Fate/curious tale 緑の勇者と白い魔王 作:天々
赤色が夜空に舞い散った。
しかしそれはライダーの血ではない、そもそもランサーの槍はなんの手応えも無く空を穿ったのだから。
「何!?」
必殺であるはずの一撃をかわされ、狼狽するランサー。
宙を舞う赤。それは何処かから現れた赤色の羽根であった。
では、ライダーはどこに行ったのかと視線を巡らしたランサーに赤い何かが殺到した。
「ちぃっ」
槍を振るいそれを弾き飛ばすランサー。弾き飛ばされ夜空に舞うそれもまた、赤い羽根であった。
「まさか」
赤い羽根が飛んできた方向、ランサーがそこに視線を向ければそこには数多の羽飾りがついた異国風の鉢巻を頭に巻き、極彩色の翼をその背に負うライダーの姿。
「これは、コピー能力か…!いつの間にこんな物を…!?」
唖然とするランサーであるが、その隙を見逃すライダーではない。
翼を羽ばたかせランサーの周囲を旋回しながら、腕につけた羽飾りを矢の様に放つ。そして、それを避けるすべはランサー達にはない。
いくら竜種とはいえ、相応の体躯を誇りその背に甲冑を着込んだ主を載せているのだ。周囲を囲む様に放たれた飛び道具を避けるのは非常に困難である。
「くっ!」
飛竜を駆り、飛来する羽根が出来る限り少なくなる位置へと移動するランサー。避けきれぬ羽もいくつかあるがそれはランサー自身が槍を振るって打ち払う。
そんなランサーを逃さないと言わんばかりに、羽根を撃ち出しながらランサーを追うライダー。
そんなライダーから逃れるべくランサーは手綱を捌き、槍を振るい続ける。
しかし、そんなライダーの猛攻は唐突に途切れた。
「む?」
最後の羽根を切り払った後、気付けばランサーの視界からライダーの姿が消えていた。
気配を探りつつ周囲を睥睨するランサー。
そして彼の感覚がライダーの気配を捉えた時、ライダーはランサーよりも上空に舞い上がっており、
「ぽよおおおおおおい!!」
ランサーへと重力と空力を味方に付けた急降下攻撃を仕掛けた。
「ぬうううううう」
その一撃を槍の柄を両手で支えて受け止めるランサー。
その激突と均衡は一瞬であった。
もしランサーがこれを受けたのが地上であるならば、彼はその膂力をもってライダーの突貫を防ぎ切ることができたであろう。だが今のランサーは飛竜の上にまたがり、何も踏みしめるもののない状態である。彼を支える飛竜も低級の飛竜でしかない。
「うおおおおおお!?」
結果、墜落は必然であった。
衝撃を支えきることができぬまま飛竜が落下。
ランサーと飛竜はライダーに抑え込まれるままに地表へと向けて落ちていくのであった。
ランサー対ライダーは一旦終了します