します。
そして、敵はその弱い箇所を突く針を必ず持っています。
自分に対して危険を持ち得ている者に対して、貴方は安心して背中を見せられると思いますか?」
「んーん、何となくだけどわかるよ。
どんな敵にも油断はしちゃ、ダメなんだよね?」
「グギャアァァッ!!」
「はい、例えそれがゴブリンであってでもです」
少年の戦闘力は正直いって、Lv1の冒険者の中でトップクラスだろう。
オラリオに来るまで厳しい鍛錬を続け、合理的に相手を殺める術を体得してしている。
冒険者としては新参者だが、戦士としてはそこいらの冒険者では比較にならない。
リューの目的は、少年の中にある意識を正すこと。
やはりラジエルの中にも驕りが存在する。
下級モンスターに対して集中力が散漫になりつつあるからだ。
まずはその意識を正し、モンスターのクセや特徴を覚えさせる。
人間には共通する思考があるが、モンスターはその種類が多いため一概に一括りでは済ませられない。
モンスターはとにかく種類が多い。
昆虫型や獣型、獣人型、竜型、巨人型など実に様々な種類がこのダンジョンで生息している。
それらに対し、常に同じ戦法を取り続けていては身が保たない。
毒を持つ相手に対してはどういった戦法を取るか。
集団で迫り来る相手に対してどう立ち回るか。
圧倒的体格差で攻めてくる相手に対してどう攻めるか。
そういったことを常に考えながら戦う必要がある。
「多いね、一気に行くよ。
”剣鶴舞踏”」
「ふむ、統率を取られる前に一掃しますか。
悪くない手ですね」
少年の姿がコマ送りに見えるほどの高速体術が多数のゴブリンに迫る。
一般人であれば知覚できない動きも、Lv4まで上り詰めたリューにははっきり見える。
最も見るために集中力を使うが、焦点さえ合わせればよく見える。
どうやらあの技は地を踏みしめた一瞬だけ姿がようやくはっきり確認できるものらしい。
高速で敵の死角に回り込み、剣に匹敵する鋭さを持った手刀で敵を切り刻む。
「んんー......終わりかな。
もうこの辺りに敵はいないよ」
「そのようですね。
流石ですよラジエル。
気配の捉え方に関しては何も言うことはないぐらい完璧なものです」
「そーかな?」
周囲の気を探り、生物の発する物音が聞こえないことを確認すると、ラジエルは構えを解く。
軽く柔軟をして身体の調子を確認し、リューの元へと戻って行く。
「うん、問題ないよ。
まだまだいける感じ」
「どれどれ......っと。
筋肉に痙攣もないし、脈拍も正常。
そうですね、全く問題ありません。
では、もう少し深く潜ってみましょうか」
「わーい」
「こら走らないの」
リューから更なる階層への進行が許可され、先行して走り出す。
戦闘に関しては申し分ないが、その他に関する配慮が欠けている。
言ってしまえばそれくらいだ。
こうして時に注意を投げ掛け、徐々に身体に刷り込ませていけば時期に意識せずともこなせるようになるだろう。
時間の問題というやつだ。
そうして戦闘とリューからの講義を繰り返して二時間と経たない頃、既に十一階層に到達していた。
道中フロッグ・シューターやダンジョン・リザード等のモンスターが何度も現れたが、苦も無くそれらを蹴散らした。
舌を切り飛ばし、頭蓋を砕き、腹を踏み潰した。
話には聞いていたが、こうも顔色ひとつ変えずに倒して行くとは思ってもみなかったリュー。
ウォーシャドウを一撃で沈めたのを見ると深く考えることを放棄した。
最早この街に来る前からこう言った人外との戦闘は慣れっこなのだろう。
「さてラジエル、ここが貴方の潜った一番深い階層です。
前回はここでインファント・ドラゴンと戦ったんですよね」
「うん、おっきいだけであんまり強くなかったけど」
「普通ならその大きさに皆たじろぐはずなんですが......。
まぁ、過ぎたことはもういいでしょう。
んんっ、いいですか?
