Fate/curious tale 緑の勇者と白い魔王 作:天々
来週末までは忙しくなりそうです。
更新予定は9/10 頃を予定しています。
なんかほぼ定期更新になってたけどそもそも不定期更新ですしおすし。
「疲れたー……」
そう愚痴りながら美奈は自宅に帰るなり玄関の上がり框に腰掛けた。時刻は夜の三時、夜明けも近い時間である。
あの後は連絡先を交換して、ホテルで現地解散となった。
「あー、そっか電気つけっぱなしかー」
電灯が煌々と輝く玄関と廊下を眺めながらひとりごちる。家を出た時は突然アーチャーに抱えられて窓から出た為に、電気を消す暇などなかったのである。
ちなみにそのアーチャーは美奈の側で霊体化して控えていた。霊体化すると魔力消費が抑えられるし姿を隠せる為である。
と、寛いでいた美奈の後ろから物音が聞こえた。
美奈は慌てて立ち上がると、振り向いて廊下の先を
見る。その目線の先には自室への扉があり、その向こう側からがたんがたんと物音が聞こえている。
そういえば、と美奈は思い出す。美奈はあの変態サーヴァントかその仲間だかに追い立てられる様な形で部屋を出たのである。ならば、奴らがこの部屋にいてもおかしくはない。
「アーチャー……、中に何かいる」
小さく、側に控えているはずのサーヴァントに声をかける。
すぐさま実体化したアーチャーは美奈を庇うように彼女の前で身構えた。
そんな中、廊下の先からはガチャリという音とともにドアノブが回転し、
遂に扉が開かれた。
ばっ、と部屋から飛び出してくる人影。それは北欧系の顔の青みがかった髪をショートカットにした女性だ。黒いワンピースに白いエプロンドレス、そして頭にはフリルの付いたヘッドドレス。いわゆるメイド服、それもミニスカメイド、を身に纏ったその女性は優雅にお辞儀をすると、にこやかに笑みを浮かべて言った。
「おかえりなさいませ、ご主人様とご主人様のマスター」
「え…」
それを聞いて美奈は思わず呆けてしまう。
(ご主人様と……、ご主人様のマスター?)
ここにいるのは二人だけで、マスターと言うのは美奈であろう。つまり、『ご主人様』と言うのは……
美奈は一歩前に出ると、メイド服の女性とアーチャーの顔を見比べる。
美奈に見られたアーチャーは実にバツが悪そうにこう言った。
「ごめん、あれ俺の使い魔だ。置いてきたのをすっかり忘れてた」
そのなんとも間の抜けた言葉に美奈の緊張の糸が切れる。
「脅かさないでよ」
ふう、とため息をついて美奈は緊張のあまりいからせていた肩をおろした。
「まあまあ、とりあえず中に入りませんか?」
にこやかに美奈達を促すメイドの女性。
「ここ私の部屋なんだけどなあ…」
まるで自分の部屋であるかのような女性の言葉にため息をつきながら、美奈は勝手知ったる我が家に足を踏み入れるのだった。
ちなみに彼女、原作ではセリフらしいセリフはありません。