Fate/curious tale 緑の勇者と白い魔王   作:天々

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前回と合わせて一話分に足りないくらい?
まだまだ忙しいので次回更新は17辺りの予定。
分量だけでも元のペースに戻したいところ。


五話 彼女の名は

「おお?」

 

 部屋に入ったとき、美奈は驚きと戸惑いの余りそんな声を漏らした。

 

「何かきれいになってる?」

 

 そう、部屋がきれいになっていたのである。

 

 部屋の中央にあったミニテーブルの上にはリモコンや雑誌等が整頓された状態で置いてあり、ベッドの上は寝間着や寝具がきれいに折り畳まれていた。多少の汚れがあったはずの床や棚の上も軒並み掃除されている。唯一課題のやりっぱなしで汚れている机の上はそのままにしてあったが、それは作業中のものを下手に触ってはいけないだろうという配慮が伺えた。

 

「僭越ではございますが、お部屋を掃除させて頂きました。お気に召しましたでしょうか?」

 

 そう言って会釈をするメイド姿の女性。

 

「え、あのありがとうございます」

 

「お役に立てて光栄でございます、マスター様」

 

 たじろぎつつも美奈が礼を述べるとメイドはニコリと笑った。

 

「ところで」

 

 どこか和やかだったその空気はしかし、アーチャーの真剣味のある一言で引き締められた。

 

「この部屋には誰か来たか?」

 

 アーチャーの問に、メイドはしばし顎に指をつけて黙考する。

 

「魔術師が一人に使い魔が3体来ました。まあ、一人残らず蹴り出しましたが」

 

「そうか」

 

 報告を聞いて鷹揚に頷くアーチャーを尻目に美奈はメイドを見つめていた。

 メイドの体格は有り体に言えばスリムであった。モデル体型とでも言おうか、美奈にはスラッとしたその体と「敵を蹴り出す」という言葉がどうしても結びつかなかった。

 

「蹴り出した…」

 

 その細い体にどれだけの力があるのか、などと考えながら美奈は視線を脚に下ろす。それに気付いたのか、メイドは脚を見せるようにスカートの裾を軽く摘んで一礼した。

 

「私、こう見えても脚技は得意でして」

 

「あ、ごめんなさいぶしつけに」

 

 見ている事を気付かれ、美奈は慌ててメイドに謝罪した。

 

「いえ、お気になさらず」

 

 そう言って笑顔で謝罪を受け入れるメイド。

 

「こいつはそれなりに強いぞ。サーヴァント相手じゃなきゃどうにかなるくらいにはな」

 

「へえ、そうなんだ」

 

 アーチャーの補足を受け、感心したような声を上げる美奈。

 そして、ふとメイドの名前を知らないことに思い至った。

 

「そういえば、あなたはなんて名前なの?」

 

 その問いに、メイドの女性は困惑顔になった。

 

「名前――、何でしょうねえ?」

 

 一見とぼけた様な言葉。しかしその口調と表情は真剣そのものであった。

 

「もしかしてわからないってこと?記憶喪失とか?」

 

「いえ、本当に無いのです」

 

 少し申し訳なさそうにしながら返答するメイド。その言葉に美奈は衝撃を覚えた。名前というあって当たり前のモノが無い、というのが信じられなかったが故に。

 

「そいつらに固有の名前は無いんだ。種族としての名前ならあるけど、個体を識別するための名前は無い」

 

 そうアーチャーが横から補足する。

 

「どうして?貴方の使い魔何でしょ、名前とかつけてあげなかったの?」

 

 アーチャーを責めるように睨む美奈。その視線を受けて、アーチャーは居心地が悪そうに視線をそらした。

 

「使い魔、というか厳密には俺の能力の一部でもあるんだ。自分の一部に名前をつけるような事はしないだろ」

 

「でも…」

 

 アーチャーの言い分に反論しようとして、しかしできないまま美奈は言葉をつまらせた。

 

「じゃあ、今だけでもつけてあげれない?」

 

 美奈のせめてもの頼みを受け、アーチャーは少し首をひねる。そして、

 

「じゃあ、プロピーはどうだ」

 

 そう言って、メイドに名前をつけた。

 

「なんか、プロビー(新米)みたいなのですが…。まあ、ありがとうございます」

 

 つけられたその名前へメイド改めプロピーは少し不服そうに、でも確かにアーチャーに礼を述べたのだった。

 

 




メイドのキャラ付けは悪ノリするバージョンとかあったけど話が進まないし、美奈が置いてきぼりになるし、真名に繋がる話になるのでボツになりました。

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