ここより先は中層一歩手前。
つまり上層のモンスターなど比較にならない相手が多く出現してきます。
色々付け加えるべきこともありますが、簡単に言うならここから先は更に危険です。
最も口であれこれ言ったところで貴方はわからないでしょうから、実物を見せることにします」
リューが指差す方向に見えるのは、真っ白な体毛に覆われた巨大な猿。
名はシルバーバック。
特徴的なのはその大きな体格だけでは無く、頭頂部から尻尾にまで染められた銀色の体毛だ。
その名の由来が特徴的な銀色の体毛からきていることは一目瞭然だろう。
このモンスターからドロップする銀色の体毛は天然素材として一目置かれており、防具や衣類などに使われている。
他に大きく発達した強靭な筋肉。
一度その剛腕を振り下ろせば、冒険者とて簡単に圧し殺してしまうほどの怪力だ。
巨体の割にダンジョン内を俊敏に動き回る。
中層へ挑もうとする冒険者の鼻っ柱をへし折らんとばかりの能力を有している獰猛なモンスターだ。
「いいですかラジエル。
あのモンスターはシルバーバックといって、大きい身体の割によく動き回る厄介な相手です。
勿論強靭なパワーを持っているため、あの腕には当然要注意です。
後は実践で摑んで来てください」
「うん、じゃあいって来まーす」
返事の後、軽快な動作で近くにまで一気に接近する。
シルバーバックが動くと共に近づき、奴が止まると共に気配を断つ。
周囲の音に敏感なモンスター相手には、迂闊に動き回ると気配を察知される。
丁寧かつ迅速に接近し、一気に間合いに入れるよう差を詰めていく。
「ばぁ」
「ヴォッ!?」
不意を取られると、相手は一瞬無防備な姿を晒す。
予想外の出来事をされると反射的に固まってしまうのだ。
無論シルバーバックとてその例外ではない。
知らず知らずの間に自分の肩に乗られ、いきなり小さな顔を横から見せられれば誰だって驚く。
まるで友達にする悪戯のような仕草に虚を突かれるシルバーバック。
未だ出会ったことのない謎の少年を前に、僅かに固まってしまう。
「すきありっ」
「ッ!!?」
左肩から唐突に現れた少年は、倒立前転をするように流麗な線を描いてシルバーバックの前に躍り出る。
無防備な腹に向かっていつも通り突きを繰り出して大猿を仕留めにかかった。
細い腕から放たれる突きは鋭利な槍のように深々と突き刺さるはずであった。
「ラジエル!
離れなさい!!」
「ぬぇ?」
「ガアァァァァァッ!!!」
深々と突き刺さるはずの突きは、大猿の腹部を赤黒く変色させるだけで留まった。
決定打になっていなかったため、シルバーバックは筋骨隆々の両腕を振り下ろし、少年を地の肥やしにせんと叩き潰そうとする。
巨岩の如き一撃が、少年に向けて垂直降下し、轟音をあげて土煙を巻き上げる。
「......本っ当に心臓に悪いんですよ」
「ごめんねリュー。
あれから試したいこといっぱいあってさ、ちょっとこーふんしちゃった」
「ッ!!?」
少年は軽口を叩き、顔色ひとつ変えずにシルバーバックを見つめていた。
両腕を交差して防御の姿勢を取り、両足はしっかりと地を踏みしめる。
大猿程ではないにせよ、少年の腕は通常より一回り太い大きさとなっていた。
鍛えているとはいえ、このような矮躯ではあの巨体から繰り出される一撃を無傷で防ぎきれるわけがない。
では一体どうするのか。
無論、その差を埋めるのが技である。
「
ねぇ、力比べしよーよ」
「グフゥゥゥン!!」
大猿の如き剛力を実現させる戯拳。
それが
腕の筋肉に意識を集中させ、隆起させることで元の倍以上の筋力を発揮させる。
俊敏を犠牲にして力を倍増させるため、純粋なパワータイプ以外には使えない技。
パワーに自信のあるシルバーバックが力を込めるも押し切れない。
体重を掛けているのは自分の方なのに、一向に腕がこれ以上動かない。
鼻息が荒くなり、歯が砕けるほどに食いしばって力を込め続ける。
こんな子ども一人押し潰せないことに苛立ちを覚え、無駄なところにも力が入り、徐々に意地になって行く大猿。
「せーぇのっと」
「ブゥモォォォォッ!!?」
非力なはずの子どもに力負けし、為す術もなく壁に押し込まれる。
その姿はまさに極東の昔話に登場する金太郎の通り。
小柄な体格で大柄の敵を相手に無双する姿は、御伽噺の登場人物のよう。
大猿はたった今、少年との純粋な力勝負に負けたのだ。
「よっこらっせっと」
大きな地響きをあげて、大猿を頭から垂直に地面に叩き落とす。
打ち所が悪かったのか、大猿は呻き声を上げることなく静かに落ちた。
徐々にその体が崩れて行く様を見て、少年は腕の大きさを元に戻して行く。
あらゆることをいとも簡単に成し遂げて行く少年の姿に、リューは不安を募らせて行くばかりだった。
どんな相手も置き去りする縦横無尽の立ち回り、大柄な相手にも引けを取らない怪力無双のスタイル。
スピードやパワー、テクニックが並外れている。
冒険者になったばかりで、モンスターに対して引けを取らない意気込みを見せるものは珍しくない。
彼のように、恐怖心の類を一切かなぐり捨てて戦う者を何度だって見てきた。
そんな彼らと比べて、ラジエルは特筆して飛び抜けている。
否、強すぎると言ったほうがいい。
強すぎる者の末路は総じて凄惨なものばかりだ。
驕りや慢心などで簡単に命を散らす者がその大半を占める。
リューはとても不安なのだ。
いつの日か、そう遠くないうちに、彼が死んでしまうような気がして。
「これもだいじょーぶそう。
力負けしてないし、体もへーき。
もっと下に行ってもいいよね」
「え、えぇ......」
少年は確かに強い。
だが初めてだ。
こんなにも強さを持った者に対して不安を感じてしまうのは。
嫌な予感ほど良く当たる。
遠からず、彼はとてつもない運命に巻き込まれて行くことになるだろう。
根拠はないが、リューの中の直感がそう告げている。
彼の死因は、負ける絵を想像させない戦いの中での戦死だろう。
戦いを見れば見るほど、嫌な幻界が目を覆っていく。
少年の話してくれたあの赤い風景が、いつの日か彼自身の手で引き起こされそうで、胸が締め付けられる。
「ラジエル?」
「んー?
なぁにリュー?」
「初めて大きい敵と戦ったことですし、大事を取って休憩にしましょう」
「えー、あんなの全然へーきだって」
「ダメです。
忘れたのですか?
ダンジョンで行動をする際、私の言う事を必ず聞くと言ったでしょう。
自分が感じていないだけで、疲労は溜まっていくものです。
ほら、おいで?」
「うん、わかったよ」
半ば強引に休憩を申し出ることにした。
分かっている。
今の戦闘をした程度で、彼に休息の必要はない。
後数体のシルバーバックとの戦闘を行ったとしても、休息を取る必要はないだろう。
だが、いずれ必ず訪れるであろう凄惨な未来を前にしたリューは、彼を抱き締めたくて仕方ない。
こうしてラジエルを抱き締められるのも、そう多くないかもしれないからだ。
彼にとって、自分は一体どう言った存在なのかは分からない。
でも、少なくともリューにとっては掛け替えのない存在だ。
初めていつまでも見守っていきたいと思えた子。
例え自分の命を張ってでも生きていて欲しいと思える大切な人。
ただの庇護欲なのかもしれない。
か弱いものを守りたいという自己満足から出た気持ちなのかもしれない。
「苦しいよリュー。
ちょっと力強い......」
「ごめんなさい、でももう少し...このままで」
それでも、やっぱりリューはラジエルと寄り添って生きたい。
一体何が自分をここまで変えたのだろう。
いくら記憶を遡っても思い当たる節がない。
初めて会った時だろうか。
彼の過去を聞いた時だろうか。
傷だらけになった姿を見たからだろうか。
それとも、自分を慕ってくれているからなのだろうか。
いくら考えても答えは出そうにない。
分からないのだ。
自分がここまでしてラジエルを守りたいと思えることが。
恐らく、今の自分の頭で考えても答えは出ない。
不安が心の大部分を占めてしまっている以上、前向きな思考がどうしてもできない
名残惜しいが、この問題については先送りにしよう。
いつの日か必ず答えが出ると信じて、今は精一杯彼と共に生きよう。
例えその先に、目を背けたくなる現実を突きつけられようとも。
「ほう......奴が、そうか」
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時間を遡ること五日程前。
とあるファミリアがダンジョン探索のため、大規模な遠征が行われた。
おおよそ十日ほどダンジョンに潜り、冒険者の鍛錬と物資の採取、モンスターの動向等を探るのが目的だ。
ストレスや疲労が切り離せない環境に十日も身を置かなければならないため、精神訓練の機会とされている。
そんな中、二神の神が会話に花を咲かせていた。
場所には少々花が無いが。
「え、ウソ?
あの子、ダンジョン潜って初日でインファント・ドラゴン倒しちゃったの?」
「ウチの子の話やとそうなんやて。
実際この目で見た訳やないからはっきりとしたことは言えんけどな?」
「でも嘘は言っていないんでしょう、その子は」
「うんにゃ、それは勿論確認済みや。
せやから余計に気になってしゃーないねん。
聞けばオラリオに来てそう時間も経ってないんやろ?
尚更興味あってなー。
そんでまたこれがかわええねん!」
「本当にブレないわね、あなた......」
「まぁこの話はいずれまた長々と語ったるわ。
それよか今は次の遠征の話や。
次もヘファイストスの子、一緒に来てくれんのやろ?」
「わざわざあなた自身が来なくてもいいのに」
「暇やからな!」
ロキは次の遠征の話をしにヘファイストスのホームである工房へ訪れていた。
どこかしこにも職人の魂といえる道具が置かれており、煤で汚れた炉が未だに現役であると存在感を露わにしていた。
ここで武具が生み出されていたと思うと、ただの工房ではなく一つの聖地のように感じる。
数えきれないほどの冒険者たちを危機から救ったものが、ここでは幾つも生み出されていたのだから。
だが、この工房では最早その役目を果たすことはほとんどない。
彼女は鍛治の神と名高い神匠ヘファイストスなのだ。
人が自分たちの手で手掛けたものを世に広めて生計を立てるという世界の営みは、たとえ神であろうとも気安く手を出していいものではない。
ここで彼女がすべき事は眷属たちに鍛治の心得を唱え続けることと、見守ることだけだ。
加えて彼女が手掛けた武具はこの世のあらゆる職人を凌駕し、ナイフ一本ですら莫大な資金がなければ商談にすらならない。
無論資金があると言っても、彼女も神の力を封印している為破格の力を宿したものはできない。
とはいってもその神としての技術は失われていない故、彼女が打ったものは何であれ超高級品扱いとされる。
よって、気軽に槌を持つ訳にはいかないのだ。
「......そう、彼がもうそこまで行っちゃったのか。
これは、約束の時はそう遠くないかもなぁ」
「なんか言うた?」
「いーえ、ただの独り言。
それで話はそれだけ?
こっちも遠征の準備に向けて忙しいんだけど」
「まぁまぁそう固いこと言いなさんな。
実はな、ちょっとばかしキナ臭い情報仕入れたんよ。
「あぁ、あの野蛮な連中のことね。
噂は聞きたくなくても勝手に耳に入ってくるわ。
汚い話から腸が煮えくり返る話までね。
昔の貴方じゃないんだから、ちょっかいをかけるような真似は控えなさいよ?
悪ふざけじゃ済まされないからね」
「分かっとるよ、ウチかて沢山の子ども抱えてんのやし。
ヘファイストスも無視できん内容やの、分かっとるやろ?
連中の狙い、
「......」
特殊な能力が備わった武具はいくつも存在する。
決して刃毀れしない剣や魔法の類を吸収する防具、装備者の力を跳ね上げる物などが存在する。
武具の中でも特別中の特別、
しかし、この武具は鍛治師の中でも上位の鍛治師でなければ製造不可能である為、街中ではほとんど流通していない。
また
だが、これらの能力を併せ持ち、かつ量産可能の段階まで押し上げる武器が存在する。
それが魔剣と呼ばれるもの。
魔剣の中には強力な魔法が内蔵されており、一級品であればあるほど城一つを一振りで破壊できる力を持つ。
一説によれば海を焼き払ったとされるものも存在する為、その力は現代でも求められ続けている。
唯一の欠点とされるのがその耐久性にある。
個体差はあるが、基本複数回魔法を解放すれば粉々に砕け散ってしまう。
何度使えるかは砕けた後でしか数えられないが、一度でも解き放つことができれば脅威としては十分だ。
「多分、連中の狙いは魔剣であっても魔剣じゃないわ」
「せやな。
アレは何本集めてもいつ壊れるかは分からんから不安しかない。
せやからその根本の問題を解消しようと動くのが定石。
あいつらが集めてんのはそれを打てる鍛治師やろ?」
「......そうね。
多分......いえ、きっとそうだわ」
「ウチのお得意様やからこうして直接注意に来たんやで?
ゴブニュファミリアや鍛治業界のファミリアにはもう連絡を回してある。
そんなかでもいっちゃん危ないのが、アンタんとこやって話や。
......おんのやろ?
そいつを打てる子がこのファミリアに」
「まだ入って日は浅いんだけれどもね」
力なく笑うヘファイストスの顔を見て、おちゃらけた顔を真面目に引き締めるロキ。
魔剣といっても、経験を積んだ鍛治師であれば誰でも打てると言う訳ではない。
ステイタスにも記載されないその者だけが持つ特別な力。
魔法を扱える精霊の力を武器に下ろすことができる者だけが、唯一魔剣を製作することができる。
そんな希少な家名を持つ、魔剣製作の代名詞と呼ばれた一族の血が、未だに続いている。
そしてそれが、このヘファイストスファミリアに入団しているとでも知れたら。
「......あの子への贈り物以前に、ウチの問題を消化しないといけないようね」
悪魔の指先は、間違いなく迫ってきている。
この平穏な世界を脅かす悪しき思惑が、膨らみ続けているのだ。
それを払い除けられるかは、抗う者達たちの宿命なのだろう。
いらっしゃい、あずき屋です。
皆様のお手元の端末に出前一丁お届けに上がりました。
ちょいとばかり長くなりましたが、投稿完了いたしました。
以前と比べ、戦闘の質がだいぶ低下いたしました。
私の失態でございます。
ごめんなさい。
とりあえず恒例であるフラグをいくつか散らせておきました。
できるだけ回収する所存であります故、広い目で見ていってください。
安直なフラグで申し訳ない。
私のようなものでは今の所これで限界です。
次はもっと上手くやって見ます。
闇派閥に関しては未だ考え中です。
私の記憶上闇派閥に属した連中の詳細はない為(原作ではあるかも知れませんが)オリジナルの連中を出そうか迷っています。
ぶっちゃけこれ以上オリキャラを出すと私の手に負えなくなりそうなので、なるべく被らないよう構成を考えて行きますので、その辺りご了承下さいませ。
感想、質問随時受け付けておりますので気軽に投書お願いします。
お待ちしております。
ではでは、また次のページでお会いしましょう。
※誤字脱字を報告してくださった方、ありがとうございます。
申し訳ありません。
構成の流れの関係上、少しだけ話の流れを変えました